主侍医のつぶやき: 2008年12月

【代表主侍医のつぶやき】2008/12

主侍医通信 2008年12月晩秋号(第110号)より
【代表主侍医のつぶやき】

東大医学部の全卒業生の同窓会のことを「鉄門倶楽部」と呼んでいます。その組織の10名程度の理事の末端に加わり10年くらいになります。会頭は現職の医学部長が就任し、年に数回の理事会と1回の総会があります。こちらは随分堅苦しい会なのですが、数年前から東大医学部同窓のゴルフ交流会の常任幹事も務めています。50年以上も続いている伝統ある交流会で、初代幹事が清水健太郎(故人)という日本の脳外科の創始者みたいな方でした。それほどの歴史あるゴルフ交流会なのですが、現在もご出席の顔ぶれは医学界では、そうそうたるもので、ここで万一の事故があると日本の医療の未来にも影響するのではと、幹事としてはいつもびくびくしています。
ゴルフという自由な遊びの中で、先輩や後輩達と交流していて常に思うことは、「同窓のみんなは医療に対してなんと真摯な姿勢で日々の活動をしているんだろう」と感服することです。よくゴルフをしていると「仕事をしていないね」などと言われるのですが、彼らを拝見していると「出来る人は何に対しても熱心だ」と当然のごとく思います。これはゴルフに限らず何についてもそうですね。
一般に、東大卒の人は、あまり群れることがなく、他の大学に比べて母校愛も少ないとよく言われます。同窓生と話しても「そうだね」と異論をあまり聞きません。
僕は実のところ、関西人のまま一生を過ごそうと高校半ばまで真剣に思っていたのです。実際大学願書を出したのは、後にも先にも京大と東大のふたつだけでした。結局東京に来てしまいましたが、今では東大で学んで本当によかったと思っています。その最大の理由(といっても皮肉にも唯一と言ってもいいのですが)は、同窓仲間です。主侍医稼業にとって優秀な専門医人脈は必須です。同窓仲間では、人間性重視で仕事仲間を選べば、ほぼ間違いないということに気がつきました。優秀であるかどうかは気にかけなくていいのです。同級生や先輩後輩を見渡すとさすがに俊才奇才が揃っています。しかし性格がいいかどうかは(皆さんも指摘するように)別です。そんな優秀な人が、人間性が真っ当であれば、医師として恥じない勉強やトレーニングをしているはずだから、大切な患者さんを託して間違いのない医師であることになります。僕は、医師評価の方法論として、一般に言われているような、患者評価、医師評価、その他の医療スタッフ評価、マスコミ評価に加えて、同窓同級生評価を主軸にしている所以です。誤解を避けるため断っておきたいのですが、逆は必ずしも真ならずで、優秀で人間性のある医師は全国どこにでもいます。たまたま僕は身近なところでコネクションを築いているだけなのです。
実は、7、8年前までは、ごく親しい医師仲間との交遊以外、僕は医師の集まるゴルフコンペにはあまり参加していませんでした。休日は、医療関係者以外の交流を深める時間としたいと思っていたからです。そのかわり、いろいろな病院の勉強会などに積極的に参加したり、先輩諸氏の勤める病院へ表敬訪問をしたり、医学書の共同執筆をさせていただいたりして, 専門医とのコネクション創りに力を入れてきました。その集大成をTerra Doctor Connections&Allianceと呼んでいます。ただの情報やネットワークではなく、直接的人間関係があるので「Connections」と呼び、患者さんの受け入れをお願いして了解頂いているので「Alliance」と呼んでいます。そんな「Connection」を固めるための一つの場としてもゴルフ交流をとても重宝しています。ゴルフ以外では、なかなか一日一緒に過ごす機会はありません。本音を聞けたり、無理を頼める仲が生まれていきます。
読者の皆様に伝えておきたいのですが、使命感に燃えて、きちんと任務を遂行しているまともな医者はたくさんいます。東大、京大、慶應をはじめとする最高学府出身の医師は、時に傲慢で生意気と思われがちですが、僕の狭い範囲の交流体験では意外と謙虚でかつ自信に満ちた愛すべき人たちが多いのです。「傲慢」と決めつけないで、暖かく真摯な目で見守ってほしいと願っています。母校や教鞭をとった大学に比べて他大学出身の医師にお会いできる機会は少ないのですが、それでも僕は他大学出身の医師達とも交流が深い方だと自負しています。概して本当に優秀な人程謙虚で使命感に熱いと日頃から感じております。
日本の医療を支えるために、使命感に燃えた医師にエールを送ってほしいと願っています。

 

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