主侍医のつぶやき: 2012年5月

【代表主侍医のつぶやき】2012/5

  久々に(初めてと言ってもいいのか?)、2週間もの長期にわたり外遊をさせていただきました。私が50の手習いのピアノで教えてもらった芸大出身の若手ピアニスト村田孝樹君がハンガリー音楽祭関連の大会で優勝し、ブタペストにてリサイタルを行うということになり、応援がてらの旅行となりました。妻とこれまた50の手習いの油絵の先生横島庄司さんと妹さんとその娘さんという変わった組み合わせの一行となりました。ブタペストに4日間滞在し、その後は村田君が住むドイツへ向かいました。ケルンの近くのアーヘンという小さな町に住んでいるのですが、とても落ち着いて親しみの湧く町です。こういった機会がなければ訪れなかったでしょうが、また行ってみたいと思っています。世界で初めて太陽発電の試みをした町だとも聞いています。私の悪い性格なのですが、レストランに行っても、ゴルフやテニスをしていても、旅行に行っても、新しい発見をするとなにか仕事に応用できないかと常に(本当に寸断なく我ながらあきれかえるのですが)考えてしまうことです。  妻や親友から「楽しむときはお客様として純粋に楽しめば!」とかなり真剣に煙たがられています。
 
  というわけで、旅行につきものの失敗談を織り交ぜながら、いろいろなことを勉強してきました。その一つですが、ドイツの町では、路面電車が発達していて、少し地下鉄を加えれば、街歩きはほとんどまかなえるくらいです。我々旅行者にとっては1日券が便利で、何度でも乗り降り自由です。700円くらいになるのでしょうか。しかし、ほとんど検札はなく、我々も旅行中一度も切符拝見はありませんでした。現地のガイドさんは「ドイツの成熟した社会システムのひとつです。個人の良心に任せているのです。」と説明され感銘を受けました。「良心に任せた、成熟した社会システム」なんと心地よい響きでしょうか!しかし、時々厳しい検札があり、違反していると厳しい罰があるとのことでした。 
 
 法律のほとんどは、「想定外の悪い考えを持つものがいるから、取締りできるように細目にわたった規則を作る」という考えにのっとっています。医療保険制度もその一つです。悪用する患者や医者がいるから、これはいけない、あれはいけないと規定しています。しばしば、医師が必要と思っても自由に検査や処方をできません。社会保険事務所が厳しく目を光らせて「この病名ではこの検査はだめです」ということで医療機関は自腹を切るどころか目をつけられます。しかし、巧みにレセプト(公的医療費の請求書)やカルテを駆使すれば過剰請求もまかり通ります。良心に従わないシステムの限界です。そして、このレセプトの監視システムや病院でのチェックシステムにどれだけの費用が投入されているのでしょうか。下手をすれば少なく見積もっても医療費全体の数%や十数%など無視できない費用であると私は推計します。 
 
 世界最先端を行く日本の医療保険制度ですから、そろそろ成熟度を増してもいいのでは期待していますし、私もそういった方向に進むように今後社会医の集大成として活動をしたいと考えています。皆様方のご理解とご支援をお願いする次第です。   

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