2大成人病の心得

菱の実

2大成人病の心得

菱の実

1993.10

三菱信託銀行業務部広報室発行


成人病軍団の2大将軍“高血圧”と“糖尿病”に対する心得をまとめてみました


高血圧

第1条 血圧が高くて、どこが悪い!? と言う前に-サイレントキラー軍団 “高血圧” -

何も症状がないのに、会社の健診で“高血圧”と言われ、薬をもらった。不安なので大学病院の医者にかかった。“軽い高血圧ですね。食事に注意して来月また来てください。”

食事は何に注意すればいいのか?

来月でいいのか?

よくあるケースですが、この中には多くの問題が含まれています。それらは次の第2条~5条におおよその答えがでています。

高血圧自体、あまり症状はないのが普通です。でも、糖尿病と共に、成人にとっての大敵の1つです。長期間高血圧を放置しておくと、動脈硬化が進み、脳卒中の確率を上げます。その他様々な病気の原因となります。“静かなる殺し屋”サイレントキラーと言われるゆえんです。

第2条 市販の家庭血圧計を活用しよう

簡単に測れて、結構正確な家庭用血圧計が安価に手に入るようになりました。病院でたった一度測ってもらった血圧から判断するよりも、日常のデータが豊富にあった方が正しい診断につながります。「おもちゃのような血圧計は不正確だから」とあなたのデータを参考にしない医者はあなたにとって適切でないかもしれません。ただし、忙しくても外来時にはあなたの血圧の動向がひと目でわかるように、まとめて、表にしておくようにしましょう。血圧測定は毎日決まった時刻に、1日2~3度測れば理想的です。

第3条 年齢にかかわらず最高血圧が150以上最低血圧が90以上の時は要注意です

よく年齢+90が適正血庄と言われます。ある種の統計ではそのとおりかもしれません。しかし、最高(収縮期)血圧150、最低(拡張期)血圧90を正常上限のメドにしてください。しばしばこれをオーバーするようなら医師に相談しましょう。

第4条 やっぱり塩分制限が基本ですが

血圧が高いと言われたら、やはり、塩分摂取をひかえるのが基本です。しかし、その他、カルシウムやマグネシウムを積極的に摂取することも血圧を下げるのには効果的ですし、継続的な軽い運動、肥満の人にとっては減量もかなり有効です。薬を飲むのはその後のことです。

第5条 血圧の薬を飲みはじめると、一生続けないといけないからと心配ですが

このことを理由に薬を服用するのを嫌がる人が多いようです。前記の生活上の注意が守られているのに、まだ血圧が高い人は降圧剤の対象となります。
 高血圧の患者さんのほとんどは、長年かけて血圧が上昇してきています。いわば、血圧の高い状態に慣れっこになっています。薬の作用で適正な血圧にコントロールすると、身体はその快適な状態に慣れるようになります。ところが、薬を中断すると、急に元通りのように血圧が上昇します。今度は、急激に血圧が上昇するために身体の適応力がついてゆかずに症状がでてくることが多いのです。高血圧は慢性の病気なので、主治医の指示に従って気長に治療することが大切です。


糖尿病

第1条 遺伝的要素は大きいですが、引き金になるのは、過食、過飲、肥満、運動不足です

糖尿病は遺伝する傾向にあることはどうやら事実です。これをピストルに例えれば、親が糖尿病であることは遺伝因子を持っている可能性が高く、実弾がこめられている状態ということです。でも、ピストルは引き金を引かなければ弾は発射されません。この引き金(トリガー)にあたるのが、『食べすぎ』『太りすぎ』『運動不足』なのです。たとえ遺伝傾向があっても、引き金を引かない生活習慣をつければ糖尿病から逃れられるか、かすり傷ですむのです。

第2条 診断のためには“糖負荷テスト”を、コントロールの指標には“へモグロビンA1C”を調べます

糖尿病であるか、またその予備軍であるかは、一般的には経口的にブドウ糖を摂取したあとの血糖の上昇パターンを計測して判断します。糖尿病の診断確定後は、約1ヶ月間の血糖の平均値を反映すると言われる“血液中ヘモグロビンA1C(HbA1C)”という値を参考にしてコントロールしてゆきます。その他フルクトサミンや1、5AGという検査値なども大切です。糖尿病の診断をすでに受けた方は、ヘモグロビンA1Cの値を参考にして日頃の管理をしてください。ちなみに正常値は約4~6%です。

第3条 糖尿病の3大兵器は、神経障害、腎障害、眼底障害です

神経障害に陥ると、手足の感覚が鈍くなったり、膀胱障害がでてきたりします。早期発見のために、お医者さんは音叉を使って振動覚の検査をしたり、手足の反射をみます。腎障害は、時には命とりになります。早期発見のために、尿中の蛋白(アルプミン)の存在をチェックすることが大切です。
眼底障害は催涙弾のごとく、我々の視力を奪います。定期的な眼底検査により初期の段階でくいとめられます。レーザーによる光凝固療法の普及で、昔は失明していたのが、ずいぶんと助かるようになりました。

第4条 対“糖尿病”防衛手段は、運動、食事、薬物です

糖尿病対策の第一歩は、引きかけた引き金(過食、肥満、運動不足)を戻すことから始めます。
 それぞれの生活の活動状況にあった一日摂取カロリーを決定し、適切な体重を維持するように無理のない運動の計画をたてます。それでもコントロールができない時に、初めて経口薬やインシュリンの助けを借ります。いずれも専門医の助けを借りながら行います。

第5条 “糖尿病”撲滅のための参謀は身近な主治医

糖尿病のコントロールには、自分自身の強い精神力と正確な医学知識が必要です。いつでも気軽に、しかも親身に相談にのってくれ信頼できる主治医があなたの参謀です。あなたの顔も覚えていないようでは、参謀役は務まりません。一生付き合えるような主治医を探すことがあなたの運命を左右します。高血圧と共にサイレントキラー軍団の将軍糖尿病制覇のためには、日頃の地味な努力が大切なのです。

    

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