温故知新⑥ メディカルルネッサンス

 

1997.3~1998.3

温故知新⑥

メディカルルネッサンス

ばんぶう

1997.8

日本医療企画


私は、「主侍医」制度というものを普及しようとしている。
複雑、細分化した近代医療のあり方を考えると、供給側にとっても、受ける側にとってもより単純・統合化したシステムが必要と考えている。科学としての医療を考えると専門化や細分化はやむを得ないのは事実であろう。当然、そこでは人間性が薄れてきている。医療を受ける側の人間にとっては、人間性を医療に求めたいとは思っている。その反面、科学としての医療の信頼性を考えて、より専門化したものを求めているのである。
「医者は不親切だ」とか「医者には人間性が乏しい」などと言われる一方、「あの医者は商売人みたいに愛想が良くて頼りない」などと言われる場合もある。一見矛盾した要求を求められているからこうなるのである。
 私は、今後の医療の方向性として専門分化と共に、それらを統合していく専門家も必要だと考えている。その役割を果たすのが他ならぬ「主侍医」なのである。
 医療のような幅の広い分野で、総合的な知識や技術を習得するのは大変なエネルギーを要する。頭脳明晰で情熱的な医師にこそ主侍医への参加を期待している。それにつけても顧問専門医としての主侍医の役割は「問診」である。患者さんの話をじっくり聞くことが結局は診断や治療方針決定への早道なのである。MRIなどより手間がかかり、より多くの情報が得られる「問診」のプロの問診にたいする報酬制度の確立が主侍医制度成功の鍵を握ると考えている。
 医療の基本の問診を考え直す意味でも、私の活動をメディカルルネッサンスと呼んでいる。このシステムこそが、医療の中に科学性と人間性を共存させる唯一の方法ではないかと考えている。

    

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