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温故知新⑪ ルソーのエミール
1997.3~1998.3 温故知新⑪ ルソーのエミール |
ばんぶう 1998.1 日本医療企画 |
何回か前のこのコラムで「子供の消費文化」と題して、消費の有力対象が子供たちに向けられていることについて警告めいたことを書いた。つい最近、新幹線の中のウエッジという経済誌の中で、「本来お金を稼がない子供たちにたいし、格好の消費の対象として、有名ブランドの服や時計や靴などを煽動するように売ろうとするのは、目先の利益のみを追求する意味では成功するかもしれないが、子供の正常な精神的成長を妨げ、本来消費をするべき大人たちの財布の紐を必要以上に引き締めることになり景気の停滞を助長する」という様な内容の記事が載っていた。全く同感である。その記事の中で、中、高生の援助交際や窃盗などもこういったことが遠因であろうと述べている。
また、最近町中でよく見かけるように、若者が携帯電話やポケベルを駆使している。一見、コミュニケーションツールとして人間関係を豊かにしているように見受けられるが、実はその正反対である。デートしているふたりのあいだに第三者の電話コールがはいり、彼氏を連れながら横の女の子は別の人(第2の彼氏かどうかは不明だが)と楽しそうに話している。隣の彼は手持ちぶさた。また、プリクラなるものも流行っていて、初めて町中で会った人たちで一緒に撮ってお互いそれを集めるらしい。何千枚も持っている子供もいるらしい。最近読んだ新聞記事でも「心の隙間を、友人の数で埋める」という見出しがあったが、これまた言い得て妙なり。ひと事かと思えば我が息子もプリクラコレクターの一人らしい。しかし、「俺は友達多いが、心の底まで話できる友人ってすくないなあ」とこぼしている。携帯にしろプリクラにしろ、人間関係を豊かにするツールであろうかと疑問に思う。 有名なルソーの「エミール」のなかに「どうしようもない馬鹿な子供を作るのは簡単である。欲しがるものをすべて与えればよい」と書いてある。偉い人は昔から気付いていたのである。今でも遅くない。子供たちのためにも子供たちに余計なものを買い与えず、無用なものは取り上げるべし。