正しい生き方から美しい生き方へ② 性善説は時代錯誤か

 

1998.4~1999.4

正しい生き方から美しい生き方へ②
性善説は時代錯誤か

ばんぶう

1998.6

日本医療企画


物騒な世の中になった。ずいぶん前までは拳銃事件はアメリカの独占市場だと思っていたし、つい最近まで日本でも特殊な世界での事件だと思っていた。ところが気付かないうちに「拳銃事件」が毎日のように新聞の片隅に載っていることが当たり前のようになってしまった。
 僕は、ずいぶん以前から「エイズにしろ麻薬にしろ拳銃問題にしろ、彼岸の火事だと思っていたら大やけどをする」と、いろいろな機会をみつけては警告していた。僕自身、具体的に行動できるのはエイズの抗体検査の勧めと、自分の子供たちや身近な子供たちへ麻薬や暴力の怖さを教えるくらいだが、こういった小さい力が必要なんではないだろうか。しつこいようだが物騒で世知辛い世の中になったとつくづく思う。世間が一体となって「中学生は怖い」と言っている。
 本当に人間の心が変化して冷たくて残虐な人間が増えてきたのだろうか。僕は性善説で周りでは有名なのだが、ある友人に「性善説の人にとっては住み難い世の中になってきましたね」と先日言われた。動物の本性から考えると「快を求め、不快を避ける」「食べるために努力する」「自分を守るためには相手を攻撃する」などは当然、人間も持ち合わせている。しかし、人間にはその他に独特な大脳の働きがある。自分は空腹でも子供たちに食べさせるだけで満足を得たり、修業と称して不快なことに立ち向かったりするし、時には自殺もするといった不可解さを持っている。
 「正しさ」の価値観から「美しさ」の価値観へ移行することは、21世紀を豊かに生きていくためのスーパー人間への道なのかもしれない。

    

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