正しい生き方から美しい生き方へ③ 孔孟思想から老荘思想 その1

 

1998.4~1999.4

正しい生き方から美しい生き方へ③
孔孟思想から老荘思想 その1

ばんぶう

1998.7

日本医療企画


正しい生き方から、美しい生き方へのパラダイムシフトをテーマにエッセイを書いている。別に「正しい」ことが悪いといっているわけではない。むしろ正しいことは当たり前なのである。価値判断を「正しいかどうか」というよりも「美しいかどうか」という基準に置き換えていくことが、これからの成熟社会には必要ではないかと提案しているのである。これは、言い換えれば、これからは物事の判断は自分で行うことが最も大切だと言うことである。
 今までは、会社の方針だからとか、学校の先生がどうだとかを最優先にすることに身を委ねすぎて、自分で判断するという能力を欠如する人間が増えてきているような気がする。
 ある時、若者と年輩者のテレビ討論で、若者代表の一人が「僕って幸せなのでしょうか?」とまじめに聞いていた光景が印象に残っている。大人たちも同じである。「会社のため、家族のためと一生懸命働いてきましたが、自分の人生ってなんだったのでしょう」よく似た話ではありませんか。こんなことを考えていると、昔、国語の授業で習った「孔孟思想と老荘思想」ということを思い出した。孔孟思想は「義を見てせざるは勇なきなり」で代表されるように、上昇志向の自己実現探求型である。老荘思想は「主となるより客となれ」で個人主義的自己癒し型である。私の言う正しい生き方は、これすなはち孔孟思想であり、美しい生き方は老荘思想であるといっても的外れではない。
 次回に、このことについて掘り下げてみたい。

    

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