正しい生き方から美しい生き方へ⑧ 「便利」と「手間ひま」

 

1998.4~1999.4

正しい生き方から美しい生き方へ⑧ 

「便利」と「手間ひま」

ばんぶう

1999.1

日本医療企画


先日、住宅関連の企業に勤める人たちを対象にセミナーの講師を務めた。
その時、同時に講師をされた東京医科歯科大学教授の藤田紘一郎先生は「清潔は病気」と寄生虫の人体への役割を説かれていることで有名である。藤田先生は、「清潔第一的考えは、人間の本来の抵抗力を阻害し、神様が与えてくれた我々の能力を阻害するものである」といった内容のお話をされた。私の医療哲学との共通点に深く共鳴したのであるが、私は自分の講演内容で「便利の追求は、我々人間の情緒を阻害する。住宅の便利な機能はたいへんありがたいが、どこかに不便なところを作って、味わいのある家造りをすることが、これからむしろ望まれるのではないだろうか」「超便利な住宅は正しい家かもしれないが、多少の不便というか原始的な部分があったほうが、美しい家といえるのではないだろうか」という話をした。
 炊事洗濯など家事にとって、最新の電化製品は便利で、時間の効率化にもなり、そういったことのおかげで余暇が生まれ、主婦にとって趣味などにも時間を割くことができるようになったことは、たいへん良いことである。
そうはいうものの、電子レンジで「チン」のレトルトよりも、手間暇かけてじっくり煮込んだ料理の方がおいしいし、作り手の愛情がジワッと感じられて心地よいものである。
 藤田先生はなにも「不潔」にしなさいといっているのではなく「清潔、無菌一辺倒では不自然ですよ」と警告されているのである。私も「便利一辺倒ではなく、時には手間暇かけることが大切」と言っているのである。これは特に人間関係に於いてもそうである。

    

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