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質実剛健③ 新個人主義の勧め
1999.5~2000.4 質実剛健③ 新個人主義の勧め |
ばんぶう 1999.7 日本医療企画 |
前回お約束したBBQ-METHODの話。
先日、中学生の我が次男とテニス部の仲間数人を連れて山の家にテニス合宿に行ったときの話である。夜はベランダでのバーベキュー(BBQ)となった。私ら夫婦とは初対面の子達もいて遠慮気味だから一人一人取ってあげないとだめかなと思っていた。心配ご無用である。さすが中学生の男の子達。焼き上がる前にすごい勢いでお箸がのびてくる。今度はこれは奪い合いの喧嘩になるかと心配した。ところが「これは俺が食べるつもり」「じゃあこれは僕が予約」「ホタテほしい人、手を挙げて」「はいっ、はいっ」「じゃあジャンケンで順番を」と自己主張はするが、ずるをするものもいないし、他人の権利を素直に受け入れて実にスムーズ。ついには「僕たちばかりじゃ悪いから、おじさん達の分も確保しなければ。俺らは休憩。」という気遣いまで生まれる。この自己主張と他人の権利の尊重のバランスに不自然さはなくむしろ美しさまで感じる次第。
我々大人だったら、さすがにバーベキューでは奪い合いはなく「どうぞ、どうぞお先に」と不自然な譲り合いがみられるのが普通。ところが日常の人間関係では、正々堂々とした自己主張は出来ず、むしろ「我がままや自己中心、利己主義」という名の下に自己主張を非難する一方、隠れて他人の足を引っ張ることが多い。他人の権利を尊重したり、他人の幸せを素直に喜んであげることが出来ない。自分の意見や希望をきちんと主張し、その2倍他人の意見もよく聞き尊重することが本来の個人主義である。
利己主義とは似て非なるものである。新都知事の石原氏の言葉を一部借りれば「イエス・ノーをはっきり言える」ことこそ美しい質実剛健の精神であろう。「ノーと言わない振りした腹黒利己主義」野郎を駆逐することこそ住み良い日本を作るには不可欠である。夏目漱石ならぬ、BBQが示唆してくれた新個人主義の勧めである。