質実剛健④  質と量

 

1999.5~2000.4

質実剛健④  質と量

ばんぶう

1999.8

日本医療企画


品質と数量といえば「quality & quantity」と英語の授業を思い出す。モノの良し悪しを判断するときに尺度となる2大要素である。
それらは、多くの場合、逆相関する。食べ物をとって考えてみよう。高級フランス料理の前菜分の価格で牛丼を何倍食べられるか。では、価値判断として高級フランス料理が牛丼を凌駕していると結論付けできるであろうか。否である。とにかくおなかがすいているものにとっては、2杯の牛丼の方が価値が高いであろうし、小食のひとが少し贅沢をしたいと思っているときは、年代物のワインにオードブルというほうが価値が高い。質と量どちらが大切か、一概には言えない例である。
 別の観点になるが、高質=高価で、多量=安価という見方をしてしまうと、高価なモノはバブル的であり、金持ちを連想し、情愛がこもっていない感があり、逆に、安価なモノは、庶民的な印象があり、情愛がこもっているように感じる。
ところが、人間関係を代表とする、ソフト(心)に関することとなると事態が違ってくる(筈である)。今でも、若者達の間で流行っているのかどうか知らないが、「プリクラ」現象などは象徴的である。何でも話が出来る親友を持てない代わりに、プリクラ友達をコレクションすることで、寂しい心を紛らわす。
携帯電話やピッチもそうである。じっくり親友と時を過ごすのではなく、例えデート中でも他の誰からか電話がかかってきて「○○ちゃん?今どうしてる?平気、平気、大丈夫!」と目の前の彼氏を無視して誰かさんと話し出す。何が大丈夫なのか!こういった文化はおよそ質実剛健とはほど遠いものである。
かくいう私も毎年2000枚程度の年賀状を出したりもらったりしている。手書きできないほどの数の年賀状を出す意味があるのかつくづく考え直しているところである。「使い捨てではなく、良いものを何度も使う」ことが質実剛健のポイントであり、人間関係もそんなところが大切と思う今日この頃である。

    

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