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質実剛健⑫ 「君たちはすでに英雄だ」
1999.5~2000.4 質実剛健⑫ 「君たちはすでに英雄だ」 |
ばんぶう 2000.4 日本医療企画 |
私の仲間には、妻を筆頭に映画好きが多い。
つい最近、ホームシアターなる設備を我が家に導入した。週末になると、仲間がそれぞれ、好きな映画のビデオと食べ物を持ち寄り、我が家では安物ワインを用意する。一緒に映画をみて、そのあと映画談議にふけるのである。贅沢なようだが、映画館へ行って、レストランへ立ち寄り、お茶をすることを考えると、一人あたりの出費は格段に少なくすむ。これも考えようにより質実剛健だと(多少は弁解気味に)思っている。話はそれてしまったが、映画好きな人にとって、今回のタイトルのセリフはどの映画のどこで出てくるかをすぐさま思いつくかもしれない。でも、念のため正解を言っておこう。「アルマゲドン」という最近のヒット作の中のセリフである。
地球に巨大な隕石が降ってくることが分かり、その隕石を爆破に行く勇気ある人々がNASAを飛び立とうとしている時に、NASAの代表が、「君たちはすでに英雄だ」と誇らしげにアナウンスするのである。このセリフがいいねと話題になったのである。英語でも“You are already heroes”となんの変哲もないのだが。その勇気ある人々が、本当に隕石の爆破をなしえるかどうかは「英雄」と呼ばれるのに関係ない、という単純なことである。
しかし、最近、実際に新聞やテレビを見ていても、また、身の回りを見回しても、このような「英雄」はおろか「英雄的」行為さえも見ることがない。これは、英雄的行為をしたいと思う心が誰にも無くなったのではなく、英雄的行為を受け入れない現代社会の歪に起因しているのではないだろうか。どこかのCMのようであるが、つくづく「モノより思い」と痛感するこの頃である。