雑穀健康法

 

生島ヒロシの健康いちばん 連載ー7

薬に頼らない体をつくる 雑穀健康法

安 心

2000.4

マキノ出版


養生シートで食生活をチェック

健康への関心が高まっていますが、薬やお医者さん任せになっている人も多いのではないでしょうか。今回は「健康は自分で守る」を持論に、積極的に食事指導を行い、生活習慣病の予防に努めている、寺下謙三クリニック院長の寺下謙三先生にお話をうかがいました。

生島
先生は予防医学にカを入れているそうですね。
寺下
はい。日本では自然治癒を促すような学問は遅れているのが現状です。そして体全体を総合して診るような医学もまだまだ未成熟です。そこで私は、患者さんを病気になる前からトータル的に診るクリニックを作ろうと考えました。いまは、健康なときから契約を結び、主治医とクライアントという対等な関係で、個人の体を総合的に診ていくという形で診療を行っています。
生島
ということは、病気になったときだけじゃなく、健康なときから病気にならないためのアドバイスが受けられるというわけですね。
寺下
体が突然にこわれないように、クライアントつまり患者さんの健康管理には、常日ごろから気を配っています。そしていかに薬を使わないで、治すか、クリニックから帰すか、ということを念頭に置いています。できるだけ自然に、その人の自己治癒カを生かして治していきたいですからね。
生島
私たち患者も、できるだけ薬に頼らずに治したいというのが本音です。どんなにいい薬でも副作用は必ずありますし。
寺下
本当に必要なときは薬を飲んだり、手術をしなければなりません。そうならないためには、やはり日ごろから予防していくことが大切です。日本は治療ばかり重視してきたから、医療費も上がるんですね。
生島
でも日ごろから病気にならないように自己管理していくって、口でいうのは簡単だけど、実際にはなかなかむずかしいですよね。
寺下
予防といっても「食事に気をつけなさい」 「運動をしなさい」 とただいうだけでは、あまりにも漠然としすぎていて、実際にどうすればいいか、患者さんにはわかりにくいと思います。ですから私のクリニックでは、まず具体的に食べた物をチェックする『養生シート』を作っています。これだとアルコールや間食の量が一目瞭然でわかります。アルコール依存症の患者さんに、最も効果が出ていますね。それにこれは、患者さんと私がコミュニケーションをとるための道具にもなるので、とても重宝しています。
生島
これはいいですね。漠然と食生活に気をつけようと思っていてもけっきょくは続かないんですよ、中途半端になって。このようにきちんとチェックできて、かつそれにアドバイスがもらえるのはすごく役立ちますね。僕にも一枚ください!
寺下
ええ。これは自己管理に役立ちますよ。食生活を変えるだけで、本当に多くの病気が防げるし改善できるんです。それにお金もかからない (笑)。私のクリニックでは、このような食事指導が重要な柱の一つなんです。
生島
僕は一時期、尿酸値が高くなってしまって、それから食生活に気を配るようになりました。そうしたらいまはずいぶん数値が下がりました。やはり、日ごろの食生活って大きいですね。
寺下
生活習慣病の九割は、食生活が影響しているといわれています。現代人の食事は欧米化して、脂肪が多く食物繊維の少ない食生活にかたよっています。これでは、肥満や糖尿病などの生活習慣病がふえるのも当然です。ごはんにみそ汁を基本とする、日本本来の和食が理想なんですけど。
生島
子供たちの食生活も心配ですね。いまはコンビニやファーストフードで食べ物が手軽に買えるし、レトルト食品やインスタント食品もあふれ、子供たちはお袋の味ならぬ″袋の味″で育ってますからね。
寺下
生島さんのいうとおりですね。うまくバランスのとれていた日本の食生活が、戦後急速に脂肪分の多いかたよった食生活に変化してしまいました。このままだと、日本人は体の根本からおかしくなるんじゃないかと心配しています。
生島
お年寄りは比較的元気な人が多いのに、若者は目もうつろで、活気のない人が多いような気がします。これも食生活に関係があるんじゃないかと思うのですが。
寺下
そうですね。いまのお年寄りは、長年にわたって栄養バランスのとれた和食を食べているから、丈夫で長生きなんです。でも、若い人たちは、これほど長生きできるか心配ですね。中高年の病気は若いころの食生活が大きく影響しますから。
 それと最近は、いつでもどこでも食べ物が手に入るため、「おなかがすく」という感覚がよくわからない子も多いような気がします。「おなかがすく」という感覚や経験も、体にはとても重要なことなんですよ。
生島
食生活はすぐにでも改善していくべきですね。

十穀ごはんはまさに完全食

生島
先生はそんな現代人の栄養不足を危惧して 「十穀ごはん」を作ったそうですね。
寺下
現代人は忙しくて、なかなかバランスのとれた食事がとれないのが現状です。また一度に必要な栄養素がとれる完全食というのもない。そこで十穀米を考案したんです。
生島
十穀米とは具体的にどんなものなんですか?
寺下
米以外の、キビやアワなどの十種類の穀類を普通の白米にまぜて炊いたごはんです。十種類の穀類には、食物繊維やカルシウムなど現代人に不足しがちな栄養素をとれるように、カラス麦、ハトムギ、キビ、ソバ、米胚芽などの穀類と、黒ゴマ、エゴマ、ケシの実、アマランサスなどの種子、それにカルシウムの吸収を促すビタミンDの豊富な白キクラゲを配合しています。
白米2合あたり約15gの雑穀を加えてまぜ、あとは普通に炊くだけで出来上がります。これに納豆や豆腐、みそなどといった大豆食品をあわせてとれば、栄養のバランスも完璧ですね。私はごはんを中心とした和食を見直すと同時に、十穀ごはんを食べることをすすめています。
生島
生活習慣病に悩む人には効果的な食材ですね。
寺下
コレステロールや中性脂肪の多い人にはとくにおすすめです。体重もじわじわへってきます。免疫力が高まるので、病気になりにくい体になるというわけです。
生島
これだけいい食事をとったら、病気のほうから逃げていきますね (笑)。
寺下
白米になれている人は最初、味になじめないかもしれません。その場合は、カレーをかけるとおいしいですよ。

新しい「心理医学」の手法も取り入れる

生島
先生は実際にどういう食養生を行っているのですか?
寺下
私は元来、好ききらいが多く、糖尿病の家系なんです。好き放題に食べていたら後々糖尿病になるのは目に見えているので、毎日体重計にのることにしています。
 これは心理医学なのですが、こうすると体重に気をつけなければならないと脳が覚えて、脳から食欲を抑える信号が発せられるようになるんです。また何を食べたか手帳に必ず記入します。それで自己管理をしていくんです。もちろん毎日1食は十穀ごはんを食べています。
生島
厳格ですね。
寺下
そうでもないですよ。焼肉が好きなので、月1回とか回数を決めて行っていますし。好きなものをゼロにするのはよくないですね。かえってストレスがたまってしまいますから。
生島
先ほど先生は「心理医学」という言葉を使いましたが、これはどういうものなんですか?
寺下
精神科でも心療内科でもない新しい領域で、簡単にいうと、心が体に及ぼす影響を研究する学問といいますか。心の持ち方は体にとても大きな影響を及ぼすんですよ。「こういう、いいものを食べているんだ」「これだけ、体に気を配っているんだ」と意識をするだけでも、体にはいい影響を与えるんです。
生島
僕もいろんな健康法を試しているから、それが脳にインプットされて、知らず知らずに「これだけしているんだ」 という自信になって健康でいられるのかもしれないな。
寺下
そうですね。健康にいいということを試すだけで体にいい影響を与えているんです。
生島
ようし、これからもどんどんいろんな健康法を試していくぞ!
 今日はいろんな話が聞けて、とてもためになりました。「健康は自分で守る」  けっきょくはこれにつきますね。
 どうもありがとうございました。
    

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