むくみは不調のサイン

むくみは不調のサイン

むくみ

メイプル

2000.9

集英社 発行


第1回目である今回は、特に女性に多く見られむくみについてお話しましょう

そもそも「むくみ」というのは、医学的には“浮腫”といい、体内の細胞の間の組織が通常よりも沢山の水を含んでいる状態です。自分でチェックするには、むこうずね、つまり、すねの前面の内側(脛骨けいこつと腓骨ひこつが接近するところ)を指で押してみて、指のあとがへこんで残るようなら、むくみです。

はれぼったく、水ぶくれのように感じるむくみの中身は、水なのです。身体は沢山の水を含んでいます。体重の約2/3は水が占めている程。その水の多くは細胞の中にありますが、血液にも含まれ、細胞と細胞の間のクッションとなる組織にも組織液として含まれています。

これらの水は身体の調整機構によって、それぞれ一定に保たれています。ところが、何かの病気で血管の圧が非常に高くなったり、血液成分が変化して浸透圧が低くなったり、血管が痛んで弱くなったりすると、血管から水分が漏れ出て組織液が異常に増えることがあります。

それが、むくみという症状として現れるのです。

しかし、むくみのすべてが病気から起こるというわけではありません。例えば、一日中立ち仕事をしていたり長時間同じ姿勢を続けていたりして、足がむくむのは、健康な人でもよく起こること。これは重力によって水がしたの方へと集まったため。

つまり、身体の中で組織液の分布が変わっただけで、組織液が増えたわけではありません。時間がたてば自然に治る、心配の無いむくみです。

それでは、悪いむくみとはどのようなものでしょうか。
一つの目安になるのは、体重の増加を伴なったむくみ‥‥異常に組織液が増えるとその分体重が増えるのです。
他の症状がある時や、立ち仕事など、むくみの原因に心当たりが無いのに、いつもむくんでいるという場合‥‥内分泌、腎臓、心臓、肝臓などの病気が隠れている可能性があります。


むくみセルフチェック
むくみの場所 特に気になるむくみ 他の症状 考えられる主な病気
特に目の回り 体重増加 皮膚の乾燥 疲労感 寒気等 慢性甲状腺炎
特にまぶた 風邪の症状の2~3週間後にむくみが出た 急性糸球体腎炎
まぶた 顔 頭部   上大静脈症候群
顔と下半身 まぶた 足のすね 尿の量が減った ネフローゼ症候群
下半身   腹が張っている 食欲不振 倦怠感 肝硬変
  足の圧迫感 痛み 静脈瘤 血栓性静脈炎
下半身を中心に全身   息切れ 動悸 疲労感 食欲不振など 貧血
うっ血性心不全
月経前の周期的なむくみ   月経前浮腫
    特発性浮腫

「悪いむくみ」の場合、心配な病気が幾つか考えられます。どんな時に、どんな病気の恐れがあるのかきちんと知って、気になる時は必ず早めに病院で受診するようにして下さい。


慢性甲状腺炎

30~50代の女性に多い甲状腺機能低下

顔のむくみ、特に目の回りのむくみがある時に心配なのは、慢性甲状腺炎が重くなり、甲状腺機能低下症を起こしている場合です。慢性甲状腺炎は「橋本病」呼ばれる内分泌の病気で、女性に多く、特に30~50代での発症が目立ちます。本来、健康を守る働きである免疫が自分の身体に対して働いてしまう、自己免疫が原因で起こると考えられています。
 この病気は軽いうちはのどの甲状腺が少しはれているという程度で他の症状は無く、甲状腺の機能にも異常はありません。
ところが、病気が進行すると、甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンの分泌が不足することがあるのです。
 甲状腺ホルモンは体内で色々な物質の代謝を促進する、いわば元気の素ともいえるホルモンです。その甲状腺ホルモンが不足するために代謝が落ち、むくみや体重増加が起こったり、疲れやすい、寒気を感じる、皮膚が乾燥する、便秘、食欲の低下といった様々な症状が現れます。また、むくみは顔に目立ちますが、全身に及び、押してもへこまない張りのあるむくみであることもこの病気の特徴です。
 慢性甲状腺炎をはじめとした甲状腺機能低下症で甲状腺ホルモンが不足している時は、ホルモンを補充する治療を受ける必要があります。血液中のコレステロールが高くなるので検診で発見されることもありますが、気になる症状があるときは早めに受診しましょう。


急性糸球体腎炎

早期発見が慢性化の防止

むくみというと、腎臓病を連想する方が多いでしょう。実際、身体の老廃物を排泄する、体内の水分や、塩分のバランスを一定に保つ、血圧を調整するホルモンを分泌するまどの腎臓の機能が落ちると、むくみやその他の症状が現れます。
 しかし、慢性化した腎臓病で症状が現れるのは、病気がかなり進行した時。慢性化させる前に、検診を受けたり、急性の腎臓病である急性糸球体腎炎を見逃さず、早期に発見したいものです。
 急性糸球体腎炎(急性腎炎)の殆どは、扁桃腺や咽頭炎にかかってから、2、3週間後に起こります。顔のむくみや尿の量が減る、血尿などの症状が現れ、高血圧や尿タンパクが検査で解かります。
 腎炎が起こるきっかけは、溶連菌をはじめとした細菌やウイルスの感染。返答炎や咽頭炎がおこっている間に、複雑な免疫現象がゆっくりと進行し、やがて、腎炎が発症するわけです。
 小学校低学年から思春期の子供に多い病気ですが、大人に起こることも少なくありません。早期に発見して慢性化させないことが、肝心なので、風邪の症状の後にむくみが出た時には、すぐに、受診をしましょう。腎炎と解かった場合は、安静と食事療法を中心とした治療を受けることになります。


上大静脈症候群

心臓から上のむくみや血管のはれに注意

上大静脈という血管が、何らかの原因で狭くなったり詰まったりした時に起こります。心臓から上の両腕や首、頭部を流れた血液は静脈を通って上大静脈へと集まり、心臓へ戻っていきます。この上大静脈のトラブルで血液の流れが滞ると、両腕や首、頭、顔面にむくみが出たり、はれや充血が起こり、重症になると呼吸困難やめまい、失神発作を起こすこともあります。
 原因となるのは上大静脈の炎症や、肺か胸いずれかの腫瘍や炎症など。悪性腫瘍という可能性もあるので、胸から上のひどいむくみや静脈のはれ、ふくれに気づいた時は、ただちに受診しましょう。


ネフローゼ症候群

強いむくみが特徴

血液中のタンパクが尿に大量に漏れ出てしまう病気です。原因は違っていても一群の同じ症状が起こってくるものを症候群といいますが、ネフローゼ症候群の場合も原因は様々。どのような原因であれ、1日に3,5g以上のタンパクが尿に出てしまう場合をネフローゼ症候群といいます。
 自覚症状は強いむくみ。最初は顔、特にまぶたがむくみ、やがて足もむくんで、すねを指で押すとへこむようになります。尿の量が減り、さらに重症になると身体中がむくみ、胸や腹に水がたまって呼吸が苦しくなり、食欲も落ちてきます。検査をすると、尿タンパクが陽性となり、血中コレステロールが高くなっていることが解かります。タンパクが尿に出てしまうために血液中のタンパクが極端に少なくなり、浸透圧によって血液中の水が漏れ出てしまいむくみが起こっているのです。
 子供に多く、子供の場合には治りやすい病k見なのですが、大人の場合は少々厄介です。慢性腎炎や、膠原病、糖尿病などが原因となっていることが多く、安静と食事療法、薬物療法などでの長期の治療が必要となります。


肝硬変

ウイルス性C型肝炎が進行していることも

肝硬変はアルコール性肝炎から、というイメージがありますが、実は日本人はウイルス性のC型肝炎による肝硬変が多いのです。C型肝炎は他の肝炎に比べて症状が軽いため、気付かないまま慢性化し、肝硬変へと進む頃に、むくみをはじめとした症状で発見されることも。肝臓が悪くなると血液中のタンパクが減り、水分が漏れてむくみが出ることがあるのです。
 むくみ、腹水による腹の張り、食欲不振、倦怠感などの症状があるときには、すぐに肝臓の検査を受けましょう。又、C型肝炎は血液を介したウイルス感染でおこるので、かつて輸血を受けたことがある人も検診を。慢性肝炎、肝硬変では安静と食事療法、薬物療法、場合によっては、インターフェロンでの治療を受けることになります。


血栓性静脈炎

足の静脈血がつまる

足の静脈は圧迫を受けやすいため、血液が滞ったり詰まったりしやすく、血栓性静脈炎を起こしがちな部位。多くの場合は手術の後がケガ、他の病気で病床にあるときなどに起こりますが、肥満の人や脱水を起こしている時、あるいは、長時間の旅行などで座り続けている時にも起こることがあります。
 むくみと同時に圧迫感や痛みがあったり、血液の詰まった場所から静脈瘤ができることも。また、静脈炎が重くなると、足全体がはれて痛み、歩けなくなる場合もあります。
 軽い時には患部を冷やしたり消炎剤などで、重い時は血栓を溶かす薬などを使って治療を受けることになります。


貧血

重症になると、むくみが出る

貧血というと、だるさや動悸、息切れといった症状を思い浮かべます。しかし、例えば月経の出血量が多かったりしてじわじわと鉄欠乏性貧血が進行し、気づかないままでいると、かなり重症の貧血となり、むくみが現れることがあります。心臓に負担がかかるために、下半身などの静脈の血液が滞り、むくみが出てしまうのです。
 貧血にも色々な種類がありますが、女性に圧倒的に多いのは鉄欠乏性貧血。鉄剤の服用などで、治すことができますから、心配なときは病院で受診しましょう。


うっ血性心不全

心臓病、高血圧の人、要注意

全身のすみずみに血液を送るポンプの働きをしている心臓が弱り、ポンプ機能が低下した状態が心不全です。心不全の症状は、動脈に血液を送り出す左心室か、静脈からの血液が戻ってくる右心室か、いずれの機能が低下しているかによって異なります。左心不全の場合は気管支ぜんそくに似た症状が現れますが、右心不全の初期の症状はむくみ。うっけつ性右心不全になると右心室の収縮力が弱まり、血液を吸い上げる血からが弱くなって、静脈の血液が滞り、むくみが出たり、肝臓がはれたりといった症状が出るのです。足に始まるむくみで初期の右心不全が発見されることも少なくありません。
 原因は心筋梗塞や狭心症、弁膜症、高血圧などの心臓にかかわる病気。原因となる病気を持っていたり、そうでなくても、下半身を中心としたむくみが頻繁で、心不全が心配という人は、循環器内科で相談し、医師の指示に従った日常生活を心がけ、心不全を予防しましょう。症状がすでに出ている場合には、状態に合わせて心臓の収縮力を増加させる薬や利尿剤での治療を受けることになります。


月経前浮腫

PMSの一症状

月経の前に起こり、月経が始まると治まるむくみが周期的に繰り返される時は、<PMS(月経前症候群)の一症状としてむくみが起こっている月経前浮腫なのです。
 PMSがなぜ起こるのか、はっきり解かっていませんが、排卵後のホルモンの変化から、引き起こされる体内水分貯留が先ずあって、その上に様々な症状が起こるのだろうと考えられています。月経前浮腫や体重増加、乳房の張り、頭痛、便秘、肌荒れ、などはいずれも体内スイブbb貯留によって、起こる症状。さらにPMSでは、自律神経のアンバランスも生じ、イライラなどの精神症状を訴える人もいます。
 月経の始まる1週間から10日前くらいからは、水分貯留を防ぐために、水分・塩分の取りすぎを控え、充分な休養と睡眠を心がけることで症状を和らげることができます。しかし、様々な症状が重なってつらい場合は、婦人科で相談しましょう。症状に応じて利尿剤や、消炎鎮痛剤、精神安定剤、などの治療を受ける場合があります。


特発性浮腫

原因が不明なむくみ

特に病気は考えられず、原因がはっきりしないむくみを特発性浮腫といいます。むくみ以外の症状は無く、立ち仕事を長く続けた時などにむくむけれど、一晩休むと翌朝には治っている、という時などは、殆どがこの特発性浮腫だと思われます。
 水分や塩分を取り過ぎないようにし、一定の姿勢を長時間続けないようにするなどの注意をしましょう。頻繁に起こる時は、病院で相談してみましょう。利尿剤で治療することもあります。

 

 

    

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