常識に照らす① 加速から成熟へ

 

2001.5~2002.4

常識に照らす①

加速から成熟へ

ばんぶう

2001.5

日本医療企画


今世紀初年度のテーマを何にしようかと考えた末、私は、21世紀のキーワードを「熟成」とした。20世紀を一言で表すと「加速の世紀」と言えるのではないかと考えている。人類の歴史を振り返ってみても、これほど文明が加速度的に進化した時代は、他には見当たらないであろう。   
大体、人間のつくる文明とは、自然体でいけば次第に変化を加速していくものである。だから、このままいけば文明は今世紀も更に加速度的に進化していくであろう事は容易に想像できる。
しかし医療分野は、遺伝子解明や臓器移植、再生医学など究極的な段階にあることは誰もが理解できるはずである。IT革命と言われる分野も同じであろう。世界中どこにいても瞬時に情報を共有できるのであるから、これ以上の根本的進化は考えにくい。戦争兵器も、20世紀に地球を丸ごと壊すことが可能な核爆弾や細菌兵器を作り上げている。ある意味では、これ以上の兵器の開発は無意味である。   
このように20世紀は、いろいろな分野で加速度的に文明が進歩してきた。   このままのペースで21世紀を突っ走ると、その先には豊かな幸福社会が見えてくるだろうか。
 21世紀は、20世紀に人間が開発した文明の「熟成」の時期だと私は考えている。それが無事に22世紀を迎える唯一の秘訣だとも思っている。   そんな我々にとって、物事を思考し判断する時は「常識に照らし合わせて」行うことが、専門的知識や技術を駆使して考えるよりはるかに大切であり、大筋を見逃さない方法であると確信している。さまざまな場面で、この「常識に照らして」考えることにより、時にはその本質を専門家以上に理解することも可能である。
 次回から各論的に検証していきたい。 

    

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