常識に照らす⑫ 人間の常識

 

2001.5~2002.4

常識に照らす⑫

人間の常識

ばんぶう

2002.4

日本医療企画


「常識に照らす」のテーマの再終回になった。振り返ってみれば、常識のアラカルトのようなことを書き綴ってきたような気がする。これではまるで常識の多様性を主張しているようで、このまま終わってしまうと思うとなんだか落ち着かない。やはり最後はまとめないといけない。
 国が違っても、時代が変わっても通用するような人間の常識とは一体なにであろうか? 人間を動物の一種と拡大解釈すると、普遍的な常識は「食って寝ることを基本とする」になろう。 人間の場合も常識はずれに熱中することを「寝食を忘れる」というように、「食べて寝る」という行為は生きていく上での必要条件である。 自分や家族が食べられるように働き、心地よい睡眠をとるような生活を目指すことが常識的行動であり、文明社会の人間ならさらに、「他人の食や睡眠を妨害しない」という心がけが重要ではないだろうか。これを拡大解釈すれば、何となく「人間の常識」の普遍像が見えてくる。 嫌な人間に出会うと、我々は精神構造に影響が与えられ、まず睡眠障害がおこる。 そう考えると、日々楽しく食事ができて、気持ちよく眠れれば満足し、余裕があれば周囲の人たちもそうなるように協力するという単純な幸せの図式ができる。 人のものを盗んだり、人をだまし妬んだりすることが、この図式から外れることは自明である。  
 家族や同僚とのいざこざや友人の裏切りがあり、嫉妬の標的にされ、心を砕かれて私どものクリニックに相談にくる人が後を絶えない。「好きなことを、好きな人と」がストレスをためない快適な人生の鉄則と、私は口癖のように言っている。「何をしても満足できない人」と「何をしても満足してしまう人」、どちらが楽か明らかである。すくなくとも私の周りには後者の人が過半数になるようにと願っている。

    

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