21世紀は、「分析の医学」から「総合の医学」へ

Dr.寺下の“スペシャルトーク”

21世紀は、「分析の医学」から

「総合の医学」へ

…ゲスト…奥田拓道氏

自然派健康倶楽部

2002年秋号

「自然派健康倶楽部」編集室


…ゲスト…
奥田拓道氏

愛媛大学名誉教授・医学博士

1936年福岡県生まれ。
九州大学医学部卒業。
徳島大学医学部付属酵素研究施設酵素生理部助手、同助教授、愛媛大学医学部助教授を経て、1977年同学部医化学第二教室教授。
2001年3月定年退官。
本年4月より熊本県立大学環境共生学部教授。
愛媛大学名誉教授・医学博士。


21世紀は、「分析の医学」から「総合の医学」へ変わるでしょう。

寺下
現代医学とサプリメントの関わりについてどうお考えですか?
奥田
今までの医学、西洋医学と言ってもいいですが、常に「悪い所を除去する」という方向で進化してきました。これは外科的分野でも薬学的分野でも同じで、研究して悪い所を見つけだして除去する、すなわち「分析」の医学でした。
例えば抗ガン剤などは、ガン細胞を攻撃して消滅させるという発想のものですが、これによってガン細胞だけでなく宿主(人間)までも弱らせてしまう問題がある。これが副作用というものです。
 これからは、そういったことも踏まえて、もっと総合的見地から医学を考える時代だと思います。
分析して外部から排除するだけでなく、宿主本来が持つ治癒力を高めていくような研究がもっと重要になってくるでしょうね。
寺下
先生は、以前はキトサンの研究をされていたと聞きましたが、アガリクス茸に関心を持たれた理由はなんでしょうか?
奥田
ガンに対する抵抗力を持つNK細胞を活性化させるものとしてβ・Dグルカンという物質が知られています。
これは腸管に露出したNK細胞を活性化させますが、決して内部に吸収はされません。キトサンも同様にNK細胞を活性化しますが、やはり腸管の内部までは浸透しませんので、ガンを縮小させるには抗ガン剤と併用する必要がありました。
ところが、同じくβ・Dグルカンを含むものとして知られているアガリクス茸の場合は、単独で「抗ガン剤+キトサン」と同じ効果を見せたんです。これはβ・Dグルカンだけでは説明できない効果で、一体この力は何だろうということで、愛媛大学の木村善行博士の協力を得て実験を重ねたところ、アガリクス茸に含まれる『アミノ酸誘導体』が血管新生(ガン細胞が自己の周囲に血管を生成し増殖する作用)を阻害するはたらきをすることが確認されました。
寺下
つまり、アガリクス茸自体にガン細胞を攻撃する作用があるというわけですね。
奥田
そうです。このことは近々学会でも発表される予定です。
先人の知恵

育成された土壌を見極めるのが、よいアガリクス茸に出合うポイントです。

奥田
面白い話がありまして、普通キノコは収穫すると日干しにしますよね。そうすることでビタミンDが増えて身体によいとされています。ところがアガリクス茸は収穫してそのまま日干ししておくと真っ黒に変色してしまうんです。ですから収穫したらすぐに熱風をかけて乾燥させてしまうのです。
寺下
すぐドライヤーをかけないと自然融解してしまうそうですね。
奥田
はい。
ところが、これまでの研究で、キノコは紫外線に当てておくとガンに対する有効成分が変性してしまうことがわかったんです。
つまり今のアガリクス茸の収穫法は、それの持つガン抑制効果を損なわないという意味で理想的だったわけで、これがアガリクス茸が他のキノコよりもすぐれている理由でもあるのです。
このような研究結果がわかる以前から、人々はこうした収穫法をしていたわけですから、まさに先人の知恵というわけですね。
よいアガりクスの見分け方
寺下
いろいろなアガリクス製品がありますが、良い製品を見分ける基準などはありますか?
奥田
今回発見された『アミノ酸誘導体』などについては、アガリクス茸が育つ土壌が非常に重要になります。
具体的にいうと、マグネシウムと鉄分。これが土壌に十分に含まれていないと、アガリクス茸の中で有効成分が生成されません。
通常、農作物を育てる場合、窒素・リン酸・カリ といった養分は十分に与えますが、マグネシウムや鉄分を供給することを心がけているような所はなかなかないようです。逆にいえば、そうした土壌や、製品における『アミノ酸誘導体』などの含有量をきちんとチェックしているかというのが重要になってくるといえるでしょう。ノエビアなどのように、そうしたことをすでに実践しているところもあります。またノエビアの場合は、独自の製法で前述のβ・Dグルカンとは違う多糖タンパク複合体のみを抽出・配合し、腸管での吸収を可能にして、さらに免疫増強・抗ガン効果を向上させていることも注目に値します。
こういったことも製品選びのポイントにするといいと思います。
サプリメントと医療を結ぶ

代替医療の考え方の普及をきっかけに「総合的医学」の分野が発展すればいいですね。

寺下
今後の医療とサプリメントの関係はどうなるとお考えですか?
奥田
今までは、ガンならガン細胞だけを見てきましたが、今後は「宿主対ガン」という観点になるでしょう。
抗ガン剤も、ガン細胞を殺すのではなく、宿主の治癒力を高めるようなものが主流になると思います。さらには「アガリクスにはどの抗ガン剤を併用するのが効果的か」といった研究もなされていくべきでしょう。
 今回アガリクス茸に新たな有効成分が見つかったように、サプリメントには、成分だけを抽出した薬品には無い効果が秘められているといえるし、それがサプリメントの研究の重要なところなのです。
    

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