手術の際の輸血

 

医療判断医 Dr.寺下謙三の誌上診察室

手術の際の輸血

日経ヘルス2002年10月号

2002.10

日経BP社発行


相談

子宮筋腫の開腹手術を控えています。主治医にその際の輸血に備えて「自己血輸血」をしたほうがいいといわれました。どんなメリットがありますか。貧血がかなりひどいのですが、採血しても大丈夫でしょうか。(39歳・女性)


Dr.

自己血輸血とは、手術の前に自分の血液を採っておいて、手術中や手術後、輸血が必要になった場合にそれを使う方法です。
自己血輸血のメリットは、他人の血液を体に入れたときの拒否反応や感染などの、リスクが少ないところにあります。
そもそも投薬や手術、輸血といった治療法は、人間の体にとっては不自然な行為。できればやらないに越したことはありません。それでも、行うことのメリットが多いと判断された場合には行います。ですから、そういう治療を施す場合には、できるだけ体に負担が少ない方法を選ぶべきなのです。
もちろん、他人の血を輸血する際にも十分な感染対策がとられていますが、現在発見されていない未知のウイルスが含まれていないとも限りません。その点、自分の血なら体に負担が少ないわけです。
貧血を気にされているようですが、主治医が自己血輸血を薦めるのであれば、採血しても問題がないと判断したのでしょう。
今、健康な人の献血なら一度に400mlまでは大丈夫とされています。人間の体は、必要なものが減れば補おうとするようにできており、多少血液を採っても時間がたてば元に戻りますから、心配いりません。
ただし、医学は日々進歩しています。例えば20年前なら採血して1、2時間の新鮮血を輸血するのが最新治療とされていましたが、今では悪い医療です。
そう考えれば、今いいとされている治療法が必ずベストではないことを、医者はもちろん、患者側も頭の片隅で認識しておく必要があるでしょう。


ドクターからひとこと

日本の今の医療制度では、一律の金額で標準の治療が受けられます。世界的に見れば、コストの割にはいい治療を受けているといっていいでしょう。そのあたりをもう一度認識し、病院にサービスばかり期待するのではなく、自分で勉強する姿勢も大切だと思います。

    

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