吹っきりのち復活 ⑦ 「吹っ切らずに復活」

 

2002.5~2003.4

吹っ切りのち復活⑦

「吹っ切らずに復活」

ばんぶう

2002.11

日本医療企画


 復活するためには、まず吹っ切ってけじめをつけることが大切であると主張してきたが、何事にも例外はつきものである。身近な例では、テニスやゴルフなどの競技を考えてみたい。「ゴルフで大叩きをしてしまって、どうしようもない状態」や「テニスで0対5と追い詰められた状態」の時「今回はもうあきらめよう。次回があるさ」と投げやりになってしまう。そう思った瞬間、その戦いはたいてい負けである。プロの競技を見ていても、そんなふうに選手が思っているのではと感じることがあるくらいだから、我々凡人の場合は日常茶飯事である。ひどい時は、朝一番のショットが大きくミスした場合、その瞬間からその一日のゴルフが苦痛になってしまうこともある(のは私だけだろうか?)。実に情けない話であるが、吹っ切りと諦めには大きな違い、いや、むしろ正反対の意味があるということを自戒せねばならない。 我々が属する医療の現場でも同じことが言える。
本人の生きたいという意志が寿命に大きく影響する。昔、何かの本で読んだのだが、ある国のある村で年に一度の大きな祭りがあり、祭りの前数ヶ月と、祭りの後数ヶ月の村民の死亡者数を調べたら、祭りの後の数ヶ月のほうが圧倒的に多いというのである。なにも危険なお祭り騒ぎがあるわけではない。村の長老たちにとって、その祭りに参加することが大きな生きがいなので、なんとかその祭りまで生きたいという気持ちが積み重なってこういった統計結果になったのだろうと、その本では分析していた。
 「生きることに執着」したり「勝負に執着」したりするのは、吹っ切る以前に大切なことである。経済復活のためには、思い切った整理・清算が求められようが、前回の「悪い吹っ切り」でも記したように、会社を簡単に倒産させない粘りも重要であろう。

    

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