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一生懸命足るを知る③ 参加することだけに意義があるか?
2003.5~2004.4 一生懸命足るを知る③ |
ばんぶう 2003.7 日本医療企画 |
「オリンピックは参加することに意義がある」と、かの有名なクーベルタン男爵は言った。この言葉が独り歩きし、いろいろな場面で「そんなに頑張らなくてもいいよ」的な意味で使われる。「足るを知る」理論によって考えてみると、「勝負にこだわらずに参加して楽しむことだけで満足しなさい」という解釈が一見成り立つ。これは良識ある見解のようにみえるが、使い方によっては軟弱、邪悪な要素を含むことになる。私は個人的には勝負事が好きで、テニスやゴルフを日頃楽しんでいる。日曜のゴルフで嫌なことは、仲間のスコアが良いと、決まって「君は仕事をしていないなあ」という会話がなされることである。多くの人は、ゴルフをする限りは、一つでも良いスコアで回りたいし、1mでも遠くにボールを飛ばしたいと考えているはずだ。少なくとも私は、そのように思わなくなった時はゴルフなど止めたい。これは「参加する意義」を否定するものでもない。「参加することだけに意義がある」のではなく「まず、参加することに意義があり、競技に参加した以上は、勝とうとする意志に意義がある」と言いたいのである。競技という戦いが終われば「ノーサイド」となり、酒を酌み交わすという姿がカッコいい、と私は思っている。
私のテニス仲間に「○○さんは、勝負にこだわるから、そんなに勝ちたいのならと彼にはわざと負けているんですよ」という人がいた。この台詞を言った男には金輪際付き合わないと、その時決めたのであるが、私のコラムのご愛読者のみなさまにはその邪悪性は容易にご理解いただけるであろう。確かに、ゴルフやテニスができるのは、健康で仲間もいて、経済的にも恵まれて、時間の余裕もあるということだから、、その日の勝負やショットの出来不出来にかかわらず、とてもありがたく幸せなことである。そんなゴルフやテニスができることに感謝して「足るを知る」が故、勝負にはこだわりたいと、私は心に決めているのである。