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一生懸命足るを知る⑥ 海は魚に、空は鳥に お任せします
2003.5~2004.4 一生懸命足るを知る⑥ |
ばんぶう 2003.10 日本医療企画 |
この夏、仲のよい先輩に誘われ、ハワイ島で行われた世界心身医学会に参加した。ハワイといえば海の遊びばかりを想起するだろうが、金槌なるわが夫婦は、陸のハワイ島を堪能することに決め込んでいた。そんな中でも、マウナケアという4200m級の山頂で、夕日と星空を眺めるツアーが圧巻だった。車で山頂まで行ける世界で最も高い山だという。もちろん、高山病の危険性もある。高所恐怖症でもある私は、海にしろ空にしろ足の届かないところにいることが落ち着かない。どだい、魚でも鳥でもないのに、海に潜ったり空を飛ぶこと自体が人間の傲慢なところである。もっと謙虚に控えめに海遊びをしたり、飛行機に乗ったりするべきだと、日ごろから多少自己弁護的に主張している。
話は飛んだが、ハワイ島での星はきれいで、マウナケアではもっときれいなのはなぜか? 何億光年も離れている星に、たかが4km近づいても意味がないはずである。理由は星の光の届く、無限大に手元側、つまり地球側の要因で星の見え方が違うのである。周囲に灯りがないところに行けば、それだけで星はきれいに見えるし、街灯が多いところに出れば、途端に見えにくくなる。物事の真理を追究するときの困難に似ている。真理ははるかかなたに厳然と存在していても、自分の近くに妨害や迷いや努力不足があると、遠くの真理はかすんでしまうのである。東京で見えなくても、何億光年か先には星が輝いているのである。もっとも厳密には、その星はすでに存在していないかもしれないが、4次元的には現存していると考えてよいのである。せっせと真理を探究しながらも、恒久の世界に思いをはせ、小さな自分をそれなりに受け止めていきたいものだ。
張りぽて人生を送るくらいなら、ハワイ島で乗った調教された馬や、見事な演技を見せてくれたイルカのほうがよっぽど立派であると思った。