魂を売らないということ⑪ お金には印がついている

 

2005.5~2006.3

魂を売らないということ⑪
お金には印がついている

ばんぶう

2006.3

日本医療企画


《日々着実に地味な仕事を実行し 稼いだお金に魂の透かしを入れる》

3つの戒めを守る医師がスーパードクターの条件

このテーマでの最終回になった。執筆している今は、ライブドアショックから一週間経ったところである。

一カ月ほど前、「患者さんとの関係」をテーマにした、若い医師向けに医師の心構えについての話をするセミナーの依頼があった。大体、この手の話は「自分のことは棚に上げて」するのが相場である。そのセミナー用に作成したスライドの一部をご披露する。
 タイトルは「誇り高きカッコイイ医師になろう」。近頃、特に日本では「カッコイイ」偉い人が少なくなった。お洒落で格好いい人は多くなったけれど。服や化粧品や宝石では「カッコイイ」人はつくれない。
 スライドの最後のほうで、「なぜ、今年の箱根駅伝で順天堂大学の難波選手がカッコよかったのでしょうか」「そうです。決してあきらめなかったからです」「なぜ、姉歯建築士たちはカッコわるかったのでしょう」「そうです。プロなのに手を抜いたからです」「なぜ、六本木ヒルズ族と呼ばれる大富豪たちは、そんなにカッコよくないのでしょ
うか」「そうです。やりすぎだからです」というやりとりをつくつた。まだライブドア事件の前だったから、こういったシヤレも通用した。こんな大事件になってしまったので、このスライドは若干変更しなければならなくなった。
個人的にも迷惑な話である。
 私は、常に医師として「手を抜かない」「あきらめない」「やりすぎない」を自戒している。こんな当たり前のこ
とを守り抜くことは相当難しいのが現実である。しかし、自分の身体を任せたい医師は、この三つをきちんと
守ってくれそうな人である。こんな地味なことを毎日着実に行っている多くの医師こそ、スーパードクターなのである。
 彼らのお陰で、日本の医療は世界的にみてもその偏差値は抜群に高い。彼らがコツコツと稼ぎ出す診察料と、
錬金術のような六本木ヒルズ族のお金と、有名スポーツ選手の高額契約料などを比較してみると、「お金に印
がついている」と言わざるを得ない。印がついていると考えると、「まあいろいろあるからね」と妥協的理解がで
きる。自分は「魂」の透かし入りのお金を稼いでいるのだと家族やスタッフに言い訳している。
 医師としてはともかく、プライベートでは前の二つを守りすぎるあまり、若干「やりすぎ」気味であることは深
く反省しているところである。 

    

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