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安心と幸福の医学
安心と幸福の医学 医療決断ということ |
暮しと健康 2007.3.1 保健同人社 |
健康なときから身近にいて、さまざまな医療決断をサポートしてくれる「医師患者システム」が究極の安心と幸福の医学だと自ら実践して16年になります。その経験から、最近の日本の医療が進んでいる方向に非常に危機感を感じていることをお話ししたいと思います。
人間のあらゆる知恵は「幸福」を求めています。医療ももちろん同様で、多くの医師や医療人は人の幸せのために頁献したいと日夜がんばっています。
さて、日本の現状はどうでしょうか?「医療不信」という言葉に代表されるようなマスコミ報道が絶えません。その影響で、日常診療でも「挑戦的な患者」「怯えかまえる医師」という不思議な構図が生まれつつあります。残念ながらその傾向は強まる一方で、使命感に溢れた医師たちはそのエネルギーを削がれ、自己利益に敏感な医師たちが台頭し始めたと言わざるを得ません。前者は「患者様」と呼ぶことに違和感を感じている医師たちで、後者はにこにこと「患者様」と呼び、医療もサービス業なのですよ、とわが意を得たりと平然としている医師たちです。極端な意見で、反論もあろうかと思いますが、象徴的なたとえと理解してください。
そもそも病気になることは、生活習慣病のように自己責任であったり、運命のいたずらであり、少なくとも医師の責任ではありません。また、医療はとても不確実な世界に存在するものです。われわれ生物は、とても残念なことですが、老化という逃れられない「一種の病気」のもとに、さまざまな病気やけがに遭遇します厳密な意味では完全にもとにもどる病気はないでしょう。
このようなむずかしい世界にもかかわらず、日夜奮闘している愛すべき医師たちが私の知る限りでもたくさんいます。人は困難に遭遇したときには指導者を求めます。病気という困難を乗り切るために、医療医学の専門家である医師に知恵を求めるのです。学閥を教えていただく教師には「先生」と呼んで尊敬し信頼してこそ深い学びができます。自分の健康回復のために尽力してくれる医師を「先生」と呼んで尊敬し信頼してこそ、病気回復の知恵を本当にいかすことになると思っています。これは医師の傲慢とは程遠いものです。表面的には「患者様」と愛想笑いをして魂を売り渡し「商売」に走っている医師こそ傲慢なのです。
皆さんの身近にも立派な医師はたくさんいます。「患者様」と睦んでもらうことではなく、心から「先生」と呼びたくなるようなかかりつけ医を探しあてたら、「幸福と安心の医学」を手に入れた-とになると思います。日本の良き医療は、官僚やマスコミではなく、われわれ国民一人ひとりがつくりあげていくものです。
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