2008年1月

私を救う医者はどこ?

よろず相談クリニック 13のエピソード

私を救う医者はどこ?

著書

 2007/12/14発売

集英社 Be文庫

正しい医療とは?
医師と患者の理想的な関係とは?
医療判断医として医学界を広く見渡せる著者が、数多くのケーススタディをもとに、適切な医療の選び方をやさしく解説します。

集英社のホームページは、こちら をご覧下さい。

 

医療判断学事始  ~まえがきにかえて

「人間の幸福な生活の一助のためにのみ医療は存在する」
こんな当たり前のことを、患者側医師側などという枠組みでなく、国民みんなで再確認しよう。そんな思いが日々つのり、そのためのヒント集を面白く誰にでも分かりやすい形で提供できないものかと考え抜いた結果が本書である。安心と幸福の医療を実現するには国民一人一人の理解が必要であり、それがとても大きな力になると僕は考えている。
「これからの日本の医療の行く末は、医者の卵の早い時期からの教育次第だ」アルツハイマー病の世界的研究者である今は亡き慶応大学薬理学西本征央元教授と思いが合致し、1996年から2006年までの10年間にわたり「医療判断学」という講座を担当した。「社会薬理学」という概念を半ば無理矢理創り、薬理学教室の講座の一環として、カリキュラムに組み入れて頂いた。西本氏の教育に対する熱い志が異例の授業の実現を可能にした。

2008年1月

かかりつけ医 対話が生む信頼

 

「かかりつけ医」

対話が生む信頼

 新聞記事

 2007/01/20掲載

  日本経済新聞社

「かかりつけ医」 対話が生む信頼

体の変調をまずは診てもらい、治療から専門病院の紹介まで行う「かかりつけ医」。
高度に専門化した現代医療で効率的な受診体制を支える縁の下の力持ちとして注目が集まっている。
医師としての活動のほか、寺下医学事務所(東京・千代田)で会員制のかかりつけ医制度である「主侍医倶楽部」を主宰、早くからそ の有効性に注目してきた。
スタートは1990年。会員は健康なころから健康相談ができるほか、病気になった場合は治療に最適と思われる医師を千人程度の中から紹介してもらえるユニークな仕組
み。原則、自費診療で利用料金は高いが、主旨に賛同した50人以上が参加している。
参考となったのは皇室の手厚い医療体制。医師団を抱え、皇族の健康維持に努めるほか、病気となった場合は治療方針を相談して決める。
「本人は安心して医師団に任せられる」。こういう仕組みを一般にも広げられないかと考え、主治医ではなくあえてそばにいる主「侍」医と呼ぶ。
相談で多いのは「がん」「心の問題」で全体の八割程度を占める。なかでも印象に残るのが「末期の肝臓がん」と診断された患者のケース。
ある病院で「治療が難しい位置にある。もって数カ月」と言われたが、がん治療の専門家を紹介し検査をやり直したところ「手術は可能」との結論が出たという。
健康な時から行くことができるため患者との信頼関係を築きやすい。
「あなたが病気 にならなければ私はゆっくりできる。たばこをやめたらどうですか?」と冗談めかして 一言ったところ、複数の会員が禁煙に成功した。
「医療に触れる敷居が低くなり、病気の早期発見がしやすい」。無駄な診療が減り医療費の抑制につながることもある。
「紹介される医師が良い意昧の緊張感を持つ」ことで、良い医療を受けやすくなる利点も。
「昔は医師は患者からの感謝、尊敬の念を励みに頑張ってきた」が、今は十分な信頼関係を築けているとはいえない。
「医療はあくまで患者を治療するためのインフラ」と語り「(医師と患者との)対決型ではなく、対話型の医療に進むべきだ」と提言する。

2008年1月

白血病

 

内科、血液科

白血病

NKH「健康ライフ講座」

№77 2008/1/1 5

日本機械保線株式会社 社内報


 白血病は「血液のガン」として知られていますが、正確には骨の中心部にある骨髄中に存在する造血幹細胞と呼ばれる細胞がガン化する病気です。造血幹細胞とは血液中に存在するすべての細胞の元になるものです。また、ガン化とは細胞分裂が制御できず、コントロールを失いながら増殖してしまう細胞の状態と考えれば理解が容易です。

白血病では、造血幹細胞から異常な白血球が止めどなく作られます。そのため、正常な白血球や赤血球や血小板などの産生に障害がでます。白血病はリンパ性と骨髄性に分かれ、それぞれが急性と慢性に分類されます。これら4種類の白血病は別の病気と考えてもよいほど性格が異なります。
このなかで成人に発症することが多い慢性骨髄性白血病 (CMLと略されます) について説明します。
 
症状:慢性期は白血球が増加するだけで症状は乏しく、血液検査により発見されることが多い病気の一つです。軽度の貧血がみられたり、脾臓が腫れることもあります。この慢性期 (初期といってもよい) に適切な治療が行われないと、数年以内に急性転化という状態を引き起こし、白血球数が急増し、貧血が進み発熱、体重減少など急性白血病と同じ状態に突入します。こうなると本来の急性白血病より治療が困難になります。

診断:血液中の白血球の数や性質を調べます。1μlにつき、正常では数千個くらいの白血球が数万から時には数十万に増加します。確定診断のためには骨髄を採って調べます。 CML の原因であるフィラデルフィア染色体やbcr-abl遺伝子が検出されればほぼ診断は確定されます。
 
治療:従来は根治的治療の可能性がある治療法としては骨髄移植のみで、インターフェロンやその他の化学療法薬 (抗がん剤)が治療の主体でした。骨髄移植以外では急性転化を阻止できる治療法が存在しませんでしたが、この数年、イマチ二ブという分子標的治療薬が画期的な効果を上げることが分かってきました。原因遺伝子が消滅することも多く、今後世界各国から寄せられる治療実績の報告に期待が集まっています。
 
その他:このように初期の段階で発見されるCMLの治療に期待が持たれるようになったということは、初期の段階で発見する意義が大きいということになります。一般の血液検査で簡単に白血球数はチェックできるので、やはり定期的な健診が有効な病気のーつと考えることができます。
 

2008年1月

記者の目

 

「かかりつけ医」

対話が生む信頼

 週刊医療界レポート

 2008/01/07 №1850

  株式会社医療タイムス社

記者の目 寺下謙三医師の「医療判断学」 の実践と広がり

▽…自らを「医療判断医」と呼び、「医療判断学」という独自の学問領域を開拓、東京・飯田橋で自由診療の寺下医学事務所・附属クリニックを開設している寺下謙三医師 (1972年東大卒)と初めてお会いしたのは84年(昭和59) 年頃だったと思う。もう20余年が経っている。暮れも押し迫った日、「私を救う医者はどこ ?~ 病気に悩む人に医療判断医からの解答」 ( 集英社be文庫 ) という著書が送られできた。この20年間の「医療判断医」や「主侍医」しての診療活動の苦労話をフィクション仕立てでまとめたもので、13話から成るオムニパス風の「実践医療判断学」といった趣の本である。「医療崩壊」が叫ばれている昨今、患者がこの荒波を乗り切っていくヒントが詰まっている。日本の医療をなんとかしなければならないという思いが伝わってくる。

プライベートな医師ネットワークを広げよう

▽…「医療技術が進歩すればするほど患者の不満や不安は増大する。こんなもったいないことはない。安心で、満足の医療は各論的な医療技術の進歩だけでは実現されない。いまの医療の仕組みそのものを、こころの支援を伴った総合的な視野で組み替えていく必要がある」という考え方には共感した。いまの日本の医療は「国民皆保険」の建て前のもと、すべてが公的保険の枠内に押し込められていることの不合理が医療崩壊を招いているのではなかろうか。これを改革するには政治を動かさなければならないが、同時に医師が日常の診療以外の場で、日本の医療を守り育てていくきわめてプライベートなネットワークの輪を広げていくことの重要性も訴える。今年は「医師のための職業的交流倶楽部」を目指し「スーパー医局プロジェクト」の設立を呼びかけていくという。これが広がれば、開業医、勤務医を通じ、非常に現実的で便利なシステムになっていくだろう。寺下氏はこの20年間、日常性に埋没することなく、常に高い志をもってチャレンジし、あえて苦難な道を歩む。先ごろは医療決断支援の活動を広げるために、「医療決断支援師」の養成講座も開いた。その意気と行動力にはいつも感じ入ってきた。

慶応大で10年間「医療判断学」を講義

▽…寺下医師のこれまでの取り組みの中で注目してきたのは、96年から2006年まで10年間、慶応大医学部薬理学教室で「医療判断学」の講義を担当、「社会薬理学」という概念をつくり出し同講座のカリキユラムに組み入れたこと。これは当時の西本征央教授との聞に「これからの日本の医療の行く末は医者の卵の早い時期からの教育次第だ」との思いが一致したからだった。その講義では双方向性を重視し、学生たちに考えてもらうことを主眼とした。がん医療のシミュレーション実習では医療判断の仮想体験をさせ、医師としての医療判断の厳しさを知ってもらった。ここでの講義体験が「医療判断学」の概念を磨き上げた。それが寺下医学事務所・附属クリニックでの「重病時医療決断支援サービス」、「医療判断外来」 、「主侍医倶楽部」にまで 高められてきた。 20年間も医療の世界の管制官的な役割や水先案内を続けられた原点だろう。まさに初心忘るべからずの執念を感ずる。

「 医療決断支援」が社会的な広がりを

▽…昨秋には寺下医学事務所をめぐる環境が大きく変わってきたことを告げるイベントがあった。「医療決断支援開発機構」が主催し「医療ナビゲーションシステム研究所」と「早稲田総合医療研究所」が共催して早稲田国際記念ホールで「医療決断シンポジウム」が聞かれ、約 200 人の医療関係者と市民が参集した。寺下医師はその代表として「医療の世界にも交響楽の 指揮者や航空管制官のような総合的な判断や決断を支援する専門家が必要」と訴えた。この日 は日本医療コーデイネーター協会の嵯峨崎泰子理事長、九州大で医療決断サボーター養成を試みている稲津佳世子医師、太阪大で医療メデイエイター養成をはじめた中西淑美講師、さらに 早大人間科学学術院の小野充ー教授、同法学部和田仁孝教授らがそれぞれ「医療決断支援」の社会的意義の大きさに触れた。寺下医師の長い間の実践活動がようやく社会的な広がりになってきたことを感じた。厚労省の「総合医」や「家庭医」を診療報酬制度の中に位置づけようという動きも、現在の日本の医療全体を見据えたこのような考え方の台頭を受けてのものだろう。「医療判断学」という分野は日進月歩の医療技術のもとで充分学問として成り立つ領域だと感じた。

ひと チャレンジングな医療者たち

 

 ひと

 チャレンジング医療者たち

 週刊医療界レポート

 2008/01/07 №1850

  株式会社医療タイムス社

「患者さんのための実践医療判断学」を刊行しました

▽…暮れも押し迫った 2007 年12月日、集英社から「私を救う医者はどこ ? よろず相談クリニックロのエピソード」というタイトルの文庫本 (be文庫 ) が送られてきた。サブタイトルは「病気に悩む人に医療判断医からの解答」とある。東京・飯田橋の寺下医学事務所所長、同附属クリニック院長。著者独自に開発した「医療判断学」を裏付けに自由診療の「主侍医倶楽部」開設、会員制の「重症時医療決断支援サービス」などを提供して23年が過ぎようとしている。技術は進歩しているが魂 ( こころ ) を失いつつある日本の医療の中で、安心して満足のいく医療を受けられる「患者のための実践医療判断学」といった趣向の本である。内容は「民間の侍医を目指して」、「よろず相談クリニック」、「医療決断することの重み」、「心筋梗塞の場合」、「乳がんの場合」、「脳動脈癌の場合」、「前立腺がんの場合」、「子どものうつ病の場合」など日のエピソードがオムニバス形式で綴られている。「この本を読むと読者は医療界の事情通になり、医療崩壊の荒波を乗り切るヒントを掴める」ともアピールし、物語風医療ガイドブックとしてもユニークだ。著者には「プライベートドクターを持つということ」「医者のこころ患者知らず」「標準治療 | あなたの最新治療がわかる本」など数多くの本を刊行、メディアにもしばしば登場している。

▽…1984( 昭和59) 年、東大医学部の同級生らと医療の新しい仕組みづくりを提案して本郷・東大赤門前に「寺下医学事務所」を開設、主侍医のような役割を顧問弁護士のような契約で理想の診療システムの構築を目指し、いまも進化を続けている。このところは「医療崩壊」が叫ばれ、実際にそのように動いている。医師の使命感とモチベーシヨンはセットになっているものだが、少なくともこの50年間で医師が尊敬されない職業になってしまったことは確かだ。弁護士、公認会計士、経営者などのプロフェショナルの中で最低ランクの位置づけられていることに危機感をもつ。この「医療崩壊」を阻止していくためには日ごろの診療以外に日本の医療を守り育てていく志をもった医師による「スーパー医局プロジェクト」の設立を真剣に考えている。この本はそのきっかけになることを願っての発刊だ。53年和歌山県生まれの54歳。78年東大医学部卒、内科、心療内科医。いまは「医療判断医」を自称する。96年~2006 年まで10年間慶応大学医学部の薬理学教室で「医療判断学」、「社会薬理学」という異例の授業を続けてきた。「医療の仕組みそのものを総合的な視野で組み替えていく必要がある」と説く。