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[2017.8. 8] 人畜共通感染症

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №114

 カルテ65 <内科・感染症内科> 人畜共通感染症

 2017/7/24(月)

 

 



〇総論〇

WHOの定義によると「脊椎動物と人との間で自然に移行しうるすべての感染性疾患」となっている。動物は家畜のみではないため、人獣共通感染症と呼ばれる傾向にあります。動物から人へ、だけでなく人から動物へ感染する場合もあります。原因となる病原体の種類は数百種類もありますが、感染の大量発生の可能性や重篤になりやすいという意味で、鳥インフルエンザなどが最近注目されています。近年では、SARSやエボラ出血熱や狂牛病などが世間を騒がせたことは記憶に新しいですし、ペストのように歴史に名を残す怖い病気もあります。

〇主な病原体〇

細菌:結核、サルモネラ、ペストなど
ウイルス:狂犬病、SARS、日本脳炎、鳥インフルエンザなど
寄生虫:アニサキス、マラリア、アメーバ赤痢、マダニなど
真菌:カンジダ、アスペルギルスなど
プリオン:狂牛病(クロイツフェルトヤコブ病)など
その他、クラミジアやリケッチア(猫ひっかき病)などに分類される病原体があります

〇感染経路〇

感染動物と直接接触、糞や尿などからの間接的接触、ノミや蚊などにより媒介される場合などがあります。

〇予防、生活上の注意〇

多種多様な病原体、感染経路があるために、確実な予防は一筋縄ではいきません。流行の兆しなどがある場合に、ニュースや政府、保健所などから発信される勧告に注意するように心がけることです。海外渡航の場合は情報収集を行い、推奨されている予防接種などをきちんと受けることが不可欠です。

 

[2017.5. 2] リレーエッセイ(Medical Tribune)

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Medical Tribune  

リレーエッセイ「時間の風景」
 
2017/2/2 
 


安心と納得の医療を求めて、医療正義を考える
 

医学部同級生の友人からこのエッセイのバトンを受け取った。昭和53年卒業だから、かれこれ40年になる。学生運動を実際に体験した最終的な学年だ。当時は学生たちによる立て看板がキャンパスに溢れ、ビラもあちこちに散らばっていた。今から思えば、乱雑な景観だったと言えるが、医学生たちは何を求めていたのか?と気にもなる。方法論の是非はともかく、医療や医学における正義を求めて、色々な形で闘っていたのであろうか?

今、「正義とは何か?」という問いかけが、医学の分野に限らず様々な分野での命題となっている。お金や権力の二極化が強まる中、本来の正義とは何か、幸せとは何か、一部の賢者が模範になろうと気になり始めた証だと期待している。

医学部出身者の進む道の多くは臨床医の道であり、少数派として基礎医学の道がある。本日は、3番目の選択肢として「社会医学」の道を伝えたい。

医療に対する日本の国民の満足度は意外と低いと感じる。不満が不安に変わり、さらに恐怖、攻撃となり医療裁判の件数が驚くほど増えた。しかし、それは、日本の医学医療のレベルが低いからではない。むしろ、日本の医学医療は世界トップレベルであり、医療保険の仕組みも世界に類をみない傑作品である。しかしシステムのどこかに問題があるから、国民は安心・満足していないに違いない。アポロ11号の月面着陸を思い起こして欲しい。1969年当時(なんと半世紀も前!)の技術を巧みに組み合わせるだけで、未来の夢が実現した。そこが仕組みづくりの素晴らしさだ。

昭和59年6月、同窓仲間らと共に、医療の仕組みづくりを通じて医療満足度の最大化に貢献しようと研究会を立ち上げた。カルテの共有システム(今の電子カルテ)や医師間遠隔相談システムなど。インターネットなど存在しない30年以上も前の話だから、今思えば時期尚早であった。後輩の医学部学生が、夜な夜な事務所に集合し、医学辞書をタイプし、ハドソンソフトから初めての医学辞書つきワープロが誕生した。「すいぞう」が「膵臓」と変換されて喝采する時代であった。

「安心と幸福をもたらすべき医学医療」の仕組みを追求していくと、ハイテクによるイノベーションも時代の流れだが、皇室の「侍医システム」という患者(クライアント)医師関係が理想だというローテクな結論に至った。高度細分化される医療環境においては、専門医とは別に、指揮者や管制官のような存在が不可欠であり、患者も含め人間的信頼関係で結ばれたチームによる医療が、医療満足度を最大化するシステムであると考えた。1990年には、自らも「主侍医倶楽部」と名付けた民間版侍医モデルの試みを始めた。

その活動の中、「医療判断学」という概念が生まれた。インフォームド・チョイスが進んだ故に、患者は選択や決断に悩む。主侍医は「医療上の意思決定の支援」のプロである。同窓後輩であり私が敬愛する故西本征央慶應義塾大学薬理学元教授の熱い依頼があり、1995年、慶應義塾大学医学部にて「医療判断学」の集中講座を開設した。最初は、「医学生の道徳教育か?」と、学生たちは感じたようだ。3日間連続の対話型集中講義として、教授以下教室員総出演し、講義後も夜遅くまでその日の学生の発言を検討して翌日の資料に反映した。その熱意が通じ、最終日には学生たちの目の色が変わってきた。「裏出欠チェックだ」と噂された授業感想文も、こちらが驚くほど充実した内容に変貌していく。ある時、学生の一人が「このような真剣な決断の支援は私にはできないかも」と医師になることに不安を訴えてきた。講師陣は慌て驚き「君みたいな人こそ医師、医学者になって欲しい」と必死に説得したことを思い出す。熱心に教育すれば学生の心に届くことを教室員一同恐ろしいほど体験した。

風変わりな授業と評されたが(ハーバードのサンデル教授の授業のようであるが、我々の方が早かった?)、授業の出席率は高く、数名の欠席者が返って目立つほどとなった。しかし、神の悪戯か、西本教授のスキルス胃癌での急逝により10年間でこの講座は閉幕となった。

今、世の中は模範となる人間像を求めている。我々、医師は色々な人たちと日常的に出会う。そして命を握っていると頼られる。さりげない模範となれるのか、その意味を噛み締めたいと自戒する日々である。

 

[2017.4.25] 下肢静脈瘤

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №113

 カルテ64 <血管外科> 下肢静脈瘤

 2017/4/24(月)

 

 



〇総論〇

一般に静脈は動脈と違い、心臓のポンプ機能や血管自らの収縮弛緩などによる強い血流はなく、心臓へ吸い上げる弱い力と、周囲の筋肉の収縮による圧迫や重力による流れが血流の原動力になっています。それでも逆流がしないように、静脈の中には弁があります。この弁の調子が悪くなったり、血栓ができ静脈の流れが滞るとその抹消側の静脈にコブができ蛇行します。肉眼的にも分かるようになりますが、主に下肢に生じやすく、それを特に下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)と呼びます。

〇原因〇

妊娠や長時間の立ち仕事が原因となりますが、生まれつきの静脈走行の異常が原因となる場合もあります。

〇症状〇

目で見える静脈のこぶのような腫れ、むくみ、だるさ、かゆみ、疼痛、こむら返り、進行すると皮膚潰瘍などを起こすこともあります。

〇診断〇

ほとんどが視診、触診で診断がつきます。

〇治療〇

自覚症状も少ない軽症の場合は、弾性ストッキングによる圧迫療法と下肢の挙上や筋肉のポンプ作用を促すような運動指導で経過を見ます。外科的治療として、血管内に硬化剤を入れて閉塞させる方法と原因となる静脈を除去する方法があります。後者には従来からのストリッピング手術という血管を外科的に抜去する方法に加えて、レーザーにて焼灼する比較的低侵襲の治療法も近年保険適用になりました。

〇生活上の注意〇

長時間の立ち仕事を避けて、下肢を挙上させたり、下肢の運動をしたり、軽症のうちから弾性ストッキングを着用し悪化を防ぐことも大切です。レーザーを使った治療も進歩してきましたので、気になる症状がある場合は、専門医と早めに相談しましょう。

 

[2017.1.10] 鼻血(鼻出血)

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №112

 カルテ63  <耳鼻科> 鼻血(鼻出血)

 2017/1/4(火)

 

 



〇総論〇

鼻出血は、ありふれた症状の一つです。子供や高年者に比較的多いようです。大抵は、鼻中隔前下方からの出血で、医学的には前鼻出血と呼ばれるものです。鼻ほじりや鼻かみによる機械的刺激が原因で、微細な血管が集中するキーゼルバッハと呼ばれる部位からの出血です。その他、出血部位により鼻の奥の動脈から出血する後鼻出血や上鼻出血などがあります。

〇原因と対処方法〇

機械的刺激による前鼻出血の場合、大抵は自然に止血します。止まりにくい場合は、頭をやや前に傾け鼻の両脇を強くつまみ圧迫します。また冷やしたタオルなどで鼻を冷やすとより効果的です。
それでも止血しないときは、動脈性の出血も疑われますので耳鼻科を受診してください。また、出血傾向を来たす血液などの病気や脳梗塞や心筋梗塞の予防薬として使われる薬(血液サラサラにする薬と形容される薬)などを服用している場合なども、止血が困難な場合が多く、早めに耳鼻科受診をしましょう。繰り返し鼻出血を起こす場合は、高血圧、腫瘍、肝硬変や出血傾向をきたす全身の病気が隠れている場合もあります。耳鼻科や内科への受診をお勧めします。頭を強く打った後の鼻出血の場合は、脳底骨折などの心配もありますので、緊急的な受診が必要です。

〇緊急時の注意〇

大量の鼻出血の場合は、ショック状態になったり意識が低下する場合もあります。その場合は患者さんを横向きにねかせ、血液や血の塊を誤嚥しないように注意して、すぐに救急車を要請してください。

〇普段の注意〇

「上を向き、首の後ろを叩く」とよく言われますが、これはむしろ逆効果です。また、血液サラサラ系の薬を服用している場合は、身近な人たちにその旨を知らせておきましょう。

 

[2016.11. 2] 偏食

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 NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

 カルテ62 <偏食外来、総合診療科、心療内科など>

 2015/10

 


(総論)

今回は「偏食」というテーマを頂きました。いつもの医学的病名ではありませんので記載方法が異なりますが、健康管理においてよく使われる言葉ですので、解説にチャレンジします。多くの辞書を調べてみましたが、平均した意味合いは「好き嫌いにより特定の食品を食べなかったり、または特定の食品ばかりを多量に食べるなどの偏った食生活様式」となります。子供の頃のしつけや生活環境や時にトラウマなどにより形成される場合が多いのですが、最近では大人になってから形成される偏食も問題になっています。偏食は、文字通り偏った栄養摂取につながり、様々な病気の原因や引き金にもなりえます。テレビなどのマスコミで、ダイエットや健康増進や病気治癒のための極端な食事法が紹介されると、街のスーパーではその食材が売り切れることもあります。幸い長続きしないので、偏食に進むことは少ないのですが、中にはそのことを信奉するあまり偏食状態となります。社会的要因による偏食と言えるでしょう。「炭水化物を取らないダイエット」など、専門家の間でも意見が対立する食に対する考え方があり、結論が出るのにまだしばらくの年月がかかりそうです。

(対処)

総論でも述べましたが、「病気の原因となるようなほどの偏った食生活」であるのか「好き嫌いが多少あるが、栄養バランスは取れている食生活」であるのかの見極めが大切です。前者の場合は、もちろん補正していくべきでしょう。原因に精神疾患が関与している場合は、精神科医の指導が必要になるでしょうが、成長期に形成された偏食では、家庭での調理などにもまめな工夫が必要でしょう。専門家に相談できる場所や機会が用意されていないのが現状ですが、管理栄養士などが常駐する病院に相談するのも一法です。

「好き嫌いにより偏る」

のも、人間らしい行動なのでしょうが、「バランスをとる」というのも人間らしい行動となることを認識してはいかがでしょうか。

[2016.7.27] 秋バテ

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

カルテ58 <内科>

2015/8

 


(総論)

夏バテに呼応して秋口に体調を乱すことを「秋バテ」といつしか呼ばれるようにになりました。いずれも正式な医学病名ではありませんが、よくみられる病状を表している言葉でもあります。夏バテは暑さによる体温調節の乱れや交感神経の乱れから特に胃腸障害や熱中症という形で現れます。秋バテは、秋口の気候の変化に順応できずにさまざまな体調不良を感じる状態を指します。

(原因)

さまざまな理由が考えられますが、夏バテにより体力が弱っていることとと、急激な気温の変化や気圧の変化(主に低下)により自律神経がスムーズに対応できずに不調をきたすことが原因と考えられています。また学生は夏休みであったり、会社なども夏休みモードであったのが、本格的に稼働し、秋は一年中でも活動が活発な時期であり、そういった環境の変化にもついていけないことも原因の一つと考えられるでしょう。

(症状)

夏バテは食欲低下を中心とした胃腸障害やだるさ、疲労感が中心となりますが、秋バテも同様な症状があります。それに加えて、自律神経の乱れによる、めまいやのぼせ、不眠、気力低下など多彩な症状がでます。

(診断)

他のはっきりした疾患による症状でないかどうかの鑑別診断が大切になります。安易に「夏バテ」「秋バテ」で片付けてしまうと、ガンや糖尿病など重大な病気が隠れていることを見落とすことがありますので、じっくりと経過を見てくれる医師と相談しながら様子を見ることが大切です。

(治療)

症状が進まないうちに、十分な休養と栄養補給を中心に養生をすることが大切です。放置していると胃腸障害の悪化や肺炎など本格的な病気に発展してしまうこともあります。

(生活上の注意)

基本的なな健康管理として、快食快眠快便を保つように心がけ、暴飲暴食、夜更かし運動不足に特に留意することが大切です。いつもとは違った症状が長く続く場合は早めにかかりつけ医に相談しましょう。

[2016.5.10] 紫外線アレルギー

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №109

 カルテ60  内科、皮膚科、アレルギー科

 2016/4/25

 

 


〇総論〇

アレルギーは、人間が外界の異物から身を守る仕組みである免疫反応が過剰に出現した状態であると理解しても大きな間違いではありません。抗生物質や造影剤などの薬物アレルギーや蕎麦アレルギーや卵アレルギーなどの食物アレルギーや花粉アレルギー(花粉症)などみなさんご存知だと思います。アレルギーの原因として、寒暖や光線や運動などもあり、それらを総称して物理アレルギーと呼んでいます。そのうちの光線アレルギーを日光アレルギーや紫外線アレルギーと呼ぶこともあります。

〇原因〇

はっきりしたメカニズムは分かっていませんが、原因となる物理的刺激が神経の伝達路を介して免疫に関する細胞(肥満細胞)を刺激して活性化を促すことによりヒスタミンやロイコトリエンといった物質を過剰に分泌し、いろいろな症状を起こします。またある種の薬剤と光線の症状作用により起こることもあります。

〇症状、診断、治療〇

かゆみを伴ったじんま疹様の発疹や皮膚が腫れてむくむというような典型的な症状の発現の仕方から診断がつきます。また服用している薬剤とも関連することがあり、その場合は、一時的に服用を中断すると症状が軽減することにより診断がつきます。日光は完全に避けることはできませんので、なるべく日光に長時間さらされないような行動パターンや服装を選びつつ、逆に、短時間の日光浴などにより耐性をつけていくことも試みられています。薬剤としては、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬などを用います。

〇対策〇

早めに診断をつけて、アレルギーの悪循環を断ち切ることが大切です。疲れなども症状に影響するようですので、暴飲暴食、睡眠不足などにも留意しましょう。

 

[2015.11.24] 男性の冷え性

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

カルテ59 診療科 東洋医学科、内科

2015/11

 


(概説)

「冷え性」は、いわゆる病名ではなく、手足を中心に体の一部に冷たい感じが持続的に生じている状態を総称して使われている言葉です。女性の多くの人は何らかの冷え性に悩んでいるとも言われ、東洋医学の考えでは、大切な症状の一つです。最近では、男性にも同様の症状を感じる人が多いことが報告されるようになりました。

(原因)

冷え性を理解するためには、体温のメカニズムを理解しないとなりません。我々人間は、体温を36度から37度程度に保つ必要があるために、熱を作ったり(産熱)、熱を逃がしたり(放熱)する仕組みを持っています。産熱の代表が筋肉で、放熱の代表が皮膚からの熱の放出です。体が冷えた場合、内臓の保温のために手足への熱の供給を減らすために特に四肢末端に冷えを感じることが多いのです。女性は男性に比べて筋肉が少なく冷えたら温まりにくい性質の脂肪が多いために、冷え性が多いとも言われますが、その他ホルモンの作用など複雑なメカニズムがあると思われます。男性にも冷えが増えてきた理由に、筋肉量の減少に加えて、ストレスや喫煙なども原因の一つでしょう。

(対策)

継続的な運動で筋肉量を増やすことは根本的に良いことですが、運動により体の末端の血流が改善し、ストレス発散にもつながります。体を冷やさない服装やゆったりとした入浴なども心がけたいものです。筋肉量を増やすためにも、十分なタンパク質を含んだ食材を摂取するように心がけ、冷たい飲み物をとりすぎないことも大切です。

(注意)

四肢(特に足)が冷たくなる症状で、動脈が閉塞する怖い病気があります。足が冷えるのを単なる冷え性と決めつけずに、異常な冷えを感じた場合はまずは医師への受診をお勧めします。

[2015.10.10] 医療正義と医療満足度の向上のために―社会医という選択肢

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鉄門いまむかし

医療正義と医療満足度の向上のために

―社会医という選択肢

寺下医学事務所代表 寺下謙三(昭53卒)

 

鉄門だより

2015年(平成27年)

10月号(第724号)

 


 
 昭和53年卒業ということは、学生運動を実際に知る最終的な学年ということになります。
当時は学年たちによる立て看板がキャンパスのあらゆるところに見られ、
ビラもあちこちに散らばっていました。今から、思えば乱雑な景観だったとも言えるでしょうが、医学生たちは何を求めていたのでしょうか?と気にもなります。方法論の是非はともかく、医療や医学における正義を求めて、いろいろな形で闘っていたのではないでしょうか?
 
 そして今、医学の分野に限らず「正義とは何か?」という問いかけが、サンデル教授の授業などでも話題になりました。お金や権力の二極化が強まる中、本来の正義とは、幸せとは何か、一部の賢者が気になりだした証だと期待しています。
 
 大学を卒業後、脳外科を皮切りにいろいろな臨床現場を体験しました。そして日本の医療レベルの高さに加え、その保険医療システムは世界に類を見ない稀有な仕組みであることに確信を持ちました。
しかるに、臨床現場では不安や不満に満ち溢れた患者さんたちが多数いることも事実です。
医学部出身者の進む道は、多くは臨床医の道であり、少数派として基礎医学の通があります。東大や京大にほ基礎医学の道を選ぶ人が比較的多いでしょう。3番目の選択肢として「社会医学」の道を知ってほしいと思います。医療の仕組み作りを支える人材ということです。鉄門の先輩後輩たちには素晴らしい仲間が多いのですが、私自身も含め、どうも共同作業が苦手なようです。東大医学部の卒業生として、何がよかったかというと、その豊富な同窓人脈に尽きると思っています。頭脳明晰なのは当然ですが、やはり医学の道を志した仲間であり正義感が強い人が多いことは特筆すべきことです。そういった鉄門出身者が力を合わせて日本の医療の仕組みを守り育てていく使命があると思っています。(でもその優秀な頭脳と悪意が化学反応を起こすと怖いものです。医療業界との癒着やデータ捏造などの倫理が問題視されている今日この頃でもあり、医療医学正義を自間する必要があるところです。)
 
 私自身の、「社会医学」の道を簡単に、ご紹介できればと思います。

 当時、患者の多くは不満や不安や不平を持っていることを知り、日本国内での医療に対する国民の満足度の低さはなぜかと考えました。30年前頃から、その度合いは、さらに増強し「患者様現象」や「医療崩壊」「立ち去り型サボタージュ」などが医療界の流行語となっていきました。不満が不安に変わり、さらに恐怖、攻撃となり医療裁判の件数がうなぎ登りとなっていきました。その原因は、日本の医学医療のレベルが低いから起こっているのではないのです。むしろ、日本の医学医療は世界トップレベルですし、医療保険の仕組みも世界に類をみない傑作品です。しかし、システムのどこかに問題があるから、国民は安心満足していないに違いないということに気付きました。1969年のアポロ11号のように、現存する技術を巧みに組み合わせるだけで、未来の夢が実現することに着目しました。それこそが仕組みづくりの素晴らしさです。

 そこで、昭和59年、6月、同窓仲間らと共に、医療の仕組みづくりを通じて医療満足度の最大化に貢献しようと医学事務所を立ち上げました。医師専用のモデル病院構想からはじまり、カルテ共有システム(今の電子カルテ)や医師間遠隔相談システムなど。インターネットも携帯電話も存在しない30年以上も前の話ですから、いまから思えば時期尚早そのものでした。後輩の鉄門学生が、夜な夜な正門前事務所に集合し、ワープロ用の医学辞書をタイプしたのを思い出します。その結晶としてハドソンソフトから初めての医学辞書つきワープロが誕生しました。「すいぞう」が「膵臓」と変換されて喝采する時代でした。そのときの研究仲間たちは、現在の日本の医療情報分野のリーダーとして活躍しています。

 そのような経過を経て、「安心と幸福をもたらすべき医学医療」の仕組みを追求していくと、ハイテクによるイノベーションも時代の流れだが、皇室や人統領の「侍医システム」という患者(クライアント)医師関係が理想だというローテクな結論に至りました。高度細分化される医療環境においては、最先端の専門医とは別に、指挿者や管制官のような医師の存在が不可欠であり、患者も含め人間的信頼関係で結ばれたチームによる医療が、高品質な医療として医療満足度を最大化するシステムであると考え、1990年より自らも先進的実践活動を始めました。「主侍医制度」と名付けたいわば民間版侍医モデルの試みです。

 その活動を続けるなか、「医療判断学」という概念が生まれていきました。インフォームドチョイスが進んだ故に、その副作用として患者は選択や決断に悩みます。主侍医は一言で言えば「医療決断の支援」をするプロだということです。西本征夫薬理学教授(昭55卒)からの強い依頼もあり、そのノウハウをまとめ、医師や医学者になる心構えとしての教育も兼ねて1995年より10年間、慶応大学医学部にて「医療判断学」の集中講座を始めました。最初は「医学生の道徳教育か?」というようなうんざりした目で見ていた学生さんたちも、3日間の対話型の集中講義で、教授以下教書貝総出で講義後も夜遅くまで内容検討をして翌日の資料を作成するという熱意が通じ、最終日には学生さんたちの日の色が変わってきました。3日連続の授業感想文も日に日に進化して、こちらが驚きました。熱心に教育すれば学生の心に届くことを教室員一同体験したのです。そのときの学生感想文を小冊子にまとめてあります。後輩育成にあたる皆さま、ぜひ一度ご覧ください。風変わりな授業と評されましたが(サンデル教授の授業のようですが、我々の方が早かったのです!)、学生の口コミで、授業の出席率は毎年95%越えと高く、数名の欠席者が却って目立つほどでした。西本教授の急逝により残念ながら10年で閉幕となりました。母校東大でもやってみたかったと残念に思っています。

 その代わりと言うわけではありませんが、昨年春より、一般人向けの基礎医学講座「教養としての医学塾」を始めました。講師には、現役の鉄門学生に交代で来ていただいています。特殊な医療の話や面白おかしいテレビでの医学番組はありますが、基礎的なオーソドックスな医学を学ぶ機会はほとんどありません。医学を知っていただくこと、そして医学生にとって、一般の方が医学に興味を持つよう講義することは大変勉強になります。特に医学界のリーダーとなる使命を担う学生たちにとっては貴重な体験になっているようのです。まだまだ寺子屋的規模ではありますが、そういった医学生が大きな志を持って、臨床医学、基礎医学、そして社会医学の分野で活躍されることを願っています。

 私の事務所の中小理念は「熱意ある医師を応援することにより、患者支援する」ことです。そういった情熱医師の職業的交流クラブ「Terraドクターズ」の運営を今後の中心事業に捉えていく予定ですので、興味のある方は是非お仲間にお加わりください。
 
 還暦後の個人的な活動としては、医学作家の道を夢想しています。漫画家、小説家が夢だったこともあり、医学の世界をみなさんにきちんと伝える文筆活動を通じて医療満足度最大化に貢献したいと思っています。
 

[2015.7.27] 多汗症

 150727_NKH106_№57_takanshou.jpgNKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №106

 カルテ57  皮膚科、心療内科

 2015/7/27

 

 


 

〇概要〇

精神的負荷や温熱、辛い味などの負荷がかかった時などに、生活に支障をきたす程度の大量の発汗が手足や腋の下、顔などに生じる状態を原発性局所多汗症と呼んでいます。感染症や内分泌や神経の病気で起こる続発性多汗症と区別されます。一般に汗が多くて困っているという方は前者の状態と言えます。原因ははっきりしませんが、自立神経の過敏な反応と考えられます。

〇症状〇

軽症の場合は、単に「汗かき」という程度ですが、症状が強い場合は、生活に支障が出る程度の大量の発汗が生じます。その結果ワキガやあせもが生じてしまうこともあります。

〇診断〇

病状では診断は容易につきますが、基礎疾患が存在する続発性多汗症ではないかどうかの鑑別が必要です。疑われる病気があれば、血液検査やCTやMRIなどの画像検査が必要なことがあります。

〇治療〇

「原発性局所多汗症診療ガイドライン」という標準的な治療の指針があります。第1選択として、20%塩化アルミニウム水溶液を塗布することが推奨されています。また手足に対しては患部を水道水に浸した状態で微弱電流を流し、水素イオンで細胞へ働きかける「イオントフォレーシス」という治療もされています。第2選択肢としボトックス( A型ボツリヌス毒素製剤 )の局所麻酔も保険適用となりました。最終的手段としては交感神経遮断術も試されることがあります。

〇生活上の注意〇

常にタオルを携帯し、まめに汗をふくことになります。また精神的負担をなるべく軽減するように生活設計を行い、各種リラックス法なども取り入れるとよいでしょう。

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