「主侍医」の原点アポロ11号
アポロ11号に乗って、人類が初めて月に到着したのは1969年。今のパソコンと 同じくらいの性能のコンピューターが小さなビルほどの大きさだった時代のことだ。 そんな昔に偉業が実現していたことに改めて驚かされる。 私はアポロから9年後の78年に医師になった。脳外科の研修で脳腫瘍(しゅよう)の手術を経験し、がんの基礎を研究したいと内科に転向した。そこで、旧態依然とした大学病院の実態を目の当たりにし、84年、最先端の医療施設をつくろうと、仲間と研究組織を立ち上げた。
内容詳細
大学に在籍する後輩の医師から、こう打ち明けられた。
「名医ガイド」「病院ランキング」、医師や病院をランク付けして紹介する本があふれている。医療の世界にも評価制度が導入されれば品質も向上するはずなので歓迎したいが、「これは実際に役立つ」と納得できるものは、なかなか見つからない。
今日から、サラリーマン診療を受けるときの自己負担が2割から3割に引き上げられた。
患者 「すみません。また体重が増えてしまいました。それに、実は、薬も飲んでいなくて…」
赤か黒か。束ねられたカードの色に賭けるギヤンブル。どっちを選ぶか。
「主侍医」契約を結んでいるAさんからこんな相談を受けた。弟さんが肝臓がんで、大学病院に入院していた。
科学的な根拠に基づいて医療を進めるEBM(Evidence Based Medicine)という考え方が世界で広がり始めたのは、90年代後半からだ。
手術がいいのか、薬による治療がいいのか、薬はAがふさわしいのか、それともBなのか……。患者さんの診療法を選ぶのに、これまでは、医師個人や医療チームに積み重ねられた経験に頼るところが多かった。
EBMは、それが本当に最善の選択なのかどうかを客観的に判断する根拠として、多くの医学論文を統計的に分析して信頼度を割り出したものを使えないか、という試みだ。ただ、論文は星の数ほど発表されている。どの論文を重視するかによって、結果もずいぶん変わってくる。
「最後の最後まで治療を続けよう。」
セカンドオピニオンを広めるのはそう簡単なことではない。
脳ドックで小さな動脈瘤が見つかったNさんから相談を受けた。
「あんな無愛想な医者は嫌。患者を何だと思っているんですか?」
慶応大学の医学部の学生に「医療判断学」というテーマで年に数単位の講義と実習を行っている。ふだんは「主侍医」としての契約に基づいてどんな医療を受けるかを選ぶ手助けをしている私だが、「医療の未来は、医者の卵への早い時期からの教育にかかっている」という、信念を持つ西本征央教授(薬理学)と思いが合致し、7年前から始めた。講義の冒頭、学生たちにこう問いかけている。医療判断の仮想体験だ。