取材・対談

取材・対談

高血圧

KAIGO

生活介護マガジン

高血圧

KAIGO

1993.3

イメージラボラトリー発行


最も多い成人病のひとつ、高血圧の心得5ケ条です


第1条「血圧が高くて、どこが悪い!?」と言う前に-サイレントキラー軍団『高血圧』-

何も症状がないのに、会社の健診で“高血圧“と言われ、薬をもらった。不安なので、大学病院の医者にかかった。「かるい高血圧ですね。食事に注意して来月また来てください。」

食事の何に注意すればいいのか?

来月でいいのか?

よくあるケースですが、この中には多くの問題が含まれています。

それらは次の第2条~5条におおよその答えがでています。

高血圧自体、あまり症状はないのが普通です。でも、糖尿病と共に、成人にとっての大敵の1つです。

長期間、高血圧を放置しておくと、動脈硬化が進み、脳卒中の確率をあげます。その他様々な病気の原因となります。“静かなる殺し屋”(サイレントキラー)と言われるゆえんです。


第2条 市販の家庭血圧計を活用しよう

簡単に測れて、結構正確な家庭用血圧計が安価に手に入るようになりました。病院で医師や看護婦さんなどにたった一度測ってもらった血圧から判断するよりも、日常のデーターが豊富にあった方が正しい診断につながります。「おもちゃのような血圧計は不正確だから」とあなたのデーターを参考にしない医者はあなたにとって適切でないかもしれません。ただし、忙しい外来中でもあなたの血圧の動向がひと目でわかるように、まとめて、表にしておくようにしましょう。あなただけの担当医ではないのですから。血圧測定は毎日決まった時刻に、1日2~3度測れは理想的です。


 

第3条 年齢にかかわらず最高血圧が150以上最低血圧が90以上の時は要注意です

よく年齢+90が適正血圧と言われます。ある種の統計ではその通リかもしれません。しかし、最高(収縮期)血圧150、最低(拡張期)血圧90を正常上限のメドにして下さい。しばしばこれをオーバーするようなら医師に相談しましょう。


第4条 やっぱり塩分制限が基本ですが、血圧が高いと言われたら、やはり塩分摂取をひかえるのが基本です。

しかし、その他、カルシウムやマグネシウムを積極的に拝取することも、血圧を下げるのには効果的ですし、継続的な軽い運動、肥満の人にとっては減量もかなり有効です。薬を飲むのはその後のことです。


第5条 血圧の薬を飲みはじめると一生続けないといけないから、心配ですがこのことを理由に、薬を服用するのを嫌がる人が多いようです。

前記の生活上の注意が守られているのに、まだ血圧が高い人は降圧剤の対象となります。高血圧の患者さんのほとんどは、長年かけて血圧が上昇してきます。いわば、血圧の高い状態に慣れっこになっています。薬の作用で適正な血圧にコントロールすると、身体はその快適な状態に慣れるようになります。

ところが、薬を中断すると、急に元通りのように血圧が上昇します。今度は、急激に血圧が上昇するために身体の適応力がついてゆかずに、症状がでてくることが多いのです。

高血圧は慢性の病気なので、主治医の指示に従って気長に治療することが大切です。

2大成人病の心得

菱の実

2大成人病の心得

菱の実

1993.10

三菱信託銀行業務部広報室発行


成人病軍団の2大将軍“高血圧”と“糖尿病”に対する心得をまとめてみました


高血圧

第1条 血圧が高くて、どこが悪い!? と言う前に-サイレントキラー軍団 “高血圧” -

何も症状がないのに、会社の健診で“高血圧”と言われ、薬をもらった。不安なので大学病院の医者にかかった。“軽い高血圧ですね。食事に注意して来月また来てください。”

食事は何に注意すればいいのか?

来月でいいのか?

よくあるケースですが、この中には多くの問題が含まれています。それらは次の第2条~5条におおよその答えがでています。

高血圧自体、あまり症状はないのが普通です。でも、糖尿病と共に、成人にとっての大敵の1つです。長期間高血圧を放置しておくと、動脈硬化が進み、脳卒中の確率を上げます。その他様々な病気の原因となります。“静かなる殺し屋”サイレントキラーと言われるゆえんです。

第2条 市販の家庭血圧計を活用しよう

簡単に測れて、結構正確な家庭用血圧計が安価に手に入るようになりました。病院でたった一度測ってもらった血圧から判断するよりも、日常のデータが豊富にあった方が正しい診断につながります。「おもちゃのような血圧計は不正確だから」とあなたのデータを参考にしない医者はあなたにとって適切でないかもしれません。ただし、忙しくても外来時にはあなたの血圧の動向がひと目でわかるように、まとめて、表にしておくようにしましょう。血圧測定は毎日決まった時刻に、1日2~3度測れば理想的です。

第3条 年齢にかかわらず最高血圧が150以上最低血圧が90以上の時は要注意です

よく年齢+90が適正血庄と言われます。ある種の統計ではそのとおりかもしれません。しかし、最高(収縮期)血圧150、最低(拡張期)血圧90を正常上限のメドにしてください。しばしばこれをオーバーするようなら医師に相談しましょう。

第4条 やっぱり塩分制限が基本ですが

血圧が高いと言われたら、やはり、塩分摂取をひかえるのが基本です。しかし、その他、カルシウムやマグネシウムを積極的に摂取することも血圧を下げるのには効果的ですし、継続的な軽い運動、肥満の人にとっては減量もかなり有効です。薬を飲むのはその後のことです。

第5条 血圧の薬を飲みはじめると、一生続けないといけないからと心配ですが

このことを理由に薬を服用するのを嫌がる人が多いようです。前記の生活上の注意が守られているのに、まだ血圧が高い人は降圧剤の対象となります。
 高血圧の患者さんのほとんどは、長年かけて血圧が上昇してきています。いわば、血圧の高い状態に慣れっこになっています。薬の作用で適正な血圧にコントロールすると、身体はその快適な状態に慣れるようになります。ところが、薬を中断すると、急に元通りのように血圧が上昇します。今度は、急激に血圧が上昇するために身体の適応力がついてゆかずに症状がでてくることが多いのです。高血圧は慢性の病気なので、主治医の指示に従って気長に治療することが大切です。


糖尿病

第1条 遺伝的要素は大きいですが、引き金になるのは、過食、過飲、肥満、運動不足です

糖尿病は遺伝する傾向にあることはどうやら事実です。これをピストルに例えれば、親が糖尿病であることは遺伝因子を持っている可能性が高く、実弾がこめられている状態ということです。でも、ピストルは引き金を引かなければ弾は発射されません。この引き金(トリガー)にあたるのが、『食べすぎ』『太りすぎ』『運動不足』なのです。たとえ遺伝傾向があっても、引き金を引かない生活習慣をつければ糖尿病から逃れられるか、かすり傷ですむのです。

第2条 診断のためには“糖負荷テスト”を、コントロールの指標には“へモグロビンA1C”を調べます

糖尿病であるか、またその予備軍であるかは、一般的には経口的にブドウ糖を摂取したあとの血糖の上昇パターンを計測して判断します。糖尿病の診断確定後は、約1ヶ月間の血糖の平均値を反映すると言われる“血液中ヘモグロビンA1C(HbA1C)”という値を参考にしてコントロールしてゆきます。その他フルクトサミンや1、5AGという検査値なども大切です。糖尿病の診断をすでに受けた方は、ヘモグロビンA1Cの値を参考にして日頃の管理をしてください。ちなみに正常値は約4~6%です。

第3条 糖尿病の3大兵器は、神経障害、腎障害、眼底障害です

神経障害に陥ると、手足の感覚が鈍くなったり、膀胱障害がでてきたりします。早期発見のために、お医者さんは音叉を使って振動覚の検査をしたり、手足の反射をみます。腎障害は、時には命とりになります。早期発見のために、尿中の蛋白(アルプミン)の存在をチェックすることが大切です。
眼底障害は催涙弾のごとく、我々の視力を奪います。定期的な眼底検査により初期の段階でくいとめられます。レーザーによる光凝固療法の普及で、昔は失明していたのが、ずいぶんと助かるようになりました。

第4条 対“糖尿病”防衛手段は、運動、食事、薬物です

糖尿病対策の第一歩は、引きかけた引き金(過食、肥満、運動不足)を戻すことから始めます。
 それぞれの生活の活動状況にあった一日摂取カロリーを決定し、適切な体重を維持するように無理のない運動の計画をたてます。それでもコントロールができない時に、初めて経口薬やインシュリンの助けを借ります。いずれも専門医の助けを借りながら行います。

第5条 “糖尿病”撲滅のための参謀は身近な主治医

糖尿病のコントロールには、自分自身の強い精神力と正確な医学知識が必要です。いつでも気軽に、しかも親身に相談にのってくれ信頼できる主治医があなたの参謀です。あなたの顔も覚えていないようでは、参謀役は務まりません。一生付き合えるような主治医を探すことがあなたの運命を左右します。高血圧と共にサイレントキラー軍団の将軍糖尿病制覇のためには、日頃の地味な努力が大切なのです。

寺下謙三 寺下医学事務所長(内科医)に聞く

 

特別インタビュー

寺下謙三 寺下医学事務所長(内科医)に聞く

近代セールス

1994.5

近代セールス社


金融機関の経営者にもホームドクターをお勧めしたい

総合医療相談とキメ細かさで新システムに挑戦

日本の医療には馴染みの薄い「ホームドクター制度」を広めようとする動きが出てきた。寺下医学事務所がその推進母体。そこで寺下謙三所長に、その狙いと具体的なシステムについて聞いてみた。

メディカルルネッサンス運動の狙いとは
寺下医学事務所というのは主侍医(契約顧問医)制の普及を中心に、医療のシステムづくりを通じて世の中に貢献しようという趣旨で活動されているそうですね。
寺下
そのとおりです。主侍医とは ″ホームドクター”とも言えるわけですが、このシステムは本当は国によってつくられるといいと思っています。しかし現実には様々な問題がある。それなら私がまず実践してみようということで始めたわけです。
なぜ、主持医制なのでしょうか。
寺下
昨年の暮れ、同友館から「主侍医制度 (ホームドクター)」という本を出版させてもらいました。その記念パーティが先日開かれまして、そのテーマにも取り上げたのですが、私の意図するところは「メディカルルネッサンス」運動、つまり医療の原点に戻ろうということです。
「高度な医療から豊かな医療へ」というサブタイトルをつけました。今、日本の医療レベルは世界的に見てものすごく高い。一定の保険料に対して受けられる医療水準がいかに高いものであるか。
しかし、その割に安心している人は少ないのが実情です。タレントの逸見政孝さんのようになったらどうしようとか、患者と医者の関係でも不安の材料は尽きません。
一方、日本の医療技術は心臓移植もできる、遺伝子治療もやろうと思えばできるところまで高度化しています。
世の中のいろいろな分野で、高度なシステムから豊かなシステムヘの移行が言われていますし、それらに比べて医療は遅れたけれど、まさに今、豊かさを求める時代に入ったと思っているわけです。
患者と医者の新しい関係を築く
具体的に何が問題なんでしょうか。
寺下
大きく分けて三つあると考えています。一つは、患者と医者の新しい関係の構築が必要だということです。これまでの主治医、保険制度、患者と医者の関係というのは、病気になってから生まれる、あるいは機能を発揮するものでした。
しかし、逸見さんの問題が指摘したように、それでは不十分です。
まず予防医学に重点を置き、総合的に人間的に診るシステムが求められています。もちろん病気の時には迅速・正確に専門医にアクセスできるシステムです。こういうことがきちんとできるシステムがあれば、医療費の節約にもつながります。医療費は無限大ではないことに目を向けなければいけません。
二つ目は、医療の品質管理ですね。これができていない。
マーケティングを知っている人ならお分かりだと思いますが、自動車にしても家電にしてもQC (クオリティ・コントロール)はできていますね。10年前には、QCができていないのは教育と医療だけと言っていた人がいましたが、教育でも受験産業で見たらQCは進んでいるわけです。
医療の場合、「医者を選ぶのも寿命のうち」と言われるけれど、なかなか選べませんね。大病院に行けば、どの先生にあたるか、運・不運もあるでしょうし、極端に言うと、その先生の気分のいい時に会えるかどうかも分からない。こんな品質管理の世界なんて他にはないでしょう。
受験産業やアメリカの民間医療保険のように、ここの受験ならこの学校とか、この保険はこの病院と決まっていれば納得できると思いますが、日本の医療保険はみんな同じです。同じような料金体系でありながら、異なる品質の医療を受ける。それでいいのかということです。
建て前としては、すべての医者の実力は同じだということですが、実際は違うわけです。
ここでの問題は、第三者による医者の自己評価システムがないこと、これが一番です。
これはどうしてかと言うと、私も含めて医者の権利が強い、保護されているからです。そんなに実力はなくても肩書きだけで一生安泰だなんて、トヨタなら何でもいいと言っているようなものです。しかし、現実にはそんな売り方は通用しない。
ですから、医療の世界にも品質管理の発想を持ち込んで、自己研鑽しなくてはいけないシステムを創っていくべきだと思ます。
もう一つの問題はどういうことですか。
寺下
今の世の中、専門から総合へという考え方がありますね。リエンジニアリングもそうですが、これからの時代は全体を総合的に見られる人が求められています。
医療の世界にも、これは言えることです。みんなが総合化すると専門家がいなくなると心配する人もいるでしょうが、ほっといても専門医は育つから、むしろ総合臨床医を育成しなさいということです。
これらの三つをポイントとして、メディカルルネッサンス運動を提唱しているんですよ。
教警備保障会社の医療版をつくる
主侍医制のセールスポイントはどこにあるんでしょうか。
寺下
『主侍医制』の中にも書いたんですが、防犯と予防医学を比較すると、医療も警察も公的な制度としては世界のトップレベルにあhソます。ただ、警察制度を見ると、その横能が特に発揮されるのは犯罪が発生してからですね。もし、予防の面でも十分にシステムが機能していれば、民間の警備保障会社の今日の発展はなかったと思います。
また、犯罪発生後のシステムが完璧だったからこそ、予防システムが発達したと言えるかもしれません。
なぜかと言えば、犯罪や事故を未然に防止する手を打ち、万一の時にはすみやかに警察に通報し被害を最小限に抑えるようにするからです。
医療は、この警察のシステムに比べても10年から糾年は遅れています。その民尉警備会社はあたるのが、私の考えている主侍医制じゃないかと思うわけです。
今ではホームアラームシステムとして月々2~3万円払えば一般家庭でもサービスが受けられますが、スタート当初は大企業が相当のペイを出して支えたという側面もあると思います。
私の場合も民間版のシステムを創り、広めようと思ったんですが、やはり最初のうちはコストがかかり過ぎる(笑い)。
ですから、私がやろうとしている主侍医制に対して理解していただける法人なり、オーナー経営者の方々から賛同者を募っているところです。
顧問医契約は現状、法人やオーナー経営者に限っているそうですね。対象となるクライアントは今、どのくらいになっているんですか。
寺下
一応100人を目標にしていますが、今現在は29人です。契約者1人につき月5万円の顧客料としていますが、人数的には他の病院との兼務では100人が限界ですし、月々500万円くらいの運営費がないと専用の事務所とスタッフで、医者としてのプライドを失わずにやっていけないでしょうね。
コンサルティングの中で紹介できる専門医のネットワークには、100人くらいの協力者がいるそうですね。
寺下
そうです。今のところ、私の個人的なネットワークが主ですので、はとんどが東京にいる方々ばかりです。
金融機関の研修にも医療教育を
金融機関が法人契約をしているケースはありますか。
寺下
金融機関からのアプローチはこれまでのところ、まったくありません。
ただ、大手の銀行の中に応援してくれる方がいらして、自分のところの銀行の顧客サービスの一つとして、得意先に私のところを紹介していただいているケースもあります。
先程も言いましたように、顧問医契約は法人を中心としていますし、また確実な紹介がなければ受けないことを原則としていますので、誰でもいいというわけではありません。私の考えに一定の理解を持っていただける方でないと、トラブルが発生する恐れもありますしね。
法人ということで考えるならば、金融機関の取引先には中小企業などのオーナー経営者も多いですから、差別化メニューの一つとして金融サービスの中に取り入れることも可能かもしれませんね。
寺下
その点はもう少しホームドクター制度が広がりを持ちはじめたら、面白い展開があるかもしれませんが、現状では難しいのではないでしょうか。
むしろ、金融機関に望みたいのは、これは金融機関に限ったことではないんですけれど、企業内教育にぜひ″医療教育″を取り入れて欲しいということです。
医療は保険証1枚あればタダみたいな考え方は改めていただいた方がいいし、健康なうちから医療に対する知識やシステムの実情をよく理解しておくことが企業人にも必要だと思いますね。
金融機関の経営者の方々はおそらく「主治医」をお持ちだと思います。やはり、「主侍医」をお勧めになりますか。
寺下
そうですね。主治医と患者の関係というのは病気をして初めて発生するケースが多いわけですが、主治医の専門外の病気になると相談できなくなるとか、偉い方すぎて普段の相談はできないとか、そういうことが往々にしてあるんですね。
その点、主侍医は顧問医とクライアントの関係もイーブンですし、キメ細かく幅広く相談できる点が大きく異なります。自分で言うのもおかしいですけれど、医療の世界で総合的に相談に乗れるようになるには、ものすごい努力が必要です。
金融機関の経営者の方にも、ぜひホームドクターをお勧めしたいですね。
クライアントになると、どんな医療サービスが受けられるんですか。
寺下
基本的な相談システムの他にも「ホームメディケーション」や「赤ペンドクター」、「寺小屋セミナー」など、いろいろとあります。
この中では、「健康医学塾」というのがウケていますね。昨年の9月から月2回くらいのペースで、専門医をゲストに呼んで開いているんですが、寺小屋みたいな生きた勉強会、というよりむしろ相談会といった方がいいかもしれませんが、これが人気を博しています。
できるだけ、いろいろな試みをやっていきたいと考えているんですよ。

“かかりつけの医師”選び方とつき合い方

 

“かかりつけの医師”   

   選び方とつき合い方

笑顔

1995.10

保健同人社 発行


大病院に患者が集中して、ちょっとしたカゼなとでも診察を受けると一日仕事になり、「三時間待ちの三分診療」ということがよくいわれます。この長い待ち時間は疲れるということだけでなく、ほかの病原菌に侵されることにもなり、決してよいことではありません。三分診療では、医師との会話がほとんとないままの、必要以上の検査や、医師からの診断内容や与えられるクスリの説明不足なとにつながり、多くの患者の不満になっています。
このような状況打破のため、かかりつけの医師(ホームドクターを決めてきめの細かいアドバイスを受けられるように…ということがいわれています。ところが、このかかりつけの医師を、どう選べばよいかということが大きな問題になります。  寺下医学事務所、寺下謙三先生にお話をうかがいました

病気にならなければ 病院には行けない?

現在の保険診療では、医師にかかるには何らかの病名がつかなければなりません。病気でなくても、「大腸ガンの疑い」があるというようなことがなければ、健康な人が病院に行ったり、医師の診断を受けたりしても、それは医療行為とはみなされず、医療報酬も保険財源からは支払われません。このことを突き詰めていくと、医師の診断を受けるには、何らかの病気になっていなければならないということになります。
しかし、たとえ今健康であっても、ほとんどの人は自分や家族の健康に疑問を持ったり不安を抱えています。つまり病気のケア以前の健康維持という問題や、病気になったらどうしようという問題に、多くの人が悩み、心配しているといってもよいでしょう。

「主侍医」ということと「かかりつけ」ということ

ここに私が提唱し、実行している「主侍医」というシステムの存在価値が生まれます。主侍医という言葉は、ふつう使われる病気を治すための「主治医」ではなく、健康なときから「あなたのそばに侍(はべ)る」という意味をこめて私がつくった造語で、契約制の顧問医を指すものです。
この主侍医を私が実践した経験から、多くの方が望んでいる「かかりつけの医師」とはどのようなものかがわかるようになってきました。その要望の多くは次のようなことです。

  • 今は健康だが、いろいろな相談をしたい。
  • ある症状が出たが、どの専門医にかかってよいかがわからない。
  • 専門医について治療中だが、このままでよいか不安だ。
  • 治療方針の選択や決定などに関して、自分の立場に立って親身にアドバイスをしてほしい。
  • 気になる病気の基礎的知識と最新の治療法などを教えてほしい。
  • 病気にかからないように、またかかってもたいした症状でない場合の、生活上のアドバイスがほしい。

もちろん病気になったとき、かかりつけの医師がいればまず安心です。しかしそれ以上に、相談相手としての医師を必要としているということがクローズアップされてきました。
ただここで問題になるのが、くり返すようですが、健康時の相談は現在の保険診療では保険点数にならないことです。
日本ではまだ相談や情報は無料という意識が強いのですが、この意識を変えて、かかりつけの医師を探し、健康相談などをしてもらう契約などをしてみてはいかがでしょう。もちろん個人では負担が大きくなりますから、グループなどでまとまって、いろいろ相談することも考えてください。
私の主宰している「健康医学塾」という寺子屋的集まりもひとつの方法だと思います。
近所の方など二〇~三〇名が集まり、月に一~二度、教養としての医学を勉強するのです。
その講師になってくださる医師を探し、講師のほかに「かかりつけの医師」もお願いしてみてはどうでしょうか。もちろんこの集まりのとき、健康相談をお願いすることもできます。費用も月謝として、子どもの習いごと程度におさめられるのではないでしょうか。

遠くの名医より近くの良医を、かかりつけの医師に選ぶ

「かかりつけの医師を」ということがいわれていますが、そのような医師を探すことはそれほど簡単なことではありません。特に最近では医師が専門化し、勤務医が多くなってきました。開業医も高齢化し、数も減ってきています。そして患者さんの側でも、専門医に診断をしてほしいという要望が強いのです。
私も専門医の経験をしてきましたが、現在の医療の枠組みに疑問を感じます。病気は専門的にだけ診ても、わからない場合が多いと思うようになりました。人間の身体というものは総合的に診なければならない……そしてその判断から、もっとも適切な専門医に紹介して、治療するなどの方法を採ることが必要だ、と考えています。総合的に診ることは専門的であることとは違い、ディレクター的な仕事であり、音楽でいえば指揮者のような立場です。指揮者はピアノなどはピアニストほどうまくは弾けないでしょうが、すべてを知り、まとめあげる能力を持っています。この総合的な知識や能力は、今日の医学界でもなかなか評価はされにくいものですが、本当は大変難しく、もっとも大切な仕事なのです。
さて、そのような大切なあなたの健康のディレクターである「かかりつけの医師」をどのように探したらよいのでしょうか。その条件を上にあげてみました。
これらの条件をすべてクリアするのは困難なことですが、医師との日ごろの人間閑係でかなりの部分が可能になります。

(かかりつけの医師を選ぶ5ポイント)

  1. 近くに住んでいる医師
  2. いつでも診てくれる医師
  3. 何でも相談にのってくれる医師
  4. 心から信頼でき、相性が合う医師
  5. 専門医ネットワークを持っている医師ということになりますが、 もう-つの条件として、探す側の立場として
  6. 主侍医は一人に決めておくこと(ドクターショッピング、つまり浮気はしない)

があげられます。

医師とよい関係を築くには、よい患者となることも大切

「かかりつけの医師」を探すといっても、一方的に探すということではありません。医師といっても人間ですから、好ましい患者像を考え、そのような人には多少の無理も聞きたいということになります。
ほかの医師の悪口を聞くと、私などは、いずれ自分もこういわれるのかと考えずにはいられません。そして「先生」と呼ばれるよりも「00先生」と呼ばれるほうが、個人的に親しさを感じます。「注射をしてほしい」とかの治療法の指定はしてほしくはありませんが、クスリは少なく、レントゲンは控えたいなどの希望ははっきりさせたほうがよいでしょう。
また、診断を受けたらその後の経過を教えてください。特に治った場合、ほとんど連絡がないのですが、治って調子がよいなどという、お知らせはがき″を送ってくれれば、さらに親しさが増します。医師の側でも、その症状の成功した治療経験が増えることになり、自分の治療に自信を持つことにもなります。
いいにくいことかもわかりませんが、よくならないときも、ほかの医師を訪ねる前に、その結果を知らせてほしいのです。
電話での質問などは、医師が時間の余裕のあるときに……。といっても、これなどはかなりその医師と親しくなければわかりません。
前もって電話連絡してよい時間帯を聞いておけばよいでしょう。

治療はクスリを出すだけではない、話をする満足を知ってほしい

医師と患者さんと人間的な関係がなければ、よい「かかりつけ」の関係もできないと考えています。患者さんの中には検査をしたり、クスリなどを出さないと、診療を受けたという実感を抱かないことも多いのです。時間をかけて患者さんの話をよく聞くことは、本当はもっとも重要で手間のかかることなのですが、それだけでは満足されない……。医療とは、どれだけていねいに患者さんと関わるかだと考えているのですが、このあたりにも「かかりつけの医師」を持つ障害がありそうです。
さて最後になりましたが、相性の合う医師ということでは、ご自分の年齢よりちょっと若めの医師を選ぶということがひとつの目安になります。これは同世代意識があり、話も通じやすいということからの理由です。

(医師からみたよい患者)

  • ほかの医師の悪口をいわない。
  • 医師の名前を覚える。
  • 治療法を指定しないが、希望ははっきりいう。
  • 治ったときなとに医師にメッセージを送る。
  • 担当医が忙しいときの連絡は避ける。

※寺下先生の話の中にもありましたが、病気を総合的に診ることは現代の専門化した医療体制の中では、かなり難しいことになってきています。そこで1994年に、日本プライマリ・ケア学会(想03・3776・8425)では、総合的に診る医師の認定制度を始めました。これなどは、かかりつけの医師を選ぶ判断材料の一つになるでしょう。

予防しよう!明日の大病

ここがポイント30代 40代 50代の健康管理

予防しよう!明日の大病

東洋経済

1996.1

東洋経済新報社 発行


健康にまかせた飲食や運動不足は、確実に明日の大病を招く。日々どう過ごしたらよいか

「忙しい、忙しい」と、健康診断もつい後回しに働き続けるサラり-マン。この無謀な生活を続けるうちに、本人の知らぬ間に、大病がしのび寄ってくる。本当に良い仕事をしたければ、今年こそは「健康第一仕事第二」の精神で、自分なりの“健康哲学”を持ち、これまでとは全く違う人生を歩んでみてはいかが。体は人によって千差万別。かの松下幸之助氏は、病弱にもかかわらず長年の激職をこなし、九四歳の長寿まで得た。これは彼が自分の体を正確に理解し、管理していたからだと主治医は述べている。
 病気の初期の自覚症状は意外に少ない。多くの医師が語るところでは、目に見えない自分の日常の健康状態を、しっかり“見て”、それをコント口-ルするインテリジェンスが大切だという。日常的にどう健康管理をしていくのか、以下、「予防医学」の重要性を説く寺下謙三医師による健康管理の要諦である。

病気というのは、実は細胞レベルの遺伝子でほとんど運命が決まっていくのです。しかし、遺伝子レベルでの医学的な運命とは、いわばピストルに弾丸が込められているか、いないかです。これは体質ともいえるものです。
 かたや、毎日の食事、運動、心のもちようなどは、遺伝因子に対して環境因子と呼んでいます。こちらはピストルの引き金のようなものと考えればよいでしょう。
 単純にいえば、つまりピストルに弾が入っていなければいくら引き金を引いても大丈夫ですし、また弾が入っていても、引き金を引かなければ病気にならないということです。
ただ、世の中には例外もあり、ピストルは暴発もします。遺伝的に体が強いと思っていても、何らかの支障が出てくることもあるので油断は大敵です。
 未来の危険予想をして危険回避ができる人は、どの分野でもインテリといえます。リスクヘッジということです。健康管理の仕事をしていると、三五歳以上の人は、大体半数の人が何らかの成人病予備軍としてひっかかってきます。しかし大抵、自覚症状がないので、注意をしても忙しいのに仕事の邪魔をするなといった気まずい雰囲気になります。しかし痛くもかゆくもない時に、リスクを自分で察知して、行動をとらないといけないのです。健康管理について、自分だけは大丈夫というサラリーマンはものすごく多いのですが、皆さんにはバランスのとれた健康管理をしてほしいと思います。
 健康に気をつけていますかと聞くと大抵、三つの答えが返ってきます。
第一に、人間ドックを受けている、第二に運動をしています、第三に食事に気をつけていますというものです。ぼけないように英会話をやっていますという人もいますが、これは脳味噌の健康を考えているわけです。しかしここにもう一つ付け加えて、教養として医学知識を勉強してほしいのです。それと重要なのは、自分が安心して信頼できるお医者さんを知っておくことでしょう。
人間二〇代まではおおむね健康に過ごせるようにできています。いろいろな無理も利く。しかし二〇歳を過ぎると、頭の中は二〇代でも体がかなり変わってきている。
 実は医学データによると、飛行機に例えれば二〇歳までは上昇過程、二〇歳からは下降していきますが、まだ大きく下がっていくことはない。しかし三〇歳からは、いかに自分の健康を将来に向けてソフトランディングさせていくかでしょう。これは人生を通じてのテーマで、時にはエアポケットで落ちることもあります。
 三〇代最大の問題は、二〇代のイメージの名残りがあることです。まず自分の体力を知ることです。
 僕の経験からすると、四〇代からの突然死には心筋梗塞が多いのですが、三〇代の前半には、原因の分からない突然死が一番多いような気がします。
 突然死する人は、解剖してみると副腎というステロイド・ホルモンを出すところが委縮していることが多いと聞きます。ストレスがあると、そのホルモンがストレスを跳ね返そうとして出てくる。体にムチを打つホルモンです。これを使い過ぎると、それが出なくなってストンと死んでしまうと考えています。
 三〇代は体の変化と、実際に自分のやっている行動に乖離が生じやすいのです。
 普通二〇代までは健康なわけですから、その状態からの変化を少なくするように健康を管理することです。それには、自分の健康な時の体の状態を知っていなければ、比較できません。例えば、体重一つとっても、いつから太ってきたのか、正確にいえるでしょうか。体重は健康管理の重要なバロメータです。
 健康な時の数値からの変化が問題で、これが大きく変化した時、自分の体力がガタっと落ちたと感じるわけです。
 健康という飛行機の高度はなるべく高く保ちたいものですが、年齢とともにゆっくりと高度が下がってくるのではなく、階段状に落ちることが多い。

 三〇代をどう過ごすかで、五〇代、六〇代の肉体のソフトランディングの方向が決まってくる。三〇代はそのための基礎段階です。具体的には三〇代では高脂血症、アルコール性肝障害、肥満傾向などが問題になりやすい。

四〇代は仕事がバリバリできるようになりますが、会社で上下に挟まれ精神的なストレスが一番ある。そのストレスをどう処理するかが最大のポイントでしょう。
 ストレスでタバコを吸わずにいられないとか、アルコールに走る場合も多い。女性の場合はストレスから食に向かう。これらをストレスによる行動反応といいます。心理反応としては不安になったり欝
うつになったりする。そしてストレスの身体反応としては潰瘍など実際に体の変化が起きます。本人は不安もなく行動も変わらないのに、胃がやられているということもあるのです。自覚していないのにそういうことが体に起こる。四〇代に、そういう事例が多いのです。
 四〇代になると仕事が極めて忙しいわけですが、健康管理のために時間を作ることが大切です。それは自分自身のタイムマネジメントです。
日本人は忙しいことを自慢しますが、それはその人に能力がないことです。処理能力が低いとか、タイムマネジメントが下手であるとか。自分の時間をきちっと生み出すことこそが能力です。寝る時間もないなどという人もいますが、これは実は情けないことです。食べる時間、寝る時間は健康管理のうえで基本的なことです。
 僕は四〇代ですが、火曜日の夜はテニスをやることにしています。この予定は動かさないことにしているが、仕事が入ると、「テニスをするから」では理由にならないかとやはり思ってしまいます。しかしこれは自分の健康管理であり、夜の自分の時間でやるのですから、本当は立派な理由なのです。四〇代になったら自分の心の健康管理も含めて、自分の時間を作る練習、方法を編み出していくことでしょう。社会は個人では簡単に変えられませんが、自分の未来は変えていけるのです。
 三〇代後半から四〇歳ぐらいに急に体に脂肪がつきやすくなり、同じ量を食べても太りだし、内臓型肥満になりやすくなります。原因は分からないが、脂肪細胞が内臓の周りに蓄積しやすいのです。
 内臓型肥満は皮下脂肪型肥満と違い、成人病の危険因子の一つですが、四〇代にもなると、急激にその内臓型の脂肪がたまりやすくなる。また成人病の代表である糖尿病や高血圧、高脂血症も初期発症として四〇代に出てきます。
これは将来の心筋梗塞、脳卒中につながります。
 四〇代後半ぐらいから健康管理の積み重ねが外見からも個人差として分かるようになる。人によって年齢と健康状態に個人差が出てきます。
 五〇代は何事も成熱してくる時期です。四〇代から病気の出ている人は長期治療になってくるし、薬の副作用も気になってきます。ガンなどもこの年代から出やすくなってきます。サラリーマンは六〇歳で退職しても、それからの人生は長い。そのためにも、体の再度の調整をする年代です。ここまできたら仕事に焦ってもしようがないし、六〇歳以降を自由に楽しく生きるための心と体の健康を考えることです。
 退職の前に一回、体を人間ドックでチェックすることもお勧めしたい。これには二つの意味がある。一つはガンなどの大きな病気がなければ、それが安心につながるということ。これは何事にも代えがたい。二つには、五〇代ともなれば、コレステロールなど幾つかの数値に問題が出てくるでしょうが、今後の生活への警鐘やアドバイスになる。
 人間ドックはオーダーメードでやることを勧めます。遺伝的に糖尿病の問題があればそれを詳しくやる。
そしてその人間ドックの結果を基本材料にして、問題となる症状があれば、さらにそこを追加して診てもらう。人間ドックを自分の健康管理の指標として使うのです。
 五〇代になると全体として体の機能が低下してくるが、最近では生活レベルの向上で、ガクっと体力が落ちるようなことはなく、安定した年代のようです。しかしいったん、病気をすると崩れやすい年代であることには注意すべきでしょう。三〇代なら回復も早い。体力、それに気力がある。しかし五〇代の場合はそうはいきません。退職、そして明るいパワフルな老後に向けて、大事に過ごす準備の時です。     (談)

だるいにサヨナラ

サンキュ!

暑さに負けない夏のからだ健康対策

だるいにサヨナラ

サンキュ!

1996.8

株式会社ベネッセコーポレーション発行


夏、病気ってわけじゃなくてもなんとなく調子悪いのはなぜ? 
熱帯夜続きでよく眠れないときの対策は? 
ファスト工イドはどうしたらいい?
夏を元気に過ごすための健康法を紹介します。これで今年は夏バテ知らず!


どうして夏バテになるの?

今年の夏こそ、バテたくない!でも、どうして夏バテになっちゃうんでしょう。
「夏の暑さ、それ自体が人間にとってストレスになるのです。ストレスを受けると内臓の血流が悪くなって胃腸障害につながります。食欲も落ち、栄養障害に陥りやすくなります。」
「バテというのは、体内の水分の代謝異常が原因で起こっていることもあります。必要以上の水が体にたまり、血液中のナトリウムやカリウム、カルシウムなどのバランスが悪くなってしまう。冷たい物を飲み過ぎたり、外が暑くて室内がよく冷えている、という温度差がさらに体に悪影響を与えているのです。」
要するに、暑さが体調を崩させて、食欲が落ちる、すると栄養が足りなくなってもっと調子が悪くなり、さらに食欲が落ちる。それでいて冷房の効いた部屋で冷たい物ばっかり飲んでいるのでバテてしまう、というわけ。
「快食、快眠、快便。元気なときにはこの三拍子がそろっているもの。食欲、睡眠、排泄は自分が健康であるかどうかの目安です。自分でチェックして対策を立てましょう。」

夏に不足しがちな栄養素

夏にはなんといってもビタミンがとても大切なのです。
例えばそうめんばっかりの食事では、エネルギー源は取れていても、ビタミンB群が足りないからエネルギーとして使えない。ビタミンB1は豚肉などに多く含まれています。
さらに「体の免疫力を高めるビタミンAが豊富な緑黄色野菜は、ことに夏場には積極的に取ってほしいものです」。
ストレスヘの抵抗力を高めるビタミンCや、汗で出て足りなくなりがちなカルシウムや鉄も大切。特に鉄は足りなくなると疲れやすくなるし、胃液の分泌も低下してしまいます。
だからスタミナをつけようと、ステーキだけドーンと食べても夏バテ解消はできません。
「夏に出回りやすい野菜の中でも、おなかの調子を整えるオクラ、利尿作用を持つきゅうり、ビタミンAの豊富なピーマンやかぼちゃ、胃液の分泌を促進するトマトなどをぜひ取ってください」。

料理にひと工夫しておいしく食べる

夏の料理は食欲がわく工夫と、食べやすさが決め手。
まずは香辛料に注目です。
カレー味は夏の定番だけれど、七味唐辛子やチリペッパーも、辛い刺激が胃酸の分泌を盛んにしてくれます。
最近ではスーパーでも簡単に手に入るバジルやペパーミントのさわやかな香りは、さっぱりとした食感を演出してくれます。まろやかで風味のいいパプリカもお勧めだし、パセリも、彩りだけではなくて刻んでいろいろな料理に混ぜ込みたいものです。

もっと身近なにんにくは、香りが食欲をそそるし、ビタミンB1の吸収を良くしてくれる成分を含んでいる優れもの。どんどん使いましょう。
そして食べやすさ。
例えば冷たく冷やした野菜スープや、豆腐料理、あんかけ風なら食べやすい。

同じスルっとでもそうめんにするなら、蒸し鶏や錦糸卵、きゅうりのせん切りなどを添えて五目風にすれば、栄養のバランスも良くなります。とにかくそうめんだけお茶漬けだけといった主食だけの食べ方は見直しましょう。たまには汗をかきながら鍋もの、なんていうのも、目先が変わっていいものです。

食欲を出すためのアイデア

それほど食べていないのに、おなかが膨れた感じで食欲がわかないとき、胃腸薬を飲めば食欲もわくのでしょうか。

「胃腸薬には胃酸を出させるタイプと逆に胃酸を抑えるタイプがあります。夏には胃酸を出させるタイプ、要するに消化剤系統を選びましょう。」

ビタミン剤の上手な取り入れ方

ビタミンに限らず、近ごろではさまざまな栄養素を添加したお菓子や清涼飲料がたくさんあります。けれどこうしたお菓子類を、ビタミンや鉄が大切だからってどんどん食べてしまうと、糖分の取り過ぎにもなりかねません。栄養のバランスはまず食事から。

そしてあくまでも補助的に、ビタミン剤や鉄剤、食物繊維などの錠剤とつき合うのが賢いのです。
気軽につき合えるのはビタミンB群とC。水溶性ビタミンといって、たくさん取り過ぎてしまっても排泄されるので、安心です。

ビタミンB1やB2は夏バテ解消に効果がありますし、アルコールをたくさん飲む人にはビタミンB1は特にお勧めです。

タバコを吸う人はビタミンCを積極的に取りましょう。タバコ1本でなんと25㎎のビタミンCが使われてしまうのです。

シミ、そばかすなどの紫外線によるお肌のトラブルを防ぐのにも役立ちます。
ビタミンAやEは脂溶性ビタミンといって、使われない分は体内に残るので、あまり大量に取ってしまうと問題あり。とはいえ普通の食事プラス使用法を守ってビタミン剤を飲むなら心配ありません。

ビタミンAは、皮膚の潤いを保つ効果もあります。

ビタミンEは老化を防ぐ役割が注目されています。


夏なのにどうして風をひくの?

のどが痛くてちょっと熱が出て、ぐずぐず長引く夏のカゼ。
カゼといえば冬のはずなのに、夏にひく私は体が弱いの?なんて思っている方もいるのでは。

でも夏には夏のカゼがあるんです。
「カゼというのはウイルスが原因で起こり、さまざまな症状が出現します。夏カゼの原因となるのはピコルナウイルス群のウイルス。
症状としては咽頭炎や胃腸炎が特徴的です。ただし良性なので症状は軽く、1週間くらいでほぼ治ると思います。」
ウイルスはふつう湿気に弱いので、乾燥した冬に暴れまわるもの。

ところがピコルナウイルス群のコクサッキーとかエコーというウイルスは湿気に強いので、春から夏にカゼを起こすのです。子どものプール熱や手足口病の原因も同じウイルス。
症状が軽いとはいっても、「カゼをひくのは体の免疫機能が低下しているから。また、細菌感染の合併症も起こしやすくなっていると言えます。」

夏バテの体にはキツイ状態になってしまうわけなのです。

予防と対策は?

「カゼの予防の基本は手洗いとうがい。またお子さんならプールの後には必ずシャワーを浴びることも大切です。」
とにかくウイルスが体の中に入ってこないようにするには手洗いとうがい。

うがいは水やうがい薬でもいいけれど、お茶や紅茶も効果的。ウイルスの増殖を防ぐ働きがあるのです。
それでもひいてしまったら?
「細菌の感染だったら抗生物質が効きますが、ウイルスに感染してしまうと根本的に治す方法はないのです。

そこで、のどの痛みを抑えるなどの対症療法をするしかないんです。」
だからこそ、カゼをひかないために、またひいてしまっても症状を軽くするためにふだんから体の免疫機能を高めておくことが大切です。

夏バテを解消して、睡眠と食事に気を配ることが予防につながるのです。

暑いところでフラッとしたら熱疲労

炎天下を長い時間歩いたり、スポーツをしていてふらつきを感じたら、無理して続けちゃデメ。熱疲労なんです。
「熱疲労とは熱射病の前段階です。意識を失うほどの重症になったら熱射病ですから、そうなる前に、すぐに手当てが必要です。」
調子悪いな、と思ったらすぐに日陰に入って、風に当たり、体を冷まさなければ!
「脳貧血を起こしますから、頭を下げて、できれば横になって足を少し上げているといいでしょう。」
充分休んで回復してから動くようにしましょう。
脱水症状を起こしていることもありますから、水分補給も忘れずに。
万一症状がひどく、熱射病になってしまったら、とにかく冷やしてあげることと、救急車を呼ぶことが必要です。

足がつったときには水分補給

熱疲労と同じように、夏に増えるのが足がつるという現象です。

「たくさん汗が出て、体内の電解質が排出されてしまうことが原因です。」
もちろんそういうときにも水分補給。スポーツドリンクなどを、それも冷やしていないものを飲むと吸収しやすく、ミネラル、水分の補給になります。

体がほてって、痛い 日焼けのし過ぎ

日焼けしたところがほてる、痛い。そんなひどい日焼けは放っておけません。「日焼けで水ぶくれなどになってしまったらもうやけど。そこまでにならなくても日焼けは軽度のやけどと考えていいのです。焼けた部分が細菌に感染しないようにする必要があります。」
そこで焼けたところを、きれいな水で洗い流して冷やします。水ぶくれには消毒液をつけておきましょう。

日焼け止めクリームで予防

「水着姿などで、体の広範囲が焼け過ぎてしまったときには、病院で受診した方がいいでしょう。皮膚の機能障害を起こし、結果的に急性腎不全を起こす恐れがあるからです。」
皮膚の大切な働きのひとつは汗を排泄すること。それがうまくできなくなると、排泄されなければならない水分などが腎臓にたまってしまい、大変なことになってしまうのです。
だから、そんなことにならないためにも予防が大切。

しかも日焼けは、長い目で見ると皮膚ガンの原因となることもあります。外出するとき、レジャーに出るときは日焼け止めクリームを必ず使いましょう。

おなかが痛い、下痢になった 食中毒

カゼでもなさそうなのに下痢をした、吐いてしまったというときは食べた物をよく考えてみて。食中毒を起こしているかもしれません。
「食中毒がもっとも起こりやすいのが、夏場。高温多湿の環境で、細菌がはびこりやすいのです。食中毒の原因となるのは、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌がほとんどですが、食品の見かけやにおい、味に変わりがなくても、これらの菌が増殖していると、中毒を起こすのです。」
症状が軽い場合は、ゆっくり休むこと。下痢をしたときには、水分を補うことも大切。何度も吐くような重症のときはもちろん病院へ。

食中毒を防ぐには

食中毒を防ぐには、食生活に気を配ること。夏場は生ものを避けるようにし、調理をした後はなるべく早く食べましょう。

キッチンを清潔にし、ふきんやまな板の殺菌、冷蔵庫の掃除をこまめにするのは常識です。自分自身も清潔に。キッチンに立つときにはまず手洗い。肉や魚を扱うときは、そのたびにせっけんで手を洗う習慣をつけましょう。


冷房対策

肩凝りや腰痛なども冷えによる悪影響のひとつです。

  • お風呂にゆっくり入る
  • エアコンと上手に付き合う
  • 子どものことも考えて温度調節に注意
エアコンのフィルターの汚れに注意

冷房の体への影響で、冷房病と並んで心配なのがカビの害。
「夏、例えば就寝時など体が温まったときにせき込むことがよくあるという場合は、過敏性肺炎の一種である“空調病”になっている可能性があります。これはエアコンのフィルターに付着したカビが原因のアレルギー性の肺炎です。」
フィルターやもっと奥の部分にカビがついたままでエアコンを使うと、部屋中にカビをまき散らすことになるのです。
予防のためには久しぶりにエアコンを使うときはもちろん、ふだんからフィルターの掃除をこまめに。

どうも臭いがするなどというときには、専門の業者や掃除サービス会社などに依頼して、カビ退治。

せきが続くなどの症状が出てしまったときは早めに病院へ行って、専門医に相談しましょう。

放っておくのはタブーです。

クーラーをつけるたびにカビが部屋中にまき散らされてるかと思うと、ゾッとします!ご用心を。

血流チェックで大病を防ぐ

テレビ人間ドック

血流チェックで大病を防ぐ

おもいっきりテレビ

1998.12

日本テレビ放送網株式会社発行


皆さんは人間ドックに入ったことがありますか?
お宅にいながらにして、人間ドックと同じチェックが簡単にできる、名づけて「テレビ人間ドック」。
今日は血流の流れを中心にチェックします。
血流というのは、酸素を取り込んでこれを身体の隅々まで送っている。
まさに、命の源、健康のカナメです。
この大事な血液と血液の流れによって今の健康状態がわかります。
ここでは、血流が悪くなるとどのような症状を引き起こすのか、部位別にご紹介します。


 

冬場に多い血流の異常による大病

死亡総数に占める死亡原因

体じゅうをすみずみまで巡る血管。
この血管の中を流れる血液の流れが悪くなったり、詰まったりすると、最悪の場合は死を迎えることになります。
「死亡総数に占める死亡原因」のグラフを見ると心臓疾患、脳血管疾患による死亡数は両方あわせて35パーセントになっています。
 特に気をつけたいのは冬場です。

月別にみた

←(赤線)循環器系疾患(心臓疾患を含む)

←(青線)脳血管疾患の死亡率

月別 血液の比重変化

月別にみた循環器系疾患(心臓疾患を含む)と脳血管疾患の死亡率のグラフによると12~2月の寒い時期に死亡率が高くなっています。
 寒くなると、人間の体は脂肪を蓄えて体を温かく保とうとするので、脂っこいものが欲しくなります。そうなるとコレステロールが増え、血液もねばっこくなって、血流が悪くなったり詰まりやすくなったりします。
 血液の比重を調べたグラフをご覧になるとおわかりのように、冬場の1月、2月、3月は男女ともに血液が濃くなる傾向があるので注意が必要だということです。
 では、血流の異常による大病を未然に防ぐにはどうすればよいのでしょうか。簡単にだれにでもできる部位別血流チェック法をご紹介します。

まずは脳の血流チェックです。
脳の血流が悪くなると、物忘れが始まり、恐い脳卒中にもつながリますので、これは非常に重要なチェックです。 

血流チェック

人指し指を顔の前で左右に撮り、頭を動かさないように目で追っていく。
ここで大事なことは、顔を動かさずに、目だけを動かすこと。
そして、指はゆっくり左右に張ることです。
さあ、止めてください。
止めるのはどこでもかまいません。

止めた指がハッキリ1本に見えた方は正常。
2重・3重にダブッて見えた方-残像があるように見えた場合は、要注意。

脳の血流が悪くなり、脳腫瘍などができると脳が腫れた状態になるため、目を左右に動かす神経が障害を起こしやすくなります。

ですから、左右に動く目の動きが悪くなって、焦点が合わずに二重に見えてしまうことがあるのです。

五百円玉を使った簡単な訓練をすることで脳の血流を促進してみましょう。

脳の血流促進法

目をつぶったまま、指で五百円玉の裏(500という数字がほられた面)と表(模様の描かれた面)を確認する。

人間の体は、使うと血流が促進されるのが基本です。
脳を活性化し、血流を促進する最大のポイントは指先=指の感覚をつかさどる部分です。
五百円玉以外にも、麻雀のように指先を鋭敏にし、脳の血流を促進させるのに効果的な訓練法はほかにもたくさんあります。


心臓

最近ちょっと首が太くなったようだ、こんな方はいませんか?
これは静脈の流れが悪くなって、首の静脈が太くなったためかもしれません。
心臓病の疑いもあります。
心臓への血流が悪くなると、狭心症や不整脈、最後は心筋梗塞や心不全という生死にかかわる病気になる可能性があります。

血流チェック

靴を脱ぎ、足の甲を指で5秒間押す
5秒間、押したあとにくぽみがまったく残らない方、スッと元にもどる方は正常。
心臓に異常がある方の場合、くぼみが残ります。
腎臓と肝臓の障害でも、同様のことが起こります。

心臓の血流が悪くなると、全身の末梢から血液を吸い上げるカが弱くなり、足がむくみやすくなります。
こうしたむくみは、筋肉の少ない足の甲などで発見しやすくなります。
心臓の血流をよくする方法としては、「第二の心臓」ともいわれる足を鍛えることが効果的です。

心臓血流促進法

あお向けに寝て、足を上げて、自転車をこぐように10回まわす

血液を送り出すときは、心臓がポンプの働きをして送り出しますが、もどるときは筋肉の働きが静脈に血流をもどします。
特に足は重力に逆らっていますから、これを鍛えてポンプのカを強くすることで、血流が促進されるわけですね。
ただし、「左の肩がつねにこっている」「脈が飛ぶ」、こういう方は心筋梗塞の可能性もありますから、医師に相談してください。


首は、脳幹部という体のバランスや意識をつかさどる大切な脳に血流を送る通路になっているので、流れが悪くなると、めまいや意識障害・失神などを引き起こします。

血流チェック

首を左右に15秒ずつ向ける
横を向いても何も起こらない方、これは正常です。
でも、横を向くとめまいがする、こういう方はちょっと気をつけましょう。

頭部への血流の通り道である首には、四本の動脈があり、特に背中側の細い動脈は、骨の間をぬって走っています。
そのため、年齢とともに骨量の減少などで骨の形が変化すると、圧迫されて、詰まりやすくなります。
横を向いたり、すこし無理な姿勢をとると、よけいに血流が悪くなるため、めまいがするわけです。
 めまいまではいかないまでも、なんとなく違和感のあるような方、こんな方の血流促進法は「首の筋肉を鍛える」ことです。

首の血流促進法

1 両手を垂らしたまま、肩を耳くらいまで上げる
  それぞれ3回ずつくり返す

2 肩を前複交互にまわす

3 両手を後ろで組み、思いっきり胸をそらす

首はひじょうに安定の悪い部位で、これを支えるには、周りの筋肉を鍛えるしかありません。首の血流促進法は、首の周りの大きな筋肉を鍛えるのにとても簡単で、効果的な方法です。


肝臓

肝臓はまさに血液の塊で、体の機能を維持するためのいろいろな処理をしているところ。
ここの血流が悪くなると、疲労や肝機能障害、さらには重大な病気へとつながりかねません。
この大事な肝臓の血流チェックはほんとうに簡単、手鏡ひとつあればできます。

血流チェック

鏡で自分の顔をよく見てみる

特に何も異常がなければそれでOK。ただ、頬にクモの巣状に血管が浮き出たような感じで、赤くなっている場合は要注意です(クモ状血管腫)。
 これは細かい血管、毛細血管が拡張しているために起こる症状で、体の中を流れているエストロゲンという女性ホルモン(男性にもあります)が、肝臓で代謝できなくなったために起こります。

同じような症状は、手のひらや胸の部分にも見られます。

「おヘソの周りの血管が浮いた」、「吐血した」などの症状は肝機能障害の疑いがありますから、すぐに病院に行ってください。
 では、肝臓の血流をよくするにはどうしたらいいのでしょうか。
これもじつに簡単です。

肝臓の血流促進法

身体を寝かせるだけで血流量増加

さらに…食後30分間は必ず、目を瞑りあお向けに寝る

横になると、各部にあった血液が内臓にもどり、血流量が増加します。
特に食後30分くらいは、目をつぶって何も考えずにあお向けになってください。食後は消化のために血流が胃に集中し、肝臓への流入が少なくなります。

横になることで、脳やそのほかの部位の血液を少しでも多く肝臓に流す効果が期待できます。


腎臓

「老廃物の処理」、そして「血圧や体液をコントロール」する働きをもつ腎臓。
腎臓は、じつに一日ドラム缶(200リットル)8本分 1,6キロリットル)の血液を処理しています。
この腎臓の血流が悪くなると、尿にタンパクが混じるため、尿の泡が消えないなどの尿の異常や、貧血(まぷたの裏が白い)、高血圧(頭痛・肩こり)、さらに腎不全を招くこともあります。
また、高血圧が進むと、視野の一部が欠ける、などの症状も出てきます。

「風が吹くと桶屋が儲かる」的ですが、腎臓の機能がおかしくなり高血圧が進むと、目の後ろ、フィルムにあたる部分(眼底といいます) の毛細血管に出血を起こして、視野が一部欠ける場合が多くなります。

血流チェック

片方の目で新聞の真ん中を見る
広げた新聞紙の真ん中に直径2~3センチ程度の○を書き、四隅には赤いマジックで、少し大きめにご自分の名前を書いておきます。

正常

片目で、真ん中の○を見つめたとき、四隅の文字が「なにかあるな」という程度にすべて見える方は正常。

異常

四隅のうちの-角でも視野に入らない(見えない)ときは、眼の奥の眼底というところに異常のある可能性があります。

腎臓の血流促進法

腎臓は寒さに弱い臓器ですので、とにかく温めるのが一番。位置的には背中に近いところにありますから、腹巻きや使い捨てカイロをあてるのが、大変効果的です。
 しかし、視力障害に加えて尿の異常、貧血が伴ったとさは腎不全を凝ってください。こういうときは、すぐに病院で検査してください。

発芽玄米の効果

発芽玄米は高血圧から高脂血症まで防ぐ

薬効の宝庫で健康的にやせられると判明

壮快

2000.3

マイヘルス社 発行


日本人は、昔からコメを主食にしてきました。しかし、ここ最近気になるのが、日本人の「ご飯離れ」です。実は、このご飯離れが、肥満を原因とした生活習慣病を招いていると考えられるからです。
 実際、朝はトーストにコーヒーという人は多いと思います。しかし、ミルクや砂糖を入れたコーヒーにバタートーストと、みそ汁に焼きノリで食べるご飯、この二つのメニューを比べたとき、どちらが肥満になりやすいかは一目瞭然です。
 予防医学では、食生活がいちばん重要だと考えられています。生活習慣病は、一朝一夕には起こりません。長い期間の習慣が原因なのです。その中でも、最も大きな原因が食習慣です。
 肥満を防ぐためには、主食をご飯にするのがいいと述べましたが、実はご飯の選び方によっても、肥満を防ぐ効果が違っきます。私たちが日常食べているご飯は白米ですが、ほかにも玄米や胚芽米があります。
 玄米は、稲を収穫した後、もみ殻だけを取り除いたもので、ぬかや胚芽が残っているものです。胚芽米はぬかが取り除かれたもので、白米はぬかも胚芽も取り除かれたものです。
 ぬかの部分はかたく、玄米は、食べるときにぬかをかみ砕かなければならないので、その分、かむ回数がふえます。
 実は、この「よくかむこと」が肥満の予防に必要なのです。よくかむと、脳に「満腹した」という信号が送られ、食べすぎる前に満腹感を得ることができるからです。
 肥満の原因には運動不足や体質的なものもありますが、女性の場合、ストレスで「食べたい」という欲求が強くなることがあります。女性はストレスを感じると、「種の保存」という本能が働き、エネルギーを蓄えようとするのです。このときも、よくかんで食べれば満腹感を得られ、食べすぎを防ぐことができます。
 ちなみに、玄米のかたさの成分は、食物繊維です。食物繊維は、便秘の解消など、肥満に対して有効であることがわかっています。この食物繊維は、白米にはほとんど含まれていません。ですから、こういった意味でも、玄米は肥満を防ぐカが強いといえるのです。

脂肪をつきにくくする成分を含有

しかし、どんなに玄米が肥満を防ぐのに役立つといっても、口当たりや味の面で抵抗のある人も多いでしょう。そうした人でも、玄米を〇・五~一㍉ほど発芽させるだけでおいしく食べることができます。
 発芽するとき、ぬかにひびが入るので、玄米がやわらかくなって、とても食べやすくなるのです。もちろん、やわらかくなったとはいっても、ぬかは残っているので、かみごたえはじゅうんあります。
 さらに発芽によって元来玄米か持つアミノ酸(たんぱく質の構成成分)や食物繊惟ミネラルの量がふえたり 新たな栄養成分が加わったりします。
 また、発芽玄米には、体に脂肪をつきにくくするイノシトールという成分も多く含まれていることもわかっています。
 これらのことから、発芽玄米は、肥満を防ぐ効果が期待できるといえます。
 しかも発芽玄米は、白米と同様に炊飯器で炊くことができます。 最初は発芽玄米と白米を混ぜて炊き、食ベ慣れてきたら少しずつ発芽玄米の量をふやすといいでしょう。
 前述のように、生活習慣病は習慣によるものですから、生活指導で改善できます。
 例え高血圧の人は高脂血症(血液中のコレステロールや脂肪が異常に多い状態)や、脂肪肝(肝臓に脂肪が異常にたまっている状態)を併発している場合が多く見られます。これらの病気を治療していくには、何種類もの薬を飲まなければなりません。
 ところが実は、生活習慣を改めて体重をへらすだけで、そういったすべての検査データが改善してしまうことが多いのです。

こうしたことからも、発芽玄米を食事に取り入れ、健康約に肥満を解消することは、さまざまな病気の予防・改善にもつながるといえます。
 私が患者さんに生活指導をするときに、気をつけているのは「プラスの指導」です。

「あれはやめなさい、これもいけません」という「マイナスの指導」では、患者さんは暗くなるばかりで、長続きしません。
 しかし、「これを食べればよくなるよ」という「プラスの指導」だと、一生懸命食べてくれます。
 こうしたことを踏まえ、私のクリニックでも、高血圧や糖尿病のほか、肥満によるさまざまな症状に悩む患者さんの治療に発芽玄米を役立てていきたいと考えています。

雑穀健康法

 

生島ヒロシの健康いちばん 連載ー7

薬に頼らない体をつくる 雑穀健康法

安 心

2000.4

マキノ出版


養生シートで食生活をチェック

健康への関心が高まっていますが、薬やお医者さん任せになっている人も多いのではないでしょうか。今回は「健康は自分で守る」を持論に、積極的に食事指導を行い、生活習慣病の予防に努めている、寺下謙三クリニック院長の寺下謙三先生にお話をうかがいました。

生島
先生は予防医学にカを入れているそうですね。
寺下
はい。日本では自然治癒を促すような学問は遅れているのが現状です。そして体全体を総合して診るような医学もまだまだ未成熟です。そこで私は、患者さんを病気になる前からトータル的に診るクリニックを作ろうと考えました。いまは、健康なときから契約を結び、主治医とクライアントという対等な関係で、個人の体を総合的に診ていくという形で診療を行っています。
生島
ということは、病気になったときだけじゃなく、健康なときから病気にならないためのアドバイスが受けられるというわけですね。
寺下
体が突然にこわれないように、クライアントつまり患者さんの健康管理には、常日ごろから気を配っています。そしていかに薬を使わないで、治すか、クリニックから帰すか、ということを念頭に置いています。できるだけ自然に、その人の自己治癒カを生かして治していきたいですからね。
生島
私たち患者も、できるだけ薬に頼らずに治したいというのが本音です。どんなにいい薬でも副作用は必ずありますし。
寺下
本当に必要なときは薬を飲んだり、手術をしなければなりません。そうならないためには、やはり日ごろから予防していくことが大切です。日本は治療ばかり重視してきたから、医療費も上がるんですね。
生島
でも日ごろから病気にならないように自己管理していくって、口でいうのは簡単だけど、実際にはなかなかむずかしいですよね。
寺下
予防といっても「食事に気をつけなさい」 「運動をしなさい」 とただいうだけでは、あまりにも漠然としすぎていて、実際にどうすればいいか、患者さんにはわかりにくいと思います。ですから私のクリニックでは、まず具体的に食べた物をチェックする『養生シート』を作っています。これだとアルコールや間食の量が一目瞭然でわかります。アルコール依存症の患者さんに、最も効果が出ていますね。それにこれは、患者さんと私がコミュニケーションをとるための道具にもなるので、とても重宝しています。
生島
これはいいですね。漠然と食生活に気をつけようと思っていてもけっきょくは続かないんですよ、中途半端になって。このようにきちんとチェックできて、かつそれにアドバイスがもらえるのはすごく役立ちますね。僕にも一枚ください!
寺下
ええ。これは自己管理に役立ちますよ。食生活を変えるだけで、本当に多くの病気が防げるし改善できるんです。それにお金もかからない (笑)。私のクリニックでは、このような食事指導が重要な柱の一つなんです。
生島
僕は一時期、尿酸値が高くなってしまって、それから食生活に気を配るようになりました。そうしたらいまはずいぶん数値が下がりました。やはり、日ごろの食生活って大きいですね。
寺下
生活習慣病の九割は、食生活が影響しているといわれています。現代人の食事は欧米化して、脂肪が多く食物繊維の少ない食生活にかたよっています。これでは、肥満や糖尿病などの生活習慣病がふえるのも当然です。ごはんにみそ汁を基本とする、日本本来の和食が理想なんですけど。
生島
子供たちの食生活も心配ですね。いまはコンビニやファーストフードで食べ物が手軽に買えるし、レトルト食品やインスタント食品もあふれ、子供たちはお袋の味ならぬ″袋の味″で育ってますからね。
寺下
生島さんのいうとおりですね。うまくバランスのとれていた日本の食生活が、戦後急速に脂肪分の多いかたよった食生活に変化してしまいました。このままだと、日本人は体の根本からおかしくなるんじゃないかと心配しています。
生島
お年寄りは比較的元気な人が多いのに、若者は目もうつろで、活気のない人が多いような気がします。これも食生活に関係があるんじゃないかと思うのですが。
寺下
そうですね。いまのお年寄りは、長年にわたって栄養バランスのとれた和食を食べているから、丈夫で長生きなんです。でも、若い人たちは、これほど長生きできるか心配ですね。中高年の病気は若いころの食生活が大きく影響しますから。
 それと最近は、いつでもどこでも食べ物が手に入るため、「おなかがすく」という感覚がよくわからない子も多いような気がします。「おなかがすく」という感覚や経験も、体にはとても重要なことなんですよ。
生島
食生活はすぐにでも改善していくべきですね。

十穀ごはんはまさに完全食

生島
先生はそんな現代人の栄養不足を危惧して 「十穀ごはん」を作ったそうですね。
寺下
現代人は忙しくて、なかなかバランスのとれた食事がとれないのが現状です。また一度に必要な栄養素がとれる完全食というのもない。そこで十穀米を考案したんです。
生島
十穀米とは具体的にどんなものなんですか?
寺下
米以外の、キビやアワなどの十種類の穀類を普通の白米にまぜて炊いたごはんです。十種類の穀類には、食物繊維やカルシウムなど現代人に不足しがちな栄養素をとれるように、カラス麦、ハトムギ、キビ、ソバ、米胚芽などの穀類と、黒ゴマ、エゴマ、ケシの実、アマランサスなどの種子、それにカルシウムの吸収を促すビタミンDの豊富な白キクラゲを配合しています。
白米2合あたり約15gの雑穀を加えてまぜ、あとは普通に炊くだけで出来上がります。これに納豆や豆腐、みそなどといった大豆食品をあわせてとれば、栄養のバランスも完璧ですね。私はごはんを中心とした和食を見直すと同時に、十穀ごはんを食べることをすすめています。
生島
生活習慣病に悩む人には効果的な食材ですね。
寺下
コレステロールや中性脂肪の多い人にはとくにおすすめです。体重もじわじわへってきます。免疫力が高まるので、病気になりにくい体になるというわけです。
生島
これだけいい食事をとったら、病気のほうから逃げていきますね (笑)。
寺下
白米になれている人は最初、味になじめないかもしれません。その場合は、カレーをかけるとおいしいですよ。

新しい「心理医学」の手法も取り入れる

生島
先生は実際にどういう食養生を行っているのですか?
寺下
私は元来、好ききらいが多く、糖尿病の家系なんです。好き放題に食べていたら後々糖尿病になるのは目に見えているので、毎日体重計にのることにしています。
 これは心理医学なのですが、こうすると体重に気をつけなければならないと脳が覚えて、脳から食欲を抑える信号が発せられるようになるんです。また何を食べたか手帳に必ず記入します。それで自己管理をしていくんです。もちろん毎日1食は十穀ごはんを食べています。
生島
厳格ですね。
寺下
そうでもないですよ。焼肉が好きなので、月1回とか回数を決めて行っていますし。好きなものをゼロにするのはよくないですね。かえってストレスがたまってしまいますから。
生島
先ほど先生は「心理医学」という言葉を使いましたが、これはどういうものなんですか?
寺下
精神科でも心療内科でもない新しい領域で、簡単にいうと、心が体に及ぼす影響を研究する学問といいますか。心の持ち方は体にとても大きな影響を及ぼすんですよ。「こういう、いいものを食べているんだ」「これだけ、体に気を配っているんだ」と意識をするだけでも、体にはいい影響を与えるんです。
生島
僕もいろんな健康法を試しているから、それが脳にインプットされて、知らず知らずに「これだけしているんだ」 という自信になって健康でいられるのかもしれないな。
寺下
そうですね。健康にいいということを試すだけで体にいい影響を与えているんです。
生島
ようし、これからもどんどんいろんな健康法を試していくぞ!
 今日はいろんな話が聞けて、とてもためになりました。「健康は自分で守る」  けっきょくはこれにつきますね。
 どうもありがとうございました。

頭痛でわかる、隠れた病気

COSMOPOLITAN

その痛み、もしかしたら「病気」のサイン!?

頭痛でわかる、隠れた病気

COSMOPOLITAN

2000.9

集英社 発行


  • 強い頭痛は、脳の病気の疑いも。慢性頭痛はコントロールできる
  • 危険な痛み、症状を見逃さない!こうなったらただちに受診
  • 軽くすることが可能な、ストレスから起こる片頭痛や筋緊張性頭痛
  • いつもと違う、初めての痛みに要注意!
!! 頭が痛い !!

●痛みが続く→慢性副鼻腔炎、疲れ目、虫歯 他
●痛みを繰り返す→後頭部が締めつけられるように痛い→筋緊張性頭痛
●→頭の片側が 激しく痛む→目のまわりに水疱ができた →ヘルぺス
●  〃 → 〃  →三叉神経痛
●  〃  → 頭の片側がずきずき痛む 片頭痛●次第に痛みが強くなる→けいれん発作がある→ 脳腫瘍 
●急な痛み→発熱、 のどが痛い→インフルエンザ、風邪、副鼻腔炎
● 〃 →意識障害、けいれんくも膜下出血、髄膜炎など


強い頭痛は、脳の病気の疑いも。慢性頭痛はコントロールできる

頭部の症状で一番気になるのは、やっぱり頭痛。強い痛みがあったりすると、脳の病気ではないかと心配になってしまう。
「頭痛とひとくちにいっても、原因はさまざま。重大な脳の病気から、精神的なストレスや、虫歯などまで考えられます。すぐに受診すべきかどうかは、頭痛のタイプを知っておくと、ある程度わかるでしょう」
と寺下謙三先生は言う。頭痛が突然襲ってきたのかどうか、頭痛以外にどんな症状があるかで、病気の深刻度を見極めることができるのだ。
「ここで注意したいのは、その頭痛が、体験したことのない痛みかどうかということ。痛みの強さにかかわらず、初めてのタイプの頭痛があったときは、必ず医師に相談することが大切ですね」


危険な痛み、症状を見逃さない!こうなったらただちに受診

頭痛でただちに受診し治療を受けなければならないのは、急な強い痛みで、嘔吐や吐き気、意識障害、けいれんなどを伴なうとき。よくあることではないけれど、もし起こったならとても危険な状態だ。くも膜下出血や髄膜炎の恐れがある。
 くも膜下出血は、何らかの原因で血管が破れ、くも膜と脳の間に出血が起こるもの。「バットで殴られたような」と表現されるほどの強い頭痛と嘔吐などが起こる。髄膜炎は、細菌やウイルスなどの感染で脳の髄膜に炎症が起きた状態で、高熱を発し、頭痛と意識障害などが起こる。
 数週間かけて次第に強くなってきた頭痛で、突然嘔吐したり、けいれん発作があるときも、すぐに受診する必要がある。脳腫瘍で症状が徐徐に進行していることがあるのだ。
 一方、急な頭痛でも、風邪の症状があるときは、インフルエンザや風邪、急性副鼻膣炎が原因となっていることが多い。2~3日様子を見て、症状がつらいときには病院へ。


軽くすることが可能な、ストレスから起こる片頭痛や筋緊張性頭痛

20代の女性に多いのは、繰り返したり、長く続く慢性の頭痛。困ったものではあるけれど、「慢性の場合は、重大な病気はまずありません。案外心配のない、コントロール可能なものが多いのです」と寺下先生。
 片頭痛は特に女性に多い。頭蓋内の血管が拡張し、ずきずきと痛むのだが、頭痛がおこる前に目の前がチカチカしたり、半身がしびれたりすることも。ストレスが影響するが、チョコレートやチーズ、赤ワインなどの食品が引き金となるケースも多い。
 筋緊張性頭痛は「締め付けられるような痛み」で、肩や首のこりを伴うことが多い。ストレスから起こることがほとんどだ。これらの頭痛は、薬物療法や日常生活の注意で軽くすることができる。我慢していないで、1度、神経内科を受診したい。
 顔の片側が激しく痛み、そのときは数秒で治まるが、同じような痛みが何度か起きたというときは、三叉神経痛かもしれない。これはヘルペスウイルスの感染にかかわって、起こることもあって、痛みの2~3日後に、痛みの出たところに沿って水泡ができたときなどに考えられる。水泡自体は1週間ほどで治るが、あとにウイルスが潜んでいて、何度も痛みを引き起こすことも。
 いずれにしても、三叉神経痛となって痛みが頻繁に繰り返されるときは、薬物療法や神経ブロック療法などの治療が必要なことがある。
 さて、なんとなく頭痛が続くというときは、副鼻膣炎が治りきらずに慢性化しているときや、疲れ目や、虫歯などが原因となっていることもある。心あたりがあるときは、眼科や歯科で相談してみよう

医療サービスの品質管理と「標準治療」

表紙

医療サービスの品質管理と
「標準治療」

TKC医業経営情報 2002-10月号

2002.10.1

TKC医業経営研究会発行


患者が医療機関を利用する場合、情報開示等により医療選択の幅が広がったために、「もっとよい治療方法があるのでは」といった患者の心配が以前にも増して表面化してきたという。
患者に適正な医療を提供するためには医師の的確な医療判断とマネジメント性が重要になるが、近年は、医療技術の高度化等により治療方法の選択肢が増え、専門医の間でも治療方法にバラツキが見られることも少なくない。
このような情勢の中、日本の医学界においては、厚生労働省や各学会などが主体となって「診療ガイドライン」の作成に乗りだし、また一方では、患者にも診療のディファクトスタンダード(事実上の標準)を理解してもらおうという動きも見られる。

今回は、『標準治療 2002・2003』(日本医療企画)の総監修者である寺下謙三氏に、医療の質を担保するうえでの標準治療の重要性についてうかがった。

聞き手 本誌編集人 梅田和良(医業経営コンサルタント・経営)

治療のディファクトスタンダードを知ってもらうために
梅田
厚生労働省は病気ごとに治療法の目安となるガイドラインを作成する方針ですが、今回、それに先駆けて『標準治療2002・2003』を出版されました。
その経緯と趣旨を教えてください。
寺下
それには、いくつかの複合的な理由があります。当事務所では医療の水先案内を主体とした医療相談や医療判断支援を行っていますが、相談にみえる患者さんの不安の声を分析すると、「自分の受けている治療が妥当かどうか」の一言に尽きます。
しかし、それらの患者さんがみんな、ひどい治療を受けているのかというと、そうではないことも多いのです。 標準的なよい治療を受けているのに、「もっとよい方法があるのでは」という不安からいらっしゃるケースもあります。特に最近は、インターネットや雑誌で患者さん自身が、病気について調べられますから‥‥‥。
しかし、インターネットや雑誌、新聞などには特殊なケースの情報が出ていることも少なくないのです。そんなことは一般的にはやっていないというような治療方法が載っていたりします。それを見た患者さんは「自分はこれで助かるかもしれない」というような過剰な期待をしてしまうことがあります。ですから、私はいろいろな勉強会などで話す際には、基本を押さえておくことが大事だとよく言うのです。基本があって初めて応用が利くからです。ですから、今の医療の基本とは何かということを、ぜひ一般の人に知ってもらいたいと思いました。
また、これからの医療では、標準治療やガイドライン、EBM (evidence based medicine)といったことがおそらく言われてくると思います。
実際にこの書籍を企画したときには、数十の病気に関しては学会とか厚労省主体で方イドラインを作っていましたし、アメリカでも100くらいの各疾患のガイドラインを作っていたと思います。しかし、そういうものは公的な標準であり、実際に知りたいのは日本の現状、つまり、ディファクトスタンダード(事実上の標準)です。良質な医師が行っている標準的な治療を紹介し、患者さんが自分の受けている治療をそれで調べて、大きな隔たりがないということがわかれば、安心して治療を受けられます。
また特殊な治療というものも存在します。この本のなかでも少し解説していますが、特殊な治療というのは期待も大きいですが、副作用や費用といったリスクも大きくなるものです。患者さんには基本を押さえたうえで、対応してほしいと思っています。私も医学セミナーをする場合、話をおもしろくするために、きわものの話をすることがありますが、意外と基本がわかっていないのに、そういう勉強ばかりする人が多いという印象があります。
梅田
それは患者側がですか。
寺下
そうです。一般の方です。
週刊誌等の見出しは、どうしてもそういう情報になります。ですから、静脈と動脈の差も言えないのに、ものすごくエイズに詳しい人もいます。ただし、そうなるのは無理もないのです。自分の病気のことは自分で知るべきなのに、理科系のごく一部の人だけが体のことを習って、ほとんどの人はカエルの解剖くらいしかしておらず、全然習う機会がなかったのです。
ですから中高生のときに、人間の体と健康の基本をもう少し勉強する機会があればいいと思います。
しかし、現状ではありませんから、英会話を習うように治療の基本を知りましょうというのが本書の方針です。
アメリカでこういうガイドラインを作るときは、一般向けとプロ向けを作ります。日本はどうしてもプロ向けばかりで、一般向けはあまり作ろうとはしません。それで一般向けに何か解説書を出したいと思ったのです。
コストと品質が比例する仕組みが必要
梅田
患者への情報開示に大きな影響があるものとして、本年4月からの医療機関に対する広告規制の緩和があります。
この改正で、専門医の認定、治療法、手術件数等、医療内容に関する情報等が広告できるようになりましたが、医療機関への影響はどうでしょうか。
寺下
手術症例数については、診療報酬改定で導入された手術の施設基準の問題があり、先日の新聞に、脳外科の先生が病院を移った際に、その病院の動脈癌の手術件数が約40例しかないので手術の施設基準をクリアできない。以前勤務していた病院は約80例ありクリアしていたのに、同じ医師が病院を替わっただけで、診療報酬が変わるのはあまりにもおかしいのではないかという記事が掲載されていました。
その後、施設基準については見直しがありましたが、こういう規制があるために、水増し手術で手術件数を増やす病院がでてくると、規制がまた新たな問題を生んでしまうことにもなりかねません。厚労省は「医療倫理に基づいた、医師の良心に委ねる」とコメントしていますが、それだったら、広告を全く自由にしてしまえば、消費者も選別する目を持つと思うのです。
今まで医療機関に広告規制があったのは、事実に反する広告をしたり、過剰な広告をしてはいけないという主旨だと思いますが、放っておくと悪くなるという考え方でいくのか、放っておくと良くなるという考え方でいくのか、どちらかにしないと中途半端な感じがします。それが結局は患者さんに跳ね返ってくると思います。
以前、当クリニックで総合内科外来という診療科を標榜しようとした際に、管轄機関から「何という違法行為をするんだ」と言われたことがあります。総合内科外来というのは、何でもトータルな相談を受けましょうということで、むしろ患者さんのためにわかりやすくしたつもりでいたのですが、それを違法行為と言われて驚きました。現在では、総合内科は当たり前になってきています。
梅田
今は内科もいろいろ分かれているので、患者さんはどこへ行っていいのかわからない。
寺下
そうです。その水先案内こそが本当は大事なのです。
それで標榜しようとしたのですが、規制の弾力的運用ができる体制がなく、話をしても相手が勉強不足で理解してもらえませんでした。
梅田
今東京では、病医院で具体的に広告表示するようなところは出始めていますか。
寺下
外から見た感じでは、あまりないように思います。たぶん地域の医師会で決めていかないと動けないでしょうね。
また、開業医の先生は医療機関イコール個人で、広告の方法もわかりやすいのですが、病院に勤務している医師の場合、「こういう病気の治療が得意です」というような医師個人の情報をもう少し開示してもいいのではないかと思います。
大きな病院だと100人以上の医師がいることもあるわけですから、医師の情報を開示してあげれば、最終的には患者さんが判定できます。いくら自分がこの病気が得意だといっても、評判が悪くなると患者さんは減りますから……。いつもレストランにたとえたりするのですが、「これはおいしいですよ」といくら言っても、1回食べてまずかったら、だんだんお客さんは来なくなります。実味しかったらお客さんは増えてきます。
今までは病院にMRIやCTがあるといった施設やシステムとしての評価が中心だったので、もう少し医師の技術を評価すると言う意味で、個人の広報をしてもいいのかもしれません。
梅田
日本医療機能評価機構やlSOなどの外部評価を受けることで、体制を強化し、医療の質を高めようとする動きがありますが、先生はどのようにお感じになっていますか。
寺下
医療機能評価やISOが、すベて医療の質に関係するかどうかは疑問ですが、たとえば医師を含めたスタッフの意識が高まることは間違いないと思います。信頼性の観点から、医療機能評価機構のような公的な評価がいいのか、民間の評価機構ができてくるのがいいのか議論が待たれるところです。
また通常、コストと品質は比例するものです。
例えば、同じ会社で作っている自動車では高ければ高いほど品質がいい。同じレストランで1,000円のランチと2,000円のランチだったら、やはり2,000円の方がトータルとしては良いものが出て きます。
ところが、医療の場合はコストが一定なので、この相関関係はありません。
たとえば、質が高いと評価されたら、保険点数が11円になるのだったらリレーションがかかりますが、それがないのです。部分的には、医師の経験年数や手術症例数などの施設基準がありますけれども全体にはありません。そのリレーションがないと、医療機能評価も形骸化してしまいます。結局、昔の教授回診と同じで、患者さんを見ているはずが、教授のほうを見てしまっていたということにもなりかねません。
教授回診もはじめから悪かったわけではないのです。一番臨床経験の豊かな教授に自分の患者さんを診てもらい、普段自分が診ていてわからないことをこの際に聞こうというのが本来の教授回診です。ところが臨床経験の少ない教授の場合でも、その権威になびいていくだけになってしまった。
心配するのは、医療機能評価で評価されるところばかりきれいにして、肝心の医療内容がおろそかになってしまうこともあるという点です。
ですから、コストと品質がリレーションしないというなかでの医療機能評価はものすごく難しいと思います。
梅田
認定を受ける医療機関が増加し、患者にも認知されるようになると、そういう外部評価を受けているという表示が入り口にあるだけで、相当選別されていくかもしれませんね。
寺下
結果としてそういうのを見てもらえればいいと思います。
患者さんになぜ人気があるのかと思ったら、やはりこういう評価をしたら高かったということであるべきで、要するに、実際には患者さんを診ていないけれども、教授に見せるカルテはきれいに書いたというのは、本末転倒です。
意外に、優秀で患者さんにべったりの医師はカルテをきちんと書いていなかったりするのです。それは患者さんに一生懸命でカルテを書く暇がないわけです。それは極端な例ですが・・‥‥。
ですから、外部評価もいいのですが、プラスアルファで何かもう一つの仕組みづくりが必要ではないかと思います。
たとえば、現在は診療報酬点数1点が10円です。交通事故とかは20円ですが、これを病院が自由に設定でさるようにして、たとえば1点を9円にしてもいいわけです。大まかに例示すると、1点10円で患者負担が3割ですから、1点9円にすると患者さんは2割しか負担しなくていいわけです。1点7円にしたら負担がゼロになる。安いところには患者さんが来ます。また腕に自信があるところは1点を30円にしたら、7円は国で負担しているわけですから23円分を患者さんが負担しなければなりません。しかし、それでも患者さんが集まれば、その医師の腕を評価しているわけです。
私は患者さん、つまり消費者が一番賢いと思うのです。自分の命がかかっていますから。ISOも医療機能評価も命がかかっていませんから、その差があるのではないかと思います。ただし、判断を消費者に任せると安定するまで犠牲者が出る可能性があるという問題もあり、机上の理論が実際にうまくいくかはわかりませんが……。
EBM導入の際に必要な制度の弾力的運用
梅田
米国では診断・治療・予後などのデータを解析し、診療に利用するEBMが行われているそうですが、どの程度活用されているのでしょうか。
寺下
EBMの基本的な考え方はだれもが賛成するところだと思います。
ですから、それを実際に運用で きるのかどうかということだけが問題です。身近で簡単に使えないと、日常的に使うのは難しいと思います。ですから、もう少し普及するためには、まず、医師ならだれもが使えるようなシステムの普及が必要ではないかと思います。そして、これも弾力的運用が重要です。「EBM=診療ガイドライン=厚労省」ということに対して反発している医師も多いようですが、それは統制医療になるという考えからです。
私は、日本中どこへ行っても同じ医療が提供される「コンビニ医 療」を望むのか、他にはない名人芸の医療を望むのかは、患者さんにとっては二者択一の問題ではないと考えています。たとえば、どこへ行ってもファミリーレストラン並みの100点満点で70点くらいの料理が食べられるという安心感があって、そのうえでとさどきはすごい料理人がいる鉄人のお店にも行さたいというような、患者さんが医療を自由に選択できるという環境が重要だと考えています。
EBMというのは、そういう状態を否定するものではありません。
梅田
EBMや診療ガイドラインが整備されてくると、それに反した診療を行って診療報酬請求した場合に、指導を受けるケースもありえますね。
寺下
統制医療というのはそういうことです。
盲腸はこの値段というようにコストまで反映してくる。反対派の論拠もそこにあるのだと思います。ですから、EBMを制度化する際には、弾力的運用ができるようにしてほしいと思います。EBMを重視するあまり、目の前の患者さんが急変しても何もで きなくなることもあります。
また、これはあってはならないことですが、包括支払いの場合だと点滴が少なくなり、出来高払いだと点滴が増えるというように診療報酬請求の仕組みで医療が変わるという現象があります。このこと自体おかしいのですが、事実です。
ですから、そういう意識が働くことを前提に仕組みを作らなければなりません。
梅田
医の倫理から離れて、金儲け主義に走ってしまう医師も出てくる可能性があるわけですね。
寺下
これはものすごく難しいところです。
当院では自由診療を行っていますから、報酬額を自由に決められます。そうなると、私情が入ってきて高くても安くても難しいので、当院の医療判断部のドクターとも話して、少なくとも薬に関しては出しても出さなくても、損も得もないようにしました。
そうすると、純粋な気持ちで薬が必要かどうかのアドバイスができると考えたからです。
ところが、普通の出来高払いだと薬を多く出すかどうかで評価が決まり、出すか出さないかの判断をしたことについてはほとんど評価されません。すると、人間は弱いですから評価される側に向いてしまいます。ですから、評価される側を向きすぎないこと、そちらを向くことがイコール患者さんに向いているのかどうかを考えることが重要だと思います。
医療判断をする場合の3つの着眼点
寺下
医療判断とか医療決断を行う際にはEBMだけではできないので、当院では次の3つの観点から取り組んでいます。
まず1番目は科学的根拠です。我々は科学的根拠による判断基準と呼んでおり、EBMに則っているものだと考えています。
2番目は心理学的情況です。心理学的情況というものは、たとえば手術療法と薬療法の2つの方法を比べて、科学的に手術の方が治癒する確率が高いと思っても、心理的に非常に手術が怖いと思っている患者さんの場合は、薬を選んだほうが良いかもしれません。そのようなことを心理学的情況と言っています。そして、3番目は社会学的背景です。これは経済的な問題や仕事の問題などがあります。たとえば、プロゴルファーの杉原氏は前立腺癌でも、手術ではなくホルモン療法を選んだそうですが、EBMから見たら、手術70点、ホルモン療法60点ぐらいだったのではないかと思います。それでも、あえて60点の方を選びました。あと何年聞かゴルフを続けたい。今休んだらもうだめになる。それで手術を受けない治療を選んだのです。これが社会学的背景です。EBMではその時点では絶対に手術がいいわけですが、前立腺癌はいろいろな治療方法がありますから、たとえそうだとしても、社会的理由で逆を選ぶこともあります。ですから、我々は先の3本柱で医療決断をする際のアドバイスを行っています。もちろん、最終的にはそれを踏まえて本人が選択することなります。
梅田
そういう判断について相談を受ける場面は相当あるんでしょうね。
寺下
日常的にそういう相談はあると思いますし、医師はもっとそのことを意識すべきだと思います。
某大学の学生に抗癌剤の選択についてのシュミレーションをしたことがあるのですが、ある抗癌剤が開発され、ものすごく副作用が強く、打った途端に1割の人が死んでしまう。ただし5割の人はどんな癌も治る。4割の人は治りもしないし副作用も起こらない。
そういう仮説を立てます。そして、この薬を自分の末期癌の愚者さんに使うかどうか、学生に手を挙げてもらうのです。すると意見が分かれて、約6割の学生は使い、約3割は使わない。1割は迷って決断でさないというような結果がでます。
では、その患者さんが自分の親とか、一番大事な人だったとしたらどうしますかと聞くと、たいていの場合、使う人の数が大幅に減ります。副作用で目の前で死んだら困りますから、それが怖くなって、真剣に考えたあげく使う人が減るのです。そして、今直はあなた自身が患者だったらどうしますかときくと、今度は圧倒的に使う人が増えます。自分だったらそういう覚悟で使うというのです。学生は真剣に考えているのですが、シチュエーションによってこれだけ決断が違ってきます。これは現役の医師に聞いても判断が分かれるところでしょう。
これだけ判断が揺れるんだということを踏まえたうえで、その基本となるがのEBMだと考えています。EBMイコール医療判断ではないというような弾力的運用ができるのであれば、EBMは非常に有効になると思います。
患者との信頼関係を持った医師のアドバイスが重要
梅田
医療事故にはいわゆるケアレスミスと医師の医療判断のミスがあると言われていますが、特に後者のミスは外部のものにはわかりにくいのですが、それらを防止する方策について先生はどのようにお考えでしょうか。
寺下
難しいことですね。
私は、たとえば、ミスを起こしたら二度と同じ種類のミスは繰り返さないということが大事だと思います。
これはある本で読んだのですが、航空業界では同じミスを二度と起こさないと言われているそうです。事故の原因を調べて、場合によっては1~2年かけてでも徹底的に検証しています。ですから、医療機関についても失敗を徹底的に調査するという体制づくりが重要だと思います。
日本の場合は、当事者が隠蔽したり、マスコミが極端に批判して、冷静な調査ができていないように思います。ですから、もう少し冷静になって、ミスは起こるものだから許すとか許さないではなく、同じことを繰り返さないように徹底的に調査して、その理由を解明することが必要です。ミスを報告すると責められたり、医師生命を絶たれたりするので怖くなって隠すという現状を改善し、ミスを犯しても冷静に調査を受けられて再発防止に役立てられるというような風潮が望ましいと思います。
梅田
医療判断のミスを防止することはなかなか難しいでしょうね。
たとえばガイドラインに沿った治療をしていても亡くなる場合もあるわけですし、たとえ医師が選択した治療方法が最善策でなかったとしてもその責任を追及できるのかどうか‥‥。
寺下
難しいですね。
一言で言えば信頼関係を作るということになるのでしょう。もちろん、それは医療判断の基本です。しかし、正しい医療判断で必ず治癒するのかというと、そうではないのです。
たとえば、私が賭のアドバイザーだとします。そして、ここに黒い玉と白い玉が全部で100個入った箱があり、ある方がこの中から1個取り出してそれが黒か白かを賭けるとします。その時、私が51個の玉を調べたら全部黒であることがわかりました。そうしたら、当然私は、その方に「黒に賭けなさい」とアドバイスをします。黒が51個以上あることがわかっているわけですから・…‥。しかし、アドバイスを受けた方は白をひく可能性もあるわけです。そして、もし白をひいたときは、私のアドバイスは正しいにもかかわらず、間違えたと責められるかもしれません。
さらに、私は費用をかけてその箱を調査し70個の黒い玉があることがわかったとします。これは医療で言えば検査ですが、そういう投資をすべきかどうかも問題です。なぜかというと、どちらにしてもアドバイスは同じだからです。つまり、70個あることがわかっても私は「黒に賭けなさい」と、先ほどと同じアドバイスをするからです。それでも、その方は残り30個の中の白をひくかもしれません。そのあたりが医療判断に非常に近い。それは確率の世界ですから…・‥。
そして、私が黒とアドバイスしたのにアドバイスを受けた方が白をひいてしまった場合、私が調べもせずに、アドバイスしたのではないかと不信感を持たれるかもしれません。そのときに修復する方法はいくつかあると思います。
まず一つは権威です。私が世界に名だたる賭けのアドバイザーだとわかっていれば、絶対に文句は言えません。もう一つは人間関係です。長年の友達で、あいつはこういうことを専門にしているみたいだということがわかっていれば、どうかなと思っても、「お前が言ったんだったら大丈夫」という信頼関係ができます。特に医療の場合は、患者さんの立場に立って専門の治療に結び付ける際の判断をしてくれる顧問医のような存在が重要です。そういう人が間に入ることによって、医療機関との信頼関係が生まれやすいと思います。
信頼関係を作るためには時間がかかります。しかしコツコツ貯めた信頼関係というのは、大きな尊敬に通じると私は思います。権威は違います。いきなり尊敬を求めようとするものですから‥…・。本当に信頼に伴う尊敬の念があるとうまくいくのではないでしょうか。医師も相手が信頼してくれているとなると、安心してその人のためにアドバイスしやすくなると思います。

現代『病気』事典内科

Health Report

現代『病気』事典内科

MEN'S NON-NO

2002.11

集英社 発行


皆さんは人間ドックに入ったことがありますか?

病気なんて関係ない!と思っていたけど、近ごろまわりでぽつぽつと病気の話を聞くとふと気になる。体調が今ひとつだと、もしかして自分も?・‥‥心配だ。そこで、ぽくらの世代に増えている病気の基礎知識を幅広くおさえた。
病気になりにくい生活のアドバイスもチェック

menu

  • 過敏性腸症候群
  • 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
  • 膵 炎 すいえん
  • 肝 炎 かんえん
  • 脂肪肝 しぼうかん
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 群発頭痛
  • 糖尿病
  • マイコプラズマ肺炎
  • ロングフライト血栓症

内科

過敏性腸症候群……下痢と便秘を繰り返す

電車の中で突然、きゅるきゅると下腹部が痛み、がまんを重ねて頭の中は真っ白。脂汗まで出てきて、ついには途中下車してトイレに駆け込む…‥・こんな経験はないだろうか1度くらいなら調子が悪かったってことだけど、しょっちゅう起こるようなら過敏性腸症候群かもしれない。

この病気、腸自体が悪いわけではなく、ストレスやプレッシャーに腸が敏感になり、腹痛や下痢、便秘を起こしたり、下痢と便秘を交互に繰り返したりしてしまうのだ。

全体としては女子にやや多い病気だが、実は男にも増えている。男の場合は下痢型が多く、あらかじめトイレの場所を確認して地図に書き込んでおかないと、下痢が心配で街にも出られない、なんてこともあるとか。まずは医者に相談して整腸剤などの薬をもらおう。ふだんから自分なりのストレス解消法を心がけることも大切だ。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍……空腹の時胃が痛い

飲み会が続いたりすると胃腸の調子が悪くなることがある。おなかの上のほう、胃のあたりが痛い場合は胃炎の可能性がある。

健康な胃の中は、胃酸など粘膜を攻撃する因子と粘液など粘膜を守る因子のバランスがとれている。そこに暴飲暴食や強いアルコール、大量のカフェイン、タバコなどが入ってくると、バランスがくずれてしまい胃の粘膜に炎症が起き、胃炎になってしまうのだ。

軽い胃炎なら自然に治ることも多い。けれど、長引いたり繰り返されたりすると胃や十二指腸に潰瘍ができてしまう。朝起きたときやおなかが空いたとき胃の上のほうが刺しこむように痛い、そこを指で押さえるとかなり痛い、胸焼けやげっぷなどが胃潰瘍、十二指腸潰瘍の症状だ。

幸い今ではいい薬があるから胃潰瘍でも手術になることは少ない。ただし、じっくり治療し、生活改善しないと、また、なんてことにもなりかねない。

膵炎(すいえん)……へその周りから背中に、激痛が

急におなかが痛んだ、それもはんばじゃなくて全身に冷や汗をかくほどの強い痛み‥‥こういう「急性腹症」には食中毒や胃潰瘍のひどいとき、尿管結石などなどいろいろな原因がありえる。もしその痛みがへそのわきに走り、背中にかけて痛かったのなら急性膵炎の可能性が高い。

脾臓は胃の裏側にある、いくつもの消化酵素を出す器官だ。ここに負担がかかると消化酵素が出すぎてしまい、膵臓自身を溶かしはじめる。これが急性膵炎だ。原因はいろいろあるが、男に圧倒的に多いのはアルコール性膵炎。酒が膵臓を痛めつけた結果というわけ。

しょっちゅうある病気というわけではないが、「酒には自信があり」という人間ほど要注意。おへそから背中へという強い痛みがあったらすぐに病院へ行こう。場合によっては入院となることもある、我慢のしすぎは禁物だ。

肝炎(かんえん)……食欲が無く体がだるい

食欲がない、体がだるい、熱っぽい、こんなかぜのような症状が1週間ほど続いたら、ウイルス性肝炎だったということがある。

ウイルス性肝炎にはいろいろな型があるが、若い年齢に比較的多いのはA型肝炎とB型肝炎だ。どちらも最初に発熱やだるさ、食欲不振などのかぜのような症状が出て、やがて黄疸(おうだん)が出ることもある。病院で肝炎だとわかれば、薬の治療と食事指導を受ける。A型は慢性化することはないし、B型もおとなになってから感染した場合は慢性化することはまずない。ただし最初から重症という場合は治療が長引くことがある。

覚えておきたいのは、A型肝炎は食べものやキスで、B型肝炎の場合はキスやセックスでうつることもあるということだ。だから病気をまき散らさないためにも、おかしいと思ったら病院へ行って、検査を受けることが大切だ。

脂肪肝(しぼうかん)……体がだるいアルコール好き

脂肪肝とはその名のとおり、肝臓に中性脂肪がいっぱいたまった状態だ。
肝臓は辛抱強い臓器で、少々トラブルがあっても症状が出ることは少ない。
脂肪肝でもほとんど自覚症状はなく、あってもせいぜい体がだるいというくらい。ところが肝臓には脂がぎっしり詰まって働きが落ちているのだ。

最も多い原因はお酒の飲みすぎ。そして脂肪肝になっているのにお洒を飲み続けているとアルコール性肝炎や肝線維症、肝硬変になる。アルコール性肝炎や肝硬変は命にもかかわる重大な病気だ。だからとにかく酒好きの人間は定期的に検査を受けるしかない。そして脂肪肝とわかったら食事療法と運動療法。当然禁酒。それがイヤなら脂肪肝にならないように、酒とは適度に、上手につき合う。これが一番なのだ。

睡眠時無呼吸症候群……いびきが途絶えると人に言われる

彼女や家族から、「突然いぴきが止まるときがあるよ」と言われたり、夜中に「呼吸してないみたい」と揺り起こされたことがあったら、この病気の可能性が。

「睡眠時に10秒以上の呼吸停止が1時間に5回以上」が定義なので、1回や2回いぴきが止まったからといって即、病気というわけではないが注意が必要だ。

この病気になりやすいのは、首が短かったり太っている人。それが疲れていたり、アルコールを飲んだりでぐっすり眠っていると、舌やのどのまわりが内側に落ち込んで気道をふさぎ無呼吸となる。そのまま命にかかわることはないが、睡眠の質が悪くなるために、昼間もボーッとしたり居眠りしがちになって、これが事故につながったりもする。思い当たるときは一度、呼吸器内科か耳鼻咽喉科で相談してみよう。

群発頭痛……目の周りの痛みが繰り返し続く

どちらか片方の目の周りや目の奥がすごく痛い、それが毎日決まった時間に起こり、数週間も続くというのは群発頭痛かもしれない。

これは片頭痛と同じ種類の頭痛で、何かの病気の症状として出ているわけではなく、痛みがおさまれば何の問題もない。とはいえ、とにかく痛みがつらい。片頭痛の場合は女の子に多く、チョコレートやチーズを食べた、赤ワインを飲んだ、光刺激があったなどが痛みを引き起こすきっかけになるので、これらを避けることで予防も可能。いっぽう群発頭痛の場合はきっかけにアルコールは関係するようだがそれ以外はいまひとつわからない。

痛みとともに鼻詰まりや鼻水、涙が出ることもあってやっかいだ。予防薬や痛みを止める薬を病院で出してもらおう。

糖尿病……やたらと水分をとるトイレが近い

中年の病気と思いがちだが、最近ではぼくらの世代に増えている。

何らかの状況でインスリンの働きが悪くなり、血液中のブドウ糖の量が多くなる病気なのだが、こわいのは長年放っておくと網膜症になって失明したり、腎不全になったり、動脈硬化が進んで心筋梗塞になったりすることがあるからだ。

遺伝的な要因に暴飲暴食、肥満、運動不足、ストレスなどの要因が加わると発病するのだが、若い年齢に増えているのは食生活のせい。ドカ食いしたり、アルコールやファーストフードをがんがんとると、遺伝的な体質がある人はこれがひきがねになってしまう。問題はカロリーとそれを取り入れるスピード。アルコールを飲まなくても、コーラやジュースをがんがん飲めば同じだ。

やたら口が渇いて水物を飲む、トイレが近い、だるい、太ったというときは要注意。逆に、急に体重が減ったというのも糖尿が進んでいるサイン。必ず病院へ行こう。

マイコプラズマ肺炎……せきが長く続いている

マイコプラズマというのはウイルスに似た病原体のこと。かぜのもとにもなるのだが、肺炎も実は多い。とくに子どもや若い世代の肺炎で1番多いのはマイコプラズマ肺炎だ。昔は4年ごとに流行するという特徴があったのが、今では毎年、秋から冬にかけてよく起こっている。

症状は発熱、頭痛、だるさ、食欲不振、せきなどだが、特徴的なのはせき。夜や早朝、かなり強いせきが、ガンコに長い間続く。しかし熱やせきがあっても意外と元気でいられる病気なので、かぜだと思ってたかをくくっていたら実は肺炎にかかっていたということもある。

肺炎とはいえ、マイコプラズマは軽い場合は自然に治ることもあるし、またよく効く薬があるのでさほど心配はいらない。これからの時期、つらいせきが長く続くようなら受診しよう。

ロングフライト血栓症……海外旅行で要注意

耳慣れない病名と思うけれど、実はすでにおなじみの病気だ。「そう。これまではエコノミークラス症候群と呼ばれてきましたが、今後はロングフライト血栓症という病名に統一されることになったのです」。飛行機などで長時間足を動かさないと、足の静脈の流れが悪くなり小さな血のかたまり、血栓ができることがある。この血栓が血管の中を流れ、肺にまで入ってしまう病気がこれ。「これまでの病名ではエコノミークラスだけに起きそうな印象を与えてしまうので名前を変えようということに」。ビジネスクラスでも、また飛行機以外でも長時間足を動かさない状態が続くと起こる。

長旅のときは、しょっちゅう足を動かすようにし、また血が固まらないよう十分水分をとることが予防法。ただし、アルコールは脱水を起こすことがあるのでむしろ控えめにしよう。

ホームドクター“主侍医”の存在 1

表紙

Health Report

新しい医療システムが誕生

ホームドクター“主侍医”の存在 no.1

旅行読売 2002年12月号

2002.12.1

旅行読売出版社


「医者にかかる時は、いつも病気になってから」それも、今の医療システムでは当然のことだ。 しかし、事前にもっと相談できる相手がいたら…。
現代の医療システムに疑問を投げかける医師・寺下謙三氏が、“主侍医”という新たな医療制度を提唱する。

一人の医者が個々の患者に対応しきれない、現代医療の閉ざされたシステム

普段からなんとなく調子の悪い部分が、ある日突然、いてもたってもいられないほど具合が悪くなる。
そんな時、みなさんはどうするだろうか。もちろん、選択肢は一つ。這々の体で病院に駆け込むほかないだろう。 そして、病院にかかった時にはすでに病気は進行していて、担当した医者に「なぜここまで放っておいたのか」と言われる始末。
しかし、もし自分の気になる症状について日頃から医者に相談できていたら…。体が発信していたシグナルに気づいていたのではないだろうか。
体を壊した時には、昔ならかかりつけ医が往診に来て、病状を見舞ってくれたものだが、現代では診療所や病院の形態も変わり、個人の家へ往診することもなくなった。
さらに検査や治療技術が複雑化し、一人の医者がすべての分野に精通するのは難しい。つまり、今の医療システムでは一人の医者が個々の患者にきめ細かく対応するのは極めて困難なのだ。

では、病気から自分の身を守るにはどうすればよいのだろう。
そこで、医師・寺下謙三氏が新たな医療システムを提唱する。主治医ならぬ″主侍医“、ホームドクターを持つことが健康生活の最善の方策だという。寺下氏は現在、寺下医学事務所を運営し、自ら主侍医として50人の会員を砲えている。
「“主侍医”は病気を治す医者ではなく、そばにいてくれる医師という意味です。つまり、相談医や門番医といったところでしょう。病院に行って医療を受けるまでの相談役であり、今受けている医療の第三者としてのアドバイザー役(セカンドオピニオン)でもあります。日頃の健康相談や専門医を探すお手伝いをしたり、治療方針の選択なども相談できるのです」
確かに、近くにある病院の先生を“かかりつけ”と考えても、事あるごとに健康相談をするのは心苦しい。ちょっとした診察にかこつけて、あそこもここも、と訊ねるほかない。
しかし、「“主侍医”は健康に関する弁護士」の役割をしているという寺下氏の言葉通り、契約で成り立っている相談役、つまり患者はクライアントという考え方だから、体のことで因っている時、不安な時、気兼ねなく電話で相談できるのだ。そのため、寺下氏は、常にクライアント・ファイルを持ち歩いている。どんな状態でも、クライアントからの相談が受けられるようにするためだ。全会員の自宅にはセットされた薬を置き、緊急の場合、通院するのが無理であれば服薬の指示を出すこともある。

健康な状態から相談できる主侍医の存在こそが、健康管理の最善策

著訳書に『なぜ会社は変われないのか』『トヨタ式最強の経営(共著)』などを持ち、自らも経営コンサルタント会社の社長を務め、多忙なスケジュールをこなす柴田昌治氏も寺下氏のクライアントの一人だ。柴田氏は30年ほど前から、食事の後腹部に重苦しさを感じていた。しかし、胃が悪いのだろうぐらいで放置していたという。ところがある日、「ミーティング後の会食で、食べ物が全然のどを通らない。具合が悪いまま、その晩はなんとかやり過ごし、明け方に寺下氏に電話したら、手元に置いてあった○番の薬を飲みなさいといわれた。そしたらケロッとよくなった。後で診察したら胆管結石になつていたんです」
アドバイザーがいることで、思い切って仕事ができるという柴田氏。さらに「健康に関するアドバイスが日常的に入ってくる。自分自身も健康を意識するようになり、体に無理を与えないようになりましたね。今は禁煙、呑みに行ってもほどほどです」
寺下医学事務所では、10年以上の臨床経験を持つ医師を主侍医の条件としている。さらに幅広い分野で医療全般の知識を身につける研修や、専門分野の技術や知識の交換をする定例勉強会などを行い、医師としての鍛錬を常に欠かさない。信頼のおけるメディカル・ディレクター(医療判断医)を育成することも、寺下氏の仕事の一つになっている。
それゆえに、寺下氏がクライアントと主侍医契約をする前には必ず面接をし、安全・予防というソフト面に対してそれなりのコストがかかることを説明し、趣旨を十分に理解していただいたうえで、契約をする。顧問料は月額5万円、個人ではなかなか支払える金額ではないので、たいがい中小企業のオーナーが法人契約を結んでいる。経営者として、健康管理の必要性を実感しているからだ。
人生を積極的に楽しむには、まず健康であること。身近に医療専門のアドバイザーがいれば、確実に人生がより豊かになるのは間違いない。

ホームドクター“主侍医”の存在 2

表紙

Health Report

新しい医療システムが誕生

ホームドクター“主侍医”の存在 no.2

旅行読売 2003年 1月号

2003.1.1

旅行読売出版社


契約金60万円、顧問料月額5万円で健康を管理

プライベートドクターを持つことであなたの人生がより豊かになる!
病院という既定の枠組みから離れ、きめ細かく患者に対応できる主侍医という存在。

今回は日本の医療に疑問を投げかけ、自ら主侍医として50人のクライアントを持つ医師・寺下氏に主侍医の必要性をインタビューした。


■主侍医という試みは10年前から始められたそうですね。
日本の医療のために「かかりつけ医」や「主治医を持ちましょう」と啓蒙していても、結局、口で言っているだけではダメだ、と思い始めたところからスタートしました。
まずは実践してみようと自ら主侍医を始めたのです。
発起した時に友人が契約者1号になってくれて、主侍医という仕組みがクチコミで広まり、現在は50人前後のクライアントが登録されています。
■クライアントにとって、主侍医としてのもっとも大きな役割はなんですか。
現在は医療が発達し、専門分野の細分化が進む中で、患者さんのニーズに合わせた臨床判断が難しい時代です。いくつかの治療法から選択肢が必要な場合、インフォームドコンセントやインフォームドチョイスとなります。つまり、担当医から検査や治療法の説明をして患者さんの同意を求めるのですが、専門知識を持たない患者さんが的確な判断をすることは困難です。そこで、主侍医は担当医師から専門的な話を聞き、患者さんの立場になって今後の治療方針について検討し、患者さんの決断を支援する医療判断を行うのです。
「おまかせ」の治療法ではなく、主侍医が患者サイドに立って判断
■患者のほとんどは専門的な医学知識がないのですから、選択を迫られても難しい。それを専門家である主侍医が代理人として、医師と患者の間に立って取り持ってくれるということですね。
たとえばクライアント(主侍医契約者)から健康相談の電話をいただいたとします。主侍医はいくつかの症状を開いて、だいたいの病気を想定し、かかるべき専門科を判断します。
私は医療のコンダクター的な立場にいますので、医学事務所の長年の活動の中で培った専門医の人脈の中からどのドクターにかかればいいか、水先案内ができるわけです。その後の結果もこちらにフィードバックして、治療へと導いていくのです。
■そうなると一人ひとりの健康状態、体質なども知っておく必要がありますね。
そうですね。また一人ひとりのライフスタイルが違いますから、クライアントに対しては阿吽の呼吸が必要なところもありますね。ドクターを紹介するにも、本人との相性なども配慮しなければなりません。極論になりますが、がんなどの難病の告知についても事前に話し合っておく必要があります。だからこそ、対等な立場で冷静な話し合いができるように、健康な時から主侍医契約を結ぶことを大前提としているのです。
メディケーションシステムで“いざ”という時にも安心
■メディケーションシステムを取り入れているそうですが、それはどのようなことですか。
それは主侍医契約の中の小さなサービスの一つです。クライアントの方に優しいサービスとして各クライアントの家庭にメディケーションボックスを置いています。平たくいえば置き薬のことですが、これはあくまでも主侍医とクライアントの信頼関係があってこそ実現できるものなのです。
以前、クライアントの1人が、会議の前に頭痛がひどくて薬をバイク便でお届けした経緯から学んだことなんですよ。
■水先案内だけでなく、対人間であることから対応は流動的になることも多いのでは・・・?
もちろんそうですね。今年もインフルエンザが大流行の兆しがあったので、ワクチンをみなさんに打ってもらったりとか、臨機応変に対応しています。
さらに病気や薬に関する新しい情報があると、こちらで調査をしますので、クライアントが自分の病気に関する正しい情報をオンデマンドで得ることができるのです。

難病の根治をめざして

表紙

難病の根治をめざして

塾 WINTER 2003 No.237

2003.1.15

慶應義塾


臨床応用に直結する基礎研究として、根治薬開発に向け、主にアルツハイマー病とがんの分子機構の解明、制御法の同定、モデル細胞および動物の作成に取り組んでいる。

西本征央にしもと いくお 医学部教授

薬理学教室では、神経変性疾患とがんに焦点をあて、生化学、薬理学、そして、分子生物学や遺伝子組み換えマウス作成術を駆使して、根本的な原因の解明と治療法の開発に全力で取り組んできました。現在、世界中で1400万人の患者さんがアルツハイマー病 (以下ア病) に苦しめられています。 これら難病の根治法を見いだしたい。それが私たちの心からの願いです。
 現在は4つのプロジェクトチームが、各リーダーの細心のスーパービジョンの下に研究を進めています。サイクリンチームは、細胞周期の分子機構を新規サイクリンという切り口で解明するがん治療の可能性を探っています。ターゲティングチームでは、脳萎縮を発症するア病モデルマウスの作成という大目標に迫りつつあります。実は21世紀になった今も、脳萎縮を発症するモデル動物は存存しません。したがって、脳萎縮というア病の中心病態の治療薬のための動物実験すらできないのが現状です。
また、ア病の愚者さんの脳内の神経細胞は細胞が生きた状態で観察ができないので、脳内の神経細胞で実は何が起きているのか分かりにくいのも実状です。得られなければ作り出そうと、ES細胞分化チームでは分子生物学と発生工学を駆使して、この難題に取り組んでいます。神経細胞死制御チームは、ア病の各種遺伝子が神経細胞死を誘導することを世界に先駆けて見いだした後、最近発見した新規分子ヒューマニンをはじめ、神経細胞死を制御する分子の同定により、根治薬開発に挑んでいます。
 教室では自由な雰囲気の下に活発な研究が展開されています。これを支えるさまざまなものの中で最も重要なのは、人材、特に、若き発展途上の研究者であると信じます。人間の活動の中で、研究とは、割に合うことの最も少ないものの一つです。したがって、割に合うことを人生の中心に置く人に研究は向きません。逆に、方に一つでも誰も知らないことを知る体験ができたら良いと思い、自分の利益を度外視して課題と取り組める研究者に成果が訪れるように思います。こんな話があります。今年卒業する一人の大学院性は、入学後一日も休みをとらずにきたので、心配して昨年は夏休みをとるように言ったところ、4日休みたいと、言ってきました。 急に4日は変に思いましたが、その4日はすべて土日でした。このように、非常に熱心な若き研究者たちと仕事ができる教室を誇りに思っています。
 病気に苦しむ人々を救いたいという情熱を持って取り組む私たちを北畠医学部長をはじめ陰に陽に支えてくださる多くの皆様方に、この場を借りて厚くお礼申し上げます。

(教員のプロフィール)

  • 1980年東京大学医学部を卒業後、全国各地で内科医として勤務。
  • 1989年スタンフォード大学内科臨床薬理学に留学。
  • 1992年よりハーバード大学医学部MGH内科準教授。
  • 1996年より現職。
世界初を目指した発想と肉体の勝負

川澄正興かわすみ まさおき  医学研究科博士課程4年

アルツハイマー病は進行性痴呆を引き起こすヒトの脳の病気です。患者さんの脳から神経細胞を取り出すことはできず、病態の解明や治療薬の開発に向けた研究を展開する上で大きな制約がありました。そこで私たちは、アルツハイマー病に見られる遺伝子変異を持つマウスを、最新の遺伝子改変技術によって作り出すことに成功しました。このマウスを使えば、アルツハイマー病を根治させる薬を開発することも夢ではありません。このような先進的な取り組みができ、患者さんの役に立てる研究を押し進めることができるのも、西本研のすばらしいところです。早朝から深夜まで、平日も休日もなく研究が続けられています。週に-度開かれるミーティングでは、研究者一人ずつ実験結果が報告され、西本教授を始め、研究者たちの卓越した発想に基づく議論で、研究が一歩一歩進んでいきます。私たちは世界初のアルツハイマー病根治薬の開発を目指し、真摯に研究に取り組んでいます。

新しい医療システムが誕生

表紙

Health Report

新しい医療システムが誕生

ホームドクターの存在 no.3

旅行読売2003年 2月号

2003.2.1

旅行読売出版社


本当に信頼できるかかりつけ医はいますか?

あなたの健康ライフを守る、頼もしいプライベートドクター「主侍医」
自分の健康状態をじっくり相談することもできない現在の病院のシステムに、みなさんは疑問、不満を抱いたことはないだろうか。
そんな人にこそ知ってほしいのが、主侍医というプライベートドクターの存在。
安心できる医療を受けられるだけでなく、パートナーとしてより豊かで健康的な人生を支援してくれる。

最善の医療が受けられる医療分野の代理人

年齢を重ねるほどに、自分の健康に関して敏感になってくるものだ。
ちょっとした体調不良や、体の異変によって不安感が大きくなり、医者に診てもらうことでその気持ちを払拭してもらう。しかし、どうだろう。最近では大きな病院が増え、長い待ち時間にじっと耐え、やっと番がまわってきても診察時間はほんのわずか。これでは、健康に対する不安を医者に詳しく語ることなどできない。
昔なら小さな診療所の医者が「この間の痛かったところどうなりました」なんて言葉を掛けてくれたものだが、大多数の患者を少人数の医者がこなしていくという現在の病院のシステムでは、専門医が患者一人ひとりに病状を訊ねまわるなんてことはおおよそ難しい。
そこで、医師・寺下謙三氏が提唱するのが“主侍医”というプライベートドクターの存在。
「主侍医とは病気を治す主治医ではなく、いつでもそばにいる医者という意味です。気軽に健康相談できる医者が、身近にいることが健康管理にとても大切なことではないでしょうか」
ただ治療や処置をする医者ではなく、自分の健康に対する不安を常日頃から相談したり、いざ病気にかかった時に適切な医療へと導いてくれるのが主侍医だと寺下氏は語る。さらに補足すれば、日頃からの医療情報をもとに適切な初期診断を下し、必要に応じてそのネットワークを活かした優秀な専門医への橋渡しを行う。
各科にわたる複数の専門医の治療を受ける場合も、医療情報をまとめるコントロールタワーとなつて、一人ひとりに合わせた適切な治療法の判断を行うなど、最善の医療を受けることができるのだ。
また健康な状態での契約時に、がんなど重大な病気になった場合、告知はどうするか、脳死や、尊厳死は、といったところまで踏み込んで話し合えるので、何かの時には担当医と患者の間に立って主侍医が取り持ってくれる。弁護士が法的な分野での代理人なら、主侍医はいわば医療分野の代理人といったところだろう。

身近に医師のいる安心感人生のパートナーシップにも

現在、寺下医師と主侍医契約を結んでいるクライアントは50人ほどいる。
「私のクライアントはこの10年間、全員健在です。がんになった方もいますが、もちろん超早期発見で最小の手術などで治癒しています。またその際、あらかじめそれぞれのクライアントの方と話していたとおり、がんの告知、治療方針とその方の仕事の方針など大切な判断を一緒に考えて、支援してきました。
がんを見つけて早期治療をするだけでなく、仕事上や人生上の判断のお手伝いまですることが実は多いのです」
健康保険という制度の恩恵を受けている日本人は、医療は安く、そしていざという時に役立てればいいと考えがちだ。しかし、そのいざという時、本当に心から一緒になって病気に立ち向かってくれる医師の存在が身近にあるだろうか(国民皆保険制度はすべての人に医療を保障する優秀な制度ではあるものの、最低限度の保障でしかないことも事実だ)。
主侍医は契約料60万円、顧問料月5万円、決して安い金額ではない。だが、すぐそばに医師がいる安心感は、この金額以上の価値に値するに違いない。少しの余裕を託して、健康ライフが買える、そんな時代がやってきたのかもしれない。


質問・疑問にお答えします
Q.1 地方に住んでいるのですが、主侍医の契約は出来るのでしょうか。又その場合の契約内容は。
現在契約しているクライアントの中にも地方在住の方が何人かいらっしゃいます。電話やメールですんでしまう日頃の気軽な相談であれば勿論、地域に関係なくお役に立つことができますし、いざというときの重病時医療判断に関しては、病院の数が集中している東京で治療を受けることも含めて、相談のために上京される方が殆どです。
Q.2 入会金60万円、契約料は月5万円ですが、それ以外にかかる費用についてはどのようなものがありますか。
基本的に契約時間内であれば、相談料などはすべて無料です。その他症状に応じた適切な専門医の選定や紹介状の作成、病院ごとで行われた検査等、医療情報の一元管理など、複数のサービスが契約に含まれます。当院で診療に至った場合の薬や検査等の実費のみ、契約外の料金としてご負担いただいております。ご本人様以外の診療に関しても契約者からの紹介という枠で、家族やご友人をゲストクライアント料金にてお受けできる仕組みになっております。
Q.3 主侍医契約を結ぶ本人以外、つまり家族の健康問題についても相談できますか。
契約時間内にご本人様自身から、お知り合いの健康相談についてお電話戴き、その場で回答できるようなものであれば無料で対応させていただいております。専門医をご紹介するなど診察が必要な場合には有料でゲストクライアント枠をご提供させていただいております。また、契約時に無料で三親等までの同居家族に対する家族登録を受け付けており、あらかじめ登録いただいていた方に関しては、ゲストクライアント枠のさらに半額でご紹介いただくことが可能です。
Q.4 心臓の持病を持っており、昔からのかかりつけ医がいます。私のようなケースでも契約はできますか。
契約者の多くの方が、実際に治療を行うかかりつけ医を持っていらっしゃいます。心臓病の他、糖尿病、腰痛症などの治療で複数の専門医にかかっている場合に全体を把握する主侍医がいると大変安心です。それぞれの治療は保険でおこなえる専門医に任せても、医療情報の一元管理をはじめ、コントロールタワーとしての役割は主侍医がおこないます。例えば他の科にかかる場合に、専門医からの紹介状に合わせて主侍医からの紹介状も添えて、薬の飲み合わせの問題や、持病や合併症、又は、『手術はしないでできるだけ治療薬で』といった本人の特殊な希望や状況を伝え、治療に反映させることができるのも主侍医ならではです。

患者側が最善の医療を選ぶには「医療判断」が必要です

表紙

患者側が最善の医療を選ぶには
「医療判断」が必要です

クロワッサン2003年5月号

2003.5.1

株式会社マガジンハウス


患者側が最善の医療を選ぶには「医療判断」が必要です

寺下謙三さんの肩書の一つに「医療判断医」とある。

耳新しい言葉だが、「文字どおり、医療の内容を客観的に判断する医者です。この症状なら外科がいいのか、内科がいいのか。西洋医学がいいのか、東洋医学でいくべきか。手術すべきか、薬で治療したほうがいいのか。科学的根拠にもとづいた判断が60%、心理学的情況が20%、社会学的背景が20%‥‥、患者さんが最善の医療を選べるよう支援することが役目です」
13年前から、主治医ならぬ 「主侍医(プライベートドクター)」制度を提唱し、実践してきた寺下さんならではの考え方だ。慶応大学医学部でも「医療判断学」というテーマで講義をもって、7年になる。
「40代、余命1年のがん患者の場合‥‥というように、学生に仮想体験をしてもらうと、同じ6年間、医学を学んだ学生たちでも、それは見事に違う判断をします。もし、医者の立場でなく、家族なら、患者なら‥‥と聞いていくと、その判断はさらに変わってくる。
判断の不確実さと厳しさとは、常に医療につきまとってくるものなのです」
だからこそ、「医療判断学」という学問を確立させ、ひいては医師以外でもなれる「医療決断支援師」を作りたい、とも考えている。
「そして、医療判断と対ついで考えてほしいのが、患者さん側の『医療決断』です。とくに、命を左右する重大な病気の場合、大きな運命の分かれ目になることを知ってほしいのです」
国立病院でも、セカンドオピニオン外来ができるなど、新たな動きも出てきているが、「まだまだ制度がととのっているとは言えません。制度を緩和して、セカンドオピニオンは自由診療で、どこの病院でも受けられるようにすべきだと思います」

テーラーメイド治療を実現する『医療判断医』

表紙

自分にとって最善の医療を実現してくれる「主待医」

テーラーメイド治療を実現する『医療判断医』

花かすみとけい

2003.6.1

八峰出版


普段から自分の健康を相談できるプライベートドクター

自分の病気にはどの医療施設や医師が適切なのだろうか。また、自分の健康状態をじっくり相談できる医師がいたなら、どんなにか心強いことだろう。

そんな願いを実現してくれる医師、それが医療判断医であり、「主治医」ならぬ「主侍医」というプライベートドクターです。

では、どういったことを行っているのでしょうか。

医療がオーケストラなら、医療判断医は指揮者の役目

医療判断医‥。
聞き慣れない言葉ですが、これは寺下謙三先生の肩書きの一つ。患者が最善の医療を選べるよう支援することを役目とした医師だそうです。
患者の症状から、どの専門外来を受診したらいいのか。それが、がんであるなら、薬を使う治療がいいのか、それとも外科手術の方が適切なのか。また、手術を行うのであれば、臓器をすべて摘出するのか、がんを中心に切るのか。あるいは東洋医学でいくのか‥。
当事者でなければ計り知れないような苦悩を抱えて決断に迷う患者やその家族に対し、医療判断医として先生はより適切な医療機関や医師、治療法などをアドバイスしておられます。
内科医は最善の薬物治療に専念し、外科医は最善の外科治療を目指すことが多いもの。しかし、知人の紹介や評判を頼りに、意を決して出向いた先の担当医の説明が、決して十分とは思えない場合もあるでしょう。「患者さんの心の変化、職業や家族、信仰している宗教にまで配慮しなければ、本当の意味での治療計画は立てられません」とも。心のケアから生活面でのアドバイスやサポートまで、医療判断医・寺下先生が行っておられることは、これまで患者が切に望んでいたことそのものだといえます。
先生は、「医療をオーケストラに例えるなら、医療判断医は指揮者役だ」といわれます。先生が、さる高名な指揮者のご令嬢から聞かれたというエピソードです。
「演奏会で停電になったんです。どうなるか、ひやひや。でも、演奏はそのまま。これって、指揮者は要らないっていうこと? 電気がつくと、父はいつも通り指揮棒を振り続け、演奏者もみんな楽器を奏でていました」
どんなときでも揺るぐことのない、患者と医師の信頼関係。医療分野に指揮者役の輪を広げよう!。先生はそのとき、そう心に誓ったそうです。

常にそばにいて医療を支援 顧問弁護士的な主侍医の役

一般に治療を担当する医師を「主治医」と呼びますが、これに対し医療判断医・寺下先生の場合は 「主侍医」、すなわちプライベートドクター。先生が考えられた造語ですが、健康なときから常に患者の傍らにいてサポートするという意味なのだそうです。
寺下先生は13年前から自由診療を全面的に取り入れ、健康なときから何でも相談できるこの、主侍医制度に取り組んでおられます。
慶応大学医学部でも「医療判断学」というテーマで講義をもち、それも7年になります。
「あなた方はがんの専門医。担当する40代の患者は、余命1年以内の末期がん。強力な抗がん剤Aが開発され、がんを80%完治させます。しかし副作用も強烈で5%は1時間以内に死亡。残りは変化なし。ほかに治療法がないとしたら、Aを使いますか?」
というように学生に仮想体験をしてもらうと、同じ6年間、医学を学んだ学生たちでも、まちまちの判断をするそうです。さらに患者が親だったなら、患者が自分だったなら‥と質問を変えていくと、その判断もさらに異なったものになっていくということです。
「6年間医学を学んでも、長年医師の経験を積んでも、この判断の不確実さは常に医療につきまとってきます」
だからこそ、「医療判断学」という学問を早期に確立させ、日本の医療の未来にささやかながらも意味深い頁献ができればとも考えているのだそうです。
主侍医とは、分かりやすく言えば「顧問弁護士のような存在」だと寺下先生。まだまだ実験的な側面もある活動だそうですが、「主侍医の役割を顧問弁護士のような契約で」というスローガンもロコミで広がって、契約は50以上にもなっています。
主侍医は単に治療や処置を施す医者という存在ではありません。普段から自分の健康に対する不安を相談し、いざ病気になった際には適切な医療をアドバイスしてくれ、必要なら優秀な専門医への橋渡しを行ってくれるのが主侍医だと寺下先生はおっしゃられます。

患者と医師は信頼関係で個々に応じたテーラーメイド治療を実現

「最期の最後まで治療を続けよう」
「いや、もう苦しませずに逝かせてあげよう」

26年前のことだそうです。寺下先生は兄弟4人でこんな会話を交わしたそうです。
先生のお母さんが劇症肝炎を患い、可能な限りの手だてを尽くしても回復が難しい状況だったといいます。2人の兄は医師になって6年目と2年目。先生ご自身は医学部の6年生で、弟は医学部1年生でした。そのとき、先生と長男は「最後まで治療を続ける」という意見、次男と弟は「苦しませずに逝かせてあげよう」というお考えだったそうです。結局、最後まで徹底した治療を続けることになりましたが、無念にも数日後にお母さんは他界されてしまったのでした。
その後先生は医師となり、治療の現場で大きな決断を迫られる度に、当時のそのときの会話を思い出されるそうです。どちらの選択が正解だったのか、いま振り返っても結論はつかないといいます。
「医師といえども自分の家族の治療は難しい」とはよく語られる言葉ですが、医師の判断と家族としての判断は、ときとして異なる結果になることも多いからです。

最近、EBM(Evidence Based Medicine)という考えが普及してきました。これは科学的な根拠に基づいて医療を進める、確率論的な判断方法です。確かにこれも大切なことでしょうが、実際の治療の現場では、そうした判断を単純に下せないことも多くあると聞きます。
「どうしたら、プロとして最善の支援ができるのか、日々、模索を続けているんです」
EBMが世界的に広がり始めたのは、90年代後半からといわれています。手術なのか、薬による治療なのか。薬ならAが適切なのか、それともBか、あるいは東洋医学は‥。
患者の治療法を選ぶには、これまでは医師個人や医療チームに蓄積された経験やノウハウに頼ることが多かったようです。
EBMは、それが本当に最善の選択であるかどうかの客観的判断基準として、いくつもの医学論文を統計的に分析し、そこから信頼度を割り出したものを使ってみてはどうかという試みです。しかし、実際の現場では教科書的な理屈だけでは患者さんの望む最善の医療にはなり得ないところが医療判断の難しいところです。
そこで私達は、科学的根拠(EBM)の比重を6割として経済的な事情や仕事との兼ね合いといった“社会的背景” 2割、治療への不安や精神的負担等の“心理学的情況”2割、を配慮した医療判断学を提唱し、一人ひとりに応じたテーラーメイド治療の実現を試みています。

免疫療法で変革されるか・・・がん治療へのさらに多くの可能性

今日、アメリカなどでは東洋医学の見直しや民間医療の再認知の一環として、代替医療の研究に対しても国の医療機関が本腰を入れ始めています。日本でも、検査漬けや薬漬け医療への批判という形で、同様の現象が現れています。
例えば、がんの診断や治療に関して、がん検診の有用性や抗がん剤の是非など、いま日本ではさまざまな論議が巻き起こっています。
がんの治療には現在、化学療法、いわゆる抗がん剤や放射線治療、手術療法、免疫療法などがあります。そのなかの免疫療法が今日、最も注目されている治療法といえます。つまり、人間が本来持っている自己防衛機構を何らかの方法で賦活させ、がんを治療し、あるいは予防しようとする試みです。
厚生労働省が医薬品としてしたもののなかにも、例えばキノコ類から摘出した物質がいくつもありますし、そうした類の健康食品の免疫賦活作用についても様々な機関が研究しています。例えば、アガリクスなどのキノコ類の食効を期待して、自分自身も使用している医師も多いようです。しかしその実、家族や親友には勧めることができても、一般の患者には誤解を生む可能性があるので推奨はできない、といったところが大方の見解ではないでしょうか。
「しかし、効果があったという複数の報告を見るにいたり、何とかしてきちんとデータを取って、正確な情報を提供できるように、専門医のネットワークなども作りたい」
誰もが客観的情報を知るチャンスを与えられ、主治医または主侍医と相談して使用できるようになることが今後、法的にも実践的にも望まれることではないでしょうか。

社会学的背景と心理学的情況を配慮した医療判断学を提唱

表紙

科学的根拠に基づきながらも

社会学的背景と心理学的情況を配慮した

医療判断学を提唱

旭丘光志 著

東洋医学の名医134人

2003.7.2

有楽出版社 発行


 主侍医システムを立ち上げるまでの発想

「侍医のような役割を、顧問弁護士のような契約で」というコンセプトで主侍医を提供するのが、寺下医学事務所である。
侍医は皇族などの健康状態や疾病を常時、ウォッチする役割を負う医師で、″天皇の主侍医″といえば、ピンと来るだろう。
寺下謙三医師が日本ではまだ特殊なこのような仕事を展開するに至ったのは、19年前にさかのぼる。
「医療の新しい仕組みづくりの提案と実践を通じて、医療の品質の向上に貢献する」ことを目的に、寺下医師は1984年、医学部時代の同級生たち十数名と立ち上げた事務所が″トータル・メディカルシステムズ″(現寺下医学事務所)であった。
当初数年間は、主にハイテクを使った医療システムとして電子カルテや全国の医師間コンピュータ・ネットワーク、民間医局としての医師派遣業務などを開発してきた。
そうしたなかで、『安心できる医療』を追求すると、『昔ながらのお医者さん』がキーワードであることに気づいたという。
寺下医師は語る。
「医学の進歩に伴い、昔のような『なんでも診られるお医者さん』という要求に応じるのは、不可能に近くなりました。
医学の進歩は当然、専門分化が進むという現象を伴います。そうなると、医学は着実に進歩しているのに、実際の医療現場では不安がいっぱいとなってしまいます。
この現象を音楽にたとえると、昔の医療は『室内楽』でしたが、現在は『交響楽』になったといえます。
室内楽では演奏者が少人数なので、指揮者は演奏者を兼ねることもできますが、交響楽のように大人数になると、全体をまとめる専門家である指揮者がいなければなりません。このように考えると、指揮者的専門家が現在の医療の世界では必要になってくるんですよ」

法人対象に経宮者の健康管理などで契約

そこで寺下医師自身が医療を受ける立場に立って、どんな医師を身近に置きたいかを考えてみた。
「健康なときから、弁護士や会計士のように医師が相談役として側近にいると、ふだんの健康管理のみならず、大きな病気にでもなった時に、より適切な診断と治療の水先案内が可能になる。それに何より安心だ。
健康なときからそんな医師と契約しておけば、病気になってから弱い立場で初めて医師と出会うのではなく、対等の立場で医師と出会うことになると考えたのです」
こうして病気を治す『主治医』に対して、健康時からそばにいるという意味で『主侍医』と名付けたわけである。
次に寺下医師は、医者の立場で考えてみた。
「この、主侍医システムを維持するには、恐ろしいほどの手間隙がかかるんじゃないか。単なる『総合診療外来』ならば、いままでの内科医の延長線上で何とかなるけれど、主侍医となると、もっと幅広い医療知識に加え、病気や患者の状況、医師の能力などの見立てる力と、多くの専門医との生きた人脈が不可欠になると考えたんです。そのようなことを維持していくためには、楽屋裏の活動として相当なことが要求されるでしょうが、楽屋裏の仕事は目に見えにくいから、正当に評価されるのはむずかしいのではないか。
こういったサービスを国からの補助を一切受けずに、わたしたちのような民間の事務所がつづけていくには、それなりのコストをクライアントに負担していただかなくてはなりません。車づくりにたとえるなら、手づくりのスーパーカー工房ということになります」
その結果、主侍医システムが対象とするクライアントは、法人に限定することになった。しかも、業績のよい企業で、その経営者が企業の屋台骨になっていて、経営者の健康を危機管理することがその会社の危機管理に直結することが自他ともに明らかで、かつその経営者が理解を示してくれる、という3つの条件がそろったとき、初めて契約を結ぶことになる、ということになった。
料金は契約者1人につき年72方円とした。「その企業にとって非常に安い投資となる」というのが、寺下医学事務所の考えだ。
寺下謙三クリニック独自の医療支援カウンセラー豊崎甲四子さんのカウンセリングも患者に力を与える

個々人のデータを常時携行し即応態勢

こうしてスタートした寺下医学事務所の寺下謙三医師は、どこへ行くにも多数のクライアント(主侍医契約を結んだ顧客)のデータを携行している。クライアント個々人の病歴や相談内容が書き込まれたデータは相当量にのぼる。
これによって、いつ、どこで電話が人っても、即座に対応できるのだ。
この医学事務所はいわば医療情報センターで、そこに約500人におよぶ各分野の専門医がネットワークされている。
クライアントが仮に発病して緊急電話が入った場合、まず附属クリニックで基本的な診察をおこなったうえで、その治療に最もふさわしい医師や医療機関を選んで紹介することになる。
治療するうえでクライアントと医師との間に何か問題が生じたときは、主侍医はあくまでもクライアントの立場になって医師と向き合う。
寺下医師は、機能性食品など代替医療の治療手段にもよく通じており、クライアントからの相談にもその人に適した的確な指示をして治療効果をあげている。
「病む人を早く癒してあげたいという人間的やさしさがあれば、医学教育で身につけた方法の外に広がる治療手段の多くにも、目を向けることができるはずです」
主侍医の目は、あくまでもやさしく愚者に向けられている。

Copyright ©2013-2016 Terashita Medical Office Allrights All rights reserved.