寺下謙三の病気解説

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起立性調節障害

2019/10/28

(概説)

思春期に好発する自律神経機能不全であり、立ちくらみ、失神、朝起き不良、倦怠感、無気力、動悸、頭痛、食欲不振、顔色が悪いなどが主な症状です。以前は、思春期の一時的な自律神経障害や低血圧気味の体質、という程度に考えられていましたが、最近では重症型も存在し、不登校や引きこもりの原因の一つでもあるとのことが明らかになり、本疾患の重要性が唱えられています。学会による診断治療ガイドラインも刷新されるようになり、最近では2015年に改定されています。世界的にみても、特に日本での研究が進んでいるようです。専門家の間で起立性調節障害は、その英語の頭文字をとって「OD」と略されて使われます。

(原因、症状、診断)

根本的原因は不明ですが、身体的要因と心身的要因が重なり合っていると考えられています。軽症も含めると中学生の1割程度が本症に含まれるとの報告もあります。診断は、まず原因となる他の身体的疾患を除外することが大切です。その上で、上記の主な症状が3つ以上か、2つの強い症状があれば本疾患を疑います。その上で、「新起立試験」と呼ばれる検査を行い、4つのサブタイプ(起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、神経調節性失神、遷延性起立性低血圧)の判定を行います。

(治療)

家族や学校からは、怠けなど気持ちの問題と解釈されやすく、本人と保護者の関係性が悪くなることが多いので、きちんと診断を行い、本疾患であるならば身体的病気であることの理解を深めながら接することが大切です。起立時の動作はゆっくりなどの注意事項や十分な水分や塩分の適切な摂取、定期的な運動(歩行)や十分な睡眠などが大切なことは言うまでもありません。

それでも改善されない場合は血圧を調整するような薬物を使用します。認知行動療法などの心理療法も有効です。

(生活上の注意)

保護者や学校関係者が本疾患のことを十分に理解し、慎重に見守ってあげることが何よりも重要です。

膵炎

2019/07/22

(概説)

膵臓は、様々な消化酵素やインスリンを作る大切な臓器です。炎症性疾患の多くには、「急性」と「慢性」が存在します。それらの多くは、急性で発症し、その一部が慢性化するという関係性ですが、膵炎の場合は、急性膵炎と慢性膵炎は別個の疾患と理解した方がわかりやすいかもしれません。とは言っても、急性膵炎の1〜2割は、慢性膵炎に移行しますし、慢性膵炎が経過中に急性化することもあります。急性膵炎は、「急性腹症」と呼ばれる「急激な腹痛で始まり、放置すると命に関わる病気群」の代表の一つです。一方、慢性膵炎は「早期慢性膵炎」という考えが提唱され、発症から慢性型という生活習慣病に近い予備軍のような病態もあります。

(原因)

急性膵炎では、アルコール性と胆石性が2大原因で、男性は前者、女性は後者が多いことが分かっています。慢性膵炎もアルコール性と非アルコール性に分かれ、アルコールの過飲が予防医学上重要であることには変わりません。脂質異常症も原因の一つと考えられています。

(症状)

急性では、激しい腹痛や背部痛、吐き気、嘔吐が中心となります。慢性では、反復する腹痛を主症状に、進行すると消化吸収障害による下痢やインスリン不足による糖尿病などの症状が出現します。

(診断)

原因不明の急激かつ激しい腹痛がある場合は、虫垂炎など他の病気も疑いつつ本疾患を念頭に血液検査、画像検査を行います。本疾患が疑われた場合は、急性膵炎を治療できる専門医がいる病院への早期転送が重要な判断となります。慢性の場合は、血液検査や画像検査を含めた綿密な経過観察が必要です。

(治療)

急性膵炎では、入院絶食の上、痛みのコントロールと補液をはじめ外科治療に至るまで専門的な集中医療が必要になります。慢性膵炎では、薬物治療と食事療法が中心になります。

(予防)

アルコールの過飲を避けることがまず肝要です。原因不明な腹痛を繰り返す場合は専門医に相談しましょう。

虫歯と歯周病

2019/04/22

(概説)

虫歯も歯周病も、ポピュラーな病名で知らない人はほとんどいないと思います。「歯が傷んだら歯医者さんに駆け込むしかないでしょ」「命には関係ないけれど痛いと食事が美味しくないし」「歯はしっかりと毎日磨くことが重要なのでしょ」などと比較的安易に考えがちです。ところが、最近の知見では、歯周病が循環器疾患や糖尿病や誤嚥性肺炎などと密接に関係していることがわかってきました。中には心内膜炎や脳膿瘍など命に絡んだ怖い病気の原因となることもあります。用語的なことですが、歯茎の軽い炎症である歯肉炎が進むと、歯茎の根元まで炎症が及び歯周炎と呼ばれます。それらに加えて、強い咬合が慢性的に続き歯槽骨(しそうこつ:歯を支えている根本の骨)に障害が及んだ咬合性外傷という病態を総称して歯周病と呼んでいます。

(症状)

冷たいものやしょっぱいものがしみたり、歯茎が痛んで食べることが困難であったり、歯ブラシ時に出血したりなど、大抵の人が歯医者さんに駆け込むきっかけとなるポピュラーな症状です。

(治療)

虫歯や歯周病の進展度に応じて、充填処置から抜歯までの治療法が選択されます。

(予防)

何よりも予防が大切なことで、日頃の口腔ケアがポイントとなります。口腔内は雑菌だらけと言っても過言ではありません。口腔ケアの主な目的は口腔内の細菌数を減らすことです。食後のうがいにより、食物残渣(しょくもつざんさ:歯と歯の間などに残った食べかす)を取り除きます。場合により歯間ブラシやブロスを使用するとなお効果的です。歯ブラシによる歯磨きも並行して行います。歯の表面に付着する歯垢(しこう)を取り除くことが目的ですので、あまり強く磨く必要はありません。柔らかめのブラシで時間をかけて上下表裏、満遍なくブラッシングすることがコツです。歯茎の軽いマッサージも意識してブラッシングしましょう。

また、歯石除去など、専門家による口腔ケアも定期的に受けることが推奨されます。特に、介護を受けているような状態では、口腔ケアはより重要となってきますので、専門家の指導を受けるようにしましょう。

 

ヒトメタニューモウイルス

2019/01/07

(概説)

小児の感冒の原因ウイルスの一つとして、2001年にオランダで発見されました。1度の感染では免疫ができにくく、何度か繰り返し感染し、10歳ごろまでにはほぼ全員が感染すると言われています。年を経て感染を繰り返すうちに、症状が軽症化すると言われていますが、乳幼児や高齢者、免疫が低下した大人が感染し重症化することもあり注目されています。

3月から6月ごろに流行することも特徴です。咳などの飛沫感染とウイルスのついた手などからの接触感染が主な感染経路となります。小児の感冒の代表的な原因ウイルスには他に、RSウイルス、パラインフルエンザウイルスなどがよく知られています。

(症状)

咳、鼻水、発熱など普通の感冒の症状が主で数日から1週間で軽快しますが、重症化すると肺炎や細気管支炎に移行し、高熱、喘息のようなゼーゼーという咳、呼吸困難などが出現します。また、子供の場合、中耳炎を合併しやすいことも特徴です。

(診断)

インフルエンザと同様に、鼻の粘膜を綿棒で拭いとった粘液から検査することにより診断できます(2014年より条件付き保険適用)。特別な治療法がないので、軽症の場合は、保険適用の観点から検査の必要性を医師が判断することになります。

(治療)

他のウイルスによる感冒と同様に、このウイルスへの特別な治療薬はありません。症状を緩和させるための薬と栄養・安静・水分補給などの生活上の指導が中心になります。長引く場合は、細菌感染の合併も考え、抗菌剤が必要となることもあります。また、高熱が続いたり激しい咳が治まらなかったりなどで重症化の恐れがある時は、綿密な観察と迅速な治療が必要になります。

(予防などの注意点)

潜伏期は3〜5日程度です。上記の感染経路から、インフルエンザや他のウイルスによる感冒と同じく、手洗いやマスクの着用が予防上大切となります。

脂質異常症

2018/10/23

(概説)

高血圧、糖尿病などとともに、動脈硬化症の原因となる疾患の代表的な病態の一つです。以前は高脂血症と呼ばれていましたが、一部の指標が低くなる異常もあることから、我が国では2007年7月より脂質異常症と呼ばれるようになりました。血液中の脂質が高すぎたり低すぎたりする状態は、長い目で見て動脈硬化を促進させることが分かり、それらを一つの病態と考え本疾患が定義されています。

(症状)

本疾患自体の自覚症状はほとんどありません。本疾患が原因となって、動脈硬化が進んだ結果、心筋梗塞や脳梗塞などが起こるとそれぞれの症状が出現します。

(診断)

自覚症状がないために、定期検診や他の病気で血液を調べて初めて診断がつく場合がほとんどです。代表的病態としては、高LDLコレステロール(悪玉コレステロール)血症<140mg/dl以上>、高トリグリセリド(中性脂肪)血症<150mg/dl以上>、低HDL(善玉コレステロール)血症<40mg/dl以下>があり、実際にはそれらが複合して存在します。なお、<>内のそれぞれの基準的数値は、現時点での学会基準値であり、年齢、性別、他の合併疾患などにより、治療目標が異なってくるのが実情ですので、おおよその目安として記憶ください。

(治療)

食事療法、運動療法に加え、禁煙、肥満改善などの生活改善が基本となります。数ヶ月以上の生活改善にもかかわらず、血液の数値の改善が見られない場合、その他の合併疾患も含め今後のリスクを考慮した薬物療法が勧められます。最近では、薬物の選択肢も豊富にあります。最小限の副作用で納得した治療を選択することが肝要です。

(生活上の注意点など)

何よりも、生活改善が優先されます。本症だけでは、ほとんど自覚症状がないために、定期的な検査とその結果に基づいた対策を十分に納得理解することが、長い目でみて治療を続けるための心の支えとなります。私の造語ですが「知識は最強のワクチン」です。

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