2000.5~2001.4

少数精鋭主義②

1人の敵と10人の味方(その2)

ばんぶう

2001.2

日本医療企画


この表題は「一人の敵は十人の味方の力を打ち消す」という意味で使われる言葉だが、人間関係においても当てはまりそうだ。十人の親友がいても、十一人目の親友に裏切られたとすると、その人の悲しみや苦悩は他の十人の親友で癒すことは困難な場合が多い。
こうして考えてみると、我々の心の中も減点主義を基準とする構造に出来ているのかもしれない。ゴルフでいくらナイスショットを続けていても、一発のミスショットをきっかけに崩れていくことを経験している我ら素人ゴルファーは多いはずである。「よいイメージを定着させるのは困難で、悪いイメージは簡単に頭に染み付く」ようにできているのであろうか。
小さな子供たちの言葉の学習もそうである。幼稚園や学校で「友人たちとの悪い言葉はすぐ覚えるのに、どうして肝心の勉強は‥‥」と嘆くお母さんお父さんは多い。つまり、自然体でいると、人間は悪いイメージに流されやすくなるわけであるから、何らかの力をかけなければならない、ということになる。頭で(理性で)考えて、イメージや感情を制御してあげる必要がここに生じるのである。常に自分に言い聞かせる理性的な脳(大脳皮質)を感じるように意識することが、こういった「少数精鋭の魔力」から逃れる唯一の方法なのである。こういった手法も、今流行りの認知心理学の応用である。
十人の味方を作ろうとして一人の敵を作ってしまうくらいなら、2,3人の味方だけでも十分という成熟した考えが、日本やアメリカの今後の社会に必須だと思っている。21世紀のキーワードは「急成長から熟成へ」と私は提言している。