NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
カルテ20<精神科・心療内科>PTSD
2005/10/15
大地震やテロや大事故が起こるたびに、このPTSDという病気がマスコミなどで取り上げられ、言葉だけはなんとなく知っている方も多いと思います。日本語では「外傷後ストレス障害」と言います。大きな恐怖や破局的な出来事を体験した後、時間がたっても病的な心身の反応が長く続く状態です。出来事のショックが余りにも大きい場合と、個人のストレス過敏性が強い時にこの状態になりやすくなります。
(原因)
異常で怖い出来事を体験すると、誰でも心身が乱れ不安定になります。そして時間の経過と共に心身の安定を取り戻していくものです。しかし、出来事が脅威的であったり個人の感受性が高すぎる場合、恐怖の体験記憶が固定化され、心身の不安定が持続します。記憶や恐怖を感じる脳に障害が起き、脳内ホルモンの分泌や作用の異常が起きるために生じるとされています。
(症状)
フラッシュバックといわれる恐怖の出来事をありありと思い出したり悪夢でうなされるなどの再体験症状、睡眠障害などの覚醒亢進症状、類似する体験を避けたり恐怖を体験した場所などに近づけない回避症状などが主な症状です。こういった症状が一ヶ月以上続く場合この病気が考えられることになります。体験直後は症状がなく、数週間後に症状が出現することもあり、後者のほうが治療が困難になる場合が多いようです。
(診断)
症状の経過をみながら診断することになります。マスコミなどでこの病気が有名になりすぎたために、過剰な診断を招くこともあり慎重な経過観察が望まれます。他の精神疾患を既に有していたり、社会活動に支障が無い場合は本疾患の診断は除外されます。
(治療)
薬物療法と心理療法が主な治療法です。対症的に抗不安薬や睡眠導入剤を用います。またSSRIと呼ばれる一群の薬物が第一選択剤となっていますが、PTSDとしてはまだ日本の保険の適用になっていません。心理療法としては支持的カウンセリング、認知行動療法などがありますが、最近ではEMDRと呼ばれる眼球運動による脱感作と再処理法が試みられています。