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膵炎

(概説)

膵臓は、様々な消化酵素やインスリンを作る大切な臓器です。炎症性疾患の多くには、「急性」と「慢性」が存在します。それらの多くは、急性で発症し、その一部が慢性化するという関係性ですが、膵炎の場合は、急性膵炎と慢性膵炎は別個の疾患と理解した方がわかりやすいかもしれません。とは言っても、急性膵炎の1〜2割は、慢性膵炎に移行しますし、慢性膵炎が経過中に急性化することもあります。急性膵炎は、「急性腹症」と呼ばれる「急激な腹痛で始まり、放置すると命に関わる病気群」の代表の一つです。一方、慢性膵炎は「早期慢性膵炎」という考えが提唱され、発症から慢性型という生活習慣病に近い予備軍のような病態もあります。

(原因)

急性膵炎では、アルコール性と胆石性が2大原因で、男性は前者、女性は後者が多いことが分かっています。慢性膵炎もアルコール性と非アルコール性に分かれ、アルコールの過飲が予防医学上重要であることには変わりません。脂質異常症も原因の一つと考えられています。

(症状)

急性では、激しい腹痛や背部痛、吐き気、嘔吐が中心となります。慢性では、反復する腹痛を主症状に、進行すると消化吸収障害による下痢やインスリン不足による糖尿病などの症状が出現します。

(診断)

原因不明の急激かつ激しい腹痛がある場合は、虫垂炎など他の病気も疑いつつ本疾患を念頭に血液検査、画像検査を行います。本疾患が疑われた場合は、急性膵炎を治療できる専門医がいる病院への早期転送が重要な判断となります。慢性の場合は、血液検査や画像検査を含めた綿密な経過観察が必要です。

(治療)

急性膵炎では、入院絶食の上、痛みのコントロールと補液をはじめ外科治療に至るまで専門的な集中医療が必要になります。慢性膵炎では、薬物治療と食事療法が中心になります。

(予防)

アルコールの過飲を避けることがまず肝要です。原因不明な腹痛を繰り返す場合は専門医に相談しましょう。

作成:2019/07/22

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診療科: 消化器内科、肝胆膵内科又は外科

寄稿日・掲載日・記述日: 2019/7/22 NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №122