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複雑性PTSD

(概説)
災害や身体的、性的暴力、虐待を含む犯罪被害、深刻な事故などにより引き起こされた心身の様々な症状をPTSDと呼びます。原因事件の直後より生じる場合もあれば、一定の期間が経ってから出現することもあり、生活活動の大きな障害になることがしばしばです。特徴的な症状としては、フラッシュバックや、原因事件を想起させるような場所や状況を過度に避ける回避症状、原因事件体験の記憶を消してしまおうとしたり、過度な警戒心やびくつきなどの過覚醒症状などがあります。
2018年公表された新しい診断基準には、本稿である複雑性PTSDの項目が追加されました。それによると、長期的かつ反復性の心的外傷により、より強い根源的な症状が出現するとい言う意味で、特別に分類されたPTSDと言えます。継続的なトラウマが注目されてきた世相に応じた新しい分類と言えるでしょう。
(症状)
自己組織化の障害(DSO)が発生するとされています。難しい概念ですが、自己のアイデンティティーがうまく形成されないということになります。具体的には、感情のコントロールがうまくいかず、他者への暴力行為や自傷やアルコール依存などの自己破壊行動、自責自己否定感情、対人関係困難などがあり、長期にわたり生活障害が続きます。
(治療)
PTSDに対する様々な心理療法を強力かつ持続的に行う必要があります。複雑性PTSDの障害特徴である、感情制御や対人関係の調整を優先することが有効だと言われています。専門性がとても高い領域ですので、治療経験の豊富な専門医を探すことが肝要です。
(家族などへのアドバイス)
本人にとって「確実に安全で自分の味方である」という人がいることが、専門家の治療に負けないくらいの症状改善効果があることを報告している研究者もいます。予防的効果もあると言えます。

作成:2023/04/25

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寄稿日・掲載日・記述日: 2023/4/25 NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №137