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血管外科

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血栓症

2020年01月06日

(概説)<今回は内容の関係上、概説のみとなります>

「血栓症」という言葉は、一つの病名を指すのではなく、身体に生じうる一つの病態を示す言葉です。医学を勉強するときも他の分野と同じく、総論的なことをきちんと理解しておくと、各論の理解がたやすくなります。この機会に「血栓症」の勘所を理解しましょう。

「血栓」とは、その字のごとく「血液が血管の中で固まり、血管を栓のように塞ぐようになる状態」という意味合いです。動脈にも静脈にも生じ、身体のいろいろな場所に発生し得ます。主なものに、脳の動脈に生じる「脳血栓」、心臓に起こると「心筋梗塞や狭心症」、下肢に起こりやすい「深部静脈血栓症」(これは「エコノミー症候群」として有名ですね)、肝臓の重要な血管に起こる「門脈血栓症」など、いろいろな「血栓症」があります。

血液は、血管の中ではサラサラとして固まってはいけないのですが、血管が何らかの理由で破れて、血液が血管外に漏れ出た場合は、なるべく早く凝固し、それ以上の出血を防がないといけません。つまり血液は、この相反する二つの役割を状況に応じて使い分けなければならないのです。その仕組みが、「血液の凝固系」と呼ばれるもので、生命維持システムの基本の一つでもあり、医学生を悩ますような、とても複雑な仕組みを通して我々の身体を守ってくれています。

通常は、血液はそのようにうまく機能してくれていますが、生活習慣病や加齢、長時間の同じ姿勢などの要因で、凝固系のバランスが悪くなると、血管内で血液が固まり小さな血栓が生じ、それが次第に増大する悪循環に陥り、血管の狭窄や閉塞が起こり、その関連の臓器障害が発生します。また小さな血栓が、血管壁から剥がれて、血流に乗って流れ、脳や肺など離れた重要な臓器への血管を詰まらせることがあります。そういった場合を特別に「塞栓」と呼びます。

血栓症の予防には、凝固系のバランスを乱す原因ともなる高血圧、脂質異常症など生活習慣病の改善がまずは肝要です。場合により「血液サラサラの薬」などと呼ばれる一連の抗凝固薬が処方されます。血管が詰まった場合の治療は、その部位により異なってきます。

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下肢静脈瘤

2017年04月25日

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №113

 カルテ64 <血管外科> 下肢静脈瘤

 2017/4/24(月)

 

 



〇総論〇

一般に静脈は動脈と違い、心臓のポンプ機能や血管自らの収縮弛緩などによる強い血流はなく、心臓へ吸い上げる弱い力と、周囲の筋肉の収縮による圧迫や重力による流れが血流の原動力になっています。それでも逆流がしないように、静脈の中には弁があります。この弁の調子が悪くなったり、血栓ができ静脈の流れが滞るとその抹消側の静脈にコブができ蛇行します。肉眼的にも分かるようになりますが、主に下肢に生じやすく、それを特に下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)と呼びます。

〇原因〇

妊娠や長時間の立ち仕事が原因となりますが、生まれつきの静脈走行の異常が原因となる場合もあります。

〇症状〇

目で見える静脈のこぶのような腫れ、むくみ、だるさ、かゆみ、疼痛、こむら返り、進行すると皮膚潰瘍などを起こすこともあります。

〇診断〇

ほとんどが視診、触診で診断がつきます。

〇治療〇

自覚症状も少ない軽症の場合は、弾性ストッキングによる圧迫療法と下肢の挙上や筋肉のポンプ作用を促すような運動指導で経過を見ます。外科的治療として、血管内に硬化剤を入れて閉塞させる方法と原因となる静脈を除去する方法があります。後者には従来からのストリッピング手術という血管を外科的に抜去する方法に加えて、レーザーにて焼灼する比較的低侵襲の治療法も近年保険適用になりました。

〇生活上の注意〇

長時間の立ち仕事を避けて、下肢を挙上させたり、下肢の運動をしたり、軽症のうちから弾性ストッキングを着用し悪化を防ぐことも大切です。レーザーを使った治療も進歩してきましたので、気になる症状がある場合は、専門医と早めに相談しましょう。

 

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