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ヒートショック

2015年01月05日

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №104

 カルテ55  救急科、内科、循環器科

 2015/1/5

 


 

◯概説/症状◯

 現状では正式な医学用語とされていませんが、「急激な温度変化が原因となり、心臓や脳血管に重度な障害を起こすこと」を便宜的に総称しています。医学用語としては、細胞レベルで熱による障害を受けることをヒートショックと呼び、その時に身体を守るヒートショックプロテインと呼ばれるタンパク質が合成されることを指しますが、日本では、通常、前者の意味で使われます。

 日本では、入浴に関連した死亡数は年間1万数千人と推計されています。その多くは、冬場に起こります。日本家屋の特徴でしょうが、風呂場の脱衣室などはまだまだ十分な暖房が設備されていません。暖かな居間などから移動して寒い脱衣室で裸になり、寒い風呂場に入り、急に温かな湯船につかることになります。この間は、どんどん血圧が上昇します。ところが身体が温まり落ち着いてくると、血圧は下降し始めます。こういった急激な血圧変動に伴う血管の収縮や弛緩が引き金となり、脳血管障害や心筋梗塞を引き起こすことをヒートショックと呼んでいます。

◯診断/治療◯

 いずれにしろ発作を起こしてしまうと、意識障害が伴う重症であることが多いので、患者を安静にし、タオルケットなどで保温をし、いち早く救急車を呼ぶことです。心筋梗塞の場合は激しい胸痛、脳血管障害では麻痺や意識障害が主な症状となります。

◯予防/対策◯

 上記のように、発症してしまうと危険な状況に陥ることが多いので、何よりも予防対策が大切です。冬場に温度差がでやすい脱衣室やトイレなどを穏やかに暖める暖房の用意をしましょう。風呂場は脱衣の前に、温かいシャワーなどを出しっ放しにして暖めておいたり、湯船のふたを早めに開けておくなどして風呂場全体を暖めておきます。お湯はぬるめにして、ゆっくりと出入りするように心掛け、飲酒後や過剰な長湯を避けることです。半身浴などもよいでしょう。また入浴前後の水分補給も有用でしょう。深夜の寒い時の入浴よりも、夕食前の早めの入浴もお勧めです。老年者がいる家庭では、風呂場から家族人へ連絡する「緊急ボタン」もできれば設置したいものです。

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てんかん

2014年07月28日

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №102

 カルテ53  神経内科、内科、脳外科

 2014/7/28

 


◯概説◯

突然のけいれんや意識消失で自動車事故を起こし、社会問題として報道されることがあり、「てんかん」という言葉を知っている方も多いと思います。脳に明らかな病変が特定できる「症候性てんかん」と、原因がはっきりしない「突発性てんかん」に大別できます。人口の0.5%から1%くらいの有病率と言われ、比較的頻度が高い病気です。症候性の原因として、頭部外傷、脳腫瘍、脳血管障害、髄膜炎、代謝障害などがあります。突発性は大体20歳前に発症することが多いようです。脳の神経細胞の過剰興奮により症状が出ることは共通した現象です。
 

◯症状◯

部分発作、全般性発作、それ以外などに大きく分かれ、さらに細かく分類されていますが、けいれんと意識障害が主な症状となります。突然けいれんや意識消失が起こるので、周囲にいる人は驚くことが多く、また、交通事故などにつながることが少なからずあり、病気の認識自体が大切となります。軽い意識障害から完全な意識消失、部分的なけいれんから全身のけいれんまで多彩であり、また症状継続時間も異なります。

◯診断◯

特徴的な臨床経過ですので、経験豊富な専門医はそれだけでおおよその診断がつきます。脳波検査によりほぼ確定しますが、症候性てんかんの原因については、MRIやCT検査などの画像検査が有用です。

◯治療◯

症候性てんかんの場合は、まず原因疾患の治療が基本となります。それとともに各種の抗けいれん薬を使用します。突発性の場合は、薬物が治療の中心となります。いずれの場合も、薬物はかなり有効で、ほとんどの場合、発作は抑制された状態を維持できます。問題は、服薬の中止や減量のめやすをたてることが困難なことです。急に薬をやめると、発作をぶり返すことがよくあります。主治医と相談しながら長期的にゆっくり減量することが望まれます。また、あまり一般的ではありませんが、脳神経外科的治療もあります。

◯生活上の注意◯

発作を抑制することが治療の目的ですが、過労や睡眠不足、アルコール、光刺激などが誘引となることが多いので注意が必要です。基本的には自動車の運転は禁止されています。抗けいれん薬は、催奇形性があるので妊婦の場合は注意が必要です。発作そのものは命に直接関わることがありませんが、併発する事故には注意が必要です。長期間にわたる主治医との共同作業が重要です。

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COPD(慢性閉塞性肺疾患)

2014年02月03日

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №99

カルテ50 内科、呼吸器科

2013/10/21

 


○ 概説 ○

 慢性閉塞性肺疾患の英語名の頭文字をとってCOPDという名称が日本ではよく使われています。口からつながる気管が枝分かれして細い気管支になり終点は肺胞と呼ばれる小さな袋のようなものになりますが、肺はその気管支と肺胞からできています。COPDは、その細い気管支に炎症が起きて、気管支が細くなり空気の通りが悪くなる病気ですが、その炎症のほとんどの原因はタバコです。また、いったん細くなった気管支は回復しにくいので、予防やリハビリが大切となります。また、肺胞が破壊されると肺気腫という病気になります。

○ 症状 ○

 階段昇降など運動時の息切れ、咳、痰、呼吸困難などですが、特に息を吐きづらい呼吸困難が特徴となります。症状はゆっくり進行するので、初期は気づかないことも多いですが、喫煙者で階段昇降時の息切れがあった場合は早めに受診することが、病気を進めないために大切となります。

○ 診断 ○

 喫煙状態や症状の経過でほぼ診断は推定できますが、確定診断のためにスパイロメーターという器械を使って、呼吸の状態を測定して診断します。「大きく息を吸ってー、はい、思いっきり吐いてください」と技師さんが補助してくれる検査です。その他の病気との鑑別のために、CTや胸部レントゲン写真を撮る場合もあります。

○ 治療 ○

 根本的な治療法はなく、自覚症状を軽くしたり進行を抑えるために、気管支拡張剤などの吸入薬や飲み薬を用います。禁煙は必須で、呼吸困難がある場合は呼吸リハビリが有効です。重症になると持続的酸素吸入が必要となります。

○ 生活上の注意 ○

 まず「禁煙」の一言につきます。この病気になると、風邪やインフルエンザから重症の肺炎に移行しやすくなるので、普段の風邪予防的行動が大切になります。病気の程度にあった、適切な運動により呼吸に関連する筋肉を日ごろから鍛えることも重要です。

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風疹

2013年09月07日

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №98

カルテ49  内科、小児科

2013/7/22

 


○概説○
日本では俗に「三日はしか」と呼ばれていたもので、「はしかの軽いもの」という印象がありました。
近年発症する患者が減少し、数年に1度大流行する傾向がありましたが、平成25年は、過去最悪の大流行の兆しをみせているために注目されています。ウイルスによる感染症で、たいていは数日で自然治癒しますが、妊娠初期や中期の妊婦がかかると、胎児に心臓などの先天性疾患を起こす可能性があり、この事が今回の流行で問題視されています。
ワクチン接種が唯一の対策となります。
特に昭和54年から62年生まれの人は、日本での予防接種に関する法律の変わり目と重なり、充分なワクチン接種が行われていない可能性が高く、流行に影響していると考えられています。風疹にかかった事がない人は、ワクチンの摂取が望まれます。
 
○症状○
感染後、2~3週間の潜伏期のあと、発熱、発疹、リンパ節腫脹が出現します。発疹は顔から始まり、身体の中心部から手足に広まっていきます。主に耳から首の後ろのリンパ節が腫れます。放置しても数日で症状は消えます。発疹出現後、ウイルスの排泄は激減し、他人に移す可能性は低くなります。
 
○診断○
特徴的な発疹の出現と経緯で診断がほぼつきますが、確定診断には血液による抗体検査が決め手となります。
 
○治療○
根本的な治療法はなく、対症療法にて経過を観察する事でたいていは問題ありません。妊婦の場合は特別な配慮が必要になります。
 
○ワクチン○
過去に風疹にかかった事がなく、中学生の時のワクチン接種を行っていない人は、予防的ワクチン接種が重要です。妊娠の可能性のある女性は、ワクチン接種後2ヵ月間は避妊の必要があるとされています。妊婦が風疹に感染した場合は、産科の担当医とも十分に相談して対応する必要があります。
 

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潰瘍性大腸炎

2013年01月07日

NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

カルテ47<内科・消化器科・胃腸科>潰瘍性大腸炎

2013/1/7


○概 説○

大腸の粘膜に原因不明の炎症が起こる病気であり、この数十年間は新たに発症する患者が増加しています。最近の日本での患者は10万人を超えています。一般には、若年者に多いのですが、中高年の発症も増えてきています。現在のところ、原因は特定できていません。免疫や食生活環境の変化が関与しているのではと推定されています。

完全に治す特効薬はありませんが、症状を抑え、普通の生活ができるようにコントロールする事は可能になってきましたので、独特の症状がある場合は、早めに専門医に相談することをお勧めします。

○症 状○

繰り返したり、持続する腹痛、下痢、血便が主な症状です。重症になると発熱や全身倦怠感、体重減少、貧血などが出現します。

○診 断○

問診テストを含めた詳細な問診が初診時に大切で、男性ホルモンであるテストステロンの血液中濃度を調べる事で診断されます。

○治 療○

軽症では、従来から行なわれている「サラゾピリン」「ペンタサ」「アサコール」などの薬を服用することで、多くの場合、日常生活に支障がない程度にコントロールされます。重症度が高い場合は、副腎皮質ステロイドの内服が基本であるが、最近ではタクロリムスなどの免疫抑制剤や血液成分除去療法などが行なわれます。それでも効果が無い場合は、外科的に大腸の切除術が必要となります。また、この病気には大腸がんが併発することがあり、その場合も手術が必要となります。

○予防、注意点など○

不規則な生活やストレスが症状を悪化させますので、規則正しい生活が肝要です。また、効果のある薬の休薬(薬を飲まない)のタイミングが重要ですので、主治医とよく相談しながら服薬を続けることが大切です。勝手に服薬を止めるのは危険です。

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尿路結石

2012年05月14日

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

カルテ44 <内科、救急診療科> 尿路結石

2012/4/20

 


○概 説○

腎臓で作られた尿が排出される尿管→膀胱(ぼうこう)→尿道までの経路を尿路といい、その経路上に石が生じると尿路結石となります。臨床的に問題になることが多いのが、腎臓の出口から膀胱までの間の尿管と呼ばれる部分に石が詰まった状態で、その状態を尿管結石と呼びます。比較的頻度の高い病気の中で、胆石や痛風とともに痛みの強い代表的病気の1つです。腎臓の出口付近の腎盂(じんう)と呼ばれる部分で生じた石が、尿管の狭い部分に詰まり、尿の流れが止まった時に激しい痛みの発作が起きます。石ができる原因は、ほとんどの場合はっきりせず、時にカルシウムの代謝をコントロールするホルモン機能の障害が認められます。

○症 状○

突然襲ってくる背中や腰や下腹部の激痛発作が典型的です。あまりに痛くて、どこが痛いのかさえ分からないこともあるくらいです。また、石が尿管の狭いところを通過してしまうと、嘘のように痛みが消失してしまうことも本症の特徴です。一般的に尿管には狭い個所が2か所あります。運が悪いと1つの石で2度痛むことになります。また、尿が濁ったり、血尿になることもあります。

○診 断○

症状と血尿の存在でほぼ診断がつきます。超音波で石を確認できる時もあります。<

○治 療○

痛みを抑え、水分を補給して石の自然排出を待つことが原則です。しかし、長時間にわたり石が詰まって腎臓の腫れる水腎症(すいじんしょう)の状態が続くと腎臓の機能が障害されますので、すみやかな対処が必要です。身体の表面から特殊な装置を用いて衝撃波を当て、石を細かく粉砕する治療が開発されており、今では一般化されています。それでもだめな時は、内視鏡や手術により石を取り出すことが必要になる場合もあります。

○その他○

本疾患は、比較的頻度が高いのですが、原因がわかっていないので、特別な予防対策はありません。偏った食事をせず、十分な水分を日頃から摂取し、適切に運動を継続することが大切です。

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男性更年期障害

2012年01月18日

NKH「健康ライフ講座」

NKH「健康ライフ講座」NO.92 日本機械保線株式会社社内報

カルテ43<内科、泌尿器科、男性診療科など>男性更年期障害

2012/1/5


【概説】

女性の更年期障害は、疾病概念としてほぼ確立されて、診断基準や治療法も研究が進んでいます。病院でも婦人科を中心に一般的に診療がされています。一方、男性更年期障害が注目されるようになってきたのは最近であり、現時点では必ずしも医学界においてコンセンサスが得られた疾患というわけではありません。

しかし、男性も年齢とともに男性ホルモンが減少し、そのため性機能や認知力の低下がみられたり、筋肉の量も質も低下する事が分かってきました。医師の間でも研究チームがこの病態の研究調査をするようになり、今後こういった研究成果も踏まえて、男性更年期障害という概念が広がる可能性があるでしょう。専門家の間ではLOH(ロー)症候群(late-onset hypogonadism(レイト オンセット ハイポゴナディズム):加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれる事もあります。

【症状】

極めて多彩です。疲労感、倦怠感、不眠、イライラな症状を中心に、不定愁訴(ふていしゅうそ)が絡みあいます。自然な老化によるものか、病気の範疇(はんちゅう)かは今後の研究により選別されていくと思われます。

【診断】

問診テストを含めた詳細な問診が初診時に大切で、男性ホルモンであるテストステロンの血液中濃度を調べる事で診断されます。<

【治療】

男性ホルモンの補充療法が現在、効果・副作用を調べながら検討されています。その他、症状に応じた薬物治療が併用されます。

【その他】

本疾患は、新しい概念でまだまだ研究段階であるという事を理解しておきましょう。日頃からストレスをためずに、心身ともに健全さを保つような生活が予防法といえるでしょう。他の病気でもそうですが、特にホルモンが関与する病気では、過剰なメンタルヘルスが引き金となる事が多いものです。

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糖尿病

2011年10月07日

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

カルテ42<内科>糖尿病

2011/10/7

 


糖尿病はかつての肺結核のように今や日本の国民病といわれるようになりました。この欄で本病を取り上げたのは8年前になり、その診断基準や治療法に目覚ましい進歩がみられますので再度勉強したいと思います。

とはいっても基本的な考え方は変わっていません。糖尿病は血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が高い状態が持続する病気です。これは膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きが弱くなることが原因です。そのメカニズムにはいくつかのタイプがあります。インスリンは食物中から吸収されたエネルギーを体内の細胞にとりこみ、血糖が一定値以上に上昇しないように管理する役割を持っています。糖尿病になると細胞内には必要なエネルギーが取り込まれず、血液中のブドウ糖濃度は高い状態が持続し、その高血糖が血管や神経を障害するため様々な合併症を起こすことになります。糖尿病は遺伝的な要因に加え、暴飲暴食、ストレスなどの生活環境が引き金となって発症する生活習慣病の代表です。また、1型糖尿病と呼ばれる遺伝がメインの原因となる若年性の糖尿病もありますが、生活習慣病の一つである一般的な糖尿病はⅡ型となります。

(症状)

初期には自覚症状がないのが特徴です。進行すると、のどの渇き、多飲、多尿、だるさ、体重減少、目のかすみ、手足先のしびれといった症状が出現します。したがって定期的な検診(特に血液検査)が重要となります。

(診断)

診断基準も、近年変わりつつありますが、基本的には血液検査で体内の血糖値の動向をみることにより診断されます。1回の血液検査で、大まかな血糖の動向を知ることができるHbA1cと呼ばれる検査が診断のみならず経過を診るのにも大切な指標とされています。合併症の進行程度を知る検査としては、腎臓病を調べる尿中蛋白定量検査、網膜を調べる眼底検査、神経障害を調べる自律神経機能検査などがあります。

(治療)

生活習慣改善とインスリンなどの薬物療法が基本となります。薬物療法は、近年、大きく進歩してきました。インスリン療法は24時間平均して血中濃度を維持できる持効型インスリンの開発によって改善され、また経口薬として小腸から分泌されるインクレチンという血糖調節ホルモンに着目した新しく有望な経口治療薬が日本でも使われるようになり、治療法の選択肢が増えてきました。主治医とよく相談してきちんと血糖のコントロールをすると糖尿病もそれほど恐れることはありません。

(生活、予防上の注意)

糖尿病の治療は他の生活習慣病と同じく、食事療法、運動療法と生活習慣の改善がまず基本となります。糖尿病は現在の医学では残念ながら完治することはなく、進行を止める事が目標となりますので、無理な食事制限と挫折を繰り返すよりも継続性を重視した生活改善が有効です。定期的な診察、検査を受け、未然にコントロールすることが特に重要と言えるでしょう。

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熱中症

2011年07月22日

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

カルテ41<救急救命科、内科>熱中症

2011/7/22

 


(概説)

人間の身体は、いろいろな環境に適応できるように自動調整する機能を持っています。その一つに体温管理があります。外気温にかかわらず、体温を36度から37度程度に維持しようとする仕組みが備わっています。こういった機能を総称して「ホメオスターシス(恒常性)」と呼びます。しかし、異常な高温環境下にさらされることによりこういった体温の恒常性機能に支障が生じることがあり、それを熱中症と呼びます。

(症状)

程度により、様々な症状が見られますが、軽度の場合はこむら返りや、立ちくらみなどが生じ、中等度になると、強い疲労感、めまい、頭痛、吐き気、体温の上昇などが見られるようになり、さらに進むと、意識障害や全身けいれん等の脳神経の症状が出現するような重症となります。

(診断)

症状が起こった状況から専門医が判断します。頭部外傷や脳卒中、心因性のものなどとも鑑別が必要な場合がありますが、主には症状経過から診断がつくことが多いでしょう。

(治療)

軽症の場合は、涼しい場所で、安静にし、ナトリウムの含んだスポーツ飲料等の水分補給で改善します。中等症になると、病院での輸液等が必要になり、重症では、致死率が高くなる重症では、早急な救急救命処置を含んだ対処が必要な場合も多々あります。

(生活、予防上の注意)

高温多湿環境での長時間、強度の運動、作業中に生じることが多いので、まめな休憩と水分補給が大切です。直射日光下だけでなく、夜間でも高温で風通しの悪いようなところでの長時間作業には注意が肝要です。身体が順応していない作業の開始初日などは特に慎重にした方がよいでしょう。睡眠不足や不規則な食事や二日酔いなどは避けるようにしたいものです。予防、対処法ともに「FIRE」と呼ばれる処置を覚えておきましょう。FはFluid(フルイド)の略で水分補給、IはIcing(アイシング)で冷却、RはRest(レスト)で休息、EのEmergency(エマージェンシー) は緊急事態で、救急車を呼びましょうという意味です。

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肺結核

2010年10月15日

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

カルテ36<内科、呼吸器科>肺結核

2010/10/15

 


日本では、じつに4人に1人が感染している可能性があるといわれる肺結核。肺結核は過去の病気ではありません。空気感染することと、何年も前に吸い込んだ菌が体力の低下で活動を始めることがあるという怖さを持っています。

(概説)

結核菌という病原体による感染症を結核といいますが、その9割以上は肺に病巣がある肺結核です。かつては日本の国民病と呼ばれるほど、罹患率、死亡率も1位でしたが、治療や予防の効果が現れ、近年では死亡率が10万人当たり5人程度に落ち着いてきています。しかし、平成17年の罹患率は10万人当たり22人、年間の新規結核患者数が5000人以上と、先進諸国の中では結核発症者の多い国と言えます。

(症状)

咳と痰、微熱、進行すると血痰、体重減少などがみられます。結核菌は比較的弱い菌ですので、感染初期は症状が少なく進行してから気がつくことが多いので、長く(2週間以上)続く咳や微熱や、原因不明の体重減少があった場合は、呼吸器科や内科の医師と相談しましょう。

(診断)

胸部レントゲン撮影やCT検査とともに、痰の培養検査が重要です。培養検査の前段階にあたる、結核菌数を調べる通称ガフキーと呼ばれる検査で既に陽性の結果が出れば、すぐに専門病院での隔離入院が必要となります。それは他人への感染も心配されるためです。診断においては、特に、結核菌と同種の他の抗酸菌が原因となる非結核抗酸菌症や肺がんとの鑑別が大切となります。

(治療)

基本は入院の上、薬物治療となります。標準的には、リファジン、イスコチン、エブトール、ピラマイドという薬剤を使用します。痰に菌が排出されなくなると、外来治療も可能ですが、治療には1年程度かかる場合も多いことは念頭に置く必要があるでしょう。また、薬に対して耐性を持った結核菌の登場が問題となっています。

(生活、予防上の注意)

禁煙は勿論、規則正しい生活と十分な栄養補給が原則です。予防的にはBCGの接種が効果的ですが、平成15年から、小学校での義務接種は廃止となっていますので、各個人の判断が重要です。

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新型インフルエンザ

2009年08月14日

 

カルテ34

新型インフルエンザ

 

NKH「健康ライフ講座」№83

2009/8/14

日本機械保線株式会社 社内報


 

この春、メキシコに端を発して世界中に広がった新型インフルエンザ。日本では夏場にいったん勢力を弱めたものの、秋以降にはより強力なインフルエンザとして流行するのではないかともいわれています。今回は「新型インフルエンザ理解のポイント」をQ&A方式で教えていただきました。


 

Q.従来のインフルエンザとどう違うの?

A.新型と区別するために、従来のインフルエンザを季節性インフルエンザと呼んでいます。
新型インフルエンザは、新たに人から人へと伝染する能力を持つようになったインフルエンザウイルスが感染して起こる疾患です。
一般的に、ウイルスは変異といって変身するのが得意です。特にインフルエンザウイルスのA、B、C型のうちA型は変異する傾向が強くさまざまな種類のものが見つかっています。今回の原因ウイルスは、そのA型ウイルスの一種ですが新たに発見されたものであるために、「新型」と呼ぱれています。

Q.感染力が強いが弱毒とはどういうこと?

A.今回の「新型インフルエンザ」は、ご存知のように感染力が強く、感染者から周囲の人に伝染する確率が高いようです。しかし、一般に重篤になる率が、季節性とあまり変わらない低さです。
また、弱毒か強毒かを決定する要素に、ウィルス増殖が呼吸器系に留まるか全身の臓器まで広まるかがあります。今回の「新型インフルエンザ」はほぽ呼吸器系に留まり弱毒性と判断されます。
しかし、インフルエンザウイルスは変異しやすく、強毒性に移行すると感染力、毒性ともに高い脅威のウイルスになる恐れがあるので関係者は慎重になっているのです。

Q.温暖な気候でも何故、流行するの?

A.インフルエンザウイルスは他のウィルス同様に、単独で空気中で増殖することはできないため、
宿主である動物に感染して増殖します。増殖には30~40度の温度下で高い湿度が最適であり、
必ずしも日本でいう冬が最適環境という訳ではありません。季節性インフルエンザが冬期に流行する理由は、感染様式(ウイルス飛散)および宿主側の要因が大きいと考えられています。
また、冬期は宿主であるヒ卜の鼻腔や咽頭などの粘膜が乾燥や低温のため感染しやすい状態であることも感染拡大の大きな要因です。
今回の新型インフルエンザが、メキシコなど比較的気温の高い場所から発生し、湿度も温度も上昇してきていた時期に日本でも感染拡大して世界的な流行を見せたのは、宿主側の要因つまり、このウイルスに対するヒトの免疫が乏しいことが大きな要因であろうと考えられます。
従って、今後冬期にかけてウイルスが飛散しやすい季節になると、感染がさらに拡大する可能性は充分にあり、より一層の注意が必要です。

Q.症状や予防法、治療法は?

A.基本的には季節性インフルエンザと同じで、のどの痛み・鼻汁・くしゃみ・咳・頭痛・寒気・発熱といったかぜ症状の他に、筋肉痛や関節痛・腹痛・下痢などです。予防には手洗い・うがいの徹底、感染の拡散防止として咳・くしゃみが出る時はマスクをつけることが重要です。
治療には、抗インフルエンザウイルス薬であるタミフルやリレンザが有効です。

 

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インフルエンザ

2008年11月25日

 

 

カルテ32

インフルエンザ

NKH「健康ライフ講座」№80

2008/11/4

日本機械保線株式会社 社内報


秋の深まりとともに、朝晩は冷え込む日も目立ってきました。気温が下がるにつれ、インフルエンザの流行に関する二ュ一スを目や耳にする機会も増えてきます。


○インフルエンザとは?○

インフルエンザは普通の風邪と同様ウイルス感染が原因で、特徴的な症状は、38度以上の高熱や寒気・筋肉痛、強い咽頭痛などです。冬は、乾いた冷たい空気によりのどや鼻の粘膜が乾燥して免疫カが落ちる一方で、ウイルスの活動が活発になる季節のため、例年12~2月頃に流行します。 ところで、現在東南アジアを中心に高病原性の鳥インフルエンザが発生していますが、それがヒトに感染し、ヒトの体内で増える事ができるように変化し、さらにヒトからヒトヘ感染するように変異して発症する病気が新型インフルエンザです。今後の流行の可能性が懸念されていますが、基本的な予防や治療は通常のインフルエンザと同様、ワクチンの開発も進められています。

○予 防○

インフルエンザウイルスは感染カが強いため、咽頭粘膜とウイルスとの接触を防ぐことが重要となり、予防で一番大切な事は、「うがいと手洗い」により・ウイルスを洗い流すことです。人ごみでほ、マスクの着用でウイルスの侵人を少しでも防ぐ事が効果的です。家の中で暖房をかける際は空気の乾燥に気を配り、加湿器などをうまく使ってください。十分な栄養や睡眠をとり免疫力在高めることも重要なポイントです。 また、ワクチン接種も有効な予防法です。その年に流行するウイルスのタイプによって効果は違いますが、発症するリスクを半分程度に抑えることができるようです。効果が出るのに2週間から1カ月程度かかるので、本格的な流行シーズンが来る前に早めに接種するのがポイントです。

○治 療○

まず確定診断は、のどや鼻の粘液を採取する検査で行います。治療はタミフル、リレンザなどの抗ウイルス薬がありますが、発症後48時間以内の服用開始でないと効果が期待できません。また若年者でほ重篤な副作用の可能性が指摘されており、医師と充分に相談する事が大切です。さらに、発熱や咽頭痛等の症状緩和には、解熱鎮痛薬なども処方されます。多くは1週間以内に症状は改善しますが、高齢者や幼児では肺炎の合併にも注意が必要です。

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特定健診

2008年08月19日

カルテ31

特定健診

NKH「健康ライフ講座」№79

2008/8/1

日本機械保線株式会社 社内報


もうすぐ当社も定期健康診断の季節がやってきます。今回は、今年度から導人された「特定健康診査』について寺下先生に解説していただきました。メタボの診断に内心ドキドキしていらっしゃる方もいるのでは?


○メタボリック症候群○

現代社会において、食文化の変化、運動不足などの生活環境の変化に伴って、いわゆるメタボリック症候群(内臓脂肪症候群:内臓脂肪の蓄積により肥満、高血圧、高脂血症、耐糖能異常(糖尿病)を引き起こすと考えられている。巷でほ、メタボと略して呼んでいるようです)が国民の健康および医療経済に大きな脅威となってきました。実際、その予備軍も含めると2000万人にも及ぶと推定されており、社会的にも低カロリー食品や、運動グッズが流行するなど健康に関心が集まってきています。しかし、目標が明確でないことや、個々人の関心や努力によって成果に大きなばらつきが生じるため、個人レベルでの健康対策には限界があります。

○特定健診とは○

これに対して、平成20年4月から厚生労働省によって打ち出された注目すべき対策が「特定健康診査(特定健診)」です。この健診の特徴は、40歳から74歳の家族を含めた健康保険加人者全員を対象にしていることと、健診結果により必要がある者(有所見者)に対して行われる指導(特定保健指導)を義務化していることです。 また、内臓脂肪蓄積の判定に「腹囲」を採用していることも特徴的です。判定の結果、リスクごとにそれぞれクラス分けして、リスクに見合った指導(特定保健指導)を行うことによって、メタボリツク症候群の延長線上にある生活習慣病や、さらに深刻な脳梗塞、心筋梗塞などの発生を末然に防ぐことが可能と考えられています。

○大事なのは疾病予防○

この保健政策に対しては、肥満者の社会的不利益、健診脱落者へのぺナルティーの適正性、医療費削減の可能性、メタボリック症候群の診断基準・医字的意義の未確定性など様々な間題点が指摘されております。さらに特定健診でほ、メタボリック症候群に重点を置くあまり、禁煙の重要性などが強調されていないところが気に掛かります。新しいことに批判はつきものですが、疾病予防の対策として責重な税金を投入して国民の健康を維持しようというメタボ対策ながら「太っ腹な」政策は前向きに評価し、成果を大いに期待したいものです。せっかくの国をあげた保健政策に皆さんも真剣に取り組んでみませんか。

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白血病

2008年01月15日

 

カルテ29

内科、血液科

白血病

NKH「健康ライフ講座」№77

 2008/1/1 5

日本機械保線株式会社 社内報


 白血病は「血液のガン」として知られていますが、正確には骨の中心部にある骨髄中に存在する造血幹細胞と呼ばれる細胞がガン化する病気です。造血幹細胞とは血液中に存在するすべての細胞の元になるものです。また、ガン化とは細胞分裂が制御できず、コントロールを失いながら増殖してしまう細胞の状態と考えれば理解が容易です。

白血病では、造血幹細胞から異常な白血球が止めどなく作られます。そのため、正常な白血球や赤血球や血小板などの産生に障害がでます。白血病はリンパ性と骨髄性に分かれ、それぞれが急性と慢性に分類されます。これら4種類の白血病は別の病気と考えてもよいほど性格が異なります。
このなかで成人に発症することが多い慢性骨髄性白血病 (CMLと略されます) について説明します。
症状:慢性期は白血球が増加するだけで症状は乏しく、血液検査により発見されることが多い病気の一つです。軽度の貧血がみられたり、脾臓が腫れることもあります。この慢性期 (初期といってもよい) に適切な治療が行われないと、数年以内に急性転化という状態を引き起こし、白血球数が急増し、貧血が進み発熱、体重減少など急性白血病と同じ状態に突入します。こうなると本来の急性白血病より治療が困難になります。

診断:血液中の白血球の数や性質を調べます。1μlにつき、正常では数千個くらいの白血球が数万から時には数十万に増加します。確定診断のためには骨髄を採って調べます。 CML の原因であるフィラデルフィア染色体やbcr-abl遺伝子が検出されればほぼ診断は確定されます。
治療:従来は根治的治療の可能性がある治療法としては骨髄移植のみで、インターフェロンやその他の化学療法薬 (抗がん剤)が治療の主体でした。骨髄移植以外では急性転化を阻止できる治療法が存在しませんでしたが、この数年、イマチ二ブという分子標的治療薬が画期的な効果を上げることが分かってきました。原因遺伝子が消滅することも多く、今後世界各国から寄せられる治療実績の報告に期待が集まっています。
その他:このように初期の段階で発見されるCMLの治療に期待が持たれるようになったということは、初期の段階で発見する意義が大きいということになります。一般の血液検査で簡単に白血球数はチェックできるので、やはり定期的な健診が有効な病気のーつと考えることができます。
 

 

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貧血

2007年10月16日

カルテ28

内科、血液科

貧血

NKH「健康ライフ講座」№76

 2007/10/15

日本機械保線株式会社 社内報


血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態を貧血と定義しています。ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶための役割をもつ蛋白ですが、血液が赤色であるのはヘモグロビンの色です。 このヘモグロビンの合成のためには鉄分が必須であり、貧血のなかで最も頻度の高いもの は「鉄欠乏性貧血」と呼ばれるものです。一般的に混同されがちですが、「低血圧と貧血」は別物です。鉄欠乏性貧血の原因は、出血と鉄分の不足 (摂取不足や吸収低下) です。胃や大腸などの消化管からの出血が原因となっていたりします。女性の月経によってもおこります。その他、溶血性貧血や再生不良性貧血、悪性貧血など専門性の高い病気の可能性もあるので専門医の診断が必須です。


症状
全身への酸素を運ぶヘモグロビンが少なくなるための症状で多彩です。また、慢性 に経過すると、身体が慣れて症状が意識されない場合も少なくありません。動惇、息切れ、めまい、全身倦怠感などが代表的な症状です。また、貧血が進むと素人目にも皮膚が青白く見え、顔色が蒼白となります。

診断
血液検査でほとんど診断がつきます。また、熟練した医師の診察でおおよその判断がつきます。原因究明のためには、胃や大腸の内視鏡や婦人科的検査なども必要となる場合があります。

治療
原因としての出血が存在する場合はその治療が優先されます。月経過多などによる貧血は鉄剤の服用のみで大丈夫なことが多いです。極度の貧血の場合は輸血も必要となりますが、日常的にみられる鉄欠乏性貧血の治療は、鉄剤を適切に服用することで 治療がうまくいくことが多いようです。
その他の複雑な貧血の治療は血液内科の専門医の診療が不可欠です。

その他
ある程度の鉄欠乏性貧血が診断された ら、なかなか食事だけでは鉄分を補いきれ ないことが多いので、初期だけでも鉄剤の 投与を受けるのが賢明と思われます。貧血 気昧の人は普段から食事の鉄分を意識するとよいでしょう。

 

 

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胃潰瘍・十二指腸潰瘍

2007年08月01日

 

カルテ27

内科、消化器科

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

NKH「健康ライフ講座」№75

 2007/8/1

日本機械保線株式会社 社内報


口から肛門までの聞を消化管と呼んでいますが、口、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門という順序でつながっています。それぞれは食べ物を消化し吸収するために役割を分担しています。胃の中では、食べ物を消毒し消化するために胃液が分泌されます。胃液の中には胃酸とペプシンが含まれ、タンパク質を分解します。そのため、胃の壁自体が破壊されないように、自己を守るための仕組みが備わっています。前者を攻撃因子、後者を防御因子と呼んでいますが、さまざまなストレスによりこのバランスが崩れ、攻撃因子が優位に立つと胃の粘膜が溶けて欠損を生じます。この状態を「潰瘍」と呼びます。胃でも十二指腸でも同様の機序で起こります。最近の研究では、こういった攻撃因子と防御因子のバランスを崩す主な原因は、ヘリコパクターピロりという細菌であるということが分かりました。

 

症状

主に空腹時にみぞおちの辺りが痛みます。また、胃酸が出過ぎることにより胸やけや酸っぱいゲツプがでます。進行すると、 吐血といって血を吐くこともあります。その他、吐き気、嘔吐、食欲不振といった症状もあります。

治療

多くは、臨床症状で見当がつきますが、確定診断には内視鏡が必要です。特に、ガンとの鑑別診断のためには内視鏡による生検 (細胞を採取して顕微鏡でみる) が必要となります。

その他

この病気は体質やピロリ菌感染が主な原因ですが、過剰なストレスや喫煙、暴飲暴食などの生活の乱れが引き金となります。再発を繰り返す人は、生活習慣の改善とピロリ菌の除菌を推奨します。ピロリ菌とガン発症の関連性も論議されています。現在では、この治療法は保険で行うことが可能になりました。

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高血圧

2007年05月15日

 

NKH74.jpg

カルテ26

内科、循環器科

高血圧

NKH「健康ライフ講座」№74

2007/5/15

日本機械保線株式会社 社内報


血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の壁を圧迫する力のことで、心臓の収縮時にその圧力が最も高くなった時を収縮期血圧(最高血圧、上の血圧などとも呼ばれます)、拡 張時に圧力が最も低くなった時が拡張期血圧(最低血圧、下の血圧)といいます。一般にカルテなどには、2つをまとめて「130/80」のように記載されるととが多いようです。この2つの血圧がある程度以上高い状態(高血圧)が長年続くと、動脈の壁が厚くなったり硬くなったりする動脈硬化と呼ばれる状態になりやすいということが分かっています。高血圧は、生活習慣病の代表格でもあります。


症状

特有の症状がないことが特徴といえます。たまに頭痛や肩こりなどを訴える方もいます。時間をかけて動脈血管を傷害することが一番の問題であり、心筋梗塞や脳卒中の原因となります。「静かなる殺し屋」と呼ばれる所以です。

診断

判定基準は、時代や国によって変化します。現在のところ、日本高血圧学会の2004年度に定めたガイドラインでは、最高血圧が140、最低血圧は90がボーダーラインとなっています。血圧は常時変動し、就寝中の午前3時ごろ最低となり、起床後しばらくして最高になるというのが一般的ですが、この日内変動にも個人差があります。診察時は正常だが、職場などで高くなるような「仮面高血圧」や逆に診察時に緊張して高くなる「白衣高血圧」などもあり、診断にはある程度の期間を観察する必要があります。

治療

肥満があれば減量や減塩、適度な運動などの生活習慣の改善がます基本となりますが、中等度以上の高血圧が認められる場合は薬物治療が中心となります。現在は長期服用を視野に入れ、糖尿病や高脂血症を合併している患者にも使いやすい降圧剤が開発されています。また、1日1、2回の服用で済むことも多く、生活への負担も少ないので、きちんと医師に管理してもらうことをお勧めします。

注意

メタボリツクシンドロームが注目されていますが、高血圧もその仲間と考えています。糖尿病や高脂血症、肥満、高尿酸血症などとセットにして治療を考えていくことが大切です。

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痛風(高尿酸血症)

2006年10月15日

 

 カルテ24

内科生活習慣病科

痛風(高尿酸血症)

NKH「健康ライフ講座」№72

2006/10/15

日本機械保線株式会社 社内報


体内に過剰の尿酸が蓄積する病気のことを高尿酸血症と呼びます。高尿酸血症の患者さんの1割くらいが、関節の中に尿酸の結晶が生じて、強い痛みを伴った発作を引き起こしますが、この発作を痛風と呼んでいます。まさに風が吹いても痛みを感じるという意味です。


○原 因○

 尿酸が高くなるメカニズムとしては、大きく分けて排泄が悪くなることと生産が過剰になることがあります。 いずれも遺伝的素因が関与していますが、環境因子として尿酸の原料となるプリン体という物質を多く含む食品やアルコールの取り過ぎがあり、生活習慣病の代表のひとつでもあります。

○症 状○

 高尿酸血症そのものには、特に自覚症状はありません。痛風発作は、多くの場合足の親指の根元の関節に発症しますが、突然の激痛と患部の発赤、発熱が生じます。ひどい場合は歩けなくなるほどです。 足首や手首など他の関節に生じることもあります。また、高尿酸血症があると尿中の尿酸が結晶しやすくなり、腎臓や尿管などに石ができることがあります。その石がつまるとお腹や背中に激痛発作が起こることがあります。

○診 断○

 高尿酸血症jは血液検査が診断のすべてと言えます。一般的には7.0㎎/㎗以上ほ本症と診断します。痛風の診断は、症状からほぼ判断できますが、確定診断には関節液を採取し尿酸の結晶を調べることになります。腎臓結石などは、超音波検査にて診断されます。

○治 療○

 後述する食事療法が何よりも優先されますが、薬剤としては、尿酸の生成を抑制するものと排泄を促すものがり、どちらも効果的です。痛風発作に対しては、痛みと炎症を抑える治療を行います。

○生活上の注意○

 食べすぎ飲みすぎに注意することに尽きます。特にプリン体を多く含む食品を制限することです。プリン体を多い食品としては、レバー、うに、白子など内蔵系の食品とビールなどです。鶏卵はそれほど多くはありません。ビール以外のアルコールでも飲みすぎると脂肪肝になり尿酸を上げる原因となりますので注意が肝要です。

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胃食道逆流症(逆流性食道炎)

2006年08月17日

  

 カルテ23

内科 消化器内科

胃食道逆流症(逆流性食道炎)

NKH「健康ライフ講座」№71

2006/8/15

日本機械保線株式会社 社内報


食道内へ胃の内容物が逆流することにより引き起こされる症候群をいい、専門的にはGERDと略されて使われることがあります。胃酸を含んだ胃の内容物が食道に逆流することにより食道に逆流することにより食道粘膜に炎症をきたし、胸やけや胸部の痛みや不快感をきたす逆流性食道炎が本症の大半を占めます。


○原 因○

 本来胃から食道への逆流を防止するため、食道と胃の間を締める筋肉があります。しかし、その筋肉がうまく働かず胃酸の逆流を起こしてしまうことが考えられます。食道の粘膜は胃のように酸に強くないために炎症が起こりやすいのです。また、食道裂孔ヘルニアといって胃の粘膜がこの境を越えて食道にはみ出していることがあり、本症を助長する傾向があります。この状態は日本人に多いとされています。また、内視鏡的には食道に炎症が無いのにもかかわらず同様の症状をきたす場合があり、症候性GERDと呼ばれています。

○症状・診断○

 胸焼け、胸痛、胸部不快感、ゲップ、嚥下障害、のどの違和感、食欲不振、吐き気などさまざまな症状が起こりえます。 胃食道逆流症は、上述のとおり内視鏡と症状により診断されます。慢性的に炎症が続くと食道の粘膜に変化をきたし(パレット食道と呼ばれます)、発ガンの危険性も増した上体となります。

○治 療○

 プロントポンプ阻害剤やH2受容体拮抗薬と呼ばれる胃酸分泌抑制剤が特効薬ととなります。ただ、本症は再発をきたしやすいので投薬時間についても医師の指導を守り、自らの生活管理も大切です。また、難治例では内視鏡的手術がなされることもあります。

○生活上の注意○

 食べすぎ飲みすぎにならないようにし、喫煙も制限します。また、食後すぐに横になると胃酸が逆流しやすいので寝る前の食事は控えるようにしたいものです。炭酸飲料、香辛料、酸味の強いものも控え、よく噛んで食べるように心がけることが大切です。

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代謝症候群(メタボリック症候群)

2006年01月25日

カルテ21

内科・生活習慣病科

代謝症候群(メタボリック症候群)

NKH「健康ライフ講座」№69

2006.1

日本機械保線株式会社 社内報


肥満、高血圧、脂質代謝異常(高コレステロールなど)、耐糖能異常(糖尿病)などの病気が複数重なり、心筋梗塞(こうそく)、脳卒中など重い動脈硬化症の病気に進む危険性が高くなった状態を総称した概念です。それぞれの疾患の程度が軽症であっても、それらが重なってしまうと重い病気を引き起こす可能性が急激に高くなるのでこのような病気を引き起こす可能性が急激に高くなるのでこのような概念が提唱されるようになりました。


原因

主な原因として、内臓脂肪の蓄積がこういった疾患の元になると考えられています、

代謝症候群の兆候を把握していれば、動脈硬化性の疾病の効果的な予防につながると期待されています。

症状・診断

自覚的な症状が少ないので、医学的な診断基準が示されています。その診断基準は「ウエストが男性85cm以上、女性90cm以上、空腹時血糖が110以上、収縮期血圧が130以上又は拡張期血圧が85以上、中性脂肪が150以上又はHDLコレステロールが40以下」の5項目中3項目以上が該当すれば代謝症候群と診断する、となっています。この基準に従うと日本国内では1000万人以上が該当する、と推定されています。

治療

それぞれの疾病に対応した治療が必要です。特に高血圧や糖尿病などは軽症のうちに発見し生活習慣病の改善と最低限の薬剤により疾病のコントロールをすることが肝要です。

予防

予防策としてはカロリーや脂肪が多い食事を見直し、運動不足を解消するような生活習慣の改善ということに尽きます。日頃から体重を自己管理し、腹囲なども時々測定するような心構えが大切と言えるでしょう。かかりつけ医に定期的な検診をしてもらうことも重要な予防策となります。

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