(概説)
思春期に好発する自律神経機能不全であり、立ちくらみ、失神、朝起き不良、倦怠感、無気力、動悸、頭痛、食欲不振、顔色が悪いなどが主な症状です。以前は、思春期の一時的な自律神経障害や低血圧気味の体質、という程度に考えられていましたが、最近では重症型も存在し、不登校や引きこもりの原因の一つでもあるとのことが明らかになり、本疾患の重要性が唱えられています。学会による診断治療ガイドラインも刷新されるようになり、最近では2015年に改定されています。世界的にみても、特に日本での研究が進んでいるようです。専門家の間で起立性調節障害は、その英語の頭文字をとって「OD」と略されて使われます。
(原因、症状、診断)
根本的原因は不明ですが、身体的要因と心身的要因が重なり合っていると考えられています。軽症も含めると中学生の1割程度が本症に含まれるとの報告もあります。診断は、まず原因となる他の身体的疾患を除外することが大切です。その上で、上記の主な症状が3つ以上か、2つの強い症状があれば本疾患を疑います。その上で、「新起立試験」と呼ばれる検査を行い、4つのサブタイプ(起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、神経調節性失神、遷延性起立性低血圧)の判定を行います。
(治療)
家族や学校からは、怠けなど気持ちの問題と解釈されやすく、本人と保護者の関係性が悪くなることが多いので、きちんと診断を行い、本疾患であるならば身体的病気であることの理解を深めながら接することが大切です。起立時の動作はゆっくりなどの注意事項や十分な水分や塩分の適切な摂取、定期的な運動(歩行)や十分な睡眠などが大切なことは言うまでもありません。
それでも改善されない場合は血圧を調整するような薬物を使用します。認知行動療法などの心理療法も有効です。
(生活上の注意)
保護者や学校関係者が本疾患のことを十分に理解し、慎重に見守ってあげることが何よりも重要です。
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報
カルテ62 <偏食外来、総合診療科、心療内科など>
2015/10
(総論)
今回は「偏食」というテーマを頂きました。いつもの医学的病名ではありませんので記載方法が異なりますが、健康管理においてよく使われる言葉ですので、解説にチャレンジします。多くの辞書を調べてみましたが、平均した意味合いは「好き嫌いにより特定の食品を食べなかったり、または特定の食品ばかりを多量に食べるなどの偏った食生活様式」となります。子供の頃のしつけや生活環境や時にトラウマなどにより形成される場合が多いのですが、最近では大人になってから形成される偏食も問題になっています。偏食は、文字通り偏った栄養摂取につながり、様々な病気の原因や引き金にもなりえます。テレビなどのマスコミで、ダイエットや健康増進や病気治癒のための極端な食事法が紹介されると、街のスーパーではその食材が売り切れることもあります。幸い長続きしないので、偏食に進むことは少ないのですが、中にはそのことを信奉するあまり偏食状態となります。社会的要因による偏食と言えるでしょう。「炭水化物を取らないダイエット」など、専門家の間でも意見が対立する食に対する考え方があり、結論が出るのにまだしばらくの年月がかかりそうです。
(対処)
総論でも述べましたが、「病気の原因となるようなほどの偏った食生活」であるのか「好き嫌いが多少あるが、栄養バランスは取れている食生活」であるのかの見極めが大切です。前者の場合は、もちろん補正していくべきでしょう。原因に精神疾患が関与している場合は、精神科医の指導が必要になるでしょうが、成長期に形成された偏食では、家庭での調理などにもまめな工夫が必要でしょう。専門家に相談できる場所や機会が用意されていないのが現状ですが、管理栄養士などが常駐する病院に相談するのも一法です。
「好き嫌いにより偏る」
のも、人間らしい行動なのでしょうが、「バランスをとる」というのも人間らしい行動となることを認識してはいかがでしょうか。
NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №106
2015/7/27
〇概要〇
精神的負荷や温熱、辛い味などの負荷がかかった時などに、生活に支障をきたす程度の大量の発汗が手足や腋の下、顔などに生じる状態を原発性局所多汗症と呼んでいます。感染症や内分泌や神経の病気で起こる続発性多汗症と区別されます。一般に汗が多くて困っているという方は前者の状態と言えます。原因ははっきりしませんが、自立神経の過敏な反応と考えられます。
〇症状〇
軽症の場合は、単に「汗かき」という程度ですが、症状が強い場合は、生活に支障が出る程度の大量の発汗が生じます。その結果ワキガやあせもが生じてしまうこともあります。
〇診断〇
病状では診断は容易につきますが、基礎疾患が存在する続発性多汗症ではないかどうかの鑑別が必要です。疑われる病気があれば、血液検査やCTやMRIなどの画像検査が必要なことがあります。
〇治療〇
「原発性局所多汗症診療ガイドライン」という標準的な治療の指針があります。第1選択として、20%塩化アルミニウム水溶液を塗布することが推奨されています。また手足に対しては患部を水道水に浸した状態で微弱電流を流し、水素イオンで細胞へ働きかける「イオントフォレーシス」という治療もされています。第2選択肢としボトックス( A型ボツリヌス毒素製剤 )の局所麻酔も保険適用となりました。最終的手段としては交感神経遮断術も試されることがあります。
〇生活上の注意〇
常にタオルを携帯し、まめに汗をふくことになります。また精神的負担をなるべく軽減するように生活設計を行い、各種リラックス法なども取り入れるとよいでしょう。
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カルテ39 心療内科、精神科 不眠症 |
NKH「健康ライフ講座」№88 2011/1/14 日本機械保線株式会社 社内報 |
国民の2割以上が悩んでいると推定される「不眠症」 。原因となる疾患が潜んでいる場合もあり、軽視は禁物です。
○解 説○
睡眠に対する悩みは個人差が多く、したがって「不眠症」という定義も難しいのです。しかし、何らかの睡眠障害があると思われる頻度はかなり高く、少なく見積もっても人口の2割以上だといわれています。また、この不眠は加齢とともに多くなり、高齢化現象を抱える日本にとっても真剣に考えていかなければならない病態ともいえるでしょう。
○症 状○
不眠症のタイプは「入眠障害」「熟眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」に分けられます。「中途覚醒」と「早朝覚醒」は一緒にして「睡眠維持障害」と分類されることもあります。それぞれはその名前から容易に理解されると思います。「入眠障害」は、いわゆる寝つきが悪いと称されるもので、一番多いタイプです。「熟眠障害」は、ある程度の時間は眠れているが「眠った気がしない」と感じるものです。ストレスによる不眠に多いタイプです。「中途覚醒」「早朝覚醒」は、朝早く眼が覚めてしまい、その後寝つけないというもので、比較的高齢者に多くみられます。熟眠感があって、日中の生活に支障がなければ問題ないことも多いものです。
○診 断○
症状から診断は推定されることが多いですが、他の原因がないか探索する必要があります。他の原因としては、精神障害やアルコールや薬物依存、睡眠時無呼吸症候群などに代表される身体疾患などがあります。これらの原因があっても、「不眠症」の診断はつくことにはなりますが、治療方針が違ってきます。
○治 療○
まず、原因となる基礎疾患があれば、その治療を並行または優先させることが大切です。自律訓練法などの心理療法を併用すると効果的ですが、特に不眠で病院に来るほど悩んでいる場合は、即効性のある薬物療法を行うのが一般的です。睡眠薬は開発が進み安全性が高まっていますが、副作用や依存性の問題もあるので、主治医と相談しながら、こまめな匙加減をすることが肝要です。
○生活、予防上の注意○
何よりも規則正しい生活が重要です。我々人間は、本来の日内リズムが存在し、覚醒と睡眠のリズムをコントロールしています。脳の松果体に存在するメラトニンがその重要な役割を担っているということは有名ですね。また、最近では細胞レベルにおいても、時間をコントロールしたり時間に制御されたりするメカニズム(時計遺伝子)があるらしいことが分かり注目されています。それらを正常に機能させるためにも、規則正しい生活は必須ということになります。職業上、深夜勤務が頻繁にあったり、海外出張等で時差をさけられない方は、昼間、日光による明かりを十分に浴び、十分な運動を生活の中に取り入れ、体内時間のズレをまめにリセットするよう心掛けることが大切です。
カルテ35<精神科、心療内科>パニック障害
2009/9/30
急に息が詰まる感じと、このまま死んでしまうのではないかという恐怖-。
「パニック症候群」の原因は過度のストレス。生き馬の眼を抜くという芸能界での羅患も多く、ワイドショー等で取り上げられることがある身近な病気です。
(概説)
不安障害と呼ばれる一群の疾患の中に位置づけられる病気です。中心になる症状は激しい不安とそれに伴う多彩な身体症状であり、循環器系の救急外来など他の専門科を受診して検査の結果異常はないというケースが多く見られます。実際、東京都などの救急出動の原因となる疾患の上位を占めていると言われています。
(症状)
ある日突然発作は起こります。動悸、息苦しさ、胸痛、発汗、ほてり、手足の震え、めまい、非現実感、狂ってしまうのではないか、死んでしまうのではないか、しびれ感などの症状が突然出現します。最初の発作以降は、予期不安といい「また発作が起こるのでないだろうか」という不安が続くようになります。これが本疾患の中心的な症状と言えます。多くの人は「地下鉄」「高層ビル」「エレベーター」「映画館」などすぐには逃げ出せないところを嫌い、ひどい場合はそこに行けなくなります。これを「広場恐怖」と呼んでいます。
(診断)
病状経過や症状から専門医の臨床経験から比較的容易に診断されます。心電図などの身体的検査でなにも異常がでないことも本疾患の診断の助けとなります。最初の発作の時に、睡眠不足などの慢性疲労があったり、元来用心深いなどの性格も影響はします。
(治療)
パニッック発作を消失させ、予期不安を解消させることが治療の目的となります。従来はアルプラゾラム(商品名:ソラナックス、コンスタン)というベンゾジアゼピン系抗不安薬が特効薬として使われていましたが、最近ではそれに加えて、他の抗不安薬やSSRIとよばれる抗うつ剤に属する一連の薬剤も使われます。いずれも専門医により経過を観察しながら薬の匙加減をしていくことが重要です。精神療法としての認知行動療法は、他の精神疾患と同様とても重要ですが、日本では、保険制度や経済的な理由などから普及していないのが現状です。
(生活、予防上の注意)
癌と同じく早期診断早期治療が重要だと考えています。また、予防的行動として、物事に固執せず、ストレスをためず、オーバーペースにならないように日頃の生活リズムをコントロールすることが大切です。認知心理学の勉強をするのも良いことだと思います。
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カルテ25 精神科 心療内科 うつ病 |
NKH「健康ライフ講座」№73 2007/1/15 日本機械保線株式会社 社内報 |
統合失調症(旧称:精神分裂病)とともに躁うつ病、うつ病が従来から精神病の代表とされてきました。特に内因性うつ病として脳腫瘍など脳の器質的病変や、過度のストレスによる心理因子が働いて生じる心因性うつ病などと区別されていましたが、最近では気分障害という大きな分類としてまとめられるようになる傾向がありあmす。WHOの調査によれば、有病率は人工の3~5%となっています。また、生涯のうち5~25%の人がこの症状を体験するとも言われている頻度の高い病気といえます。
抑うつ気分、意欲の低下、生活の活動の低下、悲観的な思考障害、心理的要因による身体障害などに分類されます。具体的には憂鬱感、喜びの消失、判断力の低下、不眠、食欲低下、自殺念慮などがあります。
病状頚経過や症状から診断されます。精神科専門医の間で使われる診断基準があり、その項目をどの程度満たすかによって客観的に診断されます。程度が軽度な場合は「気分変調性障害」と診断される場合もあります。
一般に日本の外来診療では、抗うつ薬を中心とした薬物療法が中心となります。従来からの三環形四環形抗うつ薬に加えてSSRIと呼ばれる新しいタイプの薬も使用されるようになり、うつ病治療の幅が広がりました。また、睡眠導入剤や抗不安薬(安定剤)なども適宜組み合わされて処方されます。
重症な場合は電撃療法という治療が行われることもあります。また、認知療法という心理療法が再発防止も含めて注目されていますが、治療に多大な時間を要し、訓練を受けた専門家も未だ少なく、日本の保険医療の中ではまだ一般的ではありません。
癌と同じく早期発見・早期治療が重要だと考えます・また、予防行動として、物事に固執せず、オーバーペースにならないように日頃の生活をコントロールすることが大切です。認知心理学の勉強をするのも良いことだと思います。
カルテ18 精神科・心療内科 五月病 |
NKH「健康ライフ講座」№66 2005.5 日本機械保線株式会社 社内報 |
新入生が新しい環境の変化に馴染めずに、知らず知らずのうちに自分の殻の中に閉じこもり心のスランプになってしまう状態は5月病としてよく知られています。近年、学生の五月病は減り、代わって、職場環境の激変する現代を反映するように社会人に同様の症状が多く認められるようになりました。
五月病は医学用語ではないため、決まった概念や定義があるわけではありません。
医学的には「適応障害」と診断され、新入生や新入社員に限らず、また五月に限った病気でもありません。例えば初めての1人暮らしや、新しい人間関係についていけない、期待していた仕事や新生活と現実のギャップについていけないなど、新たな環境に適応できずに、そのことへのあせりが強いストレスとなって生じると考えられます。
新しい生活に夢中に取り組む間はよいのですが、それがひと段落する5月・6月頃lこ、緊張感からの解放や新生活への失望などがきっかけとなり、知らず知らずに蓄積された心身の疲れが出て無気力な状態を認め、重症の場合にはうつ病へと進展することがあります。
本人の性格も大きな因子で、同様のストレスに対して負担になってしまう人と、うまく乗り越えられる人とがいます。
精神的には、やる気が出ない、なんとなく気持ちが落ち込む、イライラする、不安感などが認められ、身体的には睡眠障害、疲労感、頭痛、めまい、動悸などが挙げられます。疲れているのに眠れず、意欲や食欲が減退し、人間関係もうまくいかずに自己嫌悪に陥り、何とかしなければと焦る程に悪循環にはまり、放置して重症化すると最後には死んでしまいたいなどと考えてしまうこともあります。
自覚症状からほとんどの場合は診断が可能です。中には消化器症状(食欲不振、下痢、腹痛など)や感染症(長引く風邪症状など)といった身体症状が前面に出てストレスが原因であることの判断が遅れてしまうこともあります。
もともと真面目で几帳面、完璧主義な人がかかりやすいと言われています。ストレスの管理はもちろんですが、ライフスタイルや価値観、夢などについてゆっくり見つめ直し、新たな目標や関心を見つけることが気持ちの切り替えになります。それでも症状が改善しない場合は、早めに医師に相談しましょう。躊躇することの多かった精神科の受診(メンタルケア)も、現代では知的な社会人の常識となっています。
カルテ20<精神科・心療内科>PTSD
2005/10/15
大地震やテロや大事故が起こるたびに、このPTSDという病気がマスコミなどで取り上げられ、言葉だけはなんとなく知っている方も多いと思います。日本語では「外傷後ストレス障害」と言います。大きな恐怖や破局的な出来事を体験した後、時間がたっても病的な心身の反応が長く続く状態です。出来事のショックが余りにも大きい場合と、個人のストレス過敏性が強い時にこの状態になりやすくなります。
(原因)
異常で怖い出来事を体験すると、誰でも心身が乱れ不安定になります。そして時間の経過と共に心身の安定を取り戻していくものです。しかし、出来事が脅威的であったり個人の感受性が高すぎる場合、恐怖の体験記憶が固定化され、心身の不安定が持続します。記憶や恐怖を感じる脳に障害が起き、脳内ホルモンの分泌や作用の異常が起きるために生じるとされています。
(症状)
フラッシュバックといわれる恐怖の出来事をありありと思い出したり悪夢でうなされるなどの再体験症状、睡眠障害などの覚醒亢進症状、類似する体験を避けたり恐怖を体験した場所などに近づけない回避症状などが主な症状です。こういった症状が一ヶ月以上続く場合この病気が考えられることになります。体験直後は症状がなく、数週間後に症状が出現することもあり、後者のほうが治療が困難になる場合が多いようです。
(診断)
症状の経過をみながら診断することになります。マスコミなどでこの病気が有名になりすぎたために、過剰な診断を招くこともあり慎重な経過観察が望まれます。他の精神疾患を既に有していたり、社会活動に支障が無い場合は本疾患の診断は除外されます。
(治療)
薬物療法と心理療法が主な治療法です。対症的に抗不安薬や睡眠導入剤を用います。またSSRIと呼ばれる一群の薬物が第一選択剤となっていますが、PTSDとしてはまだ日本の保険の適用になっていません。心理療法としては支持的カウンセリング、認知行動療法などがありますが、最近ではEMDRと呼ばれる眼球運動による脱感作と再処理法が試みられています。
カルテ16 内科・心療内科 過敏性腸症候群 |
NKH「健康ライフ講座」 2004.10 日本機械保線株式会社 社内報 |
過敏性腸症候群は、レントゲンや内視鏡などの検査で腸の炎症や腫瘍など、異常が無いにもかかわらず下痢や便秘といった便通異常を繰り返す、腸が正常に機能しない疾患です。現在のストレス社会で増加が注目されています。
身体的な疲労や精神的ストレスが引き金となり、腸の運動機能や分泌機能が高ぶって下痢や便秘が起こると考えられます。
下痢、便秘、腹痛、膨満感などで、主となる症状によって下痢型、便秘型、便秘と下痢を繰り返す下痢便秘交替型に分類されます。症状は、精神的要素が強く排便によって軽快する強い腹痛が特徴で、朝起きてすぐや朝食後、出かける前、電車の中などで頻回に便意があります。1回の便の量は少なく、残便感や不快感が残ることもあります。女性にやや多く、男性には下痢型、女性には便秘型が多い傾向があります。また、不安、過敏、抑うつなどの精神症状が出ることもあります。
癌や潰瘍性大腸炎といった他の病気が腸に無いこと、下痢や便秘、排便により軽快する腹痛の症状があること、症状が3ヶ月以上繰り返し起こるといったことから診断されます。
もっとも重要なのは、生活環境やライフスタイルの改善です。過労や精神的ストレスを避けて、規則的な食事や生活リズムを整え、じっくりとセルフコントロールしていくことが必要です。
症状のかいぜんには時間がかかりますが、症状の完全な消失を求めるよりも症状があってもやっていけるという受け入れが大切です。下痢、便秘、腹痛などの症状に対しては、対症療法として消化管の運動を調整する薬や漢方が使われます。うつ病やパニック障害を合併していることもあり、抗不安薬なども併用されます。自律訓練法の指導により不安、緊張を軽減させたりカウンセリングにより原因となっている精神的ストレスの解消を試みることも有効で、1人で抱え込まずに相談相手をもつことが重要です。
カルテ6 心療内科 自律神経失調症 |
NKH「健康ライフ講座」 2002.5 日本機械保線株式会社 社内報 |
「自律神経失調症」という言葉は、-般の方にとっても馴染み深い名前でしょう。医師から告げられる診断名として比較的多いのですが、つかみ所がない病名でもあります。
脳からの命令が全身に通じる神経には大きく分けて2種類あり、自分の意志が支配する「随意神経」系と脳が自動的に支配する「自律神経」系とがあります。
そして、この「自律神経」には、一般に活動を促進する「交感神経」系と抑制する「副交感神経」系があり、普通、両者が上手くバランスをとり生命活動を支えています。
何らかの原因で、この「交感神経」と「副交感神経」のバランスが悪くなった状態を「自律神経失調症」と呼びます。
過度なストレスや生活習慣の不摂生、更年期障害などによるホルモンの乱れ、神経症やうつ病の初期症状としてなど、原因は多彩です。
体質的に「自律神経」が不安定な人もいます。
症状
「自律神経」は多くの臓器をコントロールしていますから、多くの症状がみられます。
代表的なものとして、動悸、めまい、のぽせ、冷や汗、頭痛、頭重感、不眠、食欲不振、肩こりなど。多彩なので、総称して「不定愁訴」とも呼ばれます。
診断は困難なことが多く、「除外診断」といって、それぞれの症状を起こしうる他の病気を1つひとつ否定することが先決になります。
「自律神経失調症」の原因となる基礎的疾患があれば、そちらの治療を優先します。他の疾患がなければ、総合的な診断として本症を疑います。
心身の休養が大切ですが、専門家によるカウンセリングや自律訓練法の指導を受けると良いでしょう。場合により精神安定剤、睡眠導入剤、自律神経調節剤などの薬物を併用することがあります。
対策としては、日頃からストレスをためずに発散するよう心掛け、生活のリズムを整えておくことにつきます。特に、睡眠不足にならないよう注意しましょう。気になる症状があれば、早めに「心療内料」などの専門医にかかりましょう。相談し安心することは、予防や早期治療の意味でも大切です。