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消化器内科

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膵炎

2019年07月22日

(概説)

膵臓は、様々な消化酵素やインスリンを作る大切な臓器です。炎症性疾患の多くには、「急性」と「慢性」が存在します。それらの多くは、急性で発症し、その一部が慢性化するという関係性ですが、膵炎の場合は、急性膵炎と慢性膵炎は別個の疾患と理解した方がわかりやすいかもしれません。とは言っても、急性膵炎の1〜2割は、慢性膵炎に移行しますし、慢性膵炎が経過中に急性化することもあります。急性膵炎は、「急性腹症」と呼ばれる「急激な腹痛で始まり、放置すると命に関わる病気群」の代表の一つです。一方、慢性膵炎は「早期慢性膵炎」という考えが提唱され、発症から慢性型という生活習慣病に近い予備軍のような病態もあります。

(原因)

急性膵炎では、アルコール性と胆石性が2大原因で、男性は前者、女性は後者が多いことが分かっています。慢性膵炎もアルコール性と非アルコール性に分かれ、アルコールの過飲が予防医学上重要であることには変わりません。脂質異常症も原因の一つと考えられています。

(症状)

急性では、激しい腹痛や背部痛、吐き気、嘔吐が中心となります。慢性では、反復する腹痛を主症状に、進行すると消化吸収障害による下痢やインスリン不足による糖尿病などの症状が出現します。

(診断)

原因不明の急激かつ激しい腹痛がある場合は、虫垂炎など他の病気も疑いつつ本疾患を念頭に血液検査、画像検査を行います。本疾患が疑われた場合は、急性膵炎を治療できる専門医がいる病院への早期転送が重要な判断となります。慢性の場合は、血液検査や画像検査を含めた綿密な経過観察が必要です。

(治療)

急性膵炎では、入院絶食の上、痛みのコントロールと補液をはじめ外科治療に至るまで専門的な集中医療が必要になります。慢性膵炎では、薬物治療と食事療法が中心になります。

(予防)

アルコールの過飲を避けることがまず肝要です。原因不明な腹痛を繰り返す場合は専門医に相談しましょう。

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腸閉塞

2014年10月23日

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №103

 カルテ54  消化器内科、消化器外科

 2014/10/20

 


◯概説◯

何らかの原因により腸管の通過障害が生じた状態を言います。イレウスとも言われます。その原因により、機械的イレウスと機能的イレウスに大別されます。前者は、癒着や腫瘍などで物理的に腸管の内腔が閉塞されることが原因となります。後者は、腹部の手術や他の病気などによる炎症などが原因で腸管の運動に障害(麻痺性イレウス)が起きることにより通過障害をきたします。両者は病態によりさらに分類されますが、重要なことは、虫垂炎などと同様に「緊急手術が必要かどうか」の判断を必要とする「急性腹症」という一連の病気の仲間であるということです。

◯症状◯

腹痛、吐き気、嘔吐、腹部膨満感、排便排ガスの消失が主な症状です。腹痛は激しく、初期では持続的ではなく間欠的なことが多いようです。

◯診断◯

特徴的な症状に加えて、腹部単純レントゲンで特徴的なガスの貯留像が見えるという昔ながらの検査で、たいていの場合は診断がつきます。さらに原因などを探索し、緊急手術が必要かどうかの判断をするために、超音波やCTスキャン、血液検査なども重要です。

◯治療◯

この病気のポイントでもありますが、緊急手術が必要か、保存的治療(外科的治療以外の安静や薬物治療)でよいかの判断が重要です。いずれにしろこの病気が疑われたら、安静の上、絶飲絶食となります。閉塞部位より口側の圧を押さえるために、胃にゾンデ(治療用の細い管)を挿入することもあります。点滴で水分、電解質、栄養の確保をしながら様子を見て、状態が改善しなければ手術を検討することになります。たいていは保存的治療で改善しますが、時に緊急手術を選択せざるを得ない場合がありますので、担当医とよく話し合っておくことが肝心でしょう。

◯生活上の注意◯

以前に腸閉塞になったり腹部手術の経験者は、この病態に陥りやすい傾向があります。普段から規則正しい生活習慣を心がけ、特に快便を維持できるようにヨーグルトの常用など食べ物にも配慮することが予防の秘訣でしょう。

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潰瘍性大腸炎

2013年01月07日

NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

カルテ47<内科・消化器科・胃腸科>潰瘍性大腸炎

2013/1/7


○概 説○

大腸の粘膜に原因不明の炎症が起こる病気であり、この数十年間は新たに発症する患者が増加しています。最近の日本での患者は10万人を超えています。一般には、若年者に多いのですが、中高年の発症も増えてきています。現在のところ、原因は特定できていません。免疫や食生活環境の変化が関与しているのではと推定されています。

完全に治す特効薬はありませんが、症状を抑え、普通の生活ができるようにコントロールする事は可能になってきましたので、独特の症状がある場合は、早めに専門医に相談することをお勧めします。

○症 状○

繰り返したり、持続する腹痛、下痢、血便が主な症状です。重症になると発熱や全身倦怠感、体重減少、貧血などが出現します。

○診 断○

問診テストを含めた詳細な問診が初診時に大切で、男性ホルモンであるテストステロンの血液中濃度を調べる事で診断されます。

○治 療○

軽症では、従来から行なわれている「サラゾピリン」「ペンタサ」「アサコール」などの薬を服用することで、多くの場合、日常生活に支障がない程度にコントロールされます。重症度が高い場合は、副腎皮質ステロイドの内服が基本であるが、最近ではタクロリムスなどの免疫抑制剤や血液成分除去療法などが行なわれます。それでも効果が無い場合は、外科的に大腸の切除術が必要となります。また、この病気には大腸がんが併発することがあり、その場合も手術が必要となります。

○予防、注意点など○

不規則な生活やストレスが症状を悪化させますので、規則正しい生活が肝要です。また、効果のある薬の休薬(薬を飲まない)のタイミングが重要ですので、主治医とよく相談しながら服薬を続けることが大切です。勝手に服薬を止めるのは危険です。

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急性肝炎

2012年07月23日

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

「カルテ45」急性肝炎

2012/7/23

 


【概説】
 肝臓に起こる急性(数日から数週間単位のスピード)の炎症性疾患を急性肝炎と呼びます。原因のほとんどがウイルスですが、他に薬剤やアルコール、自己免疫≦などが原因となる場合があります。原因ウイルスにもA,B,C,D,E型が確認されており、その過半数がA,B,C型で占められています。  A型は食物や水を通して感染し、B型とC型は血液を介します。A型は急性期の症状や検査データの値は激しいですが、数週間で自然治癒します。B型とC型、特にC型は慢性化して肝硬変や肝臓癌の原因となりやすいので、綿密な経過観察が必要となります。また、B型を中心として1%程度が激症型と呼ばれる重度の経過をたどり、命にかかわる場合もありますので注意をしなければなりません。

【症状】
 初期は全身のけだるさなど感冒のような症状が主体となります。食欲低下も主な症状です。進行すると眼球結膜(白めの部分)が黄色くなって気がつくことが多いのですが、黄疸が出現します。激症化の場合は、出血傾向や意識障害が見られることもあり、この場合は集中治療が必要となります。

【診断】
 血液検査でほとんど診断がつきます。ウイルスが原因の場合は、その型も診断士対策の計画に役立てます。超音波検査などで、腫瘍や医師などの基質的原因(目に見えた変化を伴うもの)がないかを確かめておくのも大切です。

【治療】 
 原則は入院した上で安静と補液による栄養管理が中心となります。上記で説明した激症化しないかどうかを観察することが重要です。またC型肝炎はで慢性化する兆候が見られた場合は、インターフェロンによる治療も選択されます。またウイルス以外の原因の場合でステロイド治療が行われる場合もあります。A型ほぼ完全に自然治癒しますが、C型は慢性化する確率が高くなります。

【予防、その他】
 A型は東南アジア方面への旅行などで感染するケースが多いようです。B型とC型は輸血、針刺し事故などで感染します。またB型は性感染症の1つともされています。

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胃潰瘍・十二指腸潰瘍

2007年08月01日

 

カルテ27

内科、消化器科

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

NKH「健康ライフ講座」№75

 2007/8/1

日本機械保線株式会社 社内報


口から肛門までの聞を消化管と呼んでいますが、口、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門という順序でつながっています。それぞれは食べ物を消化し吸収するために役割を分担しています。胃の中では、食べ物を消毒し消化するために胃液が分泌されます。胃液の中には胃酸とペプシンが含まれ、タンパク質を分解します。そのため、胃の壁自体が破壊されないように、自己を守るための仕組みが備わっています。前者を攻撃因子、後者を防御因子と呼んでいますが、さまざまなストレスによりこのバランスが崩れ、攻撃因子が優位に立つと胃の粘膜が溶けて欠損を生じます。この状態を「潰瘍」と呼びます。胃でも十二指腸でも同様の機序で起こります。最近の研究では、こういった攻撃因子と防御因子のバランスを崩す主な原因は、ヘリコパクターピロりという細菌であるということが分かりました。

 

症状

主に空腹時にみぞおちの辺りが痛みます。また、胃酸が出過ぎることにより胸やけや酸っぱいゲツプがでます。進行すると、 吐血といって血を吐くこともあります。その他、吐き気、嘔吐、食欲不振といった症状もあります。

治療

多くは、臨床症状で見当がつきますが、確定診断には内視鏡が必要です。特に、ガンとの鑑別診断のためには内視鏡による生検 (細胞を採取して顕微鏡でみる) が必要となります。

その他

この病気は体質やピロリ菌感染が主な原因ですが、過剰なストレスや喫煙、暴飲暴食などの生活の乱れが引き金となります。再発を繰り返す人は、生活習慣の改善とピロリ菌の除菌を推奨します。ピロリ菌とガン発症の関連性も論議されています。現在では、この治療法は保険で行うことが可能になりました。

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胃食道逆流症(逆流性食道炎)

2006年08月17日

  

 カルテ23

内科 消化器内科

胃食道逆流症(逆流性食道炎)

NKH「健康ライフ講座」№71

2006/8/15

日本機械保線株式会社 社内報


食道内へ胃の内容物が逆流することにより引き起こされる症候群をいい、専門的にはGERDと略されて使われることがあります。胃酸を含んだ胃の内容物が食道に逆流することにより食道に逆流することにより食道粘膜に炎症をきたし、胸やけや胸部の痛みや不快感をきたす逆流性食道炎が本症の大半を占めます。


○原 因○

 本来胃から食道への逆流を防止するため、食道と胃の間を締める筋肉があります。しかし、その筋肉がうまく働かず胃酸の逆流を起こしてしまうことが考えられます。食道の粘膜は胃のように酸に強くないために炎症が起こりやすいのです。また、食道裂孔ヘルニアといって胃の粘膜がこの境を越えて食道にはみ出していることがあり、本症を助長する傾向があります。この状態は日本人に多いとされています。また、内視鏡的には食道に炎症が無いのにもかかわらず同様の症状をきたす場合があり、症候性GERDと呼ばれています。

○症状・診断○

 胸焼け、胸痛、胸部不快感、ゲップ、嚥下障害、のどの違和感、食欲不振、吐き気などさまざまな症状が起こりえます。 胃食道逆流症は、上述のとおり内視鏡と症状により診断されます。慢性的に炎症が続くと食道の粘膜に変化をきたし(パレット食道と呼ばれます)、発ガンの危険性も増した上体となります。

○治 療○

 プロントポンプ阻害剤やH2受容体拮抗薬と呼ばれる胃酸分泌抑制剤が特効薬ととなります。ただ、本症は再発をきたしやすいので投薬時間についても医師の指導を守り、自らの生活管理も大切です。また、難治例では内視鏡的手術がなされることもあります。

○生活上の注意○

 食べすぎ飲みすぎにならないようにし、喫煙も制限します。また、食後すぐに横になると胃酸が逆流しやすいので寝る前の食事は控えるようにしたいものです。炭酸飲料、香辛料、酸味の強いものも控え、よく噛んで食べるように心がけることが大切です。

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