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整形外科

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肩関節周囲炎(五十肩)

2021年07月26日
(概説)
一般に五十肩と呼ばれますが、カルテには肩関節周囲炎とかかれたり凍結肩とかかれたりします。原因は様々あり、特定できないことが多いのですが、なんらかの原因で肩関節の周囲の組織に炎症が起きることが主因となります。時には腱板が断裂している場合もあります。50歳代に多く見られるために五十肩と呼ばれますが、四十肩と呼ばれたりもします。
 
(症状)
上腕を挙上する時に痛みが出現することが特徴ですが、最初の頃は安静時や就寝時にも痛みが強く、不眠の原因ともなる辛い痛みがあります。また、痛みのために肩の運動制限が生じ、シャンプーをしたり、高いところのものを取ったりする日常動作に制限が加わります。
 
(診断)
外傷や関節リウマチ、変形性関節症などがないかどうかという、いわゆる除外診断が大切です。血液に炎症反応が見られず、初期の頃にMRIなどの画像診断で異常を認めないことも診断の補助となります。
 
(治療)
炎症が強く安静時にも痛みがある発症時期は、痛みの緩和が優先されます。ステロイド以外の抗炎症鎮痛剤が処方されます。基本的には肩関節の安静が望まれますが、痛くない範囲での運動も勧められます。痛みが強い場合は、ブロック注射やステロイドの内服や関節内注射が検討されます。腱板の断裂が見られる場合は手術が必要になることもあります。痛みのピークが過ぎてきたら、肩関節の動きを広げるための運動療法が大切となってきますので、整形外科やリハビリの専門家から指導を受けながら根気よく続けることが肝要です。
 
(生活上の注意)
自然経過でいつの間にか治ってしまうことが多い病気ですが、時に重大な病気が隠れていることがありますので、一度は専門家と相談しておくことをお勧めします。また、本疾患であっても、時には治癒に数年かかることもありますが、根気よく運動療法などの治療を続ければ、ほぼ確実に治癒していきますので、過剰な不安をもたないようにしましょう。

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ぎっくり腰

2020年10月26日
(概説)
何か身体を動かした時に、急に起こる強い腰の痛みのことを総称して使われる言葉です。正式な医学的診断名や病名ではありませんが、正式には「急性腰痛症」と呼ばれ、カルテの病名欄に記載されます。原因が特定できるものを「特異的腰痛症」と呼び、その原因となるものが正式診断となっていきます。原因が特定されないものを「非特異的腰痛症」と呼び、全体の8割程度を占めると言われています。ぎっくり腰の状態では、その原因を突き止めることが大切なので、まずは整形外科受診が妥当かと思われます。厚労省の行っている調査では、腰痛は厚労省の行っている調査では、最も頻度の高い症状の一つとなっています。
 
(症状)
 
ものを持ち上げようとしたときや、腰を捻るような運動をしたときや、咳をした時など様々な動作の直後に突然、腰や背中の下部などに痛みが起こり、ひどい場合は立ち上がったり歩行も困難な状態になります。片方の足先の痺れが伴ったり、力が入らなくなったりするなどの症状を伴うなど多彩な副症状があり、原因診断の一助となります。
 
 
(原因)
 
前述のように、多くは原因を特定できず、筋膜や腱や筋肉の軽い損傷、炎症が原因と見込まれることが多く、9割がたは安静などにより1週間程度で自然治癒していきます。しかし、重大な病気が原因の場合もありますので、痛みが激しかったり、続く場合は、整形外科医により鑑別診断を仰ぐことが大切です。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など整形外科的問題を始め、尿路結石など泌尿器科疾患や婦人科疾患、循環器疾患の可能性、さらに骨の腫瘍などを否定しておくことも重要となります。
 
(治療)
 
特別な原因がない良性のものは、痛みに対して非ステロイド性抗炎症薬が短期的に使われます。原因が特定されるときは、その疾患の治療が優先されることは言うまでもありません。最近では、腰痛とメンタルとの関連性が深いことがわかり、薬剤も選択肢が増えていますが、専門医と十分に話し合って治療法を選択していくべきでしょう。
 
(対策)
 
普段から、腰痛体操を含めた運動習慣をつけて、十分な筋力を保っておくことが何よりの予防となります。また、自己判断せずに、医師に適切な治療方針のアドバイス(トリアージ)をしてもらうことが最大の安心となるでしょう。
 

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スマホネック

2018年08月30日

「歌は世につれ世は歌につれ」という言葉が、昔のテレビの歌謡番組で司会者の決まり文句となっていました。「スマホネック」という言葉を聞き、「病気は世につれ世は病気につれ」と思わず口ずさんでしまいました。病気も世情を反映するものですね。

(概説)

「スマホネック」は、現状では医学的病名ではなくて、一般用語として使われているようです。言葉から推察される通り、「スマホ画面を見ながら操作する姿勢を連続して長時間続けることにより、首周りの筋肉が硬くなり、慢性の肩こりや頭痛、めまいなどの症状が出現する状態」と定義して良いでしょう。

(原因)

その姿勢を続けることにより、「ストレートネック」と呼ばれる状態を自ら人為的に作ってしまうことが原因と考えられています。人間の脊椎は、頭の方から7個の頚椎(けいつい)、12個の胸椎(きょうつい)、5個の腰椎(ようつい)と仙骨(せんこつ)から成り立っています。頚椎は前方に凸、胸椎は後方に凸、腰椎は前方に凸の状態に湾曲(わんきょく)することにより、体全体の重さをバランスよく分散して受け止めています。
スマホを見る姿勢は前かがみで頭を前下方に向けた状態で、この姿勢が常態化すると頚椎の本来の前湾(前方向への湾曲)が消失し、まっすぐ伸びてきます。それが「ストレートネック」です。その結果、近辺を通る血管や神経を圧迫し、様々な不快症状を引き起こすことになります。なお、「ストレートネック」は従来の医学でも知られている病態です。

(対策)

スマホを長時間使い続ける、いわゆる「スマホ依存」の状態を避けるよう生活習慣を改めることに尽きます。スマホ依存は、スマホネックだけでなく、薬物やアルコール、ギャンブル依存症に近い精神障害を引き起こす可能性もあるということをしっかり認識したいところです。スマホは使いようによってはとても便利な道具ですが、諸刃の剣となりえます。
 

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坐骨神経痛

2015年05月18日

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №105

 カルテ56  内科、神経内科、整形外科、ペインクリニック

 2015/4/27

 

 


〇概要〇

「坐骨神経痛」は病名というよりも、いろいろな原因による症候名として使われています。本来は「なになにという病気が原因の坐骨神経痛」というふうに使用されるべきなのですが、原因が特定されない坐骨神経痛症状が出現することが多く、慣習として病名のように使われます。「神経痛」という言葉自体が症候名であり、痛みの起こる神経の部位により、「三叉神経痛」「肋間神経痛」などというふうに使用されます。

「坐骨神経痛」の原因としては、席椎間板ヘルニアや変形性脊椎症や外傷など脊椎の多彩な病気があります。まれに癌の骨転移などが原因のこともあります。原因が特定されるもの以外は「特発性」と呼ばれます。

〇症状〇

主に、椅子に座った時に座面と接するお尻の部位に痛みが発生することが多く、その痛みは太もも背部まで放散することもあります。またその部位をおさえると痛みがまします。ひどくなると歩行にも影響を及ぼします。立っているだけでも痛かったり、長時間座ることも辛くなります。

〇診断〇

特徴的な症状と、専門医の診察による圧痛の確認などで診断がつきますが、その原因の特定には、MRIなどによる脊椎の検査が必要となります。

〇治療〇

原因となる疾患が特定できれば、その治療が根本的であるのですが、痛みに対する対症療法も重要となります。最近では、単なる消炎鎮痛剤以外にも抗鬱剤や神経障害性疼痛専用の薬剤が使われるようになり、効果が確認されています。また、症状が強く持続する場合は、ペインクリニックや麻酔科、整形外科などで、対症療法の一環として、神経ブロックなども行われます。

〇生活上の注意〇

運動不足や肥満やストレスが、原因となったり、症状を悪化させる要因となることもありますので、医師と相談して生活習慣の改善にも努めましょう。

 

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テニス肘(使い過ぎ症候群)

2011年06月29日

NKH「健康ライフ講座」

NKH「健康ライフ講座」NO.89 日本機械保線株式会社社内報

カルテ40<整形外科>テニス肘(使い過ぎ症候群)

2011/4/20


○解 説○

上腕骨(いわゆる二の腕の部分にある骨)の肘に近い部分に付着する筋肉(正確には腱と呼ばれる)に慢性のストレスがかかることにより、長期にわたり継続する運動痛を生じる疾患です。テニスを日常的に行う人に多く見られたことから「テニス肘」と呼ばれますが、ゴルフによる肘のストレスから生じる「ゴルフ肘」などもあります。しかし、最近では、テニスもゴルフもしない中高年者に同様の症状を来すことも多く、いわゆる「使いすぎ症候群」とも考えられています。特にコンピュータのマウスや携帯電話の使い過ぎ等が原因になりやすいようです。

○症 状○

テニス肘に代表される、右腕(利き腕)の外側(上腕骨外側上顆と呼びます)に起こることが多く、痛みは肘の外側(親指側)から前腕部にかけての動作時に生じます。ゴルフの場合は、内側(小指側)や左腕の肘に起こることがありますが、テニス肘に比べると頻度は少ないようです。長時間のマウスの使用や不慣れな動作を継続して行うと本症を発症することがあります。

○診 断○

症状経過から診断は推定されることが多いですが、肘の特定部分に圧痛(押して痛むところ)があり、手関節伸展試験などと呼ばれる誘発試験で要請が出れば本症と診断されます。

○治 療○

痛みが出る動作を行わず、腕の徹底的な安静が最も大切な基本となります。初期の痛みが強い時期は、鎮痛消炎剤の服用や湿布を行う場合があります。また、どうしても行わねばならない日常動作をサポートするために、テニス肘専用のバンドをするのも勧められます。症状が激しい場合は、ステロイドの局所注射をする場合もあります。また、回復期には、ストレッチや筋力を増強するためのトレーニングも重要です。

○生活、予防上の注意○

本症が疑われるような痛みが出現した場合は、早めに患部の安静に努め、痛みが持続する場合は整形外科に相談に行きましょう。すっかりよくなるまでには半年から1年程度かかることが多いようです。

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