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精神科

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自律神経失調症

2023年10月25日
(概説)
「自律神経失調症」という言葉は、耳にすることが多いのではないでしょうか?しかし「自律神経」とはなんですか?と聞かれるとはっきりとは説明つきにくいかもしれません。我々の身体の神経は全て脳から始まり、身体中に張り巡らされていて、筋肉を動かす命令を脳から端々まで運び、五感と呼ばれる感覚の信号を脳まで伝える役割があります。もう一つ重要な役割は、様々な臓器の働きの調整を行なうことで、こちらは自分の意思と関係なく自動的に働いているため「自律神経」と呼ばれます。活動を促進する「交感神経」系と抑制する「副交感神経」系が絶妙なコンビを組んで生命活動のバランスをとっています。これらの働きが、なんらかの原因でバランスが悪くなった状態を「自律神経失調症」と呼びます。本来は、病名というより「症候群」という位置づけにある言葉ですが、原因疾患が不明不詳である場合などに病名として使われることがあるようです。また、小児では、不登校の原因の一つともなる「起立性調節障害」と呼ばれる病態もありますが、詳細は他書に譲りたいと思います。
 
(原因と症状)
ストレスや過労、不眠などが原因となったり、女性の更年期障害などホルモンが関与するもの、またうつ病や神経症など他の精神疾患が原因となる場合があります。自律神経は様々な臓器と関与するので、症状も、めまい、動悸、ふらつき、のぼせ、頭痛、頭重感、肩こり、食欲不振、吐き気など多彩で、総称して不定愁訴と呼ばれます。
 
(診断)
原因となる疾患を検索することが重要です。専門医による面談の上、検査計画を立てることが大切です。
 
(治療)
原因疾患が判明した場合は、その治療を優先します。不安が強い場合や不眠などがある場合は薬物療法も勧められます。自律訓練法と呼ばれる、リラックスや自律神経を鍛えるという手法は治療や予防的にも全ての方にお勧めしたいです。
 
(生活上の注意)
普段からストレスを溜めない工夫を生活に取り入れ、規則正しい生活を心がけることが何よりです。前述の自律訓練法も日頃から実行することもお勧めです。不定愁訴が長く続くときはためらわず専門医を受診することも肝要です。v

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適応障害

2023年07月25日
(概説)
就職や結婚や進学などの社会環境上のストレス要因が生じると、誰しもなんらかの心理的(ストレス)反応が出現します。これは、外界からのストレスに対して適応するための必要な反応です。しかし、ストレス要因が過剰であったり、個人のストレス対応力が低かった場合に、通常予想される以上の心理的反応のために、それぞれの社会環境に応じた行動の障害が生じます。このような状態を適応障害と呼びます。
 
(症状)
不安、抑うつ、焦燥、イライラなどの精神症状、不眠、食欲不振、頭痛、腹痛、便通異常などの身体症状、朝起きられない、遅刻、欠勤や不登校、過剰飲酒や喫煙などの行動異常が生じます。その結果、引きこもりやうつ状態にまで進展することがあります。
 
(診断)
上記症状が、明らかなストレス要因が発生してから、3ヶ月以内に出現し、予測以上のストレス反応が見られ、欠勤や不登校などの社会的行動障害が見られることが特徴です。原因となるストレス要因が解消されれば6ヶ月以内に改善されることが多く、他の精神疾患が存在しないことも診断のポイントとなります。
 
(治療)
まずは、原因となっているストレス要因を軽減することが重要です。患者さんが適応しやすいように環境調整することが望ましく、場合により休職や休学も検討します。また、できれば、そのためのカウンセリングも行います。精神症状や身体症状に対して、必要に応じて精神安定剤や抗うつ剤などの薬物を使用する場合もあります。
 
(家族や同僚などへのアドバイス)
普段から、ストレスを溜めないような環境作りを心がけ、いつもと違うと感じた時は、気軽な相談相手となってあげることが予防的に肝要です。日頃から良好な人間関係を幅広く有しておくことが専門医以上に価値あり、と言っても過言ではないと思います。とは言っても、異常を感じた時は早めの専門医受診が、こじらさないためにも重要です。

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複雑性PTSD

2023年04月25日
(概説)
災害や身体的、性的暴力、虐待を含む犯罪被害、深刻な事故などにより引き起こされた心身の様々な症状をPTSDと呼びます。原因事件の直後より生じる場合もあれば、一定の期間が経ってから出現することもあり、生活活動の大きな障害になることがしばしばです。特徴的な症状としては、フラッシュバックや、原因事件を想起させるような場所や状況を過度に避ける回避症状、原因事件体験の記憶を消してしまおうとしたり、過度な警戒心やびくつきなどの過覚醒症状などがあります。
2018年公表された新しい診断基準には、本稿である複雑性PTSDの項目が追加されました。それによると、長期的かつ反復性の心的外傷により、より強い根源的な症状が出現するとい言う意味で、特別に分類されたPTSDと言えます。継続的なトラウマが注目されてきた世相に応じた新しい分類と言えるでしょう。
(症状)
自己組織化の障害(DSO)が発生するとされています。難しい概念ですが、自己のアイデンティティーがうまく形成されないということになります。具体的には、感情のコントロールがうまくいかず、他者への暴力行為や自傷やアルコール依存などの自己破壊行動、自責自己否定感情、対人関係困難などがあり、長期にわたり生活障害が続きます。
(治療)
PTSDに対する様々な心理療法を強力かつ持続的に行う必要があります。複雑性PTSDの障害特徴である、感情制御や対人関係の調整を優先することが有効だと言われています。専門性がとても高い領域ですので、治療経験の豊富な専門医を探すことが肝要です。
(家族などへのアドバイス)
本人にとって「確実に安全で自分の味方である」という人がいることが、専門家の治療に負けないくらいの症状改善効果があることを報告している研究者もいます。予防的効果もあると言えます。

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不眠症

2011年01月22日

   

 

カルテ39

心療内科、精神科

不眠症

NKH「健康ライフ講座」№88

 2011/1/14

日本機械保線株式会社 社内報


国民の2割以上が悩んでいると推定される「不眠症」 。原因となる疾患が潜んでいる場合もあり、軽視は禁物です。


○解 説○

 睡眠に対する悩みは個人差が多く、したがって「不眠症」という定義も難しいのです。しかし、何らかの睡眠障害があると思われる頻度はかなり高く、少なく見積もっても人口の2割以上だといわれています。また、この不眠は加齢とともに多くなり、高齢化現象を抱える日本にとっても真剣に考えていかなければならない病態ともいえるでしょう。

○症 状○

不眠症のタイプは「入眠障害」「熟眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」に分けられます。「中途覚醒」と「早朝覚醒」は一緒にして「睡眠維持障害」と分類されることもあります。それぞれはその名前から容易に理解されると思います。「入眠障害」は、いわゆる寝つきが悪いと称されるもので、一番多いタイプです。「熟眠障害」は、ある程度の時間は眠れているが「眠った気がしない」と感じるものです。ストレスによる不眠に多いタイプです。「中途覚醒」「早朝覚醒」は、朝早く眼が覚めてしまい、その後寝つけないというもので、比較的高齢者に多くみられます。熟眠感があって、日中の生活に支障がなければ問題ないことも多いものです。

○診 断○

症状から診断は推定されることが多いですが、他の原因がないか探索する必要があります。他の原因としては、精神障害やアルコールや薬物依存、睡眠時無呼吸症候群などに代表される身体疾患などがあります。これらの原因があっても、「不眠症」の診断はつくことにはなりますが、治療方針が違ってきます。

○治 療○

まず、原因となる基礎疾患があれば、その治療を並行または優先させることが大切です。自律訓練法などの心理療法を併用すると効果的ですが、特に不眠で病院に来るほど悩んでいる場合は、即効性のある薬物療法を行うのが一般的です。睡眠薬は開発が進み安全性が高まっていますが、副作用や依存性の問題もあるので、主治医と相談しながら、こまめな匙加減をすることが肝要です。

○生活、予防上の注意○

何よりも規則正しい生活が重要です。我々人間は、本来の日内リズムが存在し、覚醒と睡眠のリズムをコントロールしています。脳の松果体に存在するメラトニンがその重要な役割を担っているということは有名ですね。また、最近では細胞レベルにおいても、時間をコントロールしたり時間に制御されたりするメカニズム(時計遺伝子)があるらしいことが分かり注目されています。それらを正常に機能させるためにも、規則正しい生活は必須ということになります。職業上、深夜勤務が頻繁にあったり、海外出張等で時差をさけられない方は、昼間、日光による明かりを十分に浴び、十分な運動を生活の中に取り入れ、体内時間のズレをまめにリセットするよう心掛けることが大切です。

 

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パニック障害

2009年09月30日

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

カルテ35<精神科、心療内科>パニック障害

2009/9/30

 


急に息が詰まる感じと、このまま死んでしまうのではないかという恐怖-。
「パニック症候群」の原因は過度のストレス。生き馬の眼を抜くという芸能界での羅患も多く、ワイドショー等で取り上げられることがある身近な病気です。

(概説)

不安障害と呼ばれる一群の疾患の中に位置づけられる病気です。中心になる症状は激しい不安とそれに伴う多彩な身体症状であり、循環器系の救急外来など他の専門科を受診して検査の結果異常はないというケースが多く見られます。実際、東京都などの救急出動の原因となる疾患の上位を占めていると言われています。

(症状)

ある日突然発作は起こります。動悸、息苦しさ、胸痛、発汗、ほてり、手足の震え、めまい、非現実感、狂ってしまうのではないか、死んでしまうのではないか、しびれ感などの症状が突然出現します。最初の発作以降は、予期不安といい「また発作が起こるのでないだろうか」という不安が続くようになります。これが本疾患の中心的な症状と言えます。多くの人は「地下鉄」「高層ビル」「エレベーター」「映画館」などすぐには逃げ出せないところを嫌い、ひどい場合はそこに行けなくなります。これを「広場恐怖」と呼んでいます。

(診断)

病状経過や症状から専門医の臨床経験から比較的容易に診断されます。心電図などの身体的検査でなにも異常がでないことも本疾患の診断の助けとなります。最初の発作の時に、睡眠不足などの慢性疲労があったり、元来用心深いなどの性格も影響はします。

(治療)

パニッック発作を消失させ、予期不安を解消させることが治療の目的となります。従来はアルプラゾラム(商品名:ソラナックス、コンスタン)というベンゾジアゼピン系抗不安薬が特効薬として使われていましたが、最近ではそれに加えて、他の抗不安薬やSSRIとよばれる抗うつ剤に属する一連の薬剤も使われます。いずれも専門医により経過を観察しながら薬の匙加減をしていくことが重要です。精神療法としての認知行動療法は、他の精神疾患と同様とても重要ですが、日本では、保険制度や経済的な理由などから普及していないのが現状です。

(生活、予防上の注意)

癌と同じく早期診断早期治療が重要だと考えています。また、予防的行動として、物事に固執せず、ストレスをためず、オーバーペースにならないように日頃の生活リズムをコントロールすることが大切です。認知心理学の勉強をするのも良いことだと思います。

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うつ病

2007年01月15日

 

 カルテ25

精神科 心療内科

うつ病

NKH「健康ライフ講座」№73

2007/1/15

日本機械保線株式会社 社内報


統合失調症(旧称:精神分裂病)とともに躁うつ病、うつ病が従来から精神病の代表とされてきました。特に内因性うつ病として脳腫瘍など脳の器質的病変や、過度のストレスによる心理因子が働いて生じる心因性うつ病などと区別されていましたが、最近では気分障害という大きな分類としてまとめられるようになる傾向がありあmす。WHOの調査によれば、有病率は人工の3~5%となっています。また、生涯のうち5~25%の人がこの症状を体験するとも言われている頻度の高い病気といえます。


○症 状○

 抑うつ気分、意欲の低下、生活の活動の低下、悲観的な思考障害、心理的要因による身体障害などに分類されます。具体的には憂鬱感、喜びの消失、判断力の低下、不眠、食欲低下、自殺念慮などがあります。


○診 断○

 病状頚経過や症状から診断されます。精神科専門医の間で使われる診断基準があり、その項目をどの程度満たすかによって客観的に診断されます。程度が軽度な場合は「気分変調性障害」と診断される場合もあります。

○治 療○

 一般に日本の外来診療では、抗うつ薬を中心とした薬物療法が中心となります。従来からの三環形四環形抗うつ薬に加えてSSRIと呼ばれる新しいタイプの薬も使用されるようになり、うつ病治療の幅が広がりました。また、睡眠導入剤や抗不安薬(安定剤)なども適宜組み合わされて処方されます。

 重症な場合は電撃療法という治療が行われることもあります。また、認知療法という心理療法が再発防止も含めて注目されていますが、治療に多大な時間を要し、訓練を受けた専門家も未だ少なく、日本の保険医療の中ではまだ一般的ではありません。

○生活、予防上の注意○

 癌と同じく早期発見・早期治療が重要だと考えます・また、予防行動として、物事に固執せず、オーバーペースにならないように日頃の生活をコントロールすることが大切です。認知心理学の勉強をするのも良いことだと思います。

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五月病

2005年05月25日

カルテ18

精神科・心療内科

五月病

NKH「健康ライフ講座」№66

2005.5

日本機械保線株式会社 社内報


新入生が新しい環境の変化に馴染めずに、知らず知らずのうちに自分の殻の中に閉じこもり心のスランプになってしまう状態は5月病としてよく知られています。近年、学生の五月病は減り、代わって、職場環境の激変する現代を反映するように社会人に同様の症状が多く認められるようになりました。


原因

五月病は医学用語ではないため、決まった概念や定義があるわけではありません。
医学的には「適応障害」と診断され、新入生や新入社員に限らず、また五月に限った病気でもありません。例えば初めての1人暮らしや、新しい人間関係についていけない、期待していた仕事や新生活と現実のギャップについていけないなど、新たな環境に適応できずに、そのことへのあせりが強いストレスとなって生じると考えられます。
新しい生活に夢中に取り組む間はよいのですが、それがひと段落する5月・6月頃lこ、緊張感からの解放や新生活への失望などがきっかけとなり、知らず知らずに蓄積された心身の疲れが出て無気力な状態を認め、重症の場合にはうつ病へと進展することがあります。

本人の性格も大きな因子で、同様のストレスに対して負担になってしまう人と、うまく乗り越えられる人とがいます。

症状

精神的には、やる気が出ない、なんとなく気持ちが落ち込む、イライラする、不安感などが認められ、身体的には睡眠障害、疲労感、頭痛、めまい、動悸などが挙げられます。疲れているのに眠れず、意欲や食欲が減退し、人間関係もうまくいかずに自己嫌悪に陥り、何とかしなければと焦る程に悪循環にはまり、放置して重症化すると最後には死んでしまいたいなどと考えてしまうこともあります。

診断

自覚症状からほとんどの場合は診断が可能です。中には消化器症状(食欲不振、下痢、腹痛など)や感染症(長引く風邪症状など)といった身体症状が前面に出てストレスが原因であることの判断が遅れてしまうこともあります。

治療と対策

もともと真面目で几帳面、完璧主義な人がかかりやすいと言われています。ストレスの管理はもちろんですが、ライフスタイルや価値観、夢などについてゆっくり見つめ直し、新たな目標や関心を見つけることが気持ちの切り替えになります。それでも症状が改善しない場合は、早めに医師に相談しましょう。躊躇することの多かった精神科の受診(メンタルケア)も、現代では知的な社会人の常識となっています。

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PTSD

2005年05月15日

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

カルテ20<精神科・心療内科>PTSD

2005/10/15

 


大地震やテロや大事故が起こるたびに、このPTSDという病気がマスコミなどで取り上げられ、言葉だけはなんとなく知っている方も多いと思います。日本語では「外傷後ストレス障害」と言います。大きな恐怖や破局的な出来事を体験した後、時間がたっても病的な心身の反応が長く続く状態です。出来事のショックが余りにも大きい場合と、個人のストレス過敏性が強い時にこの状態になりやすくなります。

(原因)

異常で怖い出来事を体験すると、誰でも心身が乱れ不安定になります。そして時間の経過と共に心身の安定を取り戻していくものです。しかし、出来事が脅威的であったり個人の感受性が高すぎる場合、恐怖の体験記憶が固定化され、心身の不安定が持続します。記憶や恐怖を感じる脳に障害が起き、脳内ホルモンの分泌や作用の異常が起きるために生じるとされています。

(症状)

フラッシュバックといわれる恐怖の出来事をありありと思い出したり悪夢でうなされるなどの再体験症状、睡眠障害などの覚醒亢進症状、類似する体験を避けたり恐怖を体験した場所などに近づけない回避症状などが主な症状です。こういった症状が一ヶ月以上続く場合この病気が考えられることになります。体験直後は症状がなく、数週間後に症状が出現することもあり、後者のほうが治療が困難になる場合が多いようです。

(診断)

症状の経過をみながら診断することになります。マスコミなどでこの病気が有名になりすぎたために、過剰な診断を招くこともあり慎重な経過観察が望まれます。他の精神疾患を既に有していたり、社会活動に支障が無い場合は本疾患の診断は除外されます。

(治療)

薬物療法と心理療法が主な治療法です。対症的に抗不安薬や睡眠導入剤を用います。またSSRIと呼ばれる一群の薬物が第一選択剤となっていますが、PTSDとしてはまだ日本の保険の適用になっていません。心理療法としては支持的カウンセリング、認知行動療法などがありますが、最近ではEMDRと呼ばれる眼球運動による脱感作と再処理法が試みられています。

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