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小児科・小児外科

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隠れ脱水

2022年07月25日
(概説・原因)
「隠れ・・・」という病名の呼び名が通称としてしばしば使われることがあります。いずれも、本人や周囲の人が気づかずに、疾病が隠れている可能性があることを示します。「隠れ肥満」や「仮面高血圧」「糖尿病予備軍」なども同類の意味合いとなります。「隠れ脱水」は、本人が気づかないうちに、脱水状態が進み対策が遅れる危険性に警鐘を促す言葉として使われます。特に最近では、コロナ感染予防のためのマスク装着の常用により、こまめな水分補給が疎かになったり、喉の渇きを感じにくいことが原因となることも多いようで夏場以外でも注意が必要です。
汗や尿などとしての水分の喪失量よりも摂取量が少ない状態が長く続くと脱水症をきたします。体内水分の減少は体重の減少として現れますが、体重の3%程度の水分減少の軽傷から、9%を超える重症では命に関わってきます。
 
(症状)
喉の渇きや尿量の減少が見られます。また、一般的には血圧が低くなるためにふらつきやめまいなどの症状が出ます。脈拍数も増えることが多いです。胃腸の動きも悪くなり食欲も低下します。さらに脱水が進むと、痙攣や意識障害などの危険な症状が出現します。また、脱水で血液がいわゆるドロドロ状態となり、脳梗塞や心筋梗塞の合併症が起こる危険性も高くなります。
 
(診断)
医療機関を受診した場合は、血液検査や尿検査などで比較的に容易に診断がつきます。何よりも病状経過により速やかに判断することが重要です。
 
(治療・予防)
まずはこまめな水分補給を日頃から心がけることが肝要です。軽い脱水では、水分やスポーツ飲料の補給をゆっくり継続的に行うことで回避できます。しかし、本題の通り、ある程度病状が進むまで気がつかずに、ふらつきや軽度の意識障害が生じた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。点滴により、水分や電解質を補給することで、危険な状況への進行を防ぐことができます。
 
(生活上の注意)
前述の通り、日頃からこまめな水分補給を心がけましょう。また急激な体重減少があるときは、脱水症も念頭に置き、医師に相談してみましょう。

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風疹

2021年04月26日
(概説)
風疹ウイルスによる感染症で、現時点では5類感染症に分類され、医師は、診断後直ちに保健所への届け出をする義務があります。俗称として「三日麻疹(麻疹)」とも呼ばれ、比較的軽症であることがほとんどですが、妊娠初期(20週程度まで)に妊婦が感染すると胎児に重篤な障害がかなりの確率で起こります(専門家の間では「CRS」と略して呼ばれます)。
 
(症状)
発熱、発疹、頚部近辺のリンパ節腫脹が主な症状です。発疹は顔から始まり、全身に広がりますが、「三日麻疹」と言われるように、たいていは3日ほどで治ります。潜伏期は2〜3週間です。上記の胎児の障害には、白内障などの眼疾患、難聴、心臓疾患などの先天性疾患がかなりの高率(50%程度以上)で生じます。
 
(診断)
特徴的な発疹と症状経過で診断が推定されますが、今後のCRS対策のためにも確定診断が望まれますので、血液による抗体検査や、喉のぬぐい液などのPCR検査(新型コロナ流行で、多くの皆さんが知るところとなった検査ですね)により確定診断をつけておくことも大切でしょう。
 
(治療)
風疹ウイルスに効果的な薬物は現時点では存在しないため、対症療法が主になります。高熱などが辛い場合は、いわゆる感冒の時に使われるような鎮痛解熱剤を用います。
 
(予防)
特異的に効果のある治療法がないことと、上記の「CRS」のリスクがあるため、ワクチンによる予防が推奨されます。今後妊娠の可能性のある女性で、風疹罹患歴がなく、ワクチンも接種していないか、接種が1回のみという不完全の場合は、ワクチン接種を受けることが強く勧められています。その場合、ワクチンの接種前後で妊娠していないことを確認の上、2回の接種が望ましいとされています。また、男性も感染源となりうる可能性に配慮し、これから子供を作る世代の方は男女を問わず、ワクチン接種を検討しましょう。日本では誕生年度により、小児の頃のワクチンの接種状況が異なりますので、血液検査で抗体の有無を調べ、抗体が基準より低い場合はワクチン接種を受けることをお勧めします。飛沫感染、接触感染がメインですので、感染拡大防止の観点からも症状があるうちは人との接触を避けましょう。
 

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起立性調節障害

2019年10月28日

(概説)

思春期に好発する自律神経機能不全であり、立ちくらみ、失神、朝起き不良、倦怠感、無気力、動悸、頭痛、食欲不振、顔色が悪いなどが主な症状です。以前は、思春期の一時的な自律神経障害や低血圧気味の体質、という程度に考えられていましたが、最近では重症型も存在し、不登校や引きこもりの原因の一つでもあるとのことが明らかになり、本疾患の重要性が唱えられています。学会による診断治療ガイドラインも刷新されるようになり、最近では2015年に改定されています。世界的にみても、特に日本での研究が進んでいるようです。専門家の間で起立性調節障害は、その英語の頭文字をとって「OD」と略されて使われます。

(原因、症状、診断)

根本的原因は不明ですが、身体的要因と心身的要因が重なり合っていると考えられています。軽症も含めると中学生の1割程度が本症に含まれるとの報告もあります。診断は、まず原因となる他の身体的疾患を除外することが大切です。その上で、上記の主な症状が3つ以上か、2つの強い症状があれば本疾患を疑います。その上で、「新起立試験」と呼ばれる検査を行い、4つのサブタイプ(起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、神経調節性失神、遷延性起立性低血圧)の判定を行います。

(治療)

家族や学校からは、怠けなど気持ちの問題と解釈されやすく、本人と保護者の関係性が悪くなることが多いので、きちんと診断を行い、本疾患であるならば身体的病気であることの理解を深めながら接することが大切です。起立時の動作はゆっくりなどの注意事項や十分な水分や塩分の適切な摂取、定期的な運動(歩行)や十分な睡眠などが大切なことは言うまでもありません。

それでも改善されない場合は血圧を調整するような薬物を使用します。認知行動療法などの心理療法も有効です。

(生活上の注意)

保護者や学校関係者が本疾患のことを十分に理解し、慎重に見守ってあげることが何よりも重要です。

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ヒトメタニューモウイルス

2019年01月07日

(概説)

小児の感冒の原因ウイルスの一つとして、2001年にオランダで発見されました。1度の感染では免疫ができにくく、何度か繰り返し感染し、10歳ごろまでにはほぼ全員が感染すると言われています。年を経て感染を繰り返すうちに、症状が軽症化すると言われていますが、乳幼児や高齢者、免疫が低下した大人が感染し重症化することもあり注目されています。

3月から6月ごろに流行することも特徴です。咳などの飛沫感染とウイルスのついた手などからの接触感染が主な感染経路となります。小児の感冒の代表的な原因ウイルスには他に、RSウイルス、パラインフルエンザウイルスなどがよく知られています。

(症状)

咳、鼻水、発熱など普通の感冒の症状が主で数日から1週間で軽快しますが、重症化すると肺炎や細気管支炎に移行し、高熱、喘息のようなゼーゼーという咳、呼吸困難などが出現します。また、子供の場合、中耳炎を合併しやすいことも特徴です。

(診断)

インフルエンザと同様に、鼻の粘膜を綿棒で拭いとった粘液から検査することにより診断できます(2014年より条件付き保険適用)。特別な治療法がないので、軽症の場合は、保険適用の観点から検査の必要性を医師が判断することになります。

(治療)

他のウイルスによる感冒と同様に、このウイルスへの特別な治療薬はありません。症状を緩和させるための薬と栄養・安静・水分補給などの生活上の指導が中心になります。長引く場合は、細菌感染の合併も考え、抗菌剤が必要となることもあります。また、高熱が続いたり激しい咳が治まらなかったりなどで重症化の恐れがある時は、綿密な観察と迅速な治療が必要になります。

(予防などの注意点)

潜伏期は3〜5日程度です。上記の感染経路から、インフルエンザや他のウイルスによる感冒と同じく、手洗いやマスクの着用が予防上大切となります。

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風疹

2013年09月07日

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №98

カルテ49  内科、小児科

2013/7/22

 


○概説○
日本では俗に「三日はしか」と呼ばれていたもので、「はしかの軽いもの」という印象がありました。
近年発症する患者が減少し、数年に1度大流行する傾向がありましたが、平成25年は、過去最悪の大流行の兆しをみせているために注目されています。ウイルスによる感染症で、たいていは数日で自然治癒しますが、妊娠初期や中期の妊婦がかかると、胎児に心臓などの先天性疾患を起こす可能性があり、この事が今回の流行で問題視されています。
ワクチン接種が唯一の対策となります。
特に昭和54年から62年生まれの人は、日本での予防接種に関する法律の変わり目と重なり、充分なワクチン接種が行われていない可能性が高く、流行に影響していると考えられています。風疹にかかった事がない人は、ワクチンの摂取が望まれます。
 
○症状○
感染後、2~3週間の潜伏期のあと、発熱、発疹、リンパ節腫脹が出現します。発疹は顔から始まり、身体の中心部から手足に広まっていきます。主に耳から首の後ろのリンパ節が腫れます。放置しても数日で症状は消えます。発疹出現後、ウイルスの排泄は激減し、他人に移す可能性は低くなります。
 
○診断○
特徴的な発疹の出現と経緯で診断がほぼつきますが、確定診断には血液による抗体検査が決め手となります。
 
○治療○
根本的な治療法はなく、対症療法にて経過を観察する事でたいていは問題ありません。妊婦の場合は特別な配慮が必要になります。
 
○ワクチン○
過去に風疹にかかった事がなく、中学生の時のワクチン接種を行っていない人は、予防的ワクチン接種が重要です。妊娠の可能性のある女性は、ワクチン接種後2ヵ月間は避妊の必要があるとされています。妊婦が風疹に感染した場合は、産科の担当医とも十分に相談して対応する必要があります。
 

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