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妊婦脳出血で死亡、都立墨東病院。ご主人に脱帽。

「救急病院をたらい回し1時間で患者さんは死亡」というような表現で報道された。それを見た読者は当然「ひどい病院だ」と医療批判になる。このような報道の仕方が懲りずに続いているから、「医療崩壊」のマインドは悪化の循環をたどることになる。一体この国のマスコミ人は日本を良くしようと考えているのだろうか?都立墨東病院の関係者から話しを聞いた。実際は主治医である開業医、救急隊、墨東病院の医師達関係者たちみなにより可能性の限りの救急活動はされていた。しかし、より適切な処置をするためのいろいろな可能性を探るために1時間を要した。その間、本来受け入れが厳しい状況である墨東病院でも受け入れ態勢を準備した。患者さんの状態から、母体の救出は不可能だから胎児をなんとか助けようと苦渋の判断をした。僕にはその懸命の努力活動がありありと想像できる。

その様子をしっかり見届けていた患者さんのご主人さんの発言に感動した。最愛の妻を亡くしたばかりのご主人さんが、誰も責めずに現場の医師の努力を評価し今後の医療の発達を願うとの発言である。恨みつらみを言ってくれるのを期待しただろうマスコミ記者のきょとんとした顔が想像できる。一方、その対応に感動した記者達や医師達もいたことは想像にかたくない。つまり、このご主人さんの気持ちは行き過ぎたマスコミを修正し、心ある医師に勇気を与えたことになる。自問自答した。果たして僕はこのご主人さんのような立派な態度をとれそうもないのではと。

自分の身を守ることに必死になっているように見えた医師がヒステリックに「私はきちんと伝えた」と叫んでいる姿が、最初は、僕にはみっともなく見えた。お金や見栄に魂を売っていく医師達とその像が重なったが、実は違うかもしれないと思った。一線の婦人科医として活躍しているのだから安易な道に流れている医師達とは違うはずだ。取材で追いつめられ身を守るため止むなくそのように答えたのだろうと想像できた。

一つのこの事件の中にも、実にいろいろな要素が含まれている。単純に「たらい回しはけしからん]と判断してはいけないし、そう思わせるような報道もよくない。

もう一つ残念だったのは、これは国民の皆も感じたことであろうが、知事と厚生労働大臣の罪のなすり合いとも思える発言だ。僕は個人的に両人の使命感に感服していたこともあるので、特にがっかりした。しかし、これも報道を通じて知ったことである。実際は長い話しがあったのに、その一部分だけを知ると反対のイメージを持つことはままある。これもそのたぐいだと信じたい。

今回の事件のように、患者さんの家族も含めた登場人物全員が善意であるのに、医師達の信義が問われるケースは多い。日本の医療が崩壊の一途をたどっている原因は、もっと別のところにある。真面目に医師らしく命を削って任務を遂行している医師は気の毒にもこういったリスクを負う。魂を売り安易に医師の地位を用いておおよそ医学の道をはずれたことで金儲けに精を出している人こそ医師に中での医療崩壊の原因であるのにこういったリスクを負わない。こんな不公平を理解したら、普通の人はどんな行動をとるであろうか?

勿論、医療崩壊はもっと社会全体の諸問題から生まれ増悪しているのであろう。

僕は医師であるから、「真面目な医師は多い」とか「報酬は悪いのに医師としての使命感が日本の医療を支えてきた」などというと、自己弁護だと言われかねない。断っておくが、僕は既に懸命に働く現場の医師ではない。だから、客観的に医師を擁護もすれば批判も出来ると自分では思っている。

 

最近の医療で考えることは多い。今後この場でまめに発信していきたいと考えている。

 

作成:2008/10/30

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