Home

東大卒業式に参列して

昨日平成22年3月25日、安田講堂で行われた東大卒業式に来賓として参列させて頂く機会を得た。各学部から同窓生2名ずつの参列で、マントと角帽を身につけて式のあいだずっと壇上に座ったまま卒業生たちを見守る役割である。インターネットで生中継があることを開始の1時間前に知り、あわてて友人や知人に連絡した。為になるかならないかは別として、一般の方が東大の卒業式の内部をライブで見るチャンスも少ないと思った。間に合ってみて頂いた友人からは「笑顔しか見ていない私たちにとって、寺下さんのやや緊張気味の真面目な顔を久々にみた」「あのマントは自前なの?」「寺下さん以外の来賓の肩書きはすごいのに、、、」などの感想を頂いた。最近、笑うことが少なくなったと思っていたから、友人から「笑顔以外みたことない」と言われて安心した。笑顔が一番の健康管理だし、医師としても患者さんへの一番の処方だと思うからだ。マントは勿論自前ではなく、大学から借りたものである。確かに肩書きはひけをとっていたことは否めない。 濱田総長の告辞のキーワードは「多様性」であった。昔はあまり聞かなかった言葉だが、今日はこの「多様性」は様々な場面で登場する。大学で専門分野を学んだことであろうが、様々な多様性に対応できるたくましさを持って欲しい、ということを強調された。それに応えるように卒業生代表の答辞では、「どうしたらひとつの目的のために多くの人が協力し合えるのか」というテーマを自ら投げかけ、「それはとても難しいテーマだが、それを乗り越えた時に、人々に感動や幸せをもたらす成果が得られる」と話していた。本当にその通りだと思う。価値観が多様化した今だからこそ、人々が協力し合うことが大切である。個人を大切にするあまり、少し意見や信念が異なると心底からの協力が出来なくなってきているのが現在の特徴ではないか。今の日本の政治を見れば一目瞭然である。大抵の政治家は取り敢えず「国民の幸福を願っている」はずである。にもかかわらず、手法の少しのずれから大きな反駁が生まれ、その結果、相手を非難牽制することに労力の大半を奪われているように僕には見える。この答辞を述べた若者のように純粋な気持ちを思い返して欲しいものである。かく言う僕も、自分に言い聞かせた。 卒業式の後の、懇親会で濱田総長とお話しする機会があり、「この数年、学生たちの元気も底打ちし、少し上昇に向かっている気がしています」との嬉しいコメントを得た。最近、僕もそう感じていたからである。日本の先行きの不安もあるが、次世代を担う若者たちも捨てたものではない。彼らを真剣に応援するのが我々の世代の役割であると思っている。余談であるが、「あなたの医療判断学や主侍医の仕事は、手間暇がかかって大変ではないですか。とても必要なことだと思うのですが。(民間ではなく、大学みたいな)うちでやっていかないといけないことですね」と濱田総長より慰めと励ましのお言葉を頂いた。さすが多様性にすぐに対応できる方は理解が早いと頭が下がった。 というわけで、母校の卒業式の参列により、卒業生を励ますどころか反対に学び励まされた次第である。

作成:2010/03/26

​ ​