Home

自己再研鑽、復習そして予習 2012/2主侍医通信より

 寒中お見舞い申し上げます。

 今年最初の通信をお届けするのが2月になってしまいました。毎年の始めに、年間モットーのようなものを考えることにしています。学生の頃からでしょうか、随分昔からの習慣です。今年は「自己再研鑽、復習そして予習」としました。これには、いろいろな意味合いを込めています。いよいよ還暦1年前となり、随分前の年間モットーであった「温故知新」の復習でもあります。つまり「復習の復習」となります。例えば、年末の通信でも少しお話しましたが、事務所の過去の膨大な資料を抜粋して読み返しています。それらのエッセンスを、次回以降ご紹介できればと思っています。20代30代と充電と放電の激しい繰り返しをしながらもなんとか蓄電し、40代から50代は充電に放電が追いつかない状況だったかなあ、と俯瞰しています。
 
 そこで、60代に向けては「新たな充電」中心と言いたいところですが、そこは冷静に過去を復習し、足りなかった部分を補填してみたり、忘れかけている大切なことや面白いことを再燃焼させたり、やりすぎたり歪んだ部分を補正したりしてみようと考えています。それらが「復習」です。仕事のみならず遊びやプライベートなことでも同様の「復習」をしようと考えています。そうは言っても、新しいことも無くては僕の性格上我慢が出来ないでしょうから、少しは「予習」も取り入れたいと思っています。
 
 そういう目で振り返ってみると「今だったらこうしているのに」「こうしていたらもっとよかったのに」と知恵や経験が豊富になったと思う反面「昔は体力もあったし頭も今よりはよかったなあ」とちょっぴり寂しく思うこともあります。しかし、昔考えたことを、今の熟年の応用力や人脈、そして発達したIT技術などの調味料を振りかけるとちょっとした逸品が出来るような気がしています。同級生や近い年度の仲間のドクターも大病院の部長や院長、大学の教授など管理職になっている方がほとんどです。他の分野ですと、会社の役員や社長ということで、現場の作業はほとんどなく管理者としての仕事がメインだと思います。ただ、大学の教授になっている連中から「最近は、診療10、研究20、若手育成70」という日常業務の割合を聞いて、「相変わらず、診療80、若手育成10、執筆、セミナーなど10」という僕にとっては、多少羨ましくも思えます。
 
 思い起こせば、大学受験や入学当時、華やかだった東大医学部生も、現在は結構地味なもので、大会社の役員や社長を務める他学部の同学年OBたちが社用車で通勤であったりゴルフ場までの送迎もあったりするというのに、病院に勤める医師は送迎車どころか、大病院の副院長でも当直をしている方もいると聞いて驚いています。東大医学部の同窓ゴルフ会では、ほぼ全員がマイカーか電車で集まりますし、未だに平日どころか土曜日でも来られないひとが多く、日曜日のみの開催ということで、常任幹事(僕なのですが)泣かせです。日曜日でかつ年配の先輩方(昭和天皇の手術を担当された先生やその更に先輩の長老先生を筆頭に)がマイカーを運転して来られる近いゴルフ場を確保するという難題を毎回克服する必要があるからです。そんな大先輩がいまでも患者さんのために尽くしている姿にいつも頭が下がる思いでおります。
 
 人生においては、だれもが「幸せ」を求めています。「幸せ」の定義はひとそれぞれです。他人からは「幸せ」そうに見えても、本人は悩み苦しんでいる場合が少なからずあるものです。「健康は幸せ」とは言えませんが、「健康でないといわゆる幸せ感が得られにくい」ことは事実だと思います。主侍医を勤めさせて頂いて、さまざまな形でクライアントの方と触れ合いますが、基本的には体調を壊した時に、密接にお会いすることが多くなります。幸いにも、今まで多くの場合、重病を切り抜けて、その後皆様の笑顔と接することができ嬉しく思っていました。
 
 しかし、昨年11月に、主侍医倶楽部メンバーの方を初めて看取ることになりました。その方は、入会間もなく、現在の医学では治療法がないとされる厳しい病気を発見することになりました。メンバーになって頂いてすぐに困難に直面しました。我々に出来ることは、「なるべく苦痛がなく出来るだけ長らえるようにサポートすることだ」とスタッフドクターとともに尽くしましたが、関連のNTT東日本関東病院にてご逝去されました。ここにご報告とともにご冥福をお祈りしたいと思います。

作成:2012/02/17

​ ​