Home

主侍医魂 2012/11&12主侍医通信より

 秋の気配を楽しむ間もなく、冬が到来した感がありますが、季節の変化にお体は大丈夫でしょうか?充分な予防対策をお願いいたします。

 今回は11月と12月の合併号として今年最後の通信となります。振り返りますと、私にとって今年は本当に悲喜こもごもの出来事がありました。そんな中で、みなさまにもご報告しなければなりませんことですが、最も悲しい出来事がありました。主侍医倶楽部設立当時から、陰日向となって応援下さり個人的にも親しくさせて頂いていた方が、他界されたことです。(ご遺族のご希望でお名前は伏せさせて頂きます)いつも明るい笑顔で接して頂き、主侍医倶楽部のことも心配して頂き、最も多くの方をご紹介いただきました。「主侍医」のことを心から信頼し応援してくださっていたからだと思っています。しかし、懸命の努力にもかかわらず、9月にご逝去されました。我々主侍医の力が及ばなかったことが悔しくて、後になると「こうすればよかったのではなかったか?」と自問自答して眠れない日々が続きました。でも、その方は余命が厳しいと言われていた闘病中も「寺下さん、主侍医倶楽部もメンバーの若返りをして増やさないと運営が苦しいでしょう」と、こちらが心苦しくなるような優しい言葉をかけてくださいました。ゴルフが大好きで、「先生が幹事の東大のゴルフコンペで、昨年のようにお役に立てることがあったら遠慮なく言って下さいね」とも闘病中で苦しい中、笑顔で声をかけていただきました。思い出は数えきれません。「好きで敬愛できる方の主侍医を努めさせて頂く」ことが主侍医倶楽部発足の原点です。それを忘れてはいけないことを最後まで教えて頂きました。心よりご冥福をお祈りいたします。

 そのようなこともあり、最近、この場でも主侍医倶楽部の継続性に向けてのお話をさせていただいています。医師生活35年、主侍医稼業23年目となり、回顧、反省、継続性の模索、後輩の育成、余生の過ごし方、、と連鎖する思いが日々頭の中を駆け巡っています。

 いつも言っていますが、主侍医倶楽部は、日本の高度な医療を補完するものだと思っています。日本の医療は、何が高度かというと「ほとんど誰でもどの医師にもかかれるフリーアクセス」「圧倒的なコストパフォーマンス」「今やサービス精神に溢れた病院やクリニック」「先進医療の選択肢も増えたこと」など他の先進諸国の追随を許さない優位性があると真っ当な医療関係者は自負して当然だと思っています。ここで「真っ当な」という理由は、残念ながら、魂を売った商売に走ったり、権力闘争に重点を置く医師もいるからです。開業医であろうが勤務医であろうがその魂を売る確率は同じようなものです。

 そんな中、私どもは今までの経験を活かし、また誠実で優秀な医師たちとの交流を最大限活用し、主侍医倶楽部をご支援下さる皆様がよりよい医療を受けられることを補佐するために日々努力しています。

 みなさまにお願いがあります。医療において、最大の貴重な資源はやはり「医師そのもの」だと思います。「高度医療機器」でもなく「新薬」でもありません。そしてその「医師そのもの」は、壊れやすく、再生産が難しく、目に見えた有難さが薄いものです。ある経済界の成功者から「どれだけ最新の医療機器が揃っているかが肝心で、その機器から答えが出るのだから、医師によって差が出るとはどういう意味ですか?」といぶかしげにしかも真剣に質問され、腰を抜かすくらい驚いたことがあります。

 我々は、「医師そのもの」を医療における最大の貴重な資産だと考えています。真っ当で腕のたつ医師ほど、信念を持っていて、お金などでは簡単に動きません。私の医師(だけではないのですが)人脈の広さは希有だと医師仲間からもお褒め頂くのは、それぞれの医師(または友人)と真剣で誠実で楽しいお付き合いを積み重ねてきた所以だと思っています。この人脈は、資産家の方々が、努力して得られたさまざまな金融資産にも負けない資産だと思っています。だからといって、その医師たちが、全て皆様方の健康上の困難を解決できるとは限りません。他の分野に比べて医療の不確実性は圧倒的に高く、私自身もしばしば忸怩たる思いをします。完全なる成果と安心を与えたいといつも思っていますが、それは永遠のテーマです。

 名門ゴルフクラブでは、ゴルフ場の命とも言えるグリーンを一所懸命手入れし、また会員はそのグリーンを丁重に扱い自分が付けた傷のみならず、他人がつけたものまで修復する習慣があります。とてもいいことだと思っています。主侍医倶楽部において、スタッフ医師もご紹介する医師もせめて名門ゴルフクラブの「グリーン」のように考えて頂ければ有難く思います。勿論、我々はその「グリーン」をいつも良質にキープする努力は怠りませんが、ご利用のみなさまにもご協力いただかなければ達成できないことです。

 医療の広大な分野での総合的な相談にお応えし、それぞれの分野の専門医と連携を保ち続けるためには、日々新しい医療の情報を浅くとはいえ、プロとして耐えうるレベルで内容を把握し、専門医たちとの活きた交流を保ち続けることは相当なエネルギーが必要です。後輩の育成も困難の極みです。

 前回もお話しましたが、「ビジネスモデルとしての主侍医倶楽部」は不完全のまま終焉をむかえそうですが、今までの経験と知恵と人脈を活用して、現実問題としての継続性を考え今後の事務所活動の設計の立て直しを考えています。

 一つは「良質なセカンドオピニオンを支援するサービス(Second Opinion Support)センターの設立」です。もうひとつは人間ドック時に発見された重病に特化した「オンデマンド主侍医」です。今までの主侍医倶楽部を「継続的サポート」とすれば、前者は「一時的サポート」後者は「定期的サポート」と言えます。

 主侍医の主要なコンセプトの「健康な時から」「どんなことでもいつでも相談」がクライアント側にとっては「何もないのにお金を払い続ける」困難であり、前述のように「なんでも相談にのる」ことは提供側の困難で、それらがビジネスモデルの成立を困難にしていたことを認めざるを得ません。

 現行主侍医倶楽部では、最低限の費用で「侍医」を持つことを提供しようと考えてきましたが、中途半端であったかもしれないと反省しています。「困った時だけ困ったポイントに絞りサポート」「困った時だけ徹底的にサポート」「定期的なサポート」という仕組みの方がビジネスモデルとして成立しやすく結果として多くの方々に貢献できると考えました。ビジネスモデルといっても、医療は、「まともにやれば大稼ぎできる」世界ではありません。「武士は喰わねど高楊枝」的運営から質実剛健運営くらいが目指すところだと思っています。

 上述のように、多くのみなさんに提供できるような「困ったときのサポート」を主軸にする一方、現行主侍医倶楽部の新規募集は停止しますが、現メンバーのみなさまには今まで以上のサポートが出来るように努力いたします。

 新機軸として、主侍医サービスの理想ドリーム型として「The主侍医倶楽部」の設計を考えています。これは今後の方向性と逆行するのですが、皇族の侍医に対抗できるような文字通り夢のような仕組みを考えています。

 「The主侍医倶楽部」は、富裕層ビジネスと言われるのを嫌う私にとって、一気にそれを超越した趣味的なものと考えています。面白いからその趣味に付き合おうという数十名の方が集まればやってみようというアーティストやプロデューサー的夢でもあります。

以上のような構想が、現実的なかつ迫り来る還暦の夢想でもあります。

長年にわたり、主侍医倶楽部の価値をご理解いただいているメンバーの皆様方にこそ言える「愚痴」と「抱負」をお聞きいただきありがとうございます。

来年も、みなさまにとって幸せな年となることをお祈りしております。

作成:2012/12/07

​ ​