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耳鼻咽喉科

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秋の花粉症

2022年10月25日
(概説)
花粉症とは、様々な種類の花粉が原因(抗原)となって起こる鼻や眼などの粘膜のアレルギーの総称です。日本ではスギやヒノキの花粉によるものが圧倒的に多く、春の病気と思われがちですが、夏にはイネ科のカモガヤ、秋にはブタクサやヨモギが原因の花粉症がみられます。また、2019年より、世界中を震撼させている新型コロナウイルス感染症、特に2022年現在流行しているオミクロン型の症状と酷似する場合も多く、患者にとっても医師にとっても対応に注意する必要があります。
 
(症状)
いわゆるアレルギー性鼻炎や結膜炎の症状が中心になります。具体的には、鼻水、くしゃみ、鼻詰まり、眼の痒み、充血、過剰な涙などの症状が主となります。喉がイガイガし、咳なども出ることがあります。軽症の新型コロナの症状に似ています。基本的には熱が出ることは少ないですが、アレルギー症状が強い時は微熱が出ることもあります。
 
(診断)
毎年の鼻炎発生状況などから、ほぼ診断がつきますが、血液によるIgE検査で、原因となる花粉(アレルゲン、抗原)が推定できます。皮膚テストや鼻粘膜の誘発テストなどもありますが、日常的には、症状で診断され、血液検査が補助的に使われるのが現状です。
 
(治療)
基本的には、原因となる花粉を避けることにつきます。花粉飛散時期の外出には、マスクや特殊なメガネの着用をし、帰宅時には衣服についた花粉を念入りに振り払うようにします。室内では花粉に対応した空気清浄機なども一定の効果があります。
毎年、花粉症を発症する場合は、原因となる花粉の発生時期の情報をつかむようにして、花粉飛散の初期段階から、抗アレルギー剤の服用や鼻への噴霧などを開始するようにすると、症状が軽く済むことが多いです。最近では、薬剤の選択肢の幅が増えてきていますので、医師とよく相談して治療法を決めることが大切です。スギ花粉症では、より根本的治療に近い減感作療法(アレルゲン免疫療法)なども、保険適用になり選択できます。
症状が強い場合は、鼻粘膜の外科的治療や分子標的治療薬の選択の可能性もありますが、専門医との相談が必須です。
 
(予防、生活上の注意)
大体が、毎年起こる持病のようなものですので、事前対策を心がけることが、快適に過ごすコツとも言えます。新型コロナとの鑑別も考えると初めてかかるクリニックの敷居も高く感じられるかもしれませんので、気軽に相談できるように、普段から持病のかかりつけ医を決めておくと安心です。

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)

2021年10月26日
(概説)
新聞やテレビなどで耳にすることも多く、比較的一般人にとっても馴染みの深い病名ではないでしょうか。Sleep Apnea Syndromeの頭文字をとって「SAS」と略されて呼ばれることも多いようです。「うちの主人ですが、夜中にいびきがうるさいと思っていたら、急にいびきが途絶えて呼吸が止まっているのです。うるさいやら、心配するやらで寝不足気味になっています」というようなお話をよく聞きます。一方、いびきをかいてよく寝ているように見える本人は、「よく眠れなくて、昼間眠くて仕方ないんです」とぼやいています。全く傍迷惑な話なのですが、実はいろいろな病気のリスクがありますので、きちんと診断する必要があります。本疾患を示す典型的なお話にて概説にかえさせていただきます。
 
(症状)
概説に示しましたように、普段、寝室を共にする方が無呼吸に気づくことで見つかることが多いようです。また、起床時の頭痛や十分な時間睡眠をとっているにもかかわらず日中の眠気やだるさがあります。激しいいびきも本疾患の原因でもあり、結果としても生じることが多いようです。
 
(診断)
医師の指示により各種睡眠時モニター検査を行い診断されることになります。 SASの多くは、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と呼ばれるもので、肥満、男性、加齢などがリスク要因となります。また、心不全や脳血管障害が引き金となる中枢性睡眠時無呼吸(CSA)と呼ばれる比較的重症度の高いものもありますので、専門医による鑑別診断が大切となります。
 
(治療)
CPAPと呼ばれる持続的に陽圧をかけるマスクを装着する治療が標準治療となりますが、軽症であったり、CPAPの装着が困難な場合は、まずはマウスピースを使って改善するか様子を見ます。肥満がある患者さんには、減量の指導をします。生活習慣病などの基礎疾患がないかどうか調べておくことも大切です。

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メニエール病

2020年04月27日

(概説)

「めまい」を起こす病気の代名詞のように思われている印象を受けますが、いかがでしょうか?最近では「良性発作性頭位めまい症」が、有名人がかかった病気としてマスコミでも取り上げられ、めまいを起こす病気の両横綱というイメージでしょうか?「めまい」は数ある症状の中でも、重症感を感じさせる嫌な症状の代表の一つです。しかし、慌てる必要のない良性のものから、救急処置が必要なものまで、医師でさえ、その原因の診断は結構難しい場合も少なくありません。この機会に知識を整理しましょう。

(原因)

内リンパ水腫という内耳の中の浮腫が原因であることが解ってきています。その原因にストレスが強く関連しているようですが、そのメカニズムに関しては現在のところ不詳です。

(症状)

定型例としては、数分から数時間続く回転性めまい(時に浮動性めまい)が反復し、難聴、耳鳴り、耳閉塞感などを伴うことが多いようです。非定型例として、症状の組み合わせが多彩なパターンも存在しますので、耳鼻科の専門医の診断が重要になります。

(治療)

ストレスが大きく影響し、内耳の水の代謝が関与するので、禁煙、良質な睡眠はじめ規則正しい生活が大切です。薬物治療としては、めまい発作の急性期には、メリスロンやトラベルミンといった内服薬やメイロンという点滴静注薬が使われます。めまい発作が治まっている間欠期にはアデホスといった薬や漢方薬も使われます。大抵は、こういった保存的治療(手術などを伴わないいわゆる温和な治療)で落ち着いて行きますが、なかなか治らない重度の場合は、水腫の外科的処置や内耳の一部の機能を制御する治療も選択されることがあります。

(生活上の注意)

今まで、お話しした通り、ストレスが大きな誘引となりますので、日頃から規則正しい健康的な生活を心がけることが肝要です。めまいの原因を診断することがまず重要ですので、しっかりと診断を付けていただき、メニエール病と判断されたら根気よく治療に臨むことが肝要です。

 

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鼻血(鼻出血)

2017年01月10日

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №112

 カルテ63  <耳鼻科> 鼻血(鼻出血)

 2017/1/4(火)

 

 



〇総論〇

鼻出血は、ありふれた症状の一つです。子供や高年者に比較的多いようです。大抵は、鼻中隔前下方からの出血で、医学的には前鼻出血と呼ばれるものです。鼻ほじりや鼻かみによる機械的刺激が原因で、微細な血管が集中するキーゼルバッハと呼ばれる部位からの出血です。その他、出血部位により鼻の奥の動脈から出血する後鼻出血や上鼻出血などがあります。

〇原因と対処方法〇

機械的刺激による前鼻出血の場合、大抵は自然に止血します。止まりにくい場合は、頭をやや前に傾け鼻の両脇を強くつまみ圧迫します。また冷やしたタオルなどで鼻を冷やすとより効果的です。
それでも止血しないときは、動脈性の出血も疑われますので耳鼻科を受診してください。また、出血傾向を来たす血液などの病気や脳梗塞や心筋梗塞の予防薬として使われる薬(血液サラサラにする薬と形容される薬)などを服用している場合なども、止血が困難な場合が多く、早めに耳鼻科受診をしましょう。繰り返し鼻出血を起こす場合は、高血圧、腫瘍、肝硬変や出血傾向をきたす全身の病気が隠れている場合もあります。耳鼻科や内科への受診をお勧めします。頭を強く打った後の鼻出血の場合は、脳底骨折などの心配もありますので、緊急的な受診が必要です。

〇緊急時の注意〇

大量の鼻出血の場合は、ショック状態になったり意識が低下する場合もあります。その場合は患者さんを横向きにねかせ、血液や血の塊を誤嚥しないように注意して、すぐに救急車を要請してください。

〇普段の注意〇

「上を向き、首の後ろを叩く」とよく言われますが、これはむしろ逆効果です。また、血液サラサラ系の薬を服用している場合は、身近な人たちにその旨を知らせておきましょう。

 

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睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)

2003年04月25日

 

カルテ10

呼吸器内科・耳鼻咽喉科・一部の歯科

睡眠時無呼吸症候群

(SAS:Sleep Apnea Syndrome)

NKH「健康ライフ講座」

2003.4

日本機械保線株式会社 社内報


睡眠中に呼吸の止まった状態が断続的に繰り返される、重度の睡眠障害一つです。

一般にいびきをかく人は少なくないのですが、無呼吸発作を繰り返すようないびきは、様々な問題を生じ、時には命にもかかわります。

症状

「大きないびき」と「昼間の眠気」が主な症状です。

一晩の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上、または睡眠1時間あたりの無呼吸を5回以上認めると、「睡眠時無呼吸症候群」と診断されます。

無呼吸を繰り返すと、血液中と脳で酸素量が減少し、十分な睡眠が得られないため、昼間の眠気や集中力の低下、頭重感などの症状が出ます。

酸素不足は循環器機能にも負担をかけ、不整脈、高血圧、脳卒中などの原因になりますし、日中の眠気は交通事故や産業事故を引き起こす可能性があります。

同じ部屋で眠る人から、睡眠中の体動が激しい、大きないびきをかいている、息苦しいあえぎやうなり声などをあげているなど指摘された場合は要注意です。

診断

最近は睡眠障害の専門外来が増えています。「アプノモニター」という酸素濃度を測定できる装置を自宅に持ち帰り、夜間装着して無呼吸の回数や血液中酸素濃度の低下の有無などをコンピューター解析して診断します。重度の睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、入院して脳波形、眼球運動、いびき音、心電図などを同時に測定する「ポリソムノグラフィー」という精密検査を行います。また、必要に応じて血液検査、心エコー、肺機能検査、耳鼻咽喉科的検査などを行います。

治療と対策

肥満、鼻中隔のゆがみ、ポリープ、扁桃腺肥大、蓄膿症などが原因となっていることが多く、特に肥満中年男性の場合は体重を減らすだけで問題は解決します。

上気道(鼻・副鼻腔、咽頭、喉頭、気管など)の閉塞が原因となっている場合、マウスピースの装着や、空気の圧力で気道を広げる「シーパップ」と呼ばれるプラスチックマスクの装着が有効です。重度の睡眠時無呼吸症候群では、喉を広げる手術などの外科的治療が必要となります。
睡眠時無呼吸症候群は、治療を行うことで生存率の改善はもちろん、活動的な日常生活を可能にし、不整脈、心肥大、高血圧などの疾患の改善も期待できますので、早めの対策が大切です。

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花粉症

2003年01月25日

カルテ9

内科・耳鼻科・眼科

花粉症

NKH「健康ライフ講座」

2003.1

日本機械保線株式会社 社内報


症状がひどいと日常生活に大きな支障をきたし、現代病としても注目されている「花粉症」。最近は日常生活で花粉を回避する習慣を身につけたり、薬剤を上手に使うことでコントロールが可能になりつつあります。

原因

花粉症はアレルギー反応によって起こります。原因植物は大きく樹木と草花に分けられます。樹木としては、日本での原因のほとんどを占めるスギを始め、ヒノキ、ハンノキ、ブナ、マツ、イチョウなど、草花はカモガヤ、ブタクサ、ヨモギ、オオアワガ工リ、カナムグラなどが挙げられます。地域によって原因植物は異なり、花粉の飛散時期も異なります。1種類の花粉にだけ反応する人はむしろ少なく、スギ花粉症患者の60%の人がヒノキの花粉にもアレルギーを示したとの報告もあります。発症には、アレルギー体質(遺伝)、大気汚染、ストレスや過労が関係します。

症状

主に鼻症状と眼症状が中心です。

鼻は発作的なくしゃみや水っぽい鼻汁、鼻閉(鼻づまり)など、眼はかゆみや充血、まぶたの腫れといった症状が挙げられます。このような症状が特定の季節に繰り返し起こります。

診断

花粉症を疑った場合、内科か耳鼻科、もしくは眼科で診断を受けましょう。診断は、鼻や眼の症状のアレルギー性と原因花粉をつきとめることの両方からなります。ポイントは症状、発症時期、分泌物の検査、皮膚反応検査、血液検査などです。

治療と対策

一般的な花粉症の治療としては、眼鏡やマスクなどを用いた花粉の回避、薬で症状を和らげる対症療法です。特に、抗アレルギー剤を花粉が飛散する時期に入る2週間くらい前から予防的に投与し、アレルギー症状を軽減させる方法が有効です。

飛散開始の予測がポイントになりますが、スギ花粉の飛散時期に関していえば、たいてい早い所でも2月の半ばから。2月の初旬から薬の投与を開始すれば間に合うようです。

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