NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報 №99
2013/10/21
○ 概説 ○
慢性閉塞性肺疾患の英語名の頭文字をとってCOPDという名称が日本ではよく使われています。口からつながる気管が枝分かれして細い気管支になり終点は肺胞と呼ばれる小さな袋のようなものになりますが、肺はその気管支と肺胞からできています。COPDは、その細い気管支に炎症が起きて、気管支が細くなり空気の通りが悪くなる病気ですが、その炎症のほとんどの原因はタバコです。また、いったん細くなった気管支は回復しにくいので、予防やリハビリが大切となります。また、肺胞が破壊されると肺気腫という病気になります。
○ 症状 ○
階段昇降など運動時の息切れ、咳、痰、呼吸困難などですが、特に息を吐きづらい呼吸困難が特徴となります。症状はゆっくり進行するので、初期は気づかないことも多いですが、喫煙者で階段昇降時の息切れがあった場合は早めに受診することが、病気を進めないために大切となります。
○ 診断 ○
喫煙状態や症状の経過でほぼ診断は推定できますが、確定診断のためにスパイロメーターという器械を使って、呼吸の状態を測定して診断します。「大きく息を吸ってー、はい、思いっきり吐いてください」と技師さんが補助してくれる検査です。その他の病気との鑑別のために、CTや胸部レントゲン写真を撮る場合もあります。
○ 治療 ○
根本的な治療法はなく、自覚症状を軽くしたり進行を抑えるために、気管支拡張剤などの吸入薬や飲み薬を用います。禁煙は必須で、呼吸困難がある場合は呼吸リハビリが有効です。重症になると持続的酸素吸入が必要となります。
○ 生活上の注意 ○
まず「禁煙」の一言につきます。この病気になると、風邪やインフルエンザから重症の肺炎に移行しやすくなるので、普段の風邪予防的行動が大切になります。病気の程度にあった、適切な運動により呼吸に関連する筋肉を日ごろから鍛えることも重要です。
カルテ36<内科、呼吸器科>肺結核
2010/10/15
日本では、じつに4人に1人が感染している可能性があるといわれる肺結核。肺結核は過去の病気ではありません。空気感染することと、何年も前に吸い込んだ菌が体力の低下で活動を始めることがあるという怖さを持っています。
(概説)
結核菌という病原体による感染症を結核といいますが、その9割以上は肺に病巣がある肺結核です。かつては日本の国民病と呼ばれるほど、罹患率、死亡率も1位でしたが、治療や予防の効果が現れ、近年では死亡率が10万人当たり5人程度に落ち着いてきています。しかし、平成17年の罹患率は10万人当たり22人、年間の新規結核患者数が5000人以上と、先進諸国の中では結核発症者の多い国と言えます。
(症状)
咳と痰、微熱、進行すると血痰、体重減少などがみられます。結核菌は比較的弱い菌ですので、感染初期は症状が少なく進行してから気がつくことが多いので、長く(2週間以上)続く咳や微熱や、原因不明の体重減少があった場合は、呼吸器科や内科の医師と相談しましょう。
(診断)
胸部レントゲン撮影やCT検査とともに、痰の培養検査が重要です。培養検査の前段階にあたる、結核菌数を調べる通称ガフキーと呼ばれる検査で既に陽性の結果が出れば、すぐに専門病院での隔離入院が必要となります。それは他人への感染も心配されるためです。診断においては、特に、結核菌と同種の他の抗酸菌が原因となる非結核抗酸菌症や肺がんとの鑑別が大切となります。
(治療)
基本は入院の上、薬物治療となります。標準的には、リファジン、イスコチン、エブトール、ピラマイドという薬剤を使用します。痰に菌が排出されなくなると、外来治療も可能ですが、治療には1年程度かかる場合も多いことは念頭に置く必要があるでしょう。また、薬に対して耐性を持った結核菌の登場が問題となっています。
(生活、予防上の注意)
禁煙は勿論、規則正しい生活と十分な栄養補給が原則です。予防的にはBCGの接種が効果的ですが、平成15年から、小学校での義務接種は廃止となっていますので、各個人の判断が重要です。
カルテ10 呼吸器内科・耳鼻咽喉科・一部の歯科 睡眠時無呼吸症候群 (SAS:Sleep Apnea Syndrome) |
NKH「健康ライフ講座」 2003.4 日本機械保線株式会社 社内報 |
睡眠中に呼吸の止まった状態が断続的に繰り返される、重度の睡眠障害一つです。
一般にいびきをかく人は少なくないのですが、無呼吸発作を繰り返すようないびきは、様々な問題を生じ、時には命にもかかわります。
「大きないびき」と「昼間の眠気」が主な症状です。
一晩の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上、または睡眠1時間あたりの無呼吸を5回以上認めると、「睡眠時無呼吸症候群」と診断されます。
無呼吸を繰り返すと、血液中と脳で酸素量が減少し、十分な睡眠が得られないため、昼間の眠気や集中力の低下、頭重感などの症状が出ます。
酸素不足は循環器機能にも負担をかけ、不整脈、高血圧、脳卒中などの原因になりますし、日中の眠気は交通事故や産業事故を引き起こす可能性があります。
同じ部屋で眠る人から、睡眠中の体動が激しい、大きないびきをかいている、息苦しいあえぎやうなり声などをあげているなど指摘された場合は要注意です。
最近は睡眠障害の専門外来が増えています。「アプノモニター」という酸素濃度を測定できる装置を自宅に持ち帰り、夜間装着して無呼吸の回数や血液中酸素濃度の低下の有無などをコンピューター解析して診断します。重度の睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、入院して脳波形、眼球運動、いびき音、心電図などを同時に測定する「ポリソムノグラフィー」という精密検査を行います。また、必要に応じて血液検査、心エコー、肺機能検査、耳鼻咽喉科的検査などを行います。
肥満、鼻中隔のゆがみ、ポリープ、扁桃腺肥大、蓄膿症などが原因となっていることが多く、特に肥満中年男性の場合は体重を減らすだけで問題は解決します。
上気道(鼻・副鼻腔、咽頭、喉頭、気管など)の閉塞が原因となっている場合、マウスピースの装着や、空気の圧力で気道を広げる「シーパップ」と呼ばれるプラスチックマスクの装着が有効です。重度の睡眠時無呼吸症候群では、喉を広げる手術などの外科的治療が必要となります。
睡眠時無呼吸症候群は、治療を行うことで生存率の改善はもちろん、活動的な日常生活を可能にし、不整脈、心肥大、高血圧などの疾患の改善も期待できますので、早めの対策が大切です。