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呼吸器内科

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間質性肺炎

2023年01月04日
(概説)
間質性肺炎の病態については専門家の間でも全体像の把握や治療法などについても分かりやすく明確な解説は難しいものです。その前提のもとで、なるべく簡明に説明をしたいと思います。近年の新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、関連の呼吸器疾患として本症も注目を浴びています。ご存じのように、肺は酸素と二酸化炭素を入れ替えて、我々に新鮮な酸素を取り込んでくれる生命の根元となる役割を果たしてくれています。肺胞と呼ばれる小さな風船のような弾力性のある部分は、その酸素交換の最前線です。その壁にあたる部分が間質と呼ばれています。肺胞の中に病原菌などが入って起こるものが肺炎と呼ばれますが、間質に炎症が起こるものを間質性肺炎と呼びます。間質に炎症が起こり硬くなると様々な支障が起こります。間質が線維化して硬くなることから、肺線維症と同等に考えられていましたが、現在は分類上区別されています。これらの基本を押さえて、簡単に解説してみます。
 
(原因)
原因不明な「特発性間質性肺炎」が多くを占めますが、喫煙やカビなどを含めた異物の吸入、感染、アレルギー、自己免疫疾患、薬物の副作用などが原因となることも分かっています。
 
(症状)
咳(痰を伴わないことが多い)、呼吸困難が主な症状です。長期にわたってなかなか治らないという慢性の経過が多いですが、急激に悪化することもあります。
 
(診断)
類似の他の肺疾患との鑑別をすることが大切です。専門医による特徴的な胸部の聴診所見や、バチ指と呼ばれる指の変形なども診断のきっかけになります。CTなどによる特徴的な画像所見も重要です。この画像所見が新型コロナ肺炎の画像所見と似ていることが注目されました。
 
(治療)
特効薬は存在しないのですが、原因や病状によりステロイドや免疫抑制剤を使用します。この病気の専門チームの助言のもとに行うことが必要です。
 
(生活上の注意など)
一般的な健康管理である規則的な生活、運動習慣が大切ですが、禁煙することは言うまでもありません。風邪などがきっかけで悪化することがありますので、インフルエンザや肺炎球菌ワクチンなどの接種は推奨されます。新型コロナウイルス感染症の重症化にも関係するとも言われています。

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秋の花粉症

2022年10月25日
(概説)
花粉症とは、様々な種類の花粉が原因(抗原)となって起こる鼻や眼などの粘膜のアレルギーの総称です。日本ではスギやヒノキの花粉によるものが圧倒的に多く、春の病気と思われがちですが、夏にはイネ科のカモガヤ、秋にはブタクサやヨモギが原因の花粉症がみられます。また、2019年より、世界中を震撼させている新型コロナウイルス感染症、特に2022年現在流行しているオミクロン型の症状と酷似する場合も多く、患者にとっても医師にとっても対応に注意する必要があります。
 
(症状)
いわゆるアレルギー性鼻炎や結膜炎の症状が中心になります。具体的には、鼻水、くしゃみ、鼻詰まり、眼の痒み、充血、過剰な涙などの症状が主となります。喉がイガイガし、咳なども出ることがあります。軽症の新型コロナの症状に似ています。基本的には熱が出ることは少ないですが、アレルギー症状が強い時は微熱が出ることもあります。
 
(診断)
毎年の鼻炎発生状況などから、ほぼ診断がつきますが、血液によるIgE検査で、原因となる花粉(アレルゲン、抗原)が推定できます。皮膚テストや鼻粘膜の誘発テストなどもありますが、日常的には、症状で診断され、血液検査が補助的に使われるのが現状です。
 
(治療)
基本的には、原因となる花粉を避けることにつきます。花粉飛散時期の外出には、マスクや特殊なメガネの着用をし、帰宅時には衣服についた花粉を念入りに振り払うようにします。室内では花粉に対応した空気清浄機なども一定の効果があります。
毎年、花粉症を発症する場合は、原因となる花粉の発生時期の情報をつかむようにして、花粉飛散の初期段階から、抗アレルギー剤の服用や鼻への噴霧などを開始するようにすると、症状が軽く済むことが多いです。最近では、薬剤の選択肢の幅が増えてきていますので、医師とよく相談して治療法を決めることが大切です。スギ花粉症では、より根本的治療に近い減感作療法(アレルゲン免疫療法)なども、保険適用になり選択できます。
症状が強い場合は、鼻粘膜の外科的治療や分子標的治療薬の選択の可能性もありますが、専門医との相談が必須です。
 
(予防、生活上の注意)
大体が、毎年起こる持病のようなものですので、事前対策を心がけることが、快適に過ごすコツとも言えます。新型コロナとの鑑別も考えると初めてかかるクリニックの敷居も高く感じられるかもしれませんので、気軽に相談できるように、普段から持病のかかりつけ医を決めておくと安心です。

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)

2021年10月26日
(概説)
新聞やテレビなどで耳にすることも多く、比較的一般人にとっても馴染みの深い病名ではないでしょうか。Sleep Apnea Syndromeの頭文字をとって「SAS」と略されて呼ばれることも多いようです。「うちの主人ですが、夜中にいびきがうるさいと思っていたら、急にいびきが途絶えて呼吸が止まっているのです。うるさいやら、心配するやらで寝不足気味になっています」というようなお話をよく聞きます。一方、いびきをかいてよく寝ているように見える本人は、「よく眠れなくて、昼間眠くて仕方ないんです」とぼやいています。全く傍迷惑な話なのですが、実はいろいろな病気のリスクがありますので、きちんと診断する必要があります。本疾患を示す典型的なお話にて概説にかえさせていただきます。
 
(症状)
概説に示しましたように、普段、寝室を共にする方が無呼吸に気づくことで見つかることが多いようです。また、起床時の頭痛や十分な時間睡眠をとっているにもかかわらず日中の眠気やだるさがあります。激しいいびきも本疾患の原因でもあり、結果としても生じることが多いようです。
 
(診断)
医師の指示により各種睡眠時モニター検査を行い診断されることになります。 SASの多くは、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と呼ばれるもので、肥満、男性、加齢などがリスク要因となります。また、心不全や脳血管障害が引き金となる中枢性睡眠時無呼吸(CSA)と呼ばれる比較的重症度の高いものもありますので、専門医による鑑別診断が大切となります。
 
(治療)
CPAPと呼ばれる持続的に陽圧をかけるマスクを装着する治療が標準治療となりますが、軽症であったり、CPAPの装着が困難な場合は、まずはマウスピースを使って改善するか様子を見ます。肥満がある患者さんには、減量の指導をします。生活習慣病などの基礎疾患がないかどうか調べておくことも大切です。

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COPD(慢性閉塞性肺疾患)

2014年02月03日

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №99

カルテ50 内科、呼吸器科

2013/10/21

 


○ 概説 ○

 慢性閉塞性肺疾患の英語名の頭文字をとってCOPDという名称が日本ではよく使われています。口からつながる気管が枝分かれして細い気管支になり終点は肺胞と呼ばれる小さな袋のようなものになりますが、肺はその気管支と肺胞からできています。COPDは、その細い気管支に炎症が起きて、気管支が細くなり空気の通りが悪くなる病気ですが、その炎症のほとんどの原因はタバコです。また、いったん細くなった気管支は回復しにくいので、予防やリハビリが大切となります。また、肺胞が破壊されると肺気腫という病気になります。

○ 症状 ○

 階段昇降など運動時の息切れ、咳、痰、呼吸困難などですが、特に息を吐きづらい呼吸困難が特徴となります。症状はゆっくり進行するので、初期は気づかないことも多いですが、喫煙者で階段昇降時の息切れがあった場合は早めに受診することが、病気を進めないために大切となります。

○ 診断 ○

 喫煙状態や症状の経過でほぼ診断は推定できますが、確定診断のためにスパイロメーターという器械を使って、呼吸の状態を測定して診断します。「大きく息を吸ってー、はい、思いっきり吐いてください」と技師さんが補助してくれる検査です。その他の病気との鑑別のために、CTや胸部レントゲン写真を撮る場合もあります。

○ 治療 ○

 根本的な治療法はなく、自覚症状を軽くしたり進行を抑えるために、気管支拡張剤などの吸入薬や飲み薬を用います。禁煙は必須で、呼吸困難がある場合は呼吸リハビリが有効です。重症になると持続的酸素吸入が必要となります。

○ 生活上の注意 ○

 まず「禁煙」の一言につきます。この病気になると、風邪やインフルエンザから重症の肺炎に移行しやすくなるので、普段の風邪予防的行動が大切になります。病気の程度にあった、適切な運動により呼吸に関連する筋肉を日ごろから鍛えることも重要です。

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肺結核

2010年10月15日

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

カルテ36<内科、呼吸器科>肺結核

2010/10/15

 


日本では、じつに4人に1人が感染している可能性があるといわれる肺結核。肺結核は過去の病気ではありません。空気感染することと、何年も前に吸い込んだ菌が体力の低下で活動を始めることがあるという怖さを持っています。

(概説)

結核菌という病原体による感染症を結核といいますが、その9割以上は肺に病巣がある肺結核です。かつては日本の国民病と呼ばれるほど、罹患率、死亡率も1位でしたが、治療や予防の効果が現れ、近年では死亡率が10万人当たり5人程度に落ち着いてきています。しかし、平成17年の罹患率は10万人当たり22人、年間の新規結核患者数が5000人以上と、先進諸国の中では結核発症者の多い国と言えます。

(症状)

咳と痰、微熱、進行すると血痰、体重減少などがみられます。結核菌は比較的弱い菌ですので、感染初期は症状が少なく進行してから気がつくことが多いので、長く(2週間以上)続く咳や微熱や、原因不明の体重減少があった場合は、呼吸器科や内科の医師と相談しましょう。

(診断)

胸部レントゲン撮影やCT検査とともに、痰の培養検査が重要です。培養検査の前段階にあたる、結核菌数を調べる通称ガフキーと呼ばれる検査で既に陽性の結果が出れば、すぐに専門病院での隔離入院が必要となります。それは他人への感染も心配されるためです。診断においては、特に、結核菌と同種の他の抗酸菌が原因となる非結核抗酸菌症や肺がんとの鑑別が大切となります。

(治療)

基本は入院の上、薬物治療となります。標準的には、リファジン、イスコチン、エブトール、ピラマイドという薬剤を使用します。痰に菌が排出されなくなると、外来治療も可能ですが、治療には1年程度かかる場合も多いことは念頭に置く必要があるでしょう。また、薬に対して耐性を持った結核菌の登場が問題となっています。

(生活、予防上の注意)

禁煙は勿論、規則正しい生活と十分な栄養補給が原則です。予防的にはBCGの接種が効果的ですが、平成15年から、小学校での義務接種は廃止となっていますので、各個人の判断が重要です。

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睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)

2003年04月25日

 

カルテ10

呼吸器内科・耳鼻咽喉科・一部の歯科

睡眠時無呼吸症候群

(SAS:Sleep Apnea Syndrome)

NKH「健康ライフ講座」

2003.4

日本機械保線株式会社 社内報


睡眠中に呼吸の止まった状態が断続的に繰り返される、重度の睡眠障害一つです。

一般にいびきをかく人は少なくないのですが、無呼吸発作を繰り返すようないびきは、様々な問題を生じ、時には命にもかかわります。

症状

「大きないびき」と「昼間の眠気」が主な症状です。

一晩の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上、または睡眠1時間あたりの無呼吸を5回以上認めると、「睡眠時無呼吸症候群」と診断されます。

無呼吸を繰り返すと、血液中と脳で酸素量が減少し、十分な睡眠が得られないため、昼間の眠気や集中力の低下、頭重感などの症状が出ます。

酸素不足は循環器機能にも負担をかけ、不整脈、高血圧、脳卒中などの原因になりますし、日中の眠気は交通事故や産業事故を引き起こす可能性があります。

同じ部屋で眠る人から、睡眠中の体動が激しい、大きないびきをかいている、息苦しいあえぎやうなり声などをあげているなど指摘された場合は要注意です。

診断

最近は睡眠障害の専門外来が増えています。「アプノモニター」という酸素濃度を測定できる装置を自宅に持ち帰り、夜間装着して無呼吸の回数や血液中酸素濃度の低下の有無などをコンピューター解析して診断します。重度の睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、入院して脳波形、眼球運動、いびき音、心電図などを同時に測定する「ポリソムノグラフィー」という精密検査を行います。また、必要に応じて血液検査、心エコー、肺機能検査、耳鼻咽喉科的検査などを行います。

治療と対策

肥満、鼻中隔のゆがみ、ポリープ、扁桃腺肥大、蓄膿症などが原因となっていることが多く、特に肥満中年男性の場合は体重を減らすだけで問題は解決します。

上気道(鼻・副鼻腔、咽頭、喉頭、気管など)の閉塞が原因となっている場合、マウスピースの装着や、空気の圧力で気道を広げる「シーパップ」と呼ばれるプラスチックマスクの装着が有効です。重度の睡眠時無呼吸症候群では、喉を広げる手術などの外科的治療が必要となります。
睡眠時無呼吸症候群は、治療を行うことで生存率の改善はもちろん、活動的な日常生活を可能にし、不整脈、心肥大、高血圧などの疾患の改善も期待できますので、早めの対策が大切です。

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