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200712サイトカインストームのメカニズムについて 東丸貴信

免疫細胞の自爆の連鎖が原因?新型コロナ重症化に潜む知られざるメカニズム

7/10(金) 9:26配信

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(米国立アレルギー感染症研究所提供)

 

 新型コロナウイルス感染症の特徴のひとつに急な重症化がある。英国のジョンソン首相もSNSで普通にメッセージを発したわずか数時間後に集中治療室に移送されるほど重篤になったことを覚えている人も多いだろう。その原因のひとつはサイトカインストームにあると言われているが、新型コロナウイルスが引き起こすサイトカインストームは従来考えられていたものと異なるシステムがあるようだ。東邦大学名誉教授の東丸貴信医師に聞いた。 「新型コロナウイルスに感染すると、かなりの割合で全身に多数の血栓が生じていることが分かってきました。心筋梗塞や脳梗塞、下肢静脈血栓症などもみられ、死因も肺血栓塞栓症が多数報告されています」  肺血栓塞栓症とは肺の血管に血の塊(血栓)が詰まる病気だ。血流が滞り、体に必要な酸素や二酸化炭素の交換がうまくできなくなる。 ■好中球細胞外トラップ  なぜ、新型コロナに感染すると血栓が生まれるのか? 従来、感染症による血栓はサイトカインストームと呼ばれる免疫の暴走により生じると考えられてきた。ウイルスなどの病原体が体内に侵入・増殖すると、免疫細胞が過剰に反応する。そのことで自らの器官を傷つける。血管の場合は、傷ついた血管を修復するために血液を固まらせる成分が集結、血栓が生まれる。  ところが、新型コロナウイルス感染症とみられる肺血栓塞栓症で亡くなった人の血栓を調べたところ、その中に好中球の死骸が多数見つかっている。そのため、新型コロナによって生じた血栓は単に免疫の暴走であるサイトカインストームにより傷つけられた血管の修復のために集まった血液凝固成分の集積だけでなく、連鎖的な「好中球細胞外トラップ」(NETs)によるものではないか、とも考えられるという。 「好中球は 白血球の一種で、通常は体内で盛んな遊走運動(アメーバ様運動)を行い、体内に侵入してきたウイルス、細菌や真菌などの病原体を食べて(貪食)、感染を防ごうとします。好中球は血管内外で安定している時には、丸い形で前後左右の区別を持たずに転がるように移動しています。病原体を認識すると、貪食するために走っていかなければなりません(遊走)。エムインクスという細胞内たんぱく質の働きで前後の軸を持つようになり、幅広し頭部や長細い尻尾が出来てから走り出します。ただし、敵の病原体があまりに多すぎる場合は、これを食べないで、自らの遺伝子情報であるデオキシリボ核酸(DNA)の網を投げて、捕らえ殺すことがあるのです。この網のことを好中球細胞外トラップ(NETs)と言います。NETsの主な成分は DNA 骨格で、ヒストン、好中球エラスターゼ、ミエロペルオキシダーゼなどの抗菌タンパク質が散りばめられています。なかでもヒストンはウイルスを殺す作用が強力です」  NETs は2つの方式で放出される。一つはDNAの放出時に細胞膜の破たんを伴う自爆型と、自らの命を守りつつ放出する生存型 NETsだ。 「自爆型放出は細胞膜を破綻させながら放出するので、細胞内から外へ大量の NETs を放出できると考えられます。一方、生存型のNETs放出では DNA成分等を小胞の中に詰めた状態で核から細胞膜まで輸送して、膜を通して小胞から細胞外へ放出するので、 NETs 放出後も細胞は生きていられます。自爆型放出には約 2 時間かかりますが、生存型では数十分で放出できることから、微生物やウイルスを認識して活性化した直後には生存型放出を選択し、時間経過とともに自爆型が主体へなることで、より多くの NETsを放出して防御を強化していると考えられます」  つまり、サイトカインストームが生じるほどウイルスの数が増えた、新型コロナウイルス感染症の重症期には自爆型のNETsが多く見られるということだ。 ■感染症で血栓ができる理由は感染した部位を封じ込めるため 「NETs はウイルスや細菌などの病原体だけでなく、血小板や赤血球も同時に捕獲します。血小板はNETsの形成を促進し、NETsに結合しているヒストンとくっついて血症板凝集を生じます。さらに、トロンビンなどの内因系凝固因子の活性化を促進して繊維状のタンパク質・フィブリンを形成します。その結果、血管内血栓を作るのです。敗血症性 DIC(播種性血管内凝固症候群=血管内に血栓ができやすくなったり、簡単に出血しやすくなったりする全身病) ができるのはこのためです。血管内血栓形成は、血流を悪化させ臓器障害の原因となりうることから、体に悪いことだと考えられがちですが、感染症の際には、感染している悪い部分を局所で血液を固めて封じ込めるための"肉を切らせて骨を断つ"生体防御機構の可能性ではないかとの見方もあります」  つまり、新型コロナウイルスの強い増殖能力は、体を守るために必要な自然免疫システムであるNETsの本来の役割をなくさせ、宿主たる人間を死に至らしめるのだ。

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最終更新:7/10(金) 9:26

日刊ゲンダイDIGITA

 

 

本当に「川崎病」を発症させるのか?欧米で相次ぎ報告【第2波に備えよ 新型コロナを徹底検証】

6/25(木) 9:26配信

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屋外で間隔を空けて授業を受ける子どもたち(C)LaPresse/共同通信イメージズ

 

【第2波に備えよ 新型コロナを徹底検証】#11  発症すれば冠動脈などの血管に炎症が起き大事に至ることがある川崎病。それに似た子供の症例が世界各地で報告されている。新型コロナ感染症流行後、イタリアでは症例数が通常の約30倍に急増しており、このウイルスが原因である可能性が報告された。子供へのリスクについては、他国にも重要な警告である。  イタリアの感染拡大の中心地となったベルガモでの川崎病に似た症状の子供の詳細な分析が、2020年5月14日の医学誌ランセットに掲載された。川崎病の症状を示した子供の数は、新型コロナ流行前の今年2月17日までの5年間で19人だったのに対し、今年2月18日から4月20日までで10人と、頻度でいえば30倍に増加した。  患者の平均年齢は、新型コロナ流行前の症例では3・0歳だったのに対し、流行後は7・5歳。さらにニューヨークと英イングランドでおよそ90人の症例が報告された。英国の患者では心臓超音波検査で冠動脈の炎症性変化や冠動脈瘤が認められている。5月初旬には、米国で200人以上の患者が出ている。  川崎病とは、1967年に川崎富作博士により発見された乳幼児が罹患する全身性の血管炎症候群のこと。発熱、両側眼球結膜の充血、いちご舌などの口唇・口腔所見、発疹、手足の硬性浮腫などの四肢末端の変化、非化膿性頚部リンパ節腫脹の6つが主要症状とされ、5症状以上を呈する場合に川崎病と診断される。その原因はいまだに明らかでないが、細菌あるいはウイルス感染、スーパー抗原、自己抗原などが原因として考えられている。  日本川崎病学会は5月7日段階で日本に新型コロナウイルス感染症に関連する川崎病の症例報告はないとしているが、5月26日に韓国で川崎病ショック症候群の子供2例が報告された。  川崎病になると、冠動脈などの血管炎や冠動脈瘤が生じることがあるが、細い血管の炎症が原因とみられる皮膚症状が、特に若い新型コロナ患者で出現するという報告がある。  また、新型コロナでは、心臓の筋肉のダメージを示す血液中トロポニンの値が高いと、死亡率が高くなるかもしれないことを示す報告もある。  東邦大学名誉教授の東丸貴信医師が言う。 「日本での報告がないのは、小児のPCR検査件数が極端に少ないせいかも知れません。ただし、川崎病の原因として旧型コロナウイルスとの関係も疑われたことがあるので、重症になった子供では川崎病の可能性や心臓血管の炎症について十分注意する必要があります。心臓や血管の超音波検査なども考慮する必要があるでしょう」  川崎病の血管を特殊な顕微鏡で細かく見ると、細胞免疫を担うTリンパ球の活性化や液性免疫を担う免疫グロブリンの出現が認められている。また、新型コロナウイルス感染症でも増加する炎症性サイトカインが血中で上昇することが確認されている。また、炎症で内皮細胞が傷み、サイトカインで血管内部が活性化されると、血小板は凝集を起こしやすくなる。血管壁にもくっつきやすくなり、血栓が容易にできる環境となる。冠動脈などの小さな血管が感染すれば川崎病のような血管炎が起き、冠動脈瘤や心筋梗塞が生じる可能性があろう。  また、脳血管でそういうことが起これば脳動脈の閉塞で脳梗塞となる可能性もある。注意が必要だ。

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最終更新:6/25(木) 9:26

 

 

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