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200504検査体制もトリアージ体制も、これが日本の実力か?

3月始めのころは、まだ許せたが、PCRをはじめとした検査体制の不備が、5月になっても一向に進化していないことには、呆れると言うよりは驚愕に値する。全体検査数が増えないのに、いまだに退院基準は「2回続けてのPCR陰性」と言う基準がまかり通っている。東京の自宅待機陽性者が600人を超えていると言うのに!滑稽でさえある。笑えはしないが。報道では、「簡易な抗原検査や抗体検査キット」の出現を伝えているが、実態は伝わってこない。これらの検査と臨床診断(症状、血液、CTなど)を組み合わせれば、そこから適切な(完璧ではなくとも)トリアージが行えるはずである。僕は、最初から、「無症状軽症、重症、重篤」の3分類には大反対であったが、その分類がつい最近まで使われていたし、一部では今も使われている。本来は、無症状、軽症、中等症、重症、重篤の5段階に分けてそれぞれの病院に振り分けるべきであろう。軽症でも、重症化を防ぐ治療をするなら、投薬が可能な病院としなければならない。8歩譲って、無症状の陽性者に限り、宿泊療養か自宅隔離で軽症でも症状が出れば病院に移動するという体制が理想であろう。現実的には、その理想にできうる限り近づけるという事になる。

そもそもの、世界に誇れる医療体制のはずの日本がなぜ今回のような脆弱性を見せてしまったのか?日本の医療は「国民皆保険制度によるフリーアクセス」が売り物であった。それは素晴らしいことだと僕も思う。しかし、そのままでは、大病院へ患者が集中するということで、最近では「かかりつけ医」を通して、大病院へという流れを模索し始め、各地域では「病診連携」と呼ばれる、診療所と大病院のスムーズな連携の試みがされるようになり、一部では成功を収め始めていた。
ところが、今回のようなパンデミックの感染症では、もっと広範囲の連携が必要になった。しかし、そこが日本の弱点を見せることになる。普通、大会社の社長なら、かなりの命令権を有する。しかし、日本では、大病院の院長はそれほど権限がない。各専門家は、大学医局との繋がりで派遣されていることが多い。(これ自体は、良い点も悪い点もあると僕は思っている)そのために、大病院の院長といっても、各専門家の部長などを完全にはまとめることができておらす、こう言った有事に俊敏なリーダーシップを発揮する土壌ができていない。
また、大病院間の連携もほとんどない。(平時にはそれはそれで、各病院の独立性が担保されるという良い点でもあった。)形式的な連絡会議は、大学の系列や、病院の経営母体の系列などで行われているが、あくまでも形式的だ。有事における役割分担など話し合われていないようだ。
今回のような事態では、「重症重篤専門病院」「コロナ専門病院(中等症)と(軽症以下)」の少なくとも3つくらいには分かれて役割分担すべきである。そうすると様々な医療資源(医師看護師など人も含めて)を有効活用できる。これがうまく機能するためには、大病院間の連携が機能し、病院内の指示系統がきちんと整っているということが条件だが、現状では無理な状況である。今後予想される秋や冬の第2、3波には、そういった準備が欠かせない。
そんな中、見事に任務をやり遂げたのは「自衛隊中央病院」である。100名以上のコロナ患者さんを治療し、その治療成績がいいのは当然で、院内感染が現時点で0と言うのは素晴らしい。

もう一つ、意外といえば失礼であるが、医師会の活躍だ。厚労省体質があまりにも硬化的だから、業を煮やしたのだろうか。もともと、医師会は横のつながりが強固だ。このことが幸いした。東京でも医師会は頼りになる存在として、検査体制なども拡充されようとしている。
 

以上の体制は、今後訪れるかもしれない、秋冬の第2波(大きな意味での)までに整えなければならない。政府、厚労省、大病院責任者一体となって、自己保身などに走らず、必死の思いで取り組んでほしい。それがダメなら総辞職して、熱意ある後任にリーダーの地位を譲るべきだ。 (寺下謙三、2020/5/4)

 

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