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内科

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自律神経失調症

2023年10月25日
(概説)
「自律神経失調症」という言葉は、耳にすることが多いのではないでしょうか?しかし「自律神経」とはなんですか?と聞かれるとはっきりとは説明つきにくいかもしれません。我々の身体の神経は全て脳から始まり、身体中に張り巡らされていて、筋肉を動かす命令を脳から端々まで運び、五感と呼ばれる感覚の信号を脳まで伝える役割があります。もう一つ重要な役割は、様々な臓器の働きの調整を行なうことで、こちらは自分の意思と関係なく自動的に働いているため「自律神経」と呼ばれます。活動を促進する「交感神経」系と抑制する「副交感神経」系が絶妙なコンビを組んで生命活動のバランスをとっています。これらの働きが、なんらかの原因でバランスが悪くなった状態を「自律神経失調症」と呼びます。本来は、病名というより「症候群」という位置づけにある言葉ですが、原因疾患が不明不詳である場合などに病名として使われることがあるようです。また、小児では、不登校の原因の一つともなる「起立性調節障害」と呼ばれる病態もありますが、詳細は他書に譲りたいと思います。
 
(原因と症状)
ストレスや過労、不眠などが原因となったり、女性の更年期障害などホルモンが関与するもの、またうつ病や神経症など他の精神疾患が原因となる場合があります。自律神経は様々な臓器と関与するので、症状も、めまい、動悸、ふらつき、のぼせ、頭痛、頭重感、肩こり、食欲不振、吐き気など多彩で、総称して不定愁訴と呼ばれます。
 
(診断)
原因となる疾患を検索することが重要です。専門医による面談の上、検査計画を立てることが大切です。
 
(治療)
原因疾患が判明した場合は、その治療を優先します。不安が強い場合や不眠などがある場合は薬物療法も勧められます。自律訓練法と呼ばれる、リラックスや自律神経を鍛えるという手法は治療や予防的にも全ての方にお勧めしたいです。
 
(生活上の注意)
普段からストレスを溜めない工夫を生活に取り入れ、規則正しい生活を心がけることが何よりです。前述の自律訓練法も日頃から実行することもお勧めです。不定愁訴が長く続くときはためらわず専門医を受診することも肝要です。v

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間質性肺炎

2023年01月04日
(概説)
間質性肺炎の病態については専門家の間でも全体像の把握や治療法などについても分かりやすく明確な解説は難しいものです。その前提のもとで、なるべく簡明に説明をしたいと思います。近年の新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、関連の呼吸器疾患として本症も注目を浴びています。ご存じのように、肺は酸素と二酸化炭素を入れ替えて、我々に新鮮な酸素を取り込んでくれる生命の根元となる役割を果たしてくれています。肺胞と呼ばれる小さな風船のような弾力性のある部分は、その酸素交換の最前線です。その壁にあたる部分が間質と呼ばれています。肺胞の中に病原菌などが入って起こるものが肺炎と呼ばれますが、間質に炎症が起こるものを間質性肺炎と呼びます。間質に炎症が起こり硬くなると様々な支障が起こります。間質が線維化して硬くなることから、肺線維症と同等に考えられていましたが、現在は分類上区別されています。これらの基本を押さえて、簡単に解説してみます。
 
(原因)
原因不明な「特発性間質性肺炎」が多くを占めますが、喫煙やカビなどを含めた異物の吸入、感染、アレルギー、自己免疫疾患、薬物の副作用などが原因となることも分かっています。
 
(症状)
咳(痰を伴わないことが多い)、呼吸困難が主な症状です。長期にわたってなかなか治らないという慢性の経過が多いですが、急激に悪化することもあります。
 
(診断)
類似の他の肺疾患との鑑別をすることが大切です。専門医による特徴的な胸部の聴診所見や、バチ指と呼ばれる指の変形なども診断のきっかけになります。CTなどによる特徴的な画像所見も重要です。この画像所見が新型コロナ肺炎の画像所見と似ていることが注目されました。
 
(治療)
特効薬は存在しないのですが、原因や病状によりステロイドや免疫抑制剤を使用します。この病気の専門チームの助言のもとに行うことが必要です。
 
(生活上の注意など)
一般的な健康管理である規則的な生活、運動習慣が大切ですが、禁煙することは言うまでもありません。風邪などがきっかけで悪化することがありますので、インフルエンザや肺炎球菌ワクチンなどの接種は推奨されます。新型コロナウイルス感染症の重症化にも関係するとも言われています。

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秋の花粉症

2022年10月25日
(概説)
花粉症とは、様々な種類の花粉が原因(抗原)となって起こる鼻や眼などの粘膜のアレルギーの総称です。日本ではスギやヒノキの花粉によるものが圧倒的に多く、春の病気と思われがちですが、夏にはイネ科のカモガヤ、秋にはブタクサやヨモギが原因の花粉症がみられます。また、2019年より、世界中を震撼させている新型コロナウイルス感染症、特に2022年現在流行しているオミクロン型の症状と酷似する場合も多く、患者にとっても医師にとっても対応に注意する必要があります。
 
(症状)
いわゆるアレルギー性鼻炎や結膜炎の症状が中心になります。具体的には、鼻水、くしゃみ、鼻詰まり、眼の痒み、充血、過剰な涙などの症状が主となります。喉がイガイガし、咳なども出ることがあります。軽症の新型コロナの症状に似ています。基本的には熱が出ることは少ないですが、アレルギー症状が強い時は微熱が出ることもあります。
 
(診断)
毎年の鼻炎発生状況などから、ほぼ診断がつきますが、血液によるIgE検査で、原因となる花粉(アレルゲン、抗原)が推定できます。皮膚テストや鼻粘膜の誘発テストなどもありますが、日常的には、症状で診断され、血液検査が補助的に使われるのが現状です。
 
(治療)
基本的には、原因となる花粉を避けることにつきます。花粉飛散時期の外出には、マスクや特殊なメガネの着用をし、帰宅時には衣服についた花粉を念入りに振り払うようにします。室内では花粉に対応した空気清浄機なども一定の効果があります。
毎年、花粉症を発症する場合は、原因となる花粉の発生時期の情報をつかむようにして、花粉飛散の初期段階から、抗アレルギー剤の服用や鼻への噴霧などを開始するようにすると、症状が軽く済むことが多いです。最近では、薬剤の選択肢の幅が増えてきていますので、医師とよく相談して治療法を決めることが大切です。スギ花粉症では、より根本的治療に近い減感作療法(アレルゲン免疫療法)なども、保険適用になり選択できます。
症状が強い場合は、鼻粘膜の外科的治療や分子標的治療薬の選択の可能性もありますが、専門医との相談が必須です。
 
(予防、生活上の注意)
大体が、毎年起こる持病のようなものですので、事前対策を心がけることが、快適に過ごすコツとも言えます。新型コロナとの鑑別も考えると初めてかかるクリニックの敷居も高く感じられるかもしれませんので、気軽に相談できるように、普段から持病のかかりつけ医を決めておくと安心です。

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隠れ脱水

2022年07月25日
(概説・原因)
「隠れ・・・」という病名の呼び名が通称としてしばしば使われることがあります。いずれも、本人や周囲の人が気づかずに、疾病が隠れている可能性があることを示します。「隠れ肥満」や「仮面高血圧」「糖尿病予備軍」なども同類の意味合いとなります。「隠れ脱水」は、本人が気づかないうちに、脱水状態が進み対策が遅れる危険性に警鐘を促す言葉として使われます。特に最近では、コロナ感染予防のためのマスク装着の常用により、こまめな水分補給が疎かになったり、喉の渇きを感じにくいことが原因となることも多いようで夏場以外でも注意が必要です。
汗や尿などとしての水分の喪失量よりも摂取量が少ない状態が長く続くと脱水症をきたします。体内水分の減少は体重の減少として現れますが、体重の3%程度の水分減少の軽傷から、9%を超える重症では命に関わってきます。
 
(症状)
喉の渇きや尿量の減少が見られます。また、一般的には血圧が低くなるためにふらつきやめまいなどの症状が出ます。脈拍数も増えることが多いです。胃腸の動きも悪くなり食欲も低下します。さらに脱水が進むと、痙攣や意識障害などの危険な症状が出現します。また、脱水で血液がいわゆるドロドロ状態となり、脳梗塞や心筋梗塞の合併症が起こる危険性も高くなります。
 
(診断)
医療機関を受診した場合は、血液検査や尿検査などで比較的に容易に診断がつきます。何よりも病状経過により速やかに判断することが重要です。
 
(治療・予防)
まずはこまめな水分補給を日頃から心がけることが肝要です。軽い脱水では、水分やスポーツ飲料の補給をゆっくり継続的に行うことで回避できます。しかし、本題の通り、ある程度病状が進むまで気がつかずに、ふらつきや軽度の意識障害が生じた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。点滴により、水分や電解質を補給することで、危険な状況への進行を防ぐことができます。
 
(生活上の注意)
前述の通り、日頃からこまめな水分補給を心がけましょう。また急激な体重減少があるときは、脱水症も念頭に置き、医師に相談してみましょう。

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頭痛

2022年01月05日
(概説)
頭痛は腹痛とともに、病院を訪れるきっかけとなる症状で頻度の高い症状です。そういった意味では「ありふれた症状」の代表になりますが、時には重大な病気の兆候であったり、生活の質を落とす慢性の症状でもあります。いろいろな分類がありますが、基本的な分類として、いわゆる「頭痛もち」と表現される頭痛そのものが病気の本質である慢性的な頭痛を一次性頭痛と呼びます。それに対して、何らかのはっきりした原因疾患が存在する頭痛を、二次性頭痛と呼び分類しています。後者の原因疾患として、くも膜下出血が急激に生命を脅かす危険な頭痛として有名です。今まで経験したことのない強烈な頭痛が出現するので、救急搬送されることになります。他の原因疾患として、脳腫瘍や髄膜炎、急性緑内障などがありますが、解説は別の機会とします。ここでは頻度の高い一次性頭痛に関して説明をします。
 
(症状)
一次性頭痛の代表的なものには「緊張型頭痛」「片頭痛」「群発頭痛」の3つがあります。緊張型頭痛は、最も頻度が高く、「頭全体が締め付けられる」「半日から数日間、もしくは毎日続く」「首のはりや肩こりを伴う」「吐き気、嘔吐などはない」「ストレスや過労などが誘因となる」などの特徴があります。「片頭痛」は、血管性の頭痛で「ズキンズキンと拍動性で強い痛み」「片側の場合が多いが時に両側性」「吐き気や嘔吐を伴う」「体動により憎悪しやすく」「光や騒音が誘因となったり」「視野に歯車のようなものが見える(閃輝暗点)などの前駆症状」などの特徴があります。女性が男性より数倍多く、月経の前後に起こりやすいようです。一方、「群発頭痛」は男性に多く、痛みの様子は片頭痛に似ているが、眼の充血や鼻水などのアレルギー症状などを伴うことが多いようです。一回の症状出現は、数分から数時間ですが、数週間から数ヶ月同じ症状が繰り返されます。一旦治っても数ヶ月、数年後に一連の発作時期がくることから「群発」と呼ばれています。これらの頭痛は、命に別状はありませんが、生活の質を落としますので治療が必要です。
 
(治療)
緊張型頭痛は、過労を避け、規則正しい生活と日頃の運動が大切ですが、しつこい痛みに対しては消炎鎮痛剤や筋弛緩剤などの比較的緩やかな薬で対応します。片頭痛は、急性期には、軽度の場合は消炎鎮痛剤で様子を見ますが、中等度以上の場合は、血管収縮作用のある薬剤を使いますので、専門医による慎重な薬の匙加減が重要となります。また、発症の頻度や症状の重い場合は、予防的な薬を普段から継続的に服用することになります。群発頭痛にも片頭痛の場合と同様の薬や時にはステロイドが効果的なこともあります。
(生活上の注意)
このように「頭痛」といっても、多様な原因があり、症状も多彩ですので、「頭痛もち」といってもよいような方は、専門医と十分に相談し、重大な病気が隠れていないかをきちんと鑑別し、生活の質を取り戻すために治療を諦めずに根気よく続けましょう。

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)

2021年10月26日
(概説)
新聞やテレビなどで耳にすることも多く、比較的一般人にとっても馴染みの深い病名ではないでしょうか。Sleep Apnea Syndromeの頭文字をとって「SAS」と略されて呼ばれることも多いようです。「うちの主人ですが、夜中にいびきがうるさいと思っていたら、急にいびきが途絶えて呼吸が止まっているのです。うるさいやら、心配するやらで寝不足気味になっています」というようなお話をよく聞きます。一方、いびきをかいてよく寝ているように見える本人は、「よく眠れなくて、昼間眠くて仕方ないんです」とぼやいています。全く傍迷惑な話なのですが、実はいろいろな病気のリスクがありますので、きちんと診断する必要があります。本疾患を示す典型的なお話にて概説にかえさせていただきます。
 
(症状)
概説に示しましたように、普段、寝室を共にする方が無呼吸に気づくことで見つかることが多いようです。また、起床時の頭痛や十分な時間睡眠をとっているにもかかわらず日中の眠気やだるさがあります。激しいいびきも本疾患の原因でもあり、結果としても生じることが多いようです。
 
(診断)
医師の指示により各種睡眠時モニター検査を行い診断されることになります。 SASの多くは、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と呼ばれるもので、肥満、男性、加齢などがリスク要因となります。また、心不全や脳血管障害が引き金となる中枢性睡眠時無呼吸(CSA)と呼ばれる比較的重症度の高いものもありますので、専門医による鑑別診断が大切となります。
 
(治療)
CPAPと呼ばれる持続的に陽圧をかけるマスクを装着する治療が標準治療となりますが、軽症であったり、CPAPの装着が困難な場合は、まずはマウスピースを使って改善するか様子を見ます。肥満がある患者さんには、減量の指導をします。生活習慣病などの基礎疾患がないかどうか調べておくことも大切です。

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風疹

2021年04月26日
(概説)
風疹ウイルスによる感染症で、現時点では5類感染症に分類され、医師は、診断後直ちに保健所への届け出をする義務があります。俗称として「三日麻疹(麻疹)」とも呼ばれ、比較的軽症であることがほとんどですが、妊娠初期(20週程度まで)に妊婦が感染すると胎児に重篤な障害がかなりの確率で起こります(専門家の間では「CRS」と略して呼ばれます)。
 
(症状)
発熱、発疹、頚部近辺のリンパ節腫脹が主な症状です。発疹は顔から始まり、全身に広がりますが、「三日麻疹」と言われるように、たいていは3日ほどで治ります。潜伏期は2〜3週間です。上記の胎児の障害には、白内障などの眼疾患、難聴、心臓疾患などの先天性疾患がかなりの高率(50%程度以上)で生じます。
 
(診断)
特徴的な発疹と症状経過で診断が推定されますが、今後のCRS対策のためにも確定診断が望まれますので、血液による抗体検査や、喉のぬぐい液などのPCR検査(新型コロナ流行で、多くの皆さんが知るところとなった検査ですね)により確定診断をつけておくことも大切でしょう。
 
(治療)
風疹ウイルスに効果的な薬物は現時点では存在しないため、対症療法が主になります。高熱などが辛い場合は、いわゆる感冒の時に使われるような鎮痛解熱剤を用います。
 
(予防)
特異的に効果のある治療法がないことと、上記の「CRS」のリスクがあるため、ワクチンによる予防が推奨されます。今後妊娠の可能性のある女性で、風疹罹患歴がなく、ワクチンも接種していないか、接種が1回のみという不完全の場合は、ワクチン接種を受けることが強く勧められています。その場合、ワクチンの接種前後で妊娠していないことを確認の上、2回の接種が望ましいとされています。また、男性も感染源となりうる可能性に配慮し、これから子供を作る世代の方は男女を問わず、ワクチン接種を検討しましょう。日本では誕生年度により、小児の頃のワクチンの接種状況が異なりますので、血液検査で抗体の有無を調べ、抗体が基準より低い場合はワクチン接種を受けることをお勧めします。飛沫感染、接触感染がメインですので、感染拡大防止の観点からも症状があるうちは人との接触を避けましょう。
 

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高血圧(2)

2021年01月04日
(概説)
血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の壁を圧迫する力のことで、心臓の収縮時にその圧力が最も高くなり、収縮期血圧(最高血圧、上の血圧などとも呼ばれます)、拡張時に圧力が最も低くなり、拡張期血圧(最低血圧、下の血圧)と呼びます。カルテなどには、二つをまとめて「130/80」のように記載されます。この二つの血圧がある程度以上高い状態(高血圧)が長年続くと、動脈の壁が厚くなったり硬くなったりし、動脈硬化と呼ばれる状態になりやすいということがわかっています。高血圧は、生活習慣病の代表格でもあり、現在日本では4300万人いるとされ、治療を受けている人はその6割以下だと推計されています。また、原因が特定されない本態性高血圧と呼ばれるものが9割とされています。
 
 
(症状)
特有の症状がないことがむしろ特徴といえます。たまに頭痛や肩こりなどを訴える方もいますが、時間をかけて動脈血管を傷害することが一番の問題点であり、心筋梗塞や脳卒中の原因となります。糖尿病などと共に、「静かなる殺し屋」と呼ばれる所以でもあります。
 
 
(診断)
上記のように、症状がないことが多いので、日頃から血圧を測定する習慣が大切です。一昔前は、医師の診察時の血圧により、診断を行っていましたが、今では家庭内血圧などを測定し、普段より診察時に高くなる「白衣高血圧」や、反対に診察時より普段の日常で高くなる「仮面高血圧」などを含む日内変動を考慮した診断がされるようになりました。また、判定基準値は、この数十年何度も改定され、2019年度の日本高血圧学会によるガイドラインでは、診察時血圧が140/90mmHg、家庭内血圧が135/85mmHgとなっています。糖尿病など他の病気が存在する場合や年齢などにより、細分化された基準値が設けられています。
 
 
(治療)
他の生活習慣病と同様に、禁煙、肥満解消、適切な運動、減塩、節酒などの生活習慣の見直しと改善が大切なことは言うまでもありません。これらを守っても十分な降圧が見られない場合は、薬物療法が必要となります。現在は薬物の選択肢が豊富に揃い、副作用が少なく利便性の高い服薬治療が可能となってきていますので、長い目で、専門医やかかりつけ医の指導を受けることをお勧めします。
 
 
(生活上の注意)
繰り返しになりますが、軽症のうちは症状に乏しいので、自らの生活習慣の見直しと定期的な血圧測定の習慣が肝要です。
 
 
(推薦資料)
日本高血圧学会編集(一般向け高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子)
https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf

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血栓症

2020年01月06日

(概説)<今回は内容の関係上、概説のみとなります>

「血栓症」という言葉は、一つの病名を指すのではなく、身体に生じうる一つの病態を示す言葉です。医学を勉強するときも他の分野と同じく、総論的なことをきちんと理解しておくと、各論の理解がたやすくなります。この機会に「血栓症」の勘所を理解しましょう。

「血栓」とは、その字のごとく「血液が血管の中で固まり、血管を栓のように塞ぐようになる状態」という意味合いです。動脈にも静脈にも生じ、身体のいろいろな場所に発生し得ます。主なものに、脳の動脈に生じる「脳血栓」、心臓に起こると「心筋梗塞や狭心症」、下肢に起こりやすい「深部静脈血栓症」(これは「エコノミー症候群」として有名ですね)、肝臓の重要な血管に起こる「門脈血栓症」など、いろいろな「血栓症」があります。

血液は、血管の中ではサラサラとして固まってはいけないのですが、血管が何らかの理由で破れて、血液が血管外に漏れ出た場合は、なるべく早く凝固し、それ以上の出血を防がないといけません。つまり血液は、この相反する二つの役割を状況に応じて使い分けなければならないのです。その仕組みが、「血液の凝固系」と呼ばれるもので、生命維持システムの基本の一つでもあり、医学生を悩ますような、とても複雑な仕組みを通して我々の身体を守ってくれています。

通常は、血液はそのようにうまく機能してくれていますが、生活習慣病や加齢、長時間の同じ姿勢などの要因で、凝固系のバランスが悪くなると、血管内で血液が固まり小さな血栓が生じ、それが次第に増大する悪循環に陥り、血管の狭窄や閉塞が起こり、その関連の臓器障害が発生します。また小さな血栓が、血管壁から剥がれて、血流に乗って流れ、脳や肺など離れた重要な臓器への血管を詰まらせることがあります。そういった場合を特別に「塞栓」と呼びます。

血栓症の予防には、凝固系のバランスを乱す原因ともなる高血圧、脂質異常症など生活習慣病の改善がまずは肝要です。場合により「血液サラサラの薬」などと呼ばれる一連の抗凝固薬が処方されます。血管が詰まった場合の治療は、その部位により異なってきます。

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起立性調節障害

2019年10月28日

(概説)

思春期に好発する自律神経機能不全であり、立ちくらみ、失神、朝起き不良、倦怠感、無気力、動悸、頭痛、食欲不振、顔色が悪いなどが主な症状です。以前は、思春期の一時的な自律神経障害や低血圧気味の体質、という程度に考えられていましたが、最近では重症型も存在し、不登校や引きこもりの原因の一つでもあるとのことが明らかになり、本疾患の重要性が唱えられています。学会による診断治療ガイドラインも刷新されるようになり、最近では2015年に改定されています。世界的にみても、特に日本での研究が進んでいるようです。専門家の間で起立性調節障害は、その英語の頭文字をとって「OD」と略されて使われます。

(原因、症状、診断)

根本的原因は不明ですが、身体的要因と心身的要因が重なり合っていると考えられています。軽症も含めると中学生の1割程度が本症に含まれるとの報告もあります。診断は、まず原因となる他の身体的疾患を除外することが大切です。その上で、上記の主な症状が3つ以上か、2つの強い症状があれば本疾患を疑います。その上で、「新起立試験」と呼ばれる検査を行い、4つのサブタイプ(起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、神経調節性失神、遷延性起立性低血圧)の判定を行います。

(治療)

家族や学校からは、怠けなど気持ちの問題と解釈されやすく、本人と保護者の関係性が悪くなることが多いので、きちんと診断を行い、本疾患であるならば身体的病気であることの理解を深めながら接することが大切です。起立時の動作はゆっくりなどの注意事項や十分な水分や塩分の適切な摂取、定期的な運動(歩行)や十分な睡眠などが大切なことは言うまでもありません。

それでも改善されない場合は血圧を調整するような薬物を使用します。認知行動療法などの心理療法も有効です。

(生活上の注意)

保護者や学校関係者が本疾患のことを十分に理解し、慎重に見守ってあげることが何よりも重要です。

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膵炎

2019年07月22日

(概説)

膵臓は、様々な消化酵素やインスリンを作る大切な臓器です。炎症性疾患の多くには、「急性」と「慢性」が存在します。それらの多くは、急性で発症し、その一部が慢性化するという関係性ですが、膵炎の場合は、急性膵炎と慢性膵炎は別個の疾患と理解した方がわかりやすいかもしれません。とは言っても、急性膵炎の1〜2割は、慢性膵炎に移行しますし、慢性膵炎が経過中に急性化することもあります。急性膵炎は、「急性腹症」と呼ばれる「急激な腹痛で始まり、放置すると命に関わる病気群」の代表の一つです。一方、慢性膵炎は「早期慢性膵炎」という考えが提唱され、発症から慢性型という生活習慣病に近い予備軍のような病態もあります。

(原因)

急性膵炎では、アルコール性と胆石性が2大原因で、男性は前者、女性は後者が多いことが分かっています。慢性膵炎もアルコール性と非アルコール性に分かれ、アルコールの過飲が予防医学上重要であることには変わりません。脂質異常症も原因の一つと考えられています。

(症状)

急性では、激しい腹痛や背部痛、吐き気、嘔吐が中心となります。慢性では、反復する腹痛を主症状に、進行すると消化吸収障害による下痢やインスリン不足による糖尿病などの症状が出現します。

(診断)

原因不明の急激かつ激しい腹痛がある場合は、虫垂炎など他の病気も疑いつつ本疾患を念頭に血液検査、画像検査を行います。本疾患が疑われた場合は、急性膵炎を治療できる専門医がいる病院への早期転送が重要な判断となります。慢性の場合は、血液検査や画像検査を含めた綿密な経過観察が必要です。

(治療)

急性膵炎では、入院絶食の上、痛みのコントロールと補液をはじめ外科治療に至るまで専門的な集中医療が必要になります。慢性膵炎では、薬物治療と食事療法が中心になります。

(予防)

アルコールの過飲を避けることがまず肝要です。原因不明な腹痛を繰り返す場合は専門医に相談しましょう。

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ヒトメタニューモウイルス

2019年01月07日

(概説)

小児の感冒の原因ウイルスの一つとして、2001年にオランダで発見されました。1度の感染では免疫ができにくく、何度か繰り返し感染し、10歳ごろまでにはほぼ全員が感染すると言われています。年を経て感染を繰り返すうちに、症状が軽症化すると言われていますが、乳幼児や高齢者、免疫が低下した大人が感染し重症化することもあり注目されています。

3月から6月ごろに流行することも特徴です。咳などの飛沫感染とウイルスのついた手などからの接触感染が主な感染経路となります。小児の感冒の代表的な原因ウイルスには他に、RSウイルス、パラインフルエンザウイルスなどがよく知られています。

(症状)

咳、鼻水、発熱など普通の感冒の症状が主で数日から1週間で軽快しますが、重症化すると肺炎や細気管支炎に移行し、高熱、喘息のようなゼーゼーという咳、呼吸困難などが出現します。また、子供の場合、中耳炎を合併しやすいことも特徴です。

(診断)

インフルエンザと同様に、鼻の粘膜を綿棒で拭いとった粘液から検査することにより診断できます(2014年より条件付き保険適用)。特別な治療法がないので、軽症の場合は、保険適用の観点から検査の必要性を医師が判断することになります。

(治療)

他のウイルスによる感冒と同様に、このウイルスへの特別な治療薬はありません。症状を緩和させるための薬と栄養・安静・水分補給などの生活上の指導が中心になります。長引く場合は、細菌感染の合併も考え、抗菌剤が必要となることもあります。また、高熱が続いたり激しい咳が治まらなかったりなどで重症化の恐れがある時は、綿密な観察と迅速な治療が必要になります。

(予防などの注意点)

潜伏期は3〜5日程度です。上記の感染経路から、インフルエンザや他のウイルスによる感冒と同じく、手洗いやマスクの着用が予防上大切となります。

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脂質異常症

2018年10月23日

(概説)

高血圧、糖尿病などとともに、動脈硬化症の原因となる疾患の代表的な病態の一つです。以前は高脂血症と呼ばれていましたが、一部の指標が低くなる異常もあることから、我が国では2007年7月より脂質異常症と呼ばれるようになりました。血液中の脂質が高すぎたり低すぎたりする状態は、長い目で見て動脈硬化を促進させることが分かり、それらを一つの病態と考え本疾患が定義されています。

(症状)

本疾患自体の自覚症状はほとんどありません。本疾患が原因となって、動脈硬化が進んだ結果、心筋梗塞や脳梗塞などが起こるとそれぞれの症状が出現します。

(診断)

自覚症状がないために、定期検診や他の病気で血液を調べて初めて診断がつく場合がほとんどです。代表的病態としては、高LDLコレステロール(悪玉コレステロール)血症<140mg/dl以上>、高トリグリセリド(中性脂肪)血症<150mg/dl以上>、低HDL(善玉コレステロール)血症<40mg/dl以下>があり、実際にはそれらが複合して存在します。なお、<>内のそれぞれの基準的数値は、現時点での学会基準値であり、年齢、性別、他の合併疾患などにより、治療目標が異なってくるのが実情ですので、おおよその目安として記憶ください。

(治療)

食事療法、運動療法に加え、禁煙、肥満改善などの生活改善が基本となります。数ヶ月以上の生活改善にもかかわらず、血液の数値の改善が見られない場合、その他の合併疾患も含め今後のリスクを考慮した薬物療法が勧められます。最近では、薬物の選択肢も豊富にあります。最小限の副作用で納得した治療を選択することが肝要です。

(生活上の注意点など)

何よりも、生活改善が優先されます。本症だけでは、ほとんど自覚症状がないために、定期的な検査とその結果に基づいた対策を十分に納得理解することが、長い目でみて治療を続けるための心の支えとなります。私の造語ですが「知識は最強のワクチン」です。

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右心不全

2018年05月17日

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NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №117

 カルテ68 <循環器内科・内科> 右心不全

 2018/4/24
 

 



(総論、原因)

心臓は、右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋に分かれています。全身から心臓に戻ってくる血液は、右心房、右心室を経て、肺に送られ、酸素を取り入れ左心房、左心室を経て、再び全身に送られます。この4つの部屋のうち、右側、特に右心室の機能が低下している状態を右心不全を呼びます。一つの病態を指し、肺疾患や弁疾患などにより、肺高血圧という状態になることが原因であることが多いです。多くは慢性の経過をたどりますが、急性肺塞栓症(エコノミー症候群で有名)などにより急激に右心不全症をきたし、致命的になることもあります。
 

(症状)

下肢に多く見られる浮腫、腹水貯留による腹部膨満感、全身倦怠感、悪心、息切れなどが慢性的、進行性に見られます。肺塞栓症の場合は、いきなりショック状態となり、意識の低下、呼吸困難など致命的な状況となります。
 

(診断)

専門家による病状聴取と特徴的な理学的初見(頸動脈の怒張、肝臓の腫大、右室拍動の亢進、下肢の浮腫など)、血液のBNPの上昇などにより、本病態を推定し、その原因探索のための検査が組まれます。
 

(治療)

安静、酸素吸入、減塩などを行いながら、重症度に応じて、利尿薬、強心剤などの薬物療法を考慮します。重症の場合は、体外循環による補助が必要になることもあります。原因疾患がはっきりしている場合は、心不全に対処しながら、その治療を行います。
 

(生活上の注意)

原因となる疾患を持病としている場合は、心不全の初期の段階で治療が開始できるように定期的な検査が望まれます。また、エコノミー症候群で有名になった肺塞栓症予防の注意事項は、飛行機搭乗時のみならず、足を動かさない状態が長時間続くときなどには、普段から励行するように心がけましょう。

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口内炎

2018年01月04日

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №116

 カルテ67 <歯科口腔外科・皮膚科・内科> 口内炎

 2018/1/4(木)

 

 



(総論)

口の中の粘膜に炎症が起こった状態の総称が口内炎です。多くの方が、一度は経験しているのではないでしょうか?口の中の傷や炎症は、唾液の作用により修復されますので、大抵の場合、市販薬や自然経過で治ってしまう場合が多いので、軽く考えられがちです。しかし、ヘルペスなどのように治療が必要なウイルスが原因の場合や全身の病気として口内炎が発生する場合があるので、2週間以上も治らない場合などは専門医に相談した方がいいでしょう。

(原因)

ウイルス、真菌、細菌などの感染性、アレルギー性、自己免疫性、悪性腫瘍などのほか、貧血、ベーチェット病、エイズなど全身性の病気の症状の一つとして発生する場合もあります。また、原因が特定できないまま治癒していく場合も多いのが現状です。

(症状)

最初は、粘膜が発赤するカタル性口内炎の状態になり、さらに粘膜が腫脹してびらん性口内炎に進み、中央が凹んで潰瘍になった状態をアフタ性口内炎と呼び、最もよくみられる状態です。食べ物がしみることが最大の症状です。

(診断)

経験豊かな専門医による視診と経過観察だけで済む場合が多いのですが、難治性の場合は、組織生検や菌培養などによる検査が必要なこともあります。また、全身性の病気の検索が必要な場合もあります。

(治療)

口腔内を清潔にし、刺激性のある香辛料などを避けるようにします。ステロイド含有の軟膏を使用すると治癒が早まります。特殊な原因による場合や、全身性の疾患の場合は、それぞれの治療を優先させます。

(生活上の注意)

いずれの原因にしろ、体の免疫力が低下している場合に発生しますので、規則的な生活、十分な栄養という日頃の基本的な健康管理が肝要です。歯磨きやうがいを励行し口腔内を清潔に保つことも大切でしょう。

 

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人畜共通感染症

2017年08月08日

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №114

 カルテ65 <内科・感染症内科> 人畜共通感染症

 2017/7/24(月)

 

 



〇総論〇

WHOの定義によると「脊椎動物と人との間で自然に移行しうるすべての感染性疾患」となっている。動物は家畜のみではないため、人獣共通感染症と呼ばれる傾向にあります。動物から人へ、だけでなく人から動物へ感染する場合もあります。原因となる病原体の種類は数百種類もありますが、感染の大量発生の可能性や重篤になりやすいという意味で、鳥インフルエンザなどが最近注目されています。近年では、SARSやエボラ出血熱や狂牛病などが世間を騒がせたことは記憶に新しいですし、ペストのように歴史に名を残す怖い病気もあります。

〇主な病原体〇

細菌:結核、サルモネラ、ペストなど
ウイルス:狂犬病、SARS、日本脳炎、鳥インフルエンザなど
寄生虫:アニサキス、マラリア、アメーバ赤痢、マダニなど
真菌:カンジダ、アスペルギルスなど
プリオン:狂牛病(クロイツフェルトヤコブ病)など
その他、クラミジアやリケッチア(猫ひっかき病)などに分類される病原体があります

〇感染経路〇

感染動物と直接接触、糞や尿などからの間接的接触、ノミや蚊などにより媒介される場合などがあります。

〇予防、生活上の注意〇

多種多様な病原体、感染経路があるために、確実な予防は一筋縄ではいきません。流行の兆しなどがある場合に、ニュースや政府、保健所などから発信される勧告に注意するように心がけることです。海外渡航の場合は情報収集を行い、推奨されている予防接種などをきちんと受けることが不可欠です。

 

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秋バテ

2016年07月27日

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

カルテ58 <内科>

2015/8

 


(総論)

夏バテに呼応して秋口に体調を乱すことを「秋バテ」といつしか呼ばれるようにになりました。いずれも正式な医学病名ではありませんが、よくみられる病状を表している言葉でもあります。夏バテは暑さによる体温調節の乱れや交感神経の乱れから特に胃腸障害や熱中症という形で現れます。秋バテは、秋口の気候の変化に順応できずにさまざまな体調不良を感じる状態を指します。

(原因)

さまざまな理由が考えられますが、夏バテにより体力が弱っていることとと、急激な気温の変化や気圧の変化(主に低下)により自律神経がスムーズに対応できずに不調をきたすことが原因と考えられています。また学生は夏休みであったり、会社なども夏休みモードであったのが、本格的に稼働し、秋は一年中でも活動が活発な時期であり、そういった環境の変化にもついていけないことも原因の一つと考えられるでしょう。

(症状)

夏バテは食欲低下を中心とした胃腸障害やだるさ、疲労感が中心となりますが、秋バテも同様な症状があります。それに加えて、自律神経の乱れによる、めまいやのぼせ、不眠、気力低下など多彩な症状がでます。

(診断)

他のはっきりした疾患による症状でないかどうかの鑑別診断が大切になります。安易に「夏バテ」「秋バテ」で片付けてしまうと、ガンや糖尿病など重大な病気が隠れていることを見落とすことがありますので、じっくりと経過を見てくれる医師と相談しながら様子を見ることが大切です。

(治療)

症状が進まないうちに、十分な休養と栄養補給を中心に養生をすることが大切です。放置していると胃腸障害の悪化や肺炎など本格的な病気に発展してしまうこともあります。

(生活上の注意)

基本的なな健康管理として、快食快眠快便を保つように心がけ、暴飲暴食、夜更かし運動不足に特に留意することが大切です。いつもとは違った症状が長く続く場合は早めにかかりつけ医に相談しましょう。

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紫外線アレルギー

2016年05月10日

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №109

 カルテ60  内科、皮膚科、アレルギー科

 2016/4/25

 

 


〇総論〇

アレルギーは、人間が外界の異物から身を守る仕組みである免疫反応が過剰に出現した状態であると理解しても大きな間違いではありません。抗生物質や造影剤などの薬物アレルギーや蕎麦アレルギーや卵アレルギーなどの食物アレルギーや花粉アレルギー(花粉症)などみなさんご存知だと思います。アレルギーの原因として、寒暖や光線や運動などもあり、それらを総称して物理アレルギーと呼んでいます。そのうちの光線アレルギーを日光アレルギーや紫外線アレルギーと呼ぶこともあります。

〇原因〇

はっきりしたメカニズムは分かっていませんが、原因となる物理的刺激が神経の伝達路を介して免疫に関する細胞(肥満細胞)を刺激して活性化を促すことによりヒスタミンやロイコトリエンといった物質を過剰に分泌し、いろいろな症状を起こします。またある種の薬剤と光線の症状作用により起こることもあります。

〇症状、診断、治療〇

かゆみを伴ったじんま疹様の発疹や皮膚が腫れてむくむというような典型的な症状の発現の仕方から診断がつきます。また服用している薬剤とも関連することがあり、その場合は、一時的に服用を中断すると症状が軽減することにより診断がつきます。日光は完全に避けることはできませんので、なるべく日光に長時間さらされないような行動パターンや服装を選びつつ、逆に、短時間の日光浴などにより耐性をつけていくことも試みられています。薬剤としては、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬などを用います。

〇対策〇

早めに診断をつけて、アレルギーの悪循環を断ち切ることが大切です。疲れなども症状に影響するようですので、暴飲暴食、睡眠不足などにも留意しましょう。

 

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男性の冷え性

2015年11月24日

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NKH「健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報

カルテ59 診療科 東洋医学科、内科

2015/11

 


(概説)

「冷え性」は、いわゆる病名ではなく、手足を中心に体の一部に冷たい感じが持続的に生じている状態を総称して使われている言葉です。女性の多くの人は何らかの冷え性に悩んでいるとも言われ、東洋医学の考えでは、大切な症状の一つです。最近では、男性にも同様の症状を感じる人が多いことが報告されるようになりました。

(原因)

冷え性を理解するためには、体温のメカニズムを理解しないとなりません。我々人間は、体温を36度から37度程度に保つ必要があるために、熱を作ったり(産熱)、熱を逃がしたり(放熱)する仕組みを持っています。産熱の代表が筋肉で、放熱の代表が皮膚からの熱の放出です。体が冷えた場合、内臓の保温のために手足への熱の供給を減らすために特に四肢末端に冷えを感じることが多いのです。女性は男性に比べて筋肉が少なく冷えたら温まりにくい性質の脂肪が多いために、冷え性が多いとも言われますが、その他ホルモンの作用など複雑なメカニズムがあると思われます。男性にも冷えが増えてきた理由に、筋肉量の減少に加えて、ストレスや喫煙なども原因の一つでしょう。

(対策)

継続的な運動で筋肉量を増やすことは根本的に良いことですが、運動により体の末端の血流が改善し、ストレス発散にもつながります。体を冷やさない服装やゆったりとした入浴なども心がけたいものです。筋肉量を増やすためにも、十分なタンパク質を含んだ食材を摂取するように心がけ、冷たい飲み物をとりすぎないことも大切です。

(注意)

四肢(特に足)が冷たくなる症状で、動脈が閉塞する怖い病気があります。足が冷えるのを単なる冷え性と決めつけずに、異常な冷えを感じた場合はまずは医師への受診をお勧めします。

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坐骨神経痛

2015年05月18日

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 NKH健康ライフ講座」日本機械保線株式会社社内報  №105

 カルテ56  内科、神経内科、整形外科、ペインクリニック

 2015/4/27

 

 


〇概要〇

「坐骨神経痛」は病名というよりも、いろいろな原因による症候名として使われています。本来は「なになにという病気が原因の坐骨神経痛」というふうに使用されるべきなのですが、原因が特定されない坐骨神経痛症状が出現することが多く、慣習として病名のように使われます。「神経痛」という言葉自体が症候名であり、痛みの起こる神経の部位により、「三叉神経痛」「肋間神経痛」などというふうに使用されます。

「坐骨神経痛」の原因としては、席椎間板ヘルニアや変形性脊椎症や外傷など脊椎の多彩な病気があります。まれに癌の骨転移などが原因のこともあります。原因が特定されるもの以外は「特発性」と呼ばれます。

〇症状〇

主に、椅子に座った時に座面と接するお尻の部位に痛みが発生することが多く、その痛みは太もも背部まで放散することもあります。またその部位をおさえると痛みがまします。ひどくなると歩行にも影響を及ぼします。立っているだけでも痛かったり、長時間座ることも辛くなります。

〇診断〇

特徴的な症状と、専門医の診察による圧痛の確認などで診断がつきますが、その原因の特定には、MRIなどによる脊椎の検査が必要となります。

〇治療〇

原因となる疾患が特定できれば、その治療が根本的であるのですが、痛みに対する対症療法も重要となります。最近では、単なる消炎鎮痛剤以外にも抗鬱剤や神経障害性疼痛専用の薬剤が使われるようになり、効果が確認されています。また、症状が強く持続する場合は、ペインクリニックや麻酔科、整形外科などで、対症療法の一環として、神経ブロックなども行われます。

〇生活上の注意〇

運動不足や肥満やストレスが、原因となったり、症状を悪化させる要因となることもありますので、医師と相談して生活習慣の改善にも努めましょう。

 

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