衣替えをした途端にまた寒くなるという意地悪な天気を恨んでいる方も多いと思いますが、体調はいかがでしょうか?
最近の新聞紙上で、医学や健康の話題が多くなりましたが、数週間前の日経新聞にベテランの癌専門医がコメントしていた記事をみて、私自身が歩んできた道は、それほど外れてはいなかったのだと慰められました。
「長らく癌の専門医として治療を続けていて、患者側から見てもっとも大切なことはきちんと相談できるということであるということに気づいた。十分相談して納得して治療を受けていれば、それから先の人生に大きな違いが出てくるからだ。結果がどうであれ、癌を受け入れて新たに前向きの人生を作っていけるからだ。」
といったような内容でした。具体的な先進的な治療の議論ではなく「相談が一番大切」と感慨深く述べられたその一文を読んで、私の今後の総括的活動の方向性の再確認ができた思いでした。
なぜなら、我々医師の最大の望みは、患者さんに最長の寿命と痛み苦しみからの解放にどれだけ貢献できるかですが、残念ながらいくら頑張ってもそれには限度があり、たかだか数%のお力になるために大変な努力を必要とします。経済産業の社会では、利益を倍にすることも10倍にすることも可能です。今や無限大に儲けようとしている企業(人)も少なからずいるように見受けられます。我々が医療の世界でもし数%の力になっているとしたら、それは大変なことだと自画自賛していましたが、患者側の気持ちになってみると(実際医師も人間で、度々患者側の気持ちを体験するのですが)、自分の大切な人が大病になると、どんなことをしてもいいから世界で一番の治療を受けさせて治してあげたいという気持ちになります。でも医学の限界は寿命の前では微々たる力しか持ち合わせていません。歴史的に見れば、私が生まれた昭和28年の男性の平均寿命は59歳ですから、現在までに20年も寿命が伸びました。また明治以前では結核で亡くなったりお産で亡くなったりするかたはかなりの数でしたが、今やゼロとはいきませんが、かなり少なくなりました。さらに有史以前に遡ったら、人間の寿命は倍です。これがすごいのか、たったの倍どまりなのか、ということです。他の分野と比べたら「何万年かけてたったの倍」となるでしょう。そして我々医師が、懸命に努力しても数%貢献できるかどうかの世界である事実は、人生を振り返り愕然ともします。
だからこそ、「納得できる医療を受ける」ということが最も大切なことで、特に重病時には、「信頼できる専門家に徹底的に相談して具体的な助言を受けて、十分納得してから医療を受ける」ことこそ最善の医療であるという私の持論の結論に至ったのです。そのための方法論はいくつもあるでしょう。その一つが、私が今まで培ってきました「主侍医システム」ですが、この部分だけに特化した、より完成したモデルを構築したいというのが、これからの課題です。
もう一つ、大切なことと考えているのが「一般人向けの医学教育」です。英会話はじめ、教養としてのカルチャー講座が各種充実しているのに、他の分野のインテリでさえ、教養としての医学知識があまりにも少ないのに驚くばかりです。その代わりにキワモノの医学情報がネットやテレビで氾濫していますから、真っ当な医療を評価できる力が不足して、当然の結果、納得できる医療を受けるチャンスが減ることになります。私は、中学、高校では無理でも、大学の必修科目ぐらいにはなって欲しいと考えています。
「教養医学塾テラ小屋」は、そのシンボルとして4月より復活開校しましたが、今後は企業の社員研修の一環としてプログラムを開発し広めていきたいと考えています。長らく主侍医を務めていますT社さんの社員教育を10年以上も続けさせていただいていますが、社員の方から喜んでいただいています。是非、皆様の会社でも採用いただければと願っています。
「テラ小屋」では、私が知識を振り絞って、面白く医学を学べるように工夫しております。契約ご本人様には無料でご招待しておりますので、お気軽にご参加ください。ご家族や秘書の方なども優待しておりますんどえお問い合わせください。
2014年5月 吉日 寺下 謙三
寒暖を繰り返しながらも、ようやく春の兆しを感じられるようになり、あっという間に桜が咲きましたが、みなさん体調はいかがでしょうか?インフルエンザの流行のピークも過ぎましたが、嫌な花粉の時期の到来でもあります。今年の花粉の飛散量は少ない感じですが、予防的服薬をしておいた方が楽だと思います。また、花粉症のみなさんにとっての朗報があります。もう既にご存知だと思いますが、今年6月から花粉症の根本的治療である服薬による減感作療法が保険認可される予定です。3年がかりの治療ですが、根本的治療で7割から9割の人に効果があるようです。耳鼻科やアレルギー内科で行なわれると思います。勿論、自費診療でも可能になりますので、一般のクリニックに通院する時間捻出が困難な方は、私どもの付属クリニックでも行なえるように準備する予定です。ご相談ください。
前回の通信でもお知らせいたしましたが、この春から事務所の体制が少しずつ変化していきます。「素晴らしい日本の医療の不足部分を補完して少しでも患者さんの満足度が向上して頂けることが我が事務所の使命」という事務所の任務の原点を意識しながら、私自身のライフワークの整理をしていきたいと考えています。最後まで自分の信念を曲げずに、荒波にも折れずに行動をしていきたいと考えています。
契約者の方の利便性に配慮して、試みとして一部保険診療を併用しましたが、私の見切りの判断が甘く、7年間も続けることになり、保険診療を長らくご利用いただいていた契約者の皆様には返ってご不便をかけることとなりました。保険診療もご利用いただいていた契約者の方がたに今後の対策を相談し、より安心できる体制をご納得いただきました。それどころか「その方がいいよ」「あなたのやること信用しているからお任せします」「他のクリニックやドクターでは出来ない相談役をお願いしているのだから」「出来るお手伝いはしますから、頑張って下さい」など有難い激励のお言葉で元気を頂きました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。
私どもの事務所は「利便性」や「特別扱い」の提供が売り物ではなく「徹底した正統派の総合的医療相談」と「より適切な専門医の紹介などを含めた具体的な医療決断の支援」による「医療分野の監督役」の提供がメインの売り物であると改めて自戒しております。そのため、大学病院や同クラスの総合病院のドクターにも治療方針で介入するという医師の世界の常識ではありえないことも行なっています。皆さん方からすれば「当然のこと」と感じられるでしょうが、隠れた努力と時には犠牲も必要であることをご理解いただけると、やりがいも一層湧いてきます。
「教養としての医学塾」も4月中旬よりの開塾です。契約者ご本人は無料にて受講できます。会社のスタッフやご家族のみなさんにも受講をお勧めいただければ嬉しく思います。
事務所スタッフの移動のお知らせですが、看護師の菊地、非常勤の田代ドクター矢澤ドクターが慶応大学の人事の都合により3月末で退任となりました。入れ替わって、保健師、看護師の森田理恵、東大心療内科所属の堀江武ドクターが、新しいスタッフとしてただ今、みなさま方全員のカルテをつぶさに拝見しまとめあげながらの研修中です。より手厚い体制のための準備が整いましたら順次ご案内して参ります。
また、順天堂の天野心臓外科医の師でもあり、日本の心臓外科の父とも言える「外山雅章先生」も、主侍医業務の必要性を感じ、独自のプライベイトドクター契約を進められていますが、双方の内容充実のために協力し合うことを約束して、今後の具体的な方法を協議することになりました。
2014年 4月 吉日 寺下 謙三
新年おめでとうございます。
と言っても、年が明けて1ヶ月が経とうとしています。ご挨拶が遅くなりました。
昨年暮れの主侍医通信と年賀状にて今年の意気込みをお話しましたが、主侍医業務のバージョンアップのための下準備を進めております。
主軸は「現行主侍医倶楽部は寺下医師顧問契約者ということを再認識し、皆様方の受ける医療の総監督として現場の指揮を執る」という私の役割をより強固に打ち出すための仕組みの再整備だと考えております。部分的にはご不便をかけるところもあるかとは思いますが、総合的には、当事務所でしかできないことをより充実したいと考えております。具体的な業務の改善点や変更点について、今考えている事をお話します。
まず、契約者の皆様の利便性を考えて2006年より一部採用しておりました保険診療部分を廃止し、元来のように自由診療と医学事務所の相談助言を中心とした医療の総合監督役に徹底する方針を固めました。保険を使っての処方箋の発行や簡単な血液検査を付属のクリニックで行なう利便性よりも、本来の相談助言業務に集中できる体制を整えるほうが皆様により貢献できると考えたからです。他の医療機関では出来ない事を補ってこそ、「素晴らしい日本の医療保険の不足部分を補完する事が我が事務所の使命」に値するとの原点に回帰します。
保険診療を廃止しても、自由診療のクリニックは維持しますので、薬の処方や血液検査は、保険適用にとらわれずに自由な判断で行なう事ができます。契約者の皆様には他のクリニックでは得られない利点があると考えております。定期的にお薬を処方している契約者の方には、ご不便をおかけすることもありますが、いくつかのメリットも同時に発生します。例えば糖尿病や高血圧、脂質異常症などそれぞれの専門家に今後診て頂く事により、より専門性の高い眼で診て頂くことになり、かつ今まで通り私が定期的に監督役としてフォローさせて頂く訳ですからダブルの眼でチェックできる事になります。多少不便ですが、質が上がるとご理解いただけると嬉しく思います。
既に治療担当かかりつけ医と私との2重体制で診させて頂いている契約者の方も多い状況で、当院で保険診療をしていたことにお気づきでない契約者の方もいらっしゃるくらいです。我々の仕事が野球やサッカーの監督役だとお話していますが、優秀な技術を持つ選手と全体のマネージをする監督とを明確に分けることにより質が向上するのは医療も同じです。
また主侍医契約者ご本人に限らせて頂きますが、生活習慣病などある程度決まった薬であれば、期間にとらわれず処方できますので、その方が便利だとお考えの方には当院での処方も可能です。契約者ご本人の場合、薬局で発生する処方料がなくなり、クリニックでの診察料、処方料を頂かない予定ですので、トータルでは以前と同等か薬の種類により廉価になることもあります。今後の処方などにつきましては個別にご相談ください。
7、8年前より、教え子の若いドクターたちの協力を得て、一部の契約者の方の定期的な診療やご相談に対応させて頂いて参りましたが、石澤ドクター、笹部ドクターなど数年この業務を続けることにより、皆様の信頼を得られるまでに育ってくるのですが、やはりメインに所属する医局の人事を中心に動かざるをえなく、これからという時に交代になりご迷惑をおかけしています。今回も、田代ドクター、矢澤ドクターともに4月からの医局人事での移動が決まり交代となります。後任の若いドクターも考えてはいますが、これを機会に契約者の皆様には私が定期的なフォローも直接させていただきたく考えています。また、夜間休日ドクターホットラインで登場させて頂いております、愚息の勇祐ドクターも5年目の研修となり、まだまだ修業を重ねないとなりませんが、実地医療の現場では私よりも活躍できるような部分も徐々に増えてきました。比較的急いで専門医の診察が必要な事態の場合は勇祐ドクターが勤務する病院の専門医にご紹介し、その診療のサポートを勇祐ドクターが担当し、定期的な面談診療や、あらかじめ時間をお約束し、じっくりと医療判断の相談助言をする部分は私が直接担当するという(まだまだ未成熟ですが)「父子鷹」体制を基本にスタッフが一丸となってサポートする決意を新たにしています。非常勤の若いドクターには「医療判断医」の研修という形を明確にして参加して頂く事になります。
上記の事も踏まえ「夜間休日ドクターホッとライン」も見直していく予定です。契約者の方から「やはりいつも顔見知りのドクターやスタッフと連絡が取れてこそ安心」という意見もいただいています。1秒を争う救急事態には救急車による救急病院での診療を最優先にして、その後の方針をじっくり相談していく事が我々の役割と考えています。そういう考えでいけば、24時間必ず電話を取れる体制を厳密かつ神経質にキープするよりも、皆さん方の情報を把握しているスタッフとおおむねいつでも連絡がとれるというくらいの体制を常にしいておくことの方が実際には有用かと考えています。一部のホッとライン契約者の方々ともご相談していますが、その方が有難いとの声が圧倒的です。こちらはしばらくお時間を頂きながら前向きに検討をして参ります。
30年間非常勤で勤務していました山王病院を3月末で辞める事になりました。山王病院の創始者の経営時代は週に3日も勤務し、胃のファイバースコープ(なんと2000例も行ないました)やエコー検査なども担当し、今でいう総合医を務め、最近では心療内科の専門外来を担当していました。最も高い予約料を頂いていましたが、予約が取れない心療内科とお叱り(お褒め?)のお言葉を頂いていました。ただ、じっくりお話を伺う心療内科はきちんとやればやるほど採算が取れない部門で、診療時間が延びては、いつも多くのスタッフの残業を強いることになり経営にたいへんご迷惑をおかけしていることは自覚しておりました。他科のドクターからは「メンタルで困った時のテラさん頼み」として重宝いただいておりましたが、山王病院での閉診に伴い、多くの患者さんからは、自由診療で構わないから飯田橋オフィスで診療を継続して欲しいとのご希望を頂き、有難くお受けすることにしています。その方々も含めて、自由診療のメリットを最大限にいかせる診療体制の構築を考えております。
今年は事務所設立30周年になりますが、設立当初は、新しい医療の仕組みの研究に取り組み、今でいう「電子カルテ」や「医師間の相互相談システム」などの研究開発を行っていました。最先端の医療情報システムの構築を探求していくうちに、「安心して良質な医療を受けるためには、侍医(監督)のようなプライベイトドクターを持つ事と、正しい医学的知識を持つ事」であるという現在まで続いている事務所の行動理念が成熟してきました。その理念の実践として「主侍医システム」があり、「教養のための健康医学塾」がありました。後者は折に触れ、期間限定で行なってきましたが、今回は4月を目指した復活開校の準備に入りました。1クラス20名までのテラ小屋的運営で、塾長として私が基本講座を受け持ちますが、現役の東大医学部の学生にも登場してもらいます。家庭の健康の担い手である主婦の方や、企業の役員の秘書の方や人事の方、教養として医学を学びたい方など幅広く参加できるプログラムを考えています。皆様の秘書業務をされている方にも是非入塾いただければと願っています。
今年の具体的な抱負を述べることにより、新年のご挨拶に代えさせて頂きます。
2014年 1月 吉日 寺下謙三
寒い寒い、いつまで寒いのかと思っていたら急に夏日が訪れてきました。みなさま気温の変化は大丈夫でしょうか。無理をしないことと変化に逆らわないことが一番です。不安な症状がある時はお気軽にご相談下さい。
このところホームページの改修作業を積極的に行なっていることをこの場をお借りしてお伝えしてまいりましたが、徐々にではありますが進んでおります。ホームページを愛読してくれている友人から「ホームページを拝見させて頂いていますが、数日たつと内容が変わっていますね。費用の仕組みも変わったような、、、、」と鋭いご指摘を受けております。3月末で今までの主侍医倶楽部の募集を一旦終了し、新しい形式を模索しているのですが、まだ試作段階でいろいろなご意見を聞きながら改訂作業を続けているからです。ホームページもまだそんなに見て頂く人は少ないだろうと油断して、改訂作業中も公開していましたので、そのような結果になりました。分かりやすいホームページを心掛けているのですが、ついつい、これもあれも載せたいと複雑化していきます。
この不確実な医療の世界で、またそれぞれが独自の信念を持って活動している専門医との連携を友好的に保ちながらかつメンバーの最大の医療利益を守っていく任務の緊張感だけは、一流の一線で活躍するメンバーの皆様方のそれと負けないくらいのものだと自負しているところですが、ビジネスモデルの作成という点では人後に落ちてしまうと日々反省しております。とにかくいいものは必ず需要がありなんとかなる、というぼやっとした信念だけで続けてきた「主侍医倶楽部」ですが、ビジネスモデルとしての確立がなされていないのに、内容の充実ばかりを日々追い続けてきたことが、今になり継続性のシビアな問題に直面しているものと反省しています。
一流の仕事を超一流のビジネスに仕立て上げた皆様のお力添えを期待する所以です。
これからの新しい世代の主侍医チームの活躍の場を作るために、ご助言ご協力をお願いいたします。
2013年6月 吉日 寺下 謙三
若干敷居が高く閉鎖的でもあった「主侍医倶楽部」の安心を多くの人に提供できるサービスモデルを作ることが目下の関心事です。
主侍医倶楽部の20数年の経験を活かして、ある程度内容を絞ることにより提供側の必要コストを下げ、また提供可能な人材の育成も実現性の高い仕組みを作ることを意識しています。
まずは友人知人の方に「主侍医倶楽部ベーシック(人間ドック管理型主侍医サービス)」への参加を呼び掛けます。また、既にお付き合いのある法人の方にSOSサービスの法人契約をお勧めします。いずれも内容からすると超リーズナブルだと自信を持っています。これらにご参加の皆様と主侍医倶楽部会員のみなさまに、これからのの目玉と考えている「スーパー医局」によるスーパーコンサルテーションサービスのご案内をしてまいりたいと考えています。
健康を真剣に考えている友人知人のみなさま、いち早くのご連絡をお待ちしています。
2013年の新しい年を迎えましてみなさまのご健勝をお慶び申し上げます。一方、常に病気のお話をみなさまからお聞きする私の身としましては、昨年末に急逝されました方に対する哀悼の思いも共に抱き複雑な気分で新年を迎えました。
年末の主侍医通信や年賀状でも綴りましたが、今年は自分自身が還暦を迎えることもあり、今までの大きな区切りとするべく思いを巡らせております。おおよそ中学生から大学生までの同窓会の世話人や大学ではゴルフ同好会の常任幹事まで引き受けています。友人からの健康相談は、駆け込み寺の寺下と異名を取っています。
よくよく考えてみると、私は「大切な人の笑顔が見たい」という本質を持っていることに気付きました。ところが医師という職業は、基本的には具合が悪いときに人と会うことになるので、笑顔どころか厳しい顔に遭遇することが常です。だから、「生まれ変わったら医師や弁護士や坊主ではなく芸術家やシェフや職人や漫画家など人が楽しみ喜ぶことを提供するのがメインの仕事に就きたい」とつい思ってしまうのだなと自分のことを理解しました。「生まれ変わったら医師にはならない」と毅然と言うとたいていの友人は驚くのですが、この理由を話すと納得してくれます。
そんな医療の中でも、笑顔のでる医療の仕組みづくりを研究し実践したいという思いに賛同いただいたメンバーに支援者となって頂き、その恩義に答えるべく可能な限り渾身の力で医療の全般的な相談に対応させて頂くのが主侍医倶楽部誕生のきっかけでした。「いくらいくらで、これだけのサービス」といった発想ではありませんでした。(それがビジネスモデルとしてうまくいかなかった理由のひとつでもあるのでしょうが)
その後、夜間休日ホッとラインなどを整備し、「医療の相談助言事業」という立ち位置を確立するべく、日々契約形態なども更新し現在の「主侍医倶楽部」の運営に至っております。まだまだビジネスモデルと呼ぶにはほど遠い形態ですし、このままの形態では私の代わりを出来る主侍医団長の育成はほぼ不可能と判断しました。メンバーの方からも「それは無理でしょう。元気なうちは先生ご自身が努めないとだめでしょう。あと10年、いや15年は出来る。」とぴしっと言われもしました。有難いお言葉で、その通りだと思いますが、元気なうちに継続性のある仕組みを作らないと、せっかく作った土台が霧と消える可能性があります。
ここ数年迷いましたが、本年3月を持って現行主侍医倶楽部の新規募集を終了し、「常時サポート」系から「一時的サポート」系と「定期的サポート」系の主侍医サービスをより多くの仲間の方に提供できる仕組みを整えていこうと決意しました。若手のドクターのみならず、ベテランのドクターにも活躍して頂ける場を作ろうと考えています。良きにつけ悪しきにつけ、今までの主侍医の経験値は相当積み上がっています。
主侍医倶楽部のみなさまには、更に充実して安定した安心を提供できるように、ご家族の方のサポートや時間外対応の仕組みや、またメンバーが経営されている会社の社員や顧客の方々へのサポートの提案などを差し上げて、満足度安心度の高い主侍医サービスとなるよう努めたいと思っています。古くからのメンバーの方から順次お声をおかけしますが、この機会にご家族や友人、社員のみなさまにも主侍医の安心をとお考えの方はご相談下さい。また3月末までは現行主侍医倶楽部の募集は続けますので、こちらもよろしくお願いします。「区切りをつけなければ前に進めない」というマリナーズを辞めた時のイチローの言葉に共感しました。
秋の気配を楽しむ間もなく、冬が到来した感がありますが、季節の変化にお体は大丈夫でしょうか?充分な予防対策をお願いいたします。
今回は11月と12月の合併号として今年最後の通信となります。振り返りますと、私にとって今年は本当に悲喜こもごもの出来事がありました。そんな中で、みなさまにもご報告しなければなりませんことですが、最も悲しい出来事がありました。主侍医倶楽部設立当時から、陰日向となって応援下さり個人的にも親しくさせて頂いていた方が、他界されたことです。(ご遺族のご希望でお名前は伏せさせて頂きます)いつも明るい笑顔で接して頂き、主侍医倶楽部のことも心配して頂き、最も多くの方をご紹介いただきました。「主侍医」のことを心から信頼し応援してくださっていたからだと思っています。しかし、懸命の努力にもかかわらず、9月にご逝去されました。我々主侍医の力が及ばなかったことが悔しくて、後になると「こうすればよかったのではなかったか?」と自問自答して眠れない日々が続きました。でも、その方は余命が厳しいと言われていた闘病中も「寺下さん、主侍医倶楽部もメンバーの若返りをして増やさないと運営が苦しいでしょう」と、こちらが心苦しくなるような優しい言葉をかけてくださいました。ゴルフが大好きで、「先生が幹事の東大のゴルフコンペで、昨年のようにお役に立てることがあったら遠慮なく言って下さいね」とも闘病中で苦しい中、笑顔で声をかけていただきました。思い出は数えきれません。「好きで敬愛できる方の主侍医を努めさせて頂く」ことが主侍医倶楽部発足の原点です。それを忘れてはいけないことを最後まで教えて頂きました。心よりご冥福をお祈りいたします。
そのようなこともあり、最近、この場でも主侍医倶楽部の継続性に向けてのお話をさせていただいています。医師生活35年、主侍医稼業23年目となり、回顧、反省、継続性の模索、後輩の育成、余生の過ごし方、、と連鎖する思いが日々頭の中を駆け巡っています。
いつも言っていますが、主侍医倶楽部は、日本の高度な医療を補完するものだと思っています。日本の医療は、何が高度かというと「ほとんど誰でもどの医師にもかかれるフリーアクセス」「圧倒的なコストパフォーマンス」「今やサービス精神に溢れた病院やクリニック」「先進医療の選択肢も増えたこと」など他の先進諸国の追随を許さない優位性があると真っ当な医療関係者は自負して当然だと思っています。ここで「真っ当な」という理由は、残念ながら、魂を売った商売に走ったり、権力闘争に重点を置く医師もいるからです。開業医であろうが勤務医であろうがその魂を売る確率は同じようなものです。
そんな中、私どもは今までの経験を活かし、また誠実で優秀な医師たちとの交流を最大限活用し、主侍医倶楽部をご支援下さる皆様がよりよい医療を受けられることを補佐するために日々努力しています。
みなさまにお願いがあります。医療において、最大の貴重な資源はやはり「医師そのもの」だと思います。「高度医療機器」でもなく「新薬」でもありません。そしてその「医師そのもの」は、壊れやすく、再生産が難しく、目に見えた有難さが薄いものです。ある経済界の成功者から「どれだけ最新の医療機器が揃っているかが肝心で、その機器から答えが出るのだから、医師によって差が出るとはどういう意味ですか?」といぶかしげにしかも真剣に質問され、腰を抜かすくらい驚いたことがあります。
我々は、「医師そのもの」を医療における最大の貴重な資産だと考えています。真っ当で腕のたつ医師ほど、信念を持っていて、お金などでは簡単に動きません。私の医師(だけではないのですが)人脈の広さは希有だと医師仲間からもお褒め頂くのは、それぞれの医師(または友人)と真剣で誠実で楽しいお付き合いを積み重ねてきた所以だと思っています。この人脈は、資産家の方々が、努力して得られたさまざまな金融資産にも負けない資産だと思っています。だからといって、その医師たちが、全て皆様方の健康上の困難を解決できるとは限りません。他の分野に比べて医療の不確実性は圧倒的に高く、私自身もしばしば忸怩たる思いをします。完全なる成果と安心を与えたいといつも思っていますが、それは永遠のテーマです。
名門ゴルフクラブでは、ゴルフ場の命とも言えるグリーンを一所懸命手入れし、また会員はそのグリーンを丁重に扱い自分が付けた傷のみならず、他人がつけたものまで修復する習慣があります。とてもいいことだと思っています。主侍医倶楽部において、スタッフ医師もご紹介する医師もせめて名門ゴルフクラブの「グリーン」のように考えて頂ければ有難く思います。勿論、我々はその「グリーン」をいつも良質にキープする努力は怠りませんが、ご利用のみなさまにもご協力いただかなければ達成できないことです。
医療の広大な分野での総合的な相談にお応えし、それぞれの分野の専門医と連携を保ち続けるためには、日々新しい医療の情報を浅くとはいえ、プロとして耐えうるレベルで内容を把握し、専門医たちとの活きた交流を保ち続けることは相当なエネルギーが必要です。後輩の育成も困難の極みです。
前回もお話しましたが、「ビジネスモデルとしての主侍医倶楽部」は不完全のまま終焉をむかえそうですが、今までの経験と知恵と人脈を活用して、現実問題としての継続性を考え今後の事務所活動の設計の立て直しを考えています。
一つは「良質なセカンドオピニオンを支援するサービス(Second Opinion Support)センターの設立」です。もうひとつは人間ドック時に発見された重病に特化した「オンデマンド主侍医」です。今までの主侍医倶楽部を「継続的サポート」とすれば、前者は「一時的サポート」後者は「定期的サポート」と言えます。
主侍医の主要なコンセプトの「健康な時から」「どんなことでもいつでも相談」がクライアント側にとっては「何もないのにお金を払い続ける」困難であり、前述のように「なんでも相談にのる」ことは提供側の困難で、それらがビジネスモデルの成立を困難にしていたことを認めざるを得ません。
現行主侍医倶楽部では、最低限の費用で「侍医」を持つことを提供しようと考えてきましたが、中途半端であったかもしれないと反省しています。「困った時だけ困ったポイントに絞りサポート」「困った時だけ徹底的にサポート」「定期的なサポート」という仕組みの方がビジネスモデルとして成立しやすく結果として多くの方々に貢献できると考えました。ビジネスモデルといっても、医療は、「まともにやれば大稼ぎできる」世界ではありません。「武士は喰わねど高楊枝」的運営から質実剛健運営くらいが目指すところだと思っています。
上述のように、多くのみなさんに提供できるような「困ったときのサポート」を主軸にする一方、現行主侍医倶楽部の新規募集は停止しますが、現メンバーのみなさまには今まで以上のサポートが出来るように努力いたします。
新機軸として、主侍医サービスの理想ドリーム型として「The主侍医倶楽部」の設計を考えています。これは今後の方向性と逆行するのですが、皇族の侍医に対抗できるような文字通り夢のような仕組みを考えています。
「The主侍医倶楽部」は、富裕層ビジネスと言われるのを嫌う私にとって、一気にそれを超越した趣味的なものと考えています。面白いからその趣味に付き合おうという数十名の方が集まればやってみようというアーティストやプロデューサー的夢でもあります。
以上のような構想が、現実的なかつ迫り来る還暦の夢想でもあります。
長年にわたり、主侍医倶楽部の価値をご理解いただいているメンバーの皆様方にこそ言える「愚痴」と「抱負」をお聞きいただきありがとうございます。
来年も、みなさまにとって幸せな年となることをお祈りしております。
残暑が厳しいと言っているうちに、肌寒い季節となってしまったようですが、皆様体調はいかがでしょうか。早くもインフルエンザの予防接種の時期も近づいて参りました。年に1度の人間ドックの解説とインフルエンザワクチン接種が皆様とお話しする貴重な機会であります。是非、この機会に日頃気になっていることなどご相談いただければと思っています。
10月末の週末に「鉄門旅行」と呼ばれる、東大医学部の学生とOBの旅行に行ってきました。各大学の医学部には、愛称みたいなものがあり、東大医学部は「鉄門」、京大医学部は「芝蘭(しらん)会」、慶応大学医学部は「三四会」などと呼ばれます。私が鉄門会の理事を拝命して十数年経ちますが、この鉄門旅行には初めての参加でした。今回は群馬水上温泉への一泊旅行です。学生130名、教職員、OBが40名を超える今までで最大の参加数ということです。特に医学部在校生400名中の130名は結構な数です。OBは深夜、明け方まで学生たちと討論するのが習わしと聞いておりました。実際、会場のあちこちで、OBの周りを数名の学生たちが取り囲み真剣な笑顔で会話が弾んでいます。私も学生たちとの会話に熱中し、はっと気がついたら夜中の3時です。会場を見渡すと、さすがにOB連中の姿はまばらで、私も学生たちにおやすみを告げたのです。多士済々のOBたち、優秀な学生たちとの話はとても面白く、彼らがリーダーシップをとれば、今後の日本の医療も大丈夫と確信しました。また「京都大学に負けずに、ノーベル賞クラスの研究と言われることに満足せず、本物のノーベル賞を取ろう」と盛り上がりました。
同窓会理事としてのご挨拶の機会があり「臨床医学と基礎医学とともに医療の仕組みづくりを考え実践する社会医学がもうひとつの柱としてある。高度な医療や研究レベルの割には日本の国民の医療への満足度が低い。私ども医学事務所では患者医師関係を中心とした医療の仕組みの研究実践を行なっているので、若い人たちにも是非そういった志を持って欲しい」と話しました。学生にはまだピンとこないだろうと思っていたら、さすが東大の学生(と自画自賛気味ですが)、数人の学生が熱心に話を聞きにきました。そして天皇陛下の心臓手術の主治医として有名な小野教授も「すごく大事な仕事だ」と共感してくれ、その後、深夜の2時頃まで、学生たちも交えながら、医療のこれからについて熱く話し合いました。
難事にチャレンジし、くじけそうになる昨今、魂を鼓舞させて頂いた一夜となりました。睡眠不足になりましたが、一夜明けた昨夜は、10年ぶりに一度も目が覚めずにぐっすりと眠りました。たまの睡眠不足もいいものだと紺屋の白袴的に思ってしまいました。
医療の広大な分野での総合的な相談にお応えし、それぞれの分野の専門医と連携を保ち続けるためには、日々新しい医療の情報を表面的とはいえ、プロとして耐えうるレベルで内容を把握し、専門医たちとの活きた交流を保ち続けることは相当なエネルギーが必要です。東大の学生たちも「そんなに広い分野の知識を持ち続けるのは大変すぎる」と驚いていました。
しかも、医療ほど不確実なものはありません。反面、医療ほど確実な結果が欲しいと誰もが望む分野もありません。皆様の笑顔をみることは我々のエネルギーの最大の源ですが、必ずしも結果がすべて上手くいくとは限りません。少しでも上手くいく確率を上げることが我々の任務ですが、「100%の成功」は永遠の目標となります。でも「100%の納得」はあり得ると思っています。
私のこういった理念や活動を声援して頂いているのがメンバーの皆様だと思っています。そのお返しとして、こういった活動のもとに養えた判断力や知恵と人脈をフル動員して、皆様の健康管理のお役に立ちたいと考えています。決して皆様を単なるお客様だとは思っておりません。どうかその辺をご理解いただければ嬉しく思います。
ただ、今後の活動におきましては、ビジネスモデルを磨き上げて、堂々とお客様向けのシステムを構築したいとは考えています。
主侍医倶楽部のビジネスモデルが成立する最低限のメンバー数は100名だと当初考えました。しかし、私の経営/営業能力の低さから、その半ばを超えない状況が続く中、スタッフや仲間のドクターの熱意や友情に支えられて、良質で高度な主侍医サービスを維持すべく懸命の努力をしています。
皆様への、再度のお願いでもあり、最後のお願いでもありますが、現行の主侍医倶楽部の安定運営のビジネスモデルの実現のためには、長年、主侍医倶楽部の価値をご理解いただいているメンバーの皆様からのご紹介が一番だとお願いをする次第です。
東大の同窓たちをみても、世代交代が進んでいます。私が築いてきた人脈や経験を進化させるためにも、私が元気なうちに楽屋裏に回ることが急務と考えました。今年度中に、現行の主侍医倶楽部の最終募集を行ない、多少とも余裕のある運営が出来るようになれば、若い主侍医チームだけで構成される「新主侍医倶楽部」の活動を開始したいと思っています。主侍医倶楽部の永続性を考え、しかもより多くの人にご利用できるように、主侍医サービスの項目を自由に組み合わせ各人のニーズに合った主侍医が持てるように工夫していくつもりです。
引き続きご声援願います。
最近の私は、この主侍医通信やブログ、セミナー、友人たち、家族たちとの会話の中で「幸福論」を持ち出すことが多くなっています。自分の歳のせいもあると思います。来年の還暦を控え、なにか今までのまとめでもあり、新たな活動でもあってもいいから自ら納得のいく社会への発信型の活動をしていきたいと考えるようになったからだと思います。
そのキーワードが「幸福、幸せ、仕合わせ」です。私見ですが、全ての人類の活動の歴史は「幸福探し」だと考えております。当然、人々によって、幸福の定義が異なりますから、様々な活動が生まれ伝承し、改革、改造、改善、時には改悪が重ねられていきます。その結果、複雑な文化が生まれ形成され、文明はいわゆる発達を遂げていきます。
話を簡単に、かつ具体的にしたいと思います。私どもの医学医療の世界では「痛みや苦しみもなく長生き出来れば幸せになる」という大前提があると思っています。政治の世界では「国民が豊かに安全な暮らしができれば幸せになる」というようなことが大前提でしょう。その他、いろいろな分野でもこういった大前提があると思っています。「美味しいものを食べれば幸せ」「便利なものがあれば幸せ」「お金が増えれば幸せ」「よい大学に受かり、よい企業に就職できれば幸せ」「金メダルを貰えば幸せ」、、、、、、、、、「一番になれば幸せ」「相手に勝てば幸せ」、、、、、となってくると矛盾も生じてきます。だから大昔の学者の、ベンサム、ミルの「最大多数の最大幸福」原理を思い出しますし、今でも通用する部分も多々あるかもしれません。フェイスブックや携帯電話のゲーム企業や過度なチェーン展開の食べ物屋やゴルフ場なども含めて、人生の意義に関するもの(食べること、遊ぶこと、人との繋がりや関係性)に、「最大多数の最大幸福」を実現しているのだ、と思い込んで過剰に膨れ上げようとすると、これはとんでもないことになるような気がするのは私だけでしょうか?
このように「幸せと○○学」となると、いろいろな組み合わせがありますが、いろいろな分野でのグランド哲学として「幸福論」がこれからますます必要になると考えています。だからこそ利害関係の伴わない思想家が渇望されてくるのではという思いが、私のこれからの活動を考える際にも脳裏を、いや脳表を巡っている次第です。
主侍医の重圧にご理解を!
寒中お見舞い申し上げます。
主侍医倶楽部21年間を振り返って(本年7月より広報部長としても活動を開始し、そのご挨拶も兼ねて)
複雑化していく医療において、患者側にとっては「より良質の医療を受けるため」、医療提供者側にとっては「より良い医療提供のための技術や知識やネットワークの向上のため」必要なものは何か?
1984年、医学事務所を設立して27年間、「医療のシステム作りを通じて貢献する」を胸に秘めながら活動してきました。初期の頃は、医師向けワープロソフトや電子カルテや専門医の遠隔相互コンサルシステムなどの開発試作を皮切りに、理想的病院「夢病院」の企画立案なども行なっていました。27年前ですから、携帯電話もインターネットもなく、ワープロもようやく生まれかけた頃です。「いがく」とキーボードで打って「医学」となれば大声で喝采を挙げていた頃です。
その頃、夢物語や将来の懸案として話していた「電子カルテ」や「シェア型の検査センター」や「会員制の医療サービス」「リゾート型人間ドック」「インフォームドチョイスの普及による新たな悩み」「保険制度の行き詰まり」「医療裁判の増加」「医局制度の崩壊」「医師のマインド低下」など良いことも良くないことも、今では普通の話になっています。
こういったハイテクの医療システムを研究しているうちに、国民が医療に納得安心するためには、最先端の医療技術の開発が必須なのではなく、医療へのアクセスシステムとインターフェイスシステムの整備が不可欠であるという仮説に確信を持つようになりました。そこで、「日本で医療に不安も不満も持っていない貴重な人は、天皇や皇族の人々ではないだろうか」ということに気がつきました。侍医を担当している仲間や先輩から、「我々の世界ではセカンドオピニオンなどは侍医の間で行なうから陛下たちは安心してアドバイスを受け入れてくれる。ドクターショッピングなどあり得ない世界なのです」というお話をお聞きし、たいへん羨ましく思いました。「皇族の侍医システムこそ理想的な医療の基本的仕組み」だと考えました。侍医システムは、どのように医学や医療技術が発達しようが、仕組みが変わろうが対処できます。なぜなら指揮者や管制官のようなプライベイトドクターがクライアントに代わりその時の医療事情に精通して親身にアドバイスや必要な専門医のコーディネイトと質の高い判断のサポートをしてくれるのですから特上の安心が得られます。
でもそんなことは専門家ならずとも、一般人にも分かります。が、どのようにして実現するかが問題なのです。最初は「赤ひげクラブ」と称して、友人を集めて全くの無料で活動を開始しました。時々、皆で信頼できるドクターの健診を受けるといった程度から始めました。そんな活動を続けているうちに、友人の中から、もう少しプロとして活動をしてみてはどうかとの声があがり始めました。トータルの必要費用をシェアする100名が集まり「100歳まで生きよう」をスローガンに「ハンドレッド倶楽部」と名付けて開設準備を行ないました。
実際1990年にスタートする時は、「(顧問医)主侍医倶楽部」となりました。最初の頃は、私と相談するためのアクセス権のための契約で、現在のように保険診療も可能なクリニックは併設されていませんでした。いざとなった時の相談のための顧問医契約というだけで当時の顧問弁護士の基本契約と同等の一人当たり月額5万円を負担して頂きました。相談のためのアクセス権として契約して頂き、未だに契約を続けてくれている方には感謝感激です。最近まで営業広報活動は皆無でしたから、口コミだけです。しかし、これほど口コミの難しい商品はないということが後々明らかになっていきます。
私個人としては、主侍医活動とともに様々な医療の仕組み作りの開発研究活動と慶應大学での教育研究活動も並行して行なっていました。いずれの活動も自分自身の生活費に充当できるような報酬を得られない活動ですから、生活のためには他の病院での診療活動も続けなければなりません。
まさに若さとバイタリティーに頼りながらの生活でした。個人的な繋がりから、契約メンバー数も30名を超えてきました。特別高額な契約で応援してくれる方もいらっしゃり、なんとか事務局も維持できる状態でしたが、もうひとつの誤算は、私の活動を応援してくれている方々は経済的にも余裕があり、目下ご健康に大きな問題はなく、メンバー数十名ではそんなに忙しくないだろうと想像していたことです。ところが1名の会員の方々の周囲にはたくさんの仲間がいらっしゃいますし、面倒見の良い方々だからこそ契約をしてくれています。ご本人以外の方の相談が予想外に多いことに気付きました。最初の10年間はなんとか時間の許す限り私自身がボランティアとして対応させて頂きました。ここが他のサービス契約と違って「お断りできないし、またお断りすべきでない」というのが医療の分野です。そして貴重な契約者の方からのお願いですから、相談はすべて無料で行なっていました。
2000年、事務所を小石川から現飯田橋に移したおりに、事務所の主な事業として「主侍医倶楽部」の運営に本格的に取り組もうと考えるようになりました。おりしも、契約の会員の方々からもいろいろな要望とそれに伴う費用の負担もお申し出いただくようになりました。
まず、話題になったのは、契約者本人だけでなく、家族や社員や友人などの相談を遠慮なく行なえる仕組みを作って欲しいとのことでした。これは簡単そうで意外と難しいことでした。契約会員のかたの状況が実に様々だからです。紆余曲折しましたが(正確には今もその最中ですが)、登録ゲストと紹介ゲストというシステムを作り周囲の方のご相談も余裕がある限り(有料ですが)正式に対応出来るようにしました。
もうひとつの問題点は「24時間の連絡体制」です。私一人が主侍医を勤めていましたから、そんなことは無理であることは自明です。契約上も連絡は9時から5時の事務所がオープン時とさせていただいています。しかし、初期の頃の事務局はたいてい夜中の12時頃まで誰かがいましたし、途中からは携帯電話が普及し、なんとか私と連絡が取れて問題は発生していませんでした。今から思えば、この21年間、飛行機に乗るなどで十数時間連絡が取れないのが最大で、まる2日間以上事務所と私の間で連絡が取れないということはありませんでした。(新しい「夜間・休日ドクターホッとライン」稼働中の現在も同様ですが、これは私の性格の問題でもあります)しかし、このような個人的な努力にのみ頼る仕組みは、上手くいっている間はしっかりとして安心感がありますが、継続性に限界があり、もろくもあります。そして、事務所オープン時以外は契約外だといっても、やはり24時間医師と電話が通じる仕組みは実現したいとかねてから考えていました。
8年前、特別会員として応援いただいている方から、「僕が応援するから、24時間医師と連絡取れるシステムを作ってくれないか?」とのお申し出がありました。それが熟成し今日皆様にお届けできるようになったのが現在実現している「夜間・休日ドクターホッとライン」というわけです。
そこで2004年から新しい主侍医契約には、このサービスを付加して、更に登録ゲストの仕組みも取り入れ基本報酬を月額10万円からとさせて頂いています。従来からの会員の方には、今までのご契約状況などを踏まえてご相談させて頂いています。また2006年3月より、併設のクリニックでは保険認可も取り、日常的な病気のための検査や投薬が可能となりました。原則有料予約制でゆったりとした診療が可能ですが、会員ご本人の方々の予約料は無料とさせていただいています。主侍医スタッフも若手が加わり、総勢4名となりました。「夜間・休日ドクターホッとライン」の担当医も含めると8名となります。テラドクターアライアンスと呼ぶ専門医のネットワーク数は、増加の一途です(簡単に数えられないほどの数です)。
このように初期の「主侍医倶楽部」から展望すると、随分と進化しました。富士見事務所には、メンバーズボードが設置されました。スタッフが毎日感謝し気を引き締めるためとともに、広報部長としての私の励みにもしたいと思っております。現在のメンバーの方々のお名前をこうして眺めさせて頂いても、各分野の超一流の方ばかりで、そのような方々の主侍医を勤めさせて頂いている誇りをスタッフドクター一同有り難く思っております。
現在のメンバー数は50名です。現状の主侍医倶楽部の運営は、主侍医チームとスタッフを100名でシェアしていただくことを想定しています。ただ、日本では他に類が無いデリケートな仕組みですので、誰でもメンバーにとは申せませんことをご理解の上、皆様のとっておきの親友をご紹介いただければ幸甚です。
大地震の再来、放射線障害、猛暑、電力問題、不景気、政情不安など不安要素を数えていたら片手では足りなくなってきました。人間にとって(動物にとっても)安心が一番の大切な生活基盤の要素であることは自明の理であると考えています。かたや「好きなことをやり、好きでないことをなるべく避けたい」というのも、我々の本能だと思います。これを貫くことが出来れば、理想だし、そんな人を見かけると羨ましくもあります。丁度、数週間前放映されたNHK大河ドラマ「ごう」の中で、石坂浩二扮する千利休のセリフ「結局は好きか好きでないかのどちらかなんや。」が印象的でした。もうひとつ感銘したセリフに「私のたてたお茶が日本一というなら、それはあんたが日本一の心を持ったおかたということや」というのがあります。これは利休がお世辞を言っているのではありません。利休は「好きな人には一所懸命お茶をたてるんや、日本一やと思っている方には日本一のお茶をたててあげたいと思うからや」と説明しています。
我々主侍医の思いも、この利休の心にあるなあと感じ、スタッフのみなと気を引き締めました。
話しを元に戻します。「好きなこと」をするには、時にはリスクを伴います。人間の安心最優先説とぶつかり合うようになり悩むことになります。「好きなビール」をたしなむと「痛風」などのリスクが高まります。概して美味しいものを食べ過ぎるといろいろな病気のリスクが高まることはみなさんもご存知のことです。要するに、我々は「安心」と「リスク」の間を巧妙にすり抜けながら人生(という時間つぶし)を楽しんでいこうとしているんだなあと常々思っています。我々主侍医は、その「安心」を少しでも高めるためにお手伝いしているのだと思っています。
7月10日に、僕自身が58歳を迎えました。還暦まであと2年と、少し武者震いがする感じです。高度複雑化していく医療の中で、満足度が高い安心なシステムを研究し続け、やはり医療のインターフェースとアクセスシステムとしての主侍医システム、医療の判断支援システムとしての医療判断学やその専門家が必要だとの思いは増強するばかりです。すでに存在する「かかりつけ医」や「家庭医」「総合医」の概念も主侍医システムと同様のものだと思っています。しかし、それらはあくまでも国民の誰もが受けられる治療サポート中心の現在の保険制度のうえに存在していますから、その品質向上にはかなり無理が生じます。それらのドクターの身を削った努力にのみ支えられています。
「相談」「助言」「判断支援」などは、日本では軽くあしらわれがちですが、実に高度であらゆる能力、技術、そして充分な時間を必要とする最も貴重なものだと我々は考えています。
保険制度の中で、こういった「相談」「助言」「判断支援」をカバーするようになればいいと初期の頃は言っていましたが、最近では、それは不可能だし、破綻を助長すると考えるようになりました。せっかく世界に類をみない世界中から羨望されている保険制度があるのだからこれを守らないといけません。
今後2年間を、主侍医システムは「かかりつけ医」や「家庭医」「総合医」の活動の先進モデルから実現可能モデルにまで作り上げることに専念したいと思っています。それこそ僕にとっての「好きなこと」だと思っています。多少の(過酷な)リスクを覚悟しながら。
皆様方のご健康を祈りつつ、今後ともご支援をお願いする次第です。
主侍医活動を円滑に進めていくためには、関連の医師の潤滑なコミュニケーションが大切です。私どもの主侍医活動も、経営的な目で見れば、まだまだフロンティア精神で支えられているのが実態です。片腕として参加してくれている若手のドクターも、大学などでの研究研修活動とともに、生活を支えるための診療活動も行なわなければなりませんから、ずっとこちらの事務所に詰めている訳には参りません。本来は、もっと僕がしっかりと経営活動を充実させて、たいへんな仕事に見合った高報酬を確保してあげるべきだと思っていますし、これからの僕のメインの職務だと戒めているところです。
そんな訳で、スタッフ主侍医のドクターたちはお互いなかなか顔を合わせて論議や打ち合わせをすることができません。そこで、月に1回は顔を合わせようと、せっかく事務所が神楽坂近くにあるので、B級グルメを兼ねて交流会食会を先月から始めました。事務所のライフワークである「スーパー医局」活動の幹事打ち合わせの会も兼ねる意味合いもあります。事務所の若手スタッフ主侍医3名と事務所設立時代からの仲間の野村忍ドクターと僕の5名に加えて、昨年から研修医仲間入りした愚息が是非参加したいというので計6名でスタートしました。
スタッフ主侍医が一同に会するので、担当している主侍医倶楽部のメンバーの方のための打ち合わせなどについても全員の意見を聞くことができます。
今月のテーマは、主侍医活動の必要性を仲間の医師にどのように短時間で説明するか、ということです。長く付き合っている専門医仲間は、漠然とは理解してくれていますが、「取り敢えず困った時に相談する医者」「腕のいい専門医を紹介してくれる医者」「セカンドオピニオンをしてくれる医者」「困りきった時に駆け込むクリニック」だとか、当たらずとも遠からず、といった理解に留まることが多いからです。
我々は「高度化、専門分化する高技術医療時代において、安心できる医療の基本的なアクセス/インターフェイスの仕組みが『主侍医システム』であり、個人や企業内における医療管理と判断を支援するプロ集団が医療判断医である。活動が活発になってきた家庭医や総合医、以前からいわれているかかりつけ医なども同様の概念上にあると考え、そういったシステムが繁栄発展するための模範的(サンプル的)活動を目指す」と考えています。