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秋バテ

2025年10月24日
(総論)
「夏バテ」は一般的に使われますが、それに対応するかのように秋口に体調を乱すことを「秋バテ」と呼ばれるようになりました。いずれも正式な医学病名ではありませんが、季節ごとによくみられる病状を表している言葉でもあります。「夏バテ」は暑さによる体温調節や自律神経の乱れから食欲不振などの胃腸障害や倦怠感という形で現れます。「秋バテ」は、その「夏バテ」が秋まで持ち越すことに加え、秋口の特徴である、気温や気圧の急な変化に順応できずにさまざまな体調不良をきたす状態を指します。
 
 
(原因)
さまざまな理由が考えられますが、「夏バテ」により体力が弱っていることと、急激な気温や気圧の変化(主に低下)に対し、心身の安定を保つ働きを持つ自律神経がスムーズに対応できずに不調をきたすことが原因と考えられます。秋は一年の中でも活動が活発な時期であり、夏休みモードからの切り替えについていけないことも影響するかもしれません。特に、最近では猛暑が秋口まで続き、その後急激な気候の変化が起こり、快適な秋の気候の期間が短くなっていることも「秋バテ」が増えた原因とも言えます。
 
 
(症状)
「夏バテ」は食欲低下を中心とした胃腸障害やだるさ、疲労感が中心となりますが、「秋バテ」も同様な症状に加えて、自律神経の乱れによる、めまいやのぼせ、不眠、気力低下など多彩な症状が出て、活動の増加に心身がついていけなくなります。
 
 
(診断)
他のはっきりした疾患による症状でないかどうかの鑑別診断が大切になります。安易に「夏バテ」「秋バテ」で片付けてしまうと、ガンや糖尿病など重大な病気が隠れていることを見落とすことがありますので、じっくりと経過を見てくれる医師と相談しましょう。
 
 
(治療)
健康管理の基本である、規則正しい生活と、十分な休養、睡眠、適度な運動を心がけることが大切です。放置していると胃腸障害の悪化やメンタル疾患など本格的な病気に発展してしまうこともあります。
 
 
(生活上の注意)
基本的な健康管理として、快食快眠快便を保つように心がけ、暴飲暴食、夜更かし、運動不足にならないよう留意することが大切です。いつもとは違った症状が長く続く場合は早めにかかりつけ医に相談しましょう。
 

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帯状疱疹

2025年07月25日
(概説)
水痘・帯状疱疹ウイルスによる水痘(水ぼうそう)に小児期などに感染した場合、そのウイルスは多くの場合、神経節と呼ばれる場所に潜伏します。疲労やストレス、ガンなどの全身性の消耗性疾患などに罹患して、免疫力が低下した場合、潜伏していたウイルスが再活性して発症する病気です。神経の通り道の皮膚に帯状に水疱や発赤が出現しますので「帯状疱疹」と呼ばれます。単に「ヘルペス」と呼ばれることもあります。痛みを伴うことが多く、時にひどい神経痛が後遺症になることも多いので、早期診断、早期治療が望まれます。
 
 
(症状)
理論的には、神経が通るところはどこにでも発症しますが、胸の肋骨に沿っている肋間神経や顔面の三叉神経などに発症することが多いようです。神経走行領域に一致した表皮に水疱や紅斑が出現するのが特徴です。その意味で、片側、限られた領域に見られることが特徴ですが、免疫の低下時には両側性や全身性に見られます。皮疹が出る前に、同部にピリピリする痛みの出現が診断のポイントとなります。
 
 
(診断、治療)
特徴的な皮疹の出現が診断の決め手となります。本症の経験が豊富な皮膚科を早期に受診することが早期治療の決め手となります。最近では、抗ウイルス薬の選択肢が増え、早期治療すれば、短期間で治癒し後遺症であるしぶとい神経痛の発症確率を大幅に下げることができます。特に、顔面に発症した場合は、失明などのリスクもあるために、全身状態が悪い場合と共に、入院によるしっかりした治療も必要になることがあります。治癒した後に、神経痛が残る場合も治療が必要になる場合があります。
 
 
(予防などの対策)
過労、睡眠不足や過剰なストレスが発症の誘因となるために、日頃からの体調管理が重要です。加齢も原因の一つなので、50歳を超えた方には、ワクチンが推奨されています。現在は、2種類のワクチンが選択できますので、効果や費用、接種のタイミングなどについて、かかりつけ医と相談してワクチン接種も検討することもよいかと私は考えています。

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春の睡眠障害(不眠)

2025年04月25日
(概説)
不眠を訴えて受診される患者さんは、頻度としては大変多い部類と言えます。不眠の原因は多彩で複雑ですが、気候や騒音など外的要因もありますが、ストレスをはじめとした心理的要因は最も多い原因と考えてよいでしょう。その意味で、春は社会人にとって入社や転勤、学生にとっては入学などが多く、転居を伴うこともしばしばで、なにかと心理的負担が多くなります。また花粉症も多い時期でもあり、不眠を訴える患者さんは増加する傾向にあります。春の不眠に特別な診断や治療法があるわけではありませんが、睡眠は、脳の休養に必須でもあるので、この機会に不眠の基本について勉強をしておきましょう。
 
 
(症状、診断)不眠の状況には、大きく分けて3つのパターンがあります。寝つきが悪いという「入眠困難」、夜中に目が覚めてしまうという「中途覚醒」、極端な早朝に目が覚めてしまうという「早朝覚醒」の3通りです。主にどのパターンの不眠に悩んでいるかで、治療法も若干変わってきます。適正な睡眠時間は、年齢や個人個人によって異なりますが、幼少期には9時間近く、青年期は8時間、成人期から中年期にかけては7時間、壮年老年期には6時間から7時間を目途に、日中に過度な眠気が生じない自分にとっての適正な睡眠時間を把握しておくのがよいでしょう。
 
 
(治療)主に生活指導(睡眠衛生指導)と薬物治療があります。安易に薬物療法に頼るのではなく、自分の生活を見つめなおして、不眠の原因を把握したうえで、時には薬物の助けを借りるという考え方が大切だと著者は考えています。
生活上の留意点を列挙してみます。まずは、規則正しい生活(特に食事)、定期的な運動習慣、自分の適正な睡眠時間の把握、そのうえで就眠時刻ではなく起床時間を一定に保つ、寝る直前にはスマホやパソコンの作業を控える、禁煙は当然ですが、睡眠時間前のカフェインや睡眠直前の寝酒を控える、昼寝は取るとしても2、30分程度に、などを基準に自分の生活にあった決め事を定めておくとよいでしょう。
生活改善だけでは不十分な場合は、薬物治療を併用することになりますが、近年睡眠薬の開発が進み、その選択肢が増えています。自分に合った薬物を主治医としっかり相談しながら選んでいくことが肝要です。最近では、睡眠中に呼吸が一時的に止まる睡眠時無呼吸症候群の方が少なくないことが分かり、睡眠障害の原因のひとつになっていることもあります。ご家族の方からいびきや呼吸の停止を指摘されている人は、かかりつけ医と相談するようにしましょう。
 
 
(その他の注意事項)不眠はありふれた症状、病気ですが、思わぬ病気が隠れていたり、
改善が必要な環境があったりしますので、安易に考えないようにしましょう。また、逆に気にしすぎることによって不眠を悪化させることも多いので、信頼できるかかりつけ医と二人三脚で対策していくことが望まれます。

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咽頭炎

2024年10月25日
(概説)
「のど風邪」と呼ばれるものが、咽頭炎の大半を占めます。咽頭とはいわゆる「のど」のことであり、口から食道や気管へ続く玄関のようなところで、口を大きく開けて見える部分が咽頭の上の部分になります。両脇に見えるのが扁桃腺ですが、隠れて見えない場合もあります。従って、咽頭、扁桃腺は体への玄関口となるために、体に入る食物や空気の関所のような役割を果たしています。食べ物は、胃の中の酸で消毒されるのですが、空気中のウイルスや細菌、異物などに対しては咽頭が門番役となります。自分の体力や免疫力が落ちていたり、接触するウイルスや細菌などの量が多いと感染を起こします。この状態を咽頭炎と呼びます。時には、アレルギー反応により、咽頭炎の状態を引き起こすこともあります。
 
 
(原因と症状、治療)
ウイルス感染がもっとも多い原因で、のどの痛み、ヒリヒリ感が唾を飲み込むときに増強されるのが特徴です。全身の熱はあっても軽度で、放置しても数日で治ることが多いです。一方、細菌感染が原因で咽頭炎を起こした場合は、更に症状が強く発熱も伴うことが多く、抗生剤の治療が必要です。最初はウイルスによる感染でも細菌感染が加わることもあります。新型コロナウイルスの感染の場合は、かなり症状が強く様々な合併症を引き起こすことが多く、特別な治療が必要でした。最近では、攻撃力の高い細菌による感染もしばしばみられるようですので、数日で軽快しない場合や、痛みが強かったり、高熱が出る場合は迷わずに医師を受診しましょう。血液検査や迅速抗原検査、胸のレントゲン検査、CT検査などにより、原因の探索や肺炎への進展の有無などの確認が必要なこともあります。細菌性の咽頭炎が悪化して、扁桃腺炎を起こすこともあり、その場合もしっかりした抗生剤治療が必須となります。
 
 
(日頃の対策、注意点)
世間での流行情報などに注意しながら、感染の機会を減らす心がけが重要です。感染症ではありませんが、最近では、PM25や黄砂などにより、花粉症とよく似たアレルギー性の咽頭炎を引き起こすこともありますので、予防対策として、PM25や黄砂、花粉症などが多いとの予報があるときは、外出を控えるか、外出時はマスクなどを着用することもお勧めします。また、日頃から、禁煙はもちろん寝不足など不摂生により免疫力が落ちないように心がけましょう。

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アニサキス症

2024年07月25日
(概説)
様々な原因で起こる食中毒のうち、アニサキスと呼ばれる寄生虫によるものをアニサキス症と呼びます。基本的には、魚介類の生食(なまのままで食べること)により起こります。原因となる魚介類は、日本では、サバが最も多く、アジ、イカ、イワシ、カツオ、サケなどなじみのものが多く、新鮮な魚にむしろ多くアニサキスが生息しています。寿司が世界的に広まり、海外でも発生が多くみられるようになりました。
 
 
(症状、診断、治療)
アニサキスの虫体が胃粘膜に入り込む胃アニサキス症が最も多く、原因となる刺身などを食した後数時間以内で急激な腹痛が出現し、急性腹症と呼ばれる容態で救急受診となる場合が多いです。機序としては、虫体やその分泌物による物理化学的な反応と局所的なアレルギーが関与されているとも言われています。
緊急内視鏡で虫体を確認除去することで診断と治療となります。同様のことが腸で起これば、腹痛や嘔吐などの腸閉塞のような症状が出ますが、禁食点滴などの対症療法で治癒する場合がほとんどです。まれに腸に穴があき、開腹手術が必要になることもあります。症状が強く持続するときは専門医を受診しましょう。
また、全身性のアレルギーを起こすこともあり、蕁麻疹や呼吸困難、血圧低下、意識の低下など全身状態が悪い場合は早急な救急治療が必要です。
 
 
(予防など注意すべき対策)
前述のとおり、新鮮な魚介類にアニサキスが生息していることが多いので、料理するときにアニサキスを視認できれば取り除くことが重要です。(外食の場合は他力本願となりますが)また、生食の楽しみは減弱しますが、加熱調理によりアニサキスはほぼ死滅します。ただ、アニサキスの死骸でも全身性のアレルギーは起こることもありえます。アニサキス自体は、人間の体内で増殖することはなく、急性期が過ぎればたいていは自然に回復します。

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心因性発熱

2024年05月23日

(概説)

発熱は最も多くみられる症状の一つです。発熱で来院される患者さんのほとんどは、何らかの感染症が多くを占め、次に膠原病を代表とする非感染性炎症疾患、内分泌疾患などが続きます。それらの診断がつかない場合に、いわゆる除外診断として本症を疑い、ストレス状況などの問診を深めることになります。一線の診療現場では、感染症や膠原病などの症状や検査結果の異常もなく、また、解熱剤の効果もない発熱が続く患者さんを診ることは少なくありません。その発熱のメカニズムは特定できませんが、体温中枢のセットポイントが一時的にずれたり、自律神経の失調によるものなどが推定されています。昔から「知恵熱」と言われているのも本症の一つでしょうが、それこそ先人の知恵でしょうか?

(症状)

多くは37℃台程度の微熱のみがみられることが多いですが、時には38℃を超える高熱が出ることもあります。熱以外の症状は乏しいことがむしろ特徴で、全身状態も良好なことが多いです。詳しい問診をすると、環境の変化や、生活上のストレス要因が疑われることが本症のポイントとなります。

(診断)

概説で述べたように、感染症やそのほかの炎症性疾患や甲状腺機能亢進症などを除外することにより、本症を疑います。血液検査でも炎症反応がなく、解熱剤が効かないことも診断の目安になります。生活上のストレス要因などの詳細を聴取することも大切です。時に薬剤性の発熱もありうるので、服薬内容のチェックも重要です。

(治療、対策)

発熱以外の症状がなく、上記の除外診断がなされたら、過度の心配をせず、1、2ヶ月やそれ以上の長期的観察をしましょう。その間に、ほかの症状が出現し、診断がつく場合もありますので、内科などで経過観察の診療を受けましょう。半年、1年後に気がついたら平熱に戻っていたということもよくあります。体温は個人差もあり、1日に1℃くらいの変動はありますので、日頃から自分の体温状況も把握しておくことが基本的な心がけと言えましょう。

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低血糖症

2024年01月04日
(概説)
文字通り、血液の中の糖分量(血糖値)が少なくなり、そのための症状が出現する場合の症候群のことを指します。一般的には、血糖が高くなる糖尿病の治療中の患者さんが、飲み薬やインスリン注射などによる血糖のコントロールが不安定で、一時的に血糖が下がりすぎたために起こる症状です。しかし、高齢者、膵臓の腫瘍、特殊な体質などや、何らかの事情で食事などの摂取が極度に制限された場合にも起こり得ます。糖尿病の治療では、原則的には高血糖を抑える治療をしますが、コントロールが不良の場合は、高血糖よりも低血糖の方が致命的になることが多く、医療側も神経質に対応することになります。
 
(症状)
70mg/dl程度の低血糖になると交感神経症状として、動悸、発汗、不安、頻脈、手指振戦(ふるえ)など、更に50mg/dl程度になると頭痛、脱力、目のかすみ、眠気など中枢神経障害の症状が出てきます。更に低血糖が進むと、異常行動や意識障害や痙攣などが起こり、命も危険にさらされます。高齢者や、頻繁に低血糖を起こす方は、自覚症状が少ないまま低血糖が進む場合があり周囲の方は注意が肝要です。
 
(診断)
医療機関では、血糖値の測定により診断がつきやすいのですが、急に血糖値が下がった場合は、70mg/dl以上の血糖値でも症状が出ることがあり、経過観察が必要です。
参考までですが、血糖値は、食事などで常に変動していますが、正常ではおよそ80〜140mg/dl程度に収まるといった数値です。
 
(治療)
まずは経口的に、ブドウ糖を摂取します。意識がないなど経口摂取が無理な場合は、点滴にてブドウ糖を投与します。素早く適切な処置が行われた場合は、比較的速やかに症状は回復しますが、低血糖に至った原因を徹底的に検索し、再発防止に努めることが大切です。
 
(生活上の注意)
糖尿病の治療をされている方は、自宅でも血糖を測れる機器を備えておくことがよいでしょう。また、最近の夏場は熱中症になることが多く、そのために水分や糖分の摂取が足りなくなり低血糖も併発することがあります。
 
(余談ですが)
筆者の経験では、飛行機の中で意識が混濁した患者さんのことで医師が呼び出され、ご家族から、「持病に高血圧があるが、本日は孫との旅行が嬉しくて、朝から半日以上何も食べず飛行場に乗った」というお話をお聞きしました。もしやと思い、飛行機の備品の点滴チューブを使って糖分を補給したら元気になり、脳梗塞や脳出血でなくてよかったという印象的でヒヤリな思い出があります。

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自律神経失調症

2023年10月25日
(概説)
「自律神経失調症」という言葉は、耳にすることが多いのではないでしょうか?しかし「自律神経」とはなんですか?と聞かれるとはっきりとは説明つきにくいかもしれません。我々の身体の神経は全て脳から始まり、身体中に張り巡らされていて、筋肉を動かす命令を脳から端々まで運び、五感と呼ばれる感覚の信号を脳まで伝える役割があります。もう一つ重要な役割は、様々な臓器の働きの調整を行なうことで、こちらは自分の意思と関係なく自動的に働いているため「自律神経」と呼ばれます。活動を促進する「交感神経」系と抑制する「副交感神経」系が絶妙なコンビを組んで生命活動のバランスをとっています。これらの働きが、なんらかの原因でバランスが悪くなった状態を「自律神経失調症」と呼びます。本来は、病名というより「症候群」という位置づけにある言葉ですが、原因疾患が不明不詳である場合などに病名として使われることがあるようです。また、小児では、不登校の原因の一つともなる「起立性調節障害」と呼ばれる病態もありますが、詳細は他書に譲りたいと思います。
 
(原因と症状)
ストレスや過労、不眠などが原因となったり、女性の更年期障害などホルモンが関与するもの、またうつ病や神経症など他の精神疾患が原因となる場合があります。自律神経は様々な臓器と関与するので、症状も、めまい、動悸、ふらつき、のぼせ、頭痛、頭重感、肩こり、食欲不振、吐き気など多彩で、総称して不定愁訴と呼ばれます。
 
(診断)
原因となる疾患を検索することが重要です。専門医による面談の上、検査計画を立てることが大切です。
 
(治療)
原因疾患が判明した場合は、その治療を優先します。不安が強い場合や不眠などがある場合は薬物療法も勧められます。自律訓練法と呼ばれる、リラックスや自律神経を鍛えるという手法は治療や予防的にも全ての方にお勧めしたいです。
 
(生活上の注意)
普段からストレスを溜めない工夫を生活に取り入れ、規則正しい生活を心がけることが何よりです。前述の自律訓練法も日頃から実行することもお勧めです。不定愁訴が長く続くときはためらわず専門医を受診することも肝要です。v

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間質性肺炎

2023年01月04日
(概説)
間質性肺炎の病態については専門家の間でも全体像の把握や治療法などについても分かりやすく明確な解説は難しいものです。その前提のもとで、なるべく簡明に説明をしたいと思います。近年の新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、関連の呼吸器疾患として本症も注目を浴びています。ご存じのように、肺は酸素と二酸化炭素を入れ替えて、我々に新鮮な酸素を取り込んでくれる生命の根元となる役割を果たしてくれています。肺胞と呼ばれる小さな風船のような弾力性のある部分は、その酸素交換の最前線です。その壁にあたる部分が間質と呼ばれています。肺胞の中に病原菌などが入って起こるものが肺炎と呼ばれますが、間質に炎症が起こるものを間質性肺炎と呼びます。間質に炎症が起こり硬くなると様々な支障が起こります。間質が線維化して硬くなることから、肺線維症と同等に考えられていましたが、現在は分類上区別されています。これらの基本を押さえて、簡単に解説してみます。
 
(原因)
原因不明な「特発性間質性肺炎」が多くを占めますが、喫煙やカビなどを含めた異物の吸入、感染、アレルギー、自己免疫疾患、薬物の副作用などが原因となることも分かっています。
 
(症状)
咳(痰を伴わないことが多い)、呼吸困難が主な症状です。長期にわたってなかなか治らないという慢性の経過が多いですが、急激に悪化することもあります。
 
(診断)
類似の他の肺疾患との鑑別をすることが大切です。専門医による特徴的な胸部の聴診所見や、バチ指と呼ばれる指の変形なども診断のきっかけになります。CTなどによる特徴的な画像所見も重要です。この画像所見が新型コロナ肺炎の画像所見と似ていることが注目されました。
 
(治療)
特効薬は存在しないのですが、原因や病状によりステロイドや免疫抑制剤を使用します。この病気の専門チームの助言のもとに行うことが必要です。
 
(生活上の注意など)
一般的な健康管理である規則的な生活、運動習慣が大切ですが、禁煙することは言うまでもありません。風邪などがきっかけで悪化することがありますので、インフルエンザや肺炎球菌ワクチンなどの接種は推奨されます。新型コロナウイルス感染症の重症化にも関係するとも言われています。

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秋の花粉症

2022年10月25日
(概説)
花粉症とは、様々な種類の花粉が原因(抗原)となって起こる鼻や眼などの粘膜のアレルギーの総称です。日本ではスギやヒノキの花粉によるものが圧倒的に多く、春の病気と思われがちですが、夏にはイネ科のカモガヤ、秋にはブタクサやヨモギが原因の花粉症がみられます。また、2019年より、世界中を震撼させている新型コロナウイルス感染症、特に2022年現在流行しているオミクロン型の症状と酷似する場合も多く、患者にとっても医師にとっても対応に注意する必要があります。
 
(症状)
いわゆるアレルギー性鼻炎や結膜炎の症状が中心になります。具体的には、鼻水、くしゃみ、鼻詰まり、眼の痒み、充血、過剰な涙などの症状が主となります。喉がイガイガし、咳なども出ることがあります。軽症の新型コロナの症状に似ています。基本的には熱が出ることは少ないですが、アレルギー症状が強い時は微熱が出ることもあります。
 
(診断)
毎年の鼻炎発生状況などから、ほぼ診断がつきますが、血液によるIgE検査で、原因となる花粉(アレルゲン、抗原)が推定できます。皮膚テストや鼻粘膜の誘発テストなどもありますが、日常的には、症状で診断され、血液検査が補助的に使われるのが現状です。
 
(治療)
基本的には、原因となる花粉を避けることにつきます。花粉飛散時期の外出には、マスクや特殊なメガネの着用をし、帰宅時には衣服についた花粉を念入りに振り払うようにします。室内では花粉に対応した空気清浄機なども一定の効果があります。
毎年、花粉症を発症する場合は、原因となる花粉の発生時期の情報をつかむようにして、花粉飛散の初期段階から、抗アレルギー剤の服用や鼻への噴霧などを開始するようにすると、症状が軽く済むことが多いです。最近では、薬剤の選択肢の幅が増えてきていますので、医師とよく相談して治療法を決めることが大切です。スギ花粉症では、より根本的治療に近い減感作療法(アレルゲン免疫療法)なども、保険適用になり選択できます。
症状が強い場合は、鼻粘膜の外科的治療や分子標的治療薬の選択の可能性もありますが、専門医との相談が必須です。
 
(予防、生活上の注意)
大体が、毎年起こる持病のようなものですので、事前対策を心がけることが、快適に過ごすコツとも言えます。新型コロナとの鑑別も考えると初めてかかるクリニックの敷居も高く感じられるかもしれませんので、気軽に相談できるように、普段から持病のかかりつけ医を決めておくと安心です。

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隠れ脱水

2022年07月25日
(概説・原因)
「隠れ・・・」という病名の呼び名が通称としてしばしば使われることがあります。いずれも、本人や周囲の人が気づかずに、疾病が隠れている可能性があることを示します。「隠れ肥満」や「仮面高血圧」「糖尿病予備軍」なども同類の意味合いとなります。「隠れ脱水」は、本人が気づかないうちに、脱水状態が進み対策が遅れる危険性に警鐘を促す言葉として使われます。特に最近では、コロナ感染予防のためのマスク装着の常用により、こまめな水分補給が疎かになったり、喉の渇きを感じにくいことが原因となることも多いようで夏場以外でも注意が必要です。
汗や尿などとしての水分の喪失量よりも摂取量が少ない状態が長く続くと脱水症をきたします。体内水分の減少は体重の減少として現れますが、体重の3%程度の水分減少の軽傷から、9%を超える重症では命に関わってきます。
 
(症状)
喉の渇きや尿量の減少が見られます。また、一般的には血圧が低くなるためにふらつきやめまいなどの症状が出ます。脈拍数も増えることが多いです。胃腸の動きも悪くなり食欲も低下します。さらに脱水が進むと、痙攣や意識障害などの危険な症状が出現します。また、脱水で血液がいわゆるドロドロ状態となり、脳梗塞や心筋梗塞の合併症が起こる危険性も高くなります。
 
(診断)
医療機関を受診した場合は、血液検査や尿検査などで比較的に容易に診断がつきます。何よりも病状経過により速やかに判断することが重要です。
 
(治療・予防)
まずはこまめな水分補給を日頃から心がけることが肝要です。軽い脱水では、水分やスポーツ飲料の補給をゆっくり継続的に行うことで回避できます。しかし、本題の通り、ある程度病状が進むまで気がつかずに、ふらつきや軽度の意識障害が生じた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。点滴により、水分や電解質を補給することで、危険な状況への進行を防ぐことができます。
 
(生活上の注意)
前述の通り、日頃からこまめな水分補給を心がけましょう。また急激な体重減少があるときは、脱水症も念頭に置き、医師に相談してみましょう。

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頭痛

2022年01月05日
(概説)
頭痛は腹痛とともに、病院を訪れるきっかけとなる症状で頻度の高い症状です。そういった意味では「ありふれた症状」の代表になりますが、時には重大な病気の兆候であったり、生活の質を落とす慢性の症状でもあります。いろいろな分類がありますが、基本的な分類として、いわゆる「頭痛もち」と表現される頭痛そのものが病気の本質である慢性的な頭痛を一次性頭痛と呼びます。それに対して、何らかのはっきりした原因疾患が存在する頭痛を、二次性頭痛と呼び分類しています。後者の原因疾患として、くも膜下出血が急激に生命を脅かす危険な頭痛として有名です。今まで経験したことのない強烈な頭痛が出現するので、救急搬送されることになります。他の原因疾患として、脳腫瘍や髄膜炎、急性緑内障などがありますが、解説は別の機会とします。ここでは頻度の高い一次性頭痛に関して説明をします。
 
(症状)
一次性頭痛の代表的なものには「緊張型頭痛」「片頭痛」「群発頭痛」の3つがあります。緊張型頭痛は、最も頻度が高く、「頭全体が締め付けられる」「半日から数日間、もしくは毎日続く」「首のはりや肩こりを伴う」「吐き気、嘔吐などはない」「ストレスや過労などが誘因となる」などの特徴があります。「片頭痛」は、血管性の頭痛で「ズキンズキンと拍動性で強い痛み」「片側の場合が多いが時に両側性」「吐き気や嘔吐を伴う」「体動により憎悪しやすく」「光や騒音が誘因となったり」「視野に歯車のようなものが見える(閃輝暗点)などの前駆症状」などの特徴があります。女性が男性より数倍多く、月経の前後に起こりやすいようです。一方、「群発頭痛」は男性に多く、痛みの様子は片頭痛に似ているが、眼の充血や鼻水などのアレルギー症状などを伴うことが多いようです。一回の症状出現は、数分から数時間ですが、数週間から数ヶ月同じ症状が繰り返されます。一旦治っても数ヶ月、数年後に一連の発作時期がくることから「群発」と呼ばれています。これらの頭痛は、命に別状はありませんが、生活の質を落としますので治療が必要です。
 
(治療)
緊張型頭痛は、過労を避け、規則正しい生活と日頃の運動が大切ですが、しつこい痛みに対しては消炎鎮痛剤や筋弛緩剤などの比較的緩やかな薬で対応します。片頭痛は、急性期には、軽度の場合は消炎鎮痛剤で様子を見ますが、中等度以上の場合は、血管収縮作用のある薬剤を使いますので、専門医による慎重な薬の匙加減が重要となります。また、発症の頻度や症状の重い場合は、予防的な薬を普段から継続的に服用することになります。群発頭痛にも片頭痛の場合と同様の薬や時にはステロイドが効果的なこともあります。
(生活上の注意)
このように「頭痛」といっても、多様な原因があり、症状も多彩ですので、「頭痛もち」といってもよいような方は、専門医と十分に相談し、重大な病気が隠れていないかをきちんと鑑別し、生活の質を取り戻すために治療を諦めずに根気よく続けましょう。

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)

2021年10月26日
(概説)
新聞やテレビなどで耳にすることも多く、比較的一般人にとっても馴染みの深い病名ではないでしょうか。Sleep Apnea Syndromeの頭文字をとって「SAS」と略されて呼ばれることも多いようです。「うちの主人ですが、夜中にいびきがうるさいと思っていたら、急にいびきが途絶えて呼吸が止まっているのです。うるさいやら、心配するやらで寝不足気味になっています」というようなお話をよく聞きます。一方、いびきをかいてよく寝ているように見える本人は、「よく眠れなくて、昼間眠くて仕方ないんです」とぼやいています。全く傍迷惑な話なのですが、実はいろいろな病気のリスクがありますので、きちんと診断する必要があります。本疾患を示す典型的なお話にて概説にかえさせていただきます。
 
(症状)
概説に示しましたように、普段、寝室を共にする方が無呼吸に気づくことで見つかることが多いようです。また、起床時の頭痛や十分な時間睡眠をとっているにもかかわらず日中の眠気やだるさがあります。激しいいびきも本疾患の原因でもあり、結果としても生じることが多いようです。
 
(診断)
医師の指示により各種睡眠時モニター検査を行い診断されることになります。 SASの多くは、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と呼ばれるもので、肥満、男性、加齢などがリスク要因となります。また、心不全や脳血管障害が引き金となる中枢性睡眠時無呼吸(CSA)と呼ばれる比較的重症度の高いものもありますので、専門医による鑑別診断が大切となります。
 
(治療)
CPAPと呼ばれる持続的に陽圧をかけるマスクを装着する治療が標準治療となりますが、軽症であったり、CPAPの装着が困難な場合は、まずはマウスピースを使って改善するか様子を見ます。肥満がある患者さんには、減量の指導をします。生活習慣病などの基礎疾患がないかどうか調べておくことも大切です。

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風疹

2021年04月26日
(概説)
風疹ウイルスによる感染症で、現時点では5類感染症に分類され、医師は、診断後直ちに保健所への届け出をする義務があります。俗称として「三日麻疹(麻疹)」とも呼ばれ、比較的軽症であることがほとんどですが、妊娠初期(20週程度まで)に妊婦が感染すると胎児に重篤な障害がかなりの確率で起こります(専門家の間では「CRS」と略して呼ばれます)。
 
(症状)
発熱、発疹、頚部近辺のリンパ節腫脹が主な症状です。発疹は顔から始まり、全身に広がりますが、「三日麻疹」と言われるように、たいていは3日ほどで治ります。潜伏期は2〜3週間です。上記の胎児の障害には、白内障などの眼疾患、難聴、心臓疾患などの先天性疾患がかなりの高率(50%程度以上)で生じます。
 
(診断)
特徴的な発疹と症状経過で診断が推定されますが、今後のCRS対策のためにも確定診断が望まれますので、血液による抗体検査や、喉のぬぐい液などのPCR検査(新型コロナ流行で、多くの皆さんが知るところとなった検査ですね)により確定診断をつけておくことも大切でしょう。
 
(治療)
風疹ウイルスに効果的な薬物は現時点では存在しないため、対症療法が主になります。高熱などが辛い場合は、いわゆる感冒の時に使われるような鎮痛解熱剤を用います。
 
(予防)
特異的に効果のある治療法がないことと、上記の「CRS」のリスクがあるため、ワクチンによる予防が推奨されます。今後妊娠の可能性のある女性で、風疹罹患歴がなく、ワクチンも接種していないか、接種が1回のみという不完全の場合は、ワクチン接種を受けることが強く勧められています。その場合、ワクチンの接種前後で妊娠していないことを確認の上、2回の接種が望ましいとされています。また、男性も感染源となりうる可能性に配慮し、これから子供を作る世代の方は男女を問わず、ワクチン接種を検討しましょう。日本では誕生年度により、小児の頃のワクチンの接種状況が異なりますので、血液検査で抗体の有無を調べ、抗体が基準より低い場合はワクチン接種を受けることをお勧めします。飛沫感染、接触感染がメインですので、感染拡大防止の観点からも症状があるうちは人との接触を避けましょう。
 

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高血圧(2)

2021年01月04日
(概説)
血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の壁を圧迫する力のことで、心臓の収縮時にその圧力が最も高くなり、収縮期血圧(最高血圧、上の血圧などとも呼ばれます)、拡張時に圧力が最も低くなり、拡張期血圧(最低血圧、下の血圧)と呼びます。カルテなどには、二つをまとめて「130/80」のように記載されます。この二つの血圧がある程度以上高い状態(高血圧)が長年続くと、動脈の壁が厚くなったり硬くなったりし、動脈硬化と呼ばれる状態になりやすいということがわかっています。高血圧は、生活習慣病の代表格でもあり、現在日本では4300万人いるとされ、治療を受けている人はその6割以下だと推計されています。また、原因が特定されない本態性高血圧と呼ばれるものが9割とされています。
 
 
(症状)
特有の症状がないことがむしろ特徴といえます。たまに頭痛や肩こりなどを訴える方もいますが、時間をかけて動脈血管を傷害することが一番の問題点であり、心筋梗塞や脳卒中の原因となります。糖尿病などと共に、「静かなる殺し屋」と呼ばれる所以でもあります。
 
 
(診断)
上記のように、症状がないことが多いので、日頃から血圧を測定する習慣が大切です。一昔前は、医師の診察時の血圧により、診断を行っていましたが、今では家庭内血圧などを測定し、普段より診察時に高くなる「白衣高血圧」や、反対に診察時より普段の日常で高くなる「仮面高血圧」などを含む日内変動を考慮した診断がされるようになりました。また、判定基準値は、この数十年何度も改定され、2019年度の日本高血圧学会によるガイドラインでは、診察時血圧が140/90mmHg、家庭内血圧が135/85mmHgとなっています。糖尿病など他の病気が存在する場合や年齢などにより、細分化された基準値が設けられています。
 
 
(治療)
他の生活習慣病と同様に、禁煙、肥満解消、適切な運動、減塩、節酒などの生活習慣の見直しと改善が大切なことは言うまでもありません。これらを守っても十分な降圧が見られない場合は、薬物療法が必要となります。現在は薬物の選択肢が豊富に揃い、副作用が少なく利便性の高い服薬治療が可能となってきていますので、長い目で、専門医やかかりつけ医の指導を受けることをお勧めします。
 
 
(生活上の注意)
繰り返しになりますが、軽症のうちは症状に乏しいので、自らの生活習慣の見直しと定期的な血圧測定の習慣が肝要です。
 
 
(推薦資料)
日本高血圧学会編集(一般向け高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子)
https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf

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血栓症

2020年01月06日

(概説)<今回は内容の関係上、概説のみとなります>

「血栓症」という言葉は、一つの病名を指すのではなく、身体に生じうる一つの病態を示す言葉です。医学を勉強するときも他の分野と同じく、総論的なことをきちんと理解しておくと、各論の理解がたやすくなります。この機会に「血栓症」の勘所を理解しましょう。

「血栓」とは、その字のごとく「血液が血管の中で固まり、血管を栓のように塞ぐようになる状態」という意味合いです。動脈にも静脈にも生じ、身体のいろいろな場所に発生し得ます。主なものに、脳の動脈に生じる「脳血栓」、心臓に起こると「心筋梗塞や狭心症」、下肢に起こりやすい「深部静脈血栓症」(これは「エコノミー症候群」として有名ですね)、肝臓の重要な血管に起こる「門脈血栓症」など、いろいろな「血栓症」があります。

血液は、血管の中ではサラサラとして固まってはいけないのですが、血管が何らかの理由で破れて、血液が血管外に漏れ出た場合は、なるべく早く凝固し、それ以上の出血を防がないといけません。つまり血液は、この相反する二つの役割を状況に応じて使い分けなければならないのです。その仕組みが、「血液の凝固系」と呼ばれるもので、生命維持システムの基本の一つでもあり、医学生を悩ますような、とても複雑な仕組みを通して我々の身体を守ってくれています。

通常は、血液はそのようにうまく機能してくれていますが、生活習慣病や加齢、長時間の同じ姿勢などの要因で、凝固系のバランスが悪くなると、血管内で血液が固まり小さな血栓が生じ、それが次第に増大する悪循環に陥り、血管の狭窄や閉塞が起こり、その関連の臓器障害が発生します。また小さな血栓が、血管壁から剥がれて、血流に乗って流れ、脳や肺など離れた重要な臓器への血管を詰まらせることがあります。そういった場合を特別に「塞栓」と呼びます。

血栓症の予防には、凝固系のバランスを乱す原因ともなる高血圧、脂質異常症など生活習慣病の改善がまずは肝要です。場合により「血液サラサラの薬」などと呼ばれる一連の抗凝固薬が処方されます。血管が詰まった場合の治療は、その部位により異なってきます。

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起立性調節障害

2019年10月28日

(概説)

思春期に好発する自律神経機能不全であり、立ちくらみ、失神、朝起き不良、倦怠感、無気力、動悸、頭痛、食欲不振、顔色が悪いなどが主な症状です。以前は、思春期の一時的な自律神経障害や低血圧気味の体質、という程度に考えられていましたが、最近では重症型も存在し、不登校や引きこもりの原因の一つでもあるとのことが明らかになり、本疾患の重要性が唱えられています。学会による診断治療ガイドラインも刷新されるようになり、最近では2015年に改定されています。世界的にみても、特に日本での研究が進んでいるようです。専門家の間で起立性調節障害は、その英語の頭文字をとって「OD」と略されて使われます。

(原因、症状、診断)

根本的原因は不明ですが、身体的要因と心身的要因が重なり合っていると考えられています。軽症も含めると中学生の1割程度が本症に含まれるとの報告もあります。診断は、まず原因となる他の身体的疾患を除外することが大切です。その上で、上記の主な症状が3つ以上か、2つの強い症状があれば本疾患を疑います。その上で、「新起立試験」と呼ばれる検査を行い、4つのサブタイプ(起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、神経調節性失神、遷延性起立性低血圧)の判定を行います。

(治療)

家族や学校からは、怠けなど気持ちの問題と解釈されやすく、本人と保護者の関係性が悪くなることが多いので、きちんと診断を行い、本疾患であるならば身体的病気であることの理解を深めながら接することが大切です。起立時の動作はゆっくりなどの注意事項や十分な水分や塩分の適切な摂取、定期的な運動(歩行)や十分な睡眠などが大切なことは言うまでもありません。

それでも改善されない場合は血圧を調整するような薬物を使用します。認知行動療法などの心理療法も有効です。

(生活上の注意)

保護者や学校関係者が本疾患のことを十分に理解し、慎重に見守ってあげることが何よりも重要です。

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膵炎

2019年07月22日

(概説)

膵臓は、様々な消化酵素やインスリンを作る大切な臓器です。炎症性疾患の多くには、「急性」と「慢性」が存在します。それらの多くは、急性で発症し、その一部が慢性化するという関係性ですが、膵炎の場合は、急性膵炎と慢性膵炎は別個の疾患と理解した方がわかりやすいかもしれません。とは言っても、急性膵炎の1〜2割は、慢性膵炎に移行しますし、慢性膵炎が経過中に急性化することもあります。急性膵炎は、「急性腹症」と呼ばれる「急激な腹痛で始まり、放置すると命に関わる病気群」の代表の一つです。一方、慢性膵炎は「早期慢性膵炎」という考えが提唱され、発症から慢性型という生活習慣病に近い予備軍のような病態もあります。

(原因)

急性膵炎では、アルコール性と胆石性が2大原因で、男性は前者、女性は後者が多いことが分かっています。慢性膵炎もアルコール性と非アルコール性に分かれ、アルコールの過飲が予防医学上重要であることには変わりません。脂質異常症も原因の一つと考えられています。

(症状)

急性では、激しい腹痛や背部痛、吐き気、嘔吐が中心となります。慢性では、反復する腹痛を主症状に、進行すると消化吸収障害による下痢やインスリン不足による糖尿病などの症状が出現します。

(診断)

原因不明の急激かつ激しい腹痛がある場合は、虫垂炎など他の病気も疑いつつ本疾患を念頭に血液検査、画像検査を行います。本疾患が疑われた場合は、急性膵炎を治療できる専門医がいる病院への早期転送が重要な判断となります。慢性の場合は、血液検査や画像検査を含めた綿密な経過観察が必要です。

(治療)

急性膵炎では、入院絶食の上、痛みのコントロールと補液をはじめ外科治療に至るまで専門的な集中医療が必要になります。慢性膵炎では、薬物治療と食事療法が中心になります。

(予防)

アルコールの過飲を避けることがまず肝要です。原因不明な腹痛を繰り返す場合は専門医に相談しましょう。

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ヒトメタニューモウイルス

2019年01月07日

(概説)

小児の感冒の原因ウイルスの一つとして、2001年にオランダで発見されました。1度の感染では免疫ができにくく、何度か繰り返し感染し、10歳ごろまでにはほぼ全員が感染すると言われています。年を経て感染を繰り返すうちに、症状が軽症化すると言われていますが、乳幼児や高齢者、免疫が低下した大人が感染し重症化することもあり注目されています。

3月から6月ごろに流行することも特徴です。咳などの飛沫感染とウイルスのついた手などからの接触感染が主な感染経路となります。小児の感冒の代表的な原因ウイルスには他に、RSウイルス、パラインフルエンザウイルスなどがよく知られています。

(症状)

咳、鼻水、発熱など普通の感冒の症状が主で数日から1週間で軽快しますが、重症化すると肺炎や細気管支炎に移行し、高熱、喘息のようなゼーゼーという咳、呼吸困難などが出現します。また、子供の場合、中耳炎を合併しやすいことも特徴です。

(診断)

インフルエンザと同様に、鼻の粘膜を綿棒で拭いとった粘液から検査することにより診断できます(2014年より条件付き保険適用)。特別な治療法がないので、軽症の場合は、保険適用の観点から検査の必要性を医師が判断することになります。

(治療)

他のウイルスによる感冒と同様に、このウイルスへの特別な治療薬はありません。症状を緩和させるための薬と栄養・安静・水分補給などの生活上の指導が中心になります。長引く場合は、細菌感染の合併も考え、抗菌剤が必要となることもあります。また、高熱が続いたり激しい咳が治まらなかったりなどで重症化の恐れがある時は、綿密な観察と迅速な治療が必要になります。

(予防などの注意点)

潜伏期は3〜5日程度です。上記の感染経路から、インフルエンザや他のウイルスによる感冒と同じく、手洗いやマスクの着用が予防上大切となります。

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脂質異常症

2018年10月23日

(概説)

高血圧、糖尿病などとともに、動脈硬化症の原因となる疾患の代表的な病態の一つです。以前は高脂血症と呼ばれていましたが、一部の指標が低くなる異常もあることから、我が国では2007年7月より脂質異常症と呼ばれるようになりました。血液中の脂質が高すぎたり低すぎたりする状態は、長い目で見て動脈硬化を促進させることが分かり、それらを一つの病態と考え本疾患が定義されています。

(症状)

本疾患自体の自覚症状はほとんどありません。本疾患が原因となって、動脈硬化が進んだ結果、心筋梗塞や脳梗塞などが起こるとそれぞれの症状が出現します。

(診断)

自覚症状がないために、定期検診や他の病気で血液を調べて初めて診断がつく場合がほとんどです。代表的病態としては、高LDLコレステロール(悪玉コレステロール)血症<140mg/dl以上>、高トリグリセリド(中性脂肪)血症<150mg/dl以上>、低HDL(善玉コレステロール)血症<40mg/dl以下>があり、実際にはそれらが複合して存在します。なお、<>内のそれぞれの基準的数値は、現時点での学会基準値であり、年齢、性別、他の合併疾患などにより、治療目標が異なってくるのが実情ですので、おおよその目安として記憶ください。

(治療)

食事療法、運動療法に加え、禁煙、肥満改善などの生活改善が基本となります。数ヶ月以上の生活改善にもかかわらず、血液の数値の改善が見られない場合、その他の合併疾患も含め今後のリスクを考慮した薬物療法が勧められます。最近では、薬物の選択肢も豊富にあります。最小限の副作用で納得した治療を選択することが肝要です。

(生活上の注意点など)

何よりも、生活改善が優先されます。本症だけでは、ほとんど自覚症状がないために、定期的な検査とその結果に基づいた対策を十分に納得理解することが、長い目でみて治療を続けるための心の支えとなります。私の造語ですが「知識は最強のワクチン」です。

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