1998年2月

「やせてきた」という症状を主訴とする病気あれこれ

 

メディスコープ

「やせてきた」という症状を主訴とする病気あれこれ

はいたっく

1998.2

日立製作所 発行


  1. 拒食症
  2. バセドー病
  3. 結核
  4. 糖尿病

1.拒食症

◆症例

OLのEさん(22)は入社して2年になるが、入社時は身長155cmで体重55kgと、ややふっくらしたかわいい容貌であった。半年前頃より急にやせ始め、最近では30kg台という。生理もとまり、見るからに異常な印象である。ダイエットをしているのかと思えば、急にたくさん食べたりもする。たまりかねたおかあさんが病院の心療内科へつれていき「神経性食思不振症」の診断が下された。

◆病気の説明

やせ願望による節食に端を発する摂食障害である。若い女性に多く、周囲からの「でぶ」などというささいなことばを気にすることから始まり食べることへの恐怖感が進行していくことにより食事を拒否することになる。E子さんの場合も同僚の男子社員から「ふっくらさん」とからかわれたことが最初のきっかけらしい。

◆症状

拒食、体重減少を主体としてその結果、無月経となる。
また、拒食の反動として時に大食いやかくれ食いをしたあと意識的に嘔吐をするようなことがある。本人の自覚がなかったり、少ないのが特徴である。

◆治療

時には致命的な栄養障害を起こすこともあり、慎重かつ根気良い治療が必要である。極度の栄養障害に対しては点滴などで栄養補給をする必要もある。精神的背景まで十分に考慮し、綿密なカウンセリングなど心理療法が必要である。時には精神安定剤や抗うつ剤などの薬物も併用する。本人に自覚が少ないために家族ぐるみの治療が望まれる。

◆予防

普段から物事をまじめに考えすぎる傾向の人が本症になりやすい。悩みを内向させずに、気軽に相談できるような友人を持ったり、何でも話ができる家族の雰囲気作りが大切である。


2.バセドー病

◆症例

会社員のDさん(30)は2、3ケ月前より動悸がして、汗をよくかくようになった。比較的よく食べているのに体重も減ってきた。精神的なものかと思っていたが、念のため病院に行って検査したら「バセドー病」といわれ驚いた。

◆病気の説明

バセドー病は頚の全面にある甲状腺という器官の機能が亢進する病気である。甲状腺では甲状腺ホルモンというからだの新陳代謝を促すホルモンがつくられる。そのためこの病気ではからだの新陳代謝が亢進することによる症状が出る。原因ははっきりしないが、自己免疫異常といわれている。比較的若い人に多く、女性は男性の4倍程度といわれる。

◆症状

からだの新陳代謝がさかんになるため体重減少、頚脈や動悸、息切れ、汗が多くなり、手がふるえたりする。また微熱や眼球突出もみられることがある。甲状腺は大きくなるため、頚の全面がはれてくる。

◆診断

血液中の甲状腺ホルモンを調べればほとんど診断がつく。
また、甲状腺ホルモンに関するいろいろな抗体などもしらべる。

◆治療

大きく分けて3種類ある。抗甲状腺薬治療と手術治療、放射線治療がある。抗甲状腺薬の服用が一般的だが、最低でも1、2年の服用が必要なので、妊娠を希望する女性や社会生活上早い治療を望む人などは、手術が選択される場合がある。もちろん患者さん本人の希望が優先される。

◆予防

原因がはっきりしない病気なので、これといった予防法はない。なるべく早期に治療が始められるように、こういった症状があれば、早く医師に相談して診断を受けるようにするべきである。
 また内科的治療は長期戦なので根気よく治療を続けることが大切である。


3.結 核

◆症例

会社経営のCさん(55)はこの1年で知らぬ間に5キログラム体重が減少した。他に症状といってもなんとなくから咳がする程度である。仲間の会社が倒産する中で、経営を立て直すために日夜走り回っている状況であった。友人の紹介で訪れた病院で、胸のレントゲンを撮り、「肺結核」の診断に愕然とした。

◆傾向

肺結核は戦前は死亡原因のトップとなるほどの病気であった。しかし、日本では予防措置の普及で絶滅するかに思われた。ところが、現在も、頻度こそ少ないが、ときどき見受けられる。免疫力の落ちた老人や癌などの全身衰弱性の病気と合併することが多い。まれに若者でも生活の乱れなどから、肺結核になることもある。

◆症状

咳、喀血、血性痰、疲労感、体重減少など。症状は強くないが、長期間風邪症状が長引いているときなどには本症の存在も考えて検査するほうがよい。

◆原因

結核菌による肺の感染症である。結核菌は比較的感染力が弱く、普通なら簡単には感染しないが、何らかの原因で体力が弱っている場合に感染し発症する。

◆診断

昔なつかしいツベルクリン反応や痰の中の結核菌の検査や胸のレントゲンや血液検査などを行い総合的に診断する。

◆治療

抗結核薬の組み合わせによりほぼ完治する。しかし、粟粒結核といって重傷のタイプのものもあり、手遅れになると死亡することもある。普通、抗結核薬は1年以上服用する必要がある。

◆予防

予防接種としてはBCGが知られている。ツベルクリン反応が陰性の人はBCGの接種を受けることになる。また、結核に感染する人は、体力が弱っているわけであるから、日頃の生活のリズムを規則正しくして、食生活のバランスに気をつけることが、肺結核の予防につながる。


4.癌

◆症例

病院勤務の薬剤師さんのBさん(42)はこの2、3ケ月で4キログラムの体重減少に気がついた。毎年の院内検診で胃のバリウム検査も受けているし、糖尿病もないようだ。そういえば最近右下腹部に何となく違和感がある。同じ病院の院長先生に相談し、血液のCEAという検査値の高値を指摘され、大腸癌を発見された。

◆原因,傾向

大腸癌は最近日本でも増加してきている。食事内容の欧米化が原因とされている。日本の大腸癌の特徴は肛門に近いところ(左下腹部)に発生することが多いことであるが、最近欧米型とされる右側の大腸の癌も増えている。右側の大腸癌は初期の症状が少なく、検査主技も難しいので発見が遅れることが多いので注意が肝要である。

◆症状

下血(便に血が混じる)、腹痛、便秘、下痢。右側の大腸の場合、こういった症状が少ないことが多い。

◆診断

便潜血といって便のなかのわずかな血液を調べることにより早期発見をしようとしているが、診断率はまだまだ低い。肛門からバリウムを注入してレントゲン撮影をしたり、ファイバースコープで検査する方法 がかなり進んできました。40歳を越えたら一度調べてみるのもよいかもしれない。

◆治療

外科的摘出術を基本とするが、ポリープ型のもので、先端のみが癌化している場合は、ファイバースコープによる摘出術で治療が完了する場合があり、比較的治癒しやすい癌のひとつといえる。進行した癌の場合は人口肛門になることもある。

◆予防

最近の研究発表では肉食や動物性脂肪の取りすぎが大腸癌の原因のひとつといわれている。注意すべき点である。また、便秘も癌の発生を助長するようである。注意すべき点である。日頃、便通を整えることも大切だ。


5.糖尿病

◆症例

外科医のAさん(48)は、30歳頃より肥満傾向であったが、この半年で5キログラムもやせてきたので、癌がどこかにあるかもしれないと、胃や大腸の検査をしたが正常であった。父親が糖尿病であったので、糖負荷テストを受けたら糖尿病の診断が下された。

◆症状

糖尿病は高血圧などと同じく軽症のうちは症状が少ない。長い目で見て動脈硬化などを引き起こし、脳卒中や心筋梗塞を招くことになる原因のひとつなので、「静かな殺し屋」と言われる。主な症状には、口渇、多飲多尿、体重減少、疲労感などがある。

◆原因

糖尿病にはインスリン依存型とインスリン非依存型の2種類がある。一般に言う糖尿病は後者であるが、その原因としては、遺伝的に糖尿病の素因がある人が、暴飲、暴食、運動不足、肥満などの誘因を引き金として発症する。インスリンは摂取された糖分(ブドウ糖)を有効に利用するために働くホルモンであるが、糖尿病ではこのインスリンが何らかの機序でその働きが低下する。そのために血液中に利用されない糖が過剰になり(血糖が高くなる)、尿中にも漏れだしてくる(尿糖)のである。

肥満に関するコメント

 

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肥満に関するコメント

はいたっく

1998.2

日立製作所 発行


◆標準体重の求め方(BMI法)

標準体重はBMI法を用いたらどうでしょうか?
身長(m)の自乗 × 22のことです。

例えば身長168cmのひとは…1.68×1.68×22 = 62.1(kg) となります。

この標準体重に対する体重の比率(%)で、下表のようになります。

やせ

~89

適正体重

90~109

過体重(太り気味)

110~119

肥満

120~129

危険肥満

130~

◆過体重(太り気味)

過体重は肥満への警告ゾーンとして考えて良いでしょうが、10~20才代の健康なときの体重の5%増以内なら健康ゾーンと考えてもいいと思います。逆に、ここ数年のうちに適正ゾーンから過体重のゾーンに入ってきたかたは、今のうちに適正ゾーンに戻るように努力しましょう。

◆肥満

肥満は医学的に見て減量が必要とされます。肥満はいろいろな病気の引き金になります。高血圧、糖尿病、痛風、動脈硬化など放置しておくと命取りにつながる「生活習慣病」との因果関係が濃厚です。食事と運動のバランスをみつめ治す必要があります。無理をせずゆっくりと減量しましょう。

◆危険肥満

危険肥満は、上記の病気の危険性が倍加する状態です。減量に際しては医師の指導の元に安全に留意して行うべきです。日頃の食生活、運動習慣も見直しましょう。内科のドクターに相談に行きましょう。

「胸が痛い!!」

 

メディ スコープ

「胸が痛い!!」

はいたっく

1998.2

日立製作所 発行


  1. 狭心症、心筋梗塞
  2. 帯状疱診(ヘルペス)
  3. 肋骨骨折
  4. 自然気胸

1.狭心症、心筋梗塞

◆症例

営業マンのMさん(50)は、最近、階段の昇降時やジョギング中に胸部を締め付けられるような圧迫感を認めている。いずれも二、三分間でケロッと治ってしまうが心配で診断を受けた。体格は1m70cm、80kgで1日40本のヘビースモーカーだ。

◆病気の説明

不典型的な狭心症の発作である。狭心症とは、心臓自身に栄養を与えている冠動脈という血管の内腔ないくう)が狭窄(きょうさく)するために起こる。主として、動いた後などに生じる労作狭心症と夜間や早朝に生じることの多い安静狭心症がある。 Mさんの様な労作狭心症は、もともと動脈硬化により冠動脈の内腔が70%以上もつまってしまっていることが原因している。運動により心拍数が増え、血圧が上昇して、心臓により多くの血液を送らなければいけないのに、血管がつまっているため心臓が虚血(きょけつ-血液が足らない)状態になり発作を生じる。安静狭心症は寝ている時などに、冠動脈が痙攣(攣縮)状態となるために、やはり血管が狭窄して発作を生じる。
 この冠動脈が完全に閉塞(へいそく)してしまうと「心筋梗塞(こうそく)」といって、心臓の筋肉 が壊死(えし)という状態になり命が危険にさらされる。

◆原因

肥満、ストレス、喫煙、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などがあり、日本人の間でも増加の一途である。日頃の日常生活の改善によりかなりの予防が期待できる。

◆治療法

軽度な場合は薬物療法でよいが、高度になるとバイパス治療といって手術により人工的な冠動脈を作成する方法がとられる。
 また、最近では、足の動脈よりチューブを入れて狭くなった血管を風船のようなもので広げる方法が盛んに行われ、成功している。


2.帯状疱疹(ヘルペス)

◆症例

インストラクタ-のOさん(40)は数日前より右側胸部の付近にピリピリする痛みが出現。その間を振り返っても思い当たる外傷などはない。今朝より痛みのあるところの皮膚にポツポツとした水疱(すいほう)が数個出てきた。

◆病気の説明

帯状疱疹(たいじょうほうしん)による肋間(ろっかん)神経痛である。帯状ヘルペスともいい、いわゆる“水ぼうそう”の原因となるウイルスによって発症。子供の頃“水ぼうそう”をした場合、そのウイルスが神経の一部に潜伏感染する。そうした状態の人が、体調を崩して免疫能力が弱くなった時に、このヘルペスウイルスは再活性化されて神経に沿って病変を及ぼしていく。Oさんの場合も、生活が不規則で疲労がかなりたまっていたようである。その他、カゼや悪性腫瘍、結核など全身の体力が弱っている桙ノ発病しやすいといわれている。診断には、専門医の視診、問診及び血液の抗体価などが有用である。まれに重症例では、脳炎や脊髄炎を発症することもあり、またかなり強い神経痛の後遺症を残す可能性もあるため、なにより、早期の治療が重要である。湿疹が広汎だったり、他の全身症状を合併している場合、日常生活が困難なほどの神経痛を伴う場合、あるいは高齢者では、入院の可能性もあるので、できれば内科の受診が望ましい。

◆他への感染

まれに水ぼうそうにかかった事のない人に水ぼうそうが発症することがあるが、ヘルペスになることはほとんどない。

◆治療

抗ヘルペスウイルス剤の局所塗布と内服または静脈内投与が有効である。また、ビタミン製剤が神経障害に有効とされ、その内服が広く用いられている。原因のウイルスに対してかなり有効なウイルス薬が開発されているが、おそくとも発病5日目ころまでの治療開始が後遺症予防のためにも望ましい。

◆日常生活の注意

可能な限りの安静、十分な睡眠、栄養補給を基本とする。入浴、石鹸の使用は、皮膚症状が強い場合は注意が必要であるが、かさぶたになってしまえば特に制限はない。


3.肋骨骨折

◆症例

会社員のMさん(35)は、職場内の野球大会に備えて素振り練習をしていたところ、およそ三日後から右側胸部に痛みが出現。深呼吸をしたり、寝返りをうつのも痛くて困難。痛みを自覚する前に、特に重い物を持ったり、体をぶつけたりなどはしていない。

◆病気の説明

野球の素振りが原因と思われる肋骨(ろっこつ)の疲労骨折である。骨折なのになぜ時間がたってから痛くなるのかと不思議がられることが多い。肋骨は側胸部から前胸部にかけては肋軟骨といって、軟らかい骨となっている。この軟骨の部位や硬い骨との境界部位の骨折の場合は、ポッキリと折れた感じにはならず、ちょうど若木が折れたような感じになる。各肋骨の下のふちを神経や血管が走っているので、骨折部位の炎症が拡がってくると痛みが増長してくるのである。診断にはレントゲンが役立たない場合もあるが、経験を積んだ医師の診察で比較的容易に判断ができる。

◆治療法

局所の湿布とバストバンドというガードルのようなもので固定をすることである。他の部位の骨折のように、完全には固定できないので安静が大切。一か月程度で痛みは完全になくなり、軽度な運動も可能となってくる。ゴルフ、テニスやスキー、長期の激しい咳も原因となることが多い。


4.自然気胸

◆症例

20歳の男性Yさんがある朝大学に行く支度をしていたところ、突然右側胸部に刺すような強い痛みを認めた。呼吸困難も伴ったためベッドに横になってみたが一向に改善せず来院した。 1m80cm、62kgのやせ型。胸のレントゲン撮影の後、すぐに入院となった。

◆病気の説明

「突発性自然気胸(ききょう)」という肺がいわばパンクしてしぼんでしまう病気である。難しい話になるが、肺が収まっている器である胸腔(きょうくう)は陰圧といって大気圧より低い状態になっているために、肺はふくらんだ状態を保っている。ところが肺の一部が破れることにより、この陰圧が保てなくなり肺がしぼんでしまうのである。

◆原因

ほとんどが誘因のはっきりしない特発性自然気胸で、Yさんのようなやせ型の若い男性に特に多くみられる。体格や年齢的に当てはまらない場合、まれに、タバコの吸いすぎでなりやすい肺気腫や、肺癌、肺結核などに続発していることもある(続発性自然気胸)。

◆症状

突然の胸痛、痰のからまない咳。しぼみ方の程度が強いと肺の機能が失われるので、呼吸困難を起こすが、軽い息切れのみのこともある。診断は、胸のレントゲンと聴診などにより比較的簡単である。

◆治療

軽症の場合は、安静だけで数週間の内に治癒するが、中等度以上では、胸腔内にチューブを入れて人工的に陰圧をかけたり、肺そのものの手術を行うこともある。いずれにしろ、専門家の一刻も早い判断が必要である。

◆予後

再発しやすいこともこの病気の特徴であり、約30%に再発が認められるが、通常は1~数日で再膨張する。両側に発症したものや、元々の肺機能が悪かった症例は予後不良である。

糖尿病予防の基本

 

糖尿病を予防する

肥満を解消する。
それが、糖尿病予防の基本

さわやかけんぽ

1998.2

ジェイアールグループ健康保険組合


食生活の欧米化と運動不足

糖尿病の原因は生活習慣にある

厚生省が今年の1月に発表した[1996年の患者調査]によると、糖尿病で入院や通院している患者の総数は推計で217万5千人にのぼり、前回の調査(93年)より61万人増えている。この数字はきちんと治療を受けている患者数であり、治療を受けていない患者を含めると、おそらく全国で600万人の糖床病患者がいると考えられている。
 糖尿病の患者数は、年々増加しているが、その主な原因は、食生活の欧米化が進んでいるためだといわれている。私たち東洋人のインスリンの分泌量は、欧米人の約35~50%といわれている。つまり、日本人のインスリン分泌量には、もともと余力が少ないのである。伝統的な食生活なら、この少ないインスリン分泌量でも正常な血糖値を保っていけるが、欧米型の食事ではエネルギー量の多い脂質の摂取量が増える。その上に肥満や運動不足が重なれば、私たちは簡単に糖尿病となる可能性が高い。さらに、食べてからブドウ糖になるまでに時間がかかるご飯など穀類のデンプンが少なくなり、すぐにブドウ糖になる砂糖(清涼飲料水など)の摂取量が増えてきたことも糖尿病が増加している原因と考えられている。
 糖尿病は、インスリン依存型糖尿病、インスリン非依存型糖尿病、二次性糖尿病の三種類に大別される。インスリン依存型糖尿病は、インスリンが分泌しないタイプで、インスリンを注射などで補わないと生命を維持できない。インスリン非依存型糖尿病は、インスリンの分泌量は少ないながらも保たれているが、分泌の時間が遅れたり、インスリンの働きが悪いために高血糖となる。二次性糖尿病は、他の病気や治療薬が原因となって起こる糖尿病である。


糖尿病の発症には、遺伝的体質が、深く関係している

日本人の糖尿病患者の99%は、インスリン非依存型糖尿病である。この糖尿病の発症には、遺伝的な体質が深く関係している。両親のどちらかが糖尿病の場合、40~50%の確立で糖尿病になる体質・素質をもっているといわれているので、両親や兄弟、血縁者に糖尿病の患者がいる場合は、リスクが高いと思って用心することが大切である。
しかし、糖尿病になりやすい体質をもった人すべてが、糖尿病になるわけではない。[遺伝的体質]と[環境因子]が重なった場合に、糖尿病になるのである。環境因子としては、加齢、肥満、食べ過ぎ、砂糖や動物性脂肪のとりすぎ、運動不足、妊娠、感染、ストレスなどがあり、いずれもインスリンの働きを悪くする原因となる。したがって、近親者に糖尿病患者がいる人で、40歳近くなってきたら、こうした環境因子、特に食事と運動に注意をする必要がある。
 糖尿病ではないが正常でもない、ちょうど中間の血糖値(空腹時血糖が110~140mg/dl) の場合、境界型 (糖尿病予備軍) と呼ぶ。現在約900万人ぐらいの人がこの境界型といわれている。境界型の場合、神経症や網膜症、腎症などの恐い合併症を起こすことはほとんどないが、動脈硬化は糖尿病と同じように進行するといわれる。さらに注意しないと糖尿病になる可能性の高い予備軍であり、健康診断などで境界型と診断されたときは、生活に十分注意し、定期的に医師の検査を受けることが必要である。
 糖尿病治療の基本は、食事である。肥満を解消し、腹八分目で、おかずの種類を増やし、特に動物性脂肪や砂糖のとりすぎに注意して、バランスのとれた食事を心がける。軽い糖尿病の場合は、食事療法だけでも改善する可能性がある。
 運動によって血糖値を下げることも可能である。適度な運動をすることで、血中のブドウ糖は筋肉に取り込まれ、エネルギー源となる。さらに運動によって筋肉の状態が変化し、インスリンに敏感に反応するようになり、運動中や運動直後には、血液中のブドウ糖がほとんどインスリンの助けを借りずに直接筋肉組織に取り込まれることが、最近の研究で分かってきた。そこで、縄跳びやウォーキング、ダンベル体操、ストレッチなどを、少し汗ばむ程度、毎日30分ぐらい続けることが大切である。


糖尿病の自覚症状

糖尿病は静かにゆっくりと進行するため、自覚症状は病状がかなり進行しないと出ない。

しかし比較的気づきやすい症状としては、以下のようなものがある。ただし、こうした症状が出た場合は、すでに発症から数年を経ている場合が多く、健康診断で境界型といわれた段階から適切な血糖コントロールを行うことが大切である。

  1. 尿が多くなる
  2. 喉が渇く
  3. お腹がすく
  4. 疲れやすい

血糖が高くなると、尿の中に糖が出てくるが、その時に水分も一緒に出るので、尿の量が増える。尿量が増えれば、体内の水分が失われ脱水状態になるので、喉が渇く。
 エネルギー源であるブドウ糖を十分に利用できないため、身体が飢餓状態となり、お腹がすく。特に甘いものがほしくなり、いくら食べても満足感がない。
 さらにエネルギー源であるブドウ糠を十分に利用できないため、燃料不足になって、疲れやすくなるのである。
 この段階で的確な治療をして血糖のコントロールを行わないと、

  1. 食べてもやせる
  2. 目がかすむ、めがねが合わなくなる
  3. 大量の砂糖をとった後に倒れる

などの症状が出てくる。

糖尿病は『静かなる殺し屋』

さわやかけんぽ

インスリンの働きが弱まることがその原因

糖尿病は『静かなる殺し屋』

さわやかけんぽ

1998.2

ジェイアールグループ健康保険組合


高血糖状態を放置すると、糖尿病はどんどん進行し、さまざまな臓器を障害する
  

糖尿病という病名は読んで字のごとく、「糖が尿に出る病気」を意味している。

確かに糖が尿に出ることは糖尿病の特徴の一つであり、かつては尿糖試験紙などで糖が尿に出ていることを確かめて、糖尿病と診断していた時代もある。しかし、糖が尿に出ていても糖尿病でない場合もある。そこで、最近は血液中の糖の濃度から糖尿病を診断する。
 では、「糖尿病」とは一体どのような状態を指し、どうして発病するのだろうか。
 私たちの脳や筋肉そして内臓を動かし、生命を維持していくためには、当然エネルギー源が必要となる。三大栄養素と呼ばれるタンパク質・脂質・糖質が、私たちの主なエネルギー源であるが、中でも最も利用される割合の高いものが、糖質である。糖質はご飯・パン・芋などのデンプンのほかに、果物・牛乳・砂糖にも含まれている。これら糖質を含む食物を食べると、消化酵素の働きで、ブドウ糖や果糖などに分解されて、小腸から吸収される。吸収された糖は血液に溶け込んで肝臓に送られ、多くはグリコーゲンとなって、肝臓に貯蔵されるが、一部は筋肉に送られ、エネルギー源となったり、グリコーゲンとして貯えられる。
 特に、脳と中枢神経系は、そのほとんどのエネルギーをブドウ糖に依存しているため、ブドウ糖が不足すると、生命を維持できなくなる。そこで、血液の中には常に一定のブドウ糖が溶け込んでおり、血液中のブドウ糖が少なくなると、肝臓や筋肉に貯えられたグリコーゲンが分解され、ブドウ糖となって血液中に送り出される。
 血液中の糖の濃度を[血糖値]と呼ぶが、この値は常に一定に保たれており、健康な人では空腹時に、約90~100mg/dl(正常値は空腹時で110mg/dl未満)である。一定に保たれているはずの血糖値が150mg/dl、200mg/dlと高くなる場合がある。これが糖尿病である。なぜ、一定に保たれるはずの血糖値が上がっていくのであろうか。それは、インスリンというホルモンの働きが弱くなるからである。
 ブドウ糖がエネルギー源になるためには、膵臓すいぞうのβ細胞から分泌されるインスリンが必要となる。インスリンは細胞がブドウ糖を取り込むときに助けたり、筋肉や肝臓でブドウ糖をグリコーゲンに換える働きをもっている。つまり、インスリンは血液中の余分なブドウ糖を組織に取り込み、血糖値を下げる働きをしているのである。したがって、その分泌量は、血糖値にあわせて、増えたり減ったりする。血糖値が低い空腹時には、インスリンの分泌量は減り、食事によって血糖値が上がると、インスリンの分泌量は増える。
こうしたインスリンの働きで、血糖値は一定の値に保たれているのである。
 このインスリンの働きがさまざまなメカニズムで弱ると、血糖値は上がる。これが糖尿病の病態である。つまり糖尿病とは、膵臓でつくられるインスリンの働きが悪くなることが原因なのである。インスリンの働きが悪くなると、大量のインスリンが必要となる。膵臓のβ細胞はフル稼働してインスリンを分泌する。しかしこうした状態が長い間続くと、膵臓のβ細胞は疲労し、やがてインスリン分泌量は極端に少なくなる。つまり、血糖値の高い状態を放置すると、糖尿病はどんどん進行していくのである。


適切な治療を行わないと、神経障害・腎症(じんしょう)・網膜症など死につながる合併症を起こす

血液は私たちのからだの隅々まで流れているため、余分なブドウ糖(高血糖)は、単に血管だけでなく、さまぎまな臓器に悪い影響を与える。
 余分なブドウ糖は、体内のタンパク質に作用し、その機能を劣化させるだけでなく、タンパク質そのものも変質させる。この劣化・変質したタンパク質が組織にたまり、さまぎまな障害を惹き起こすのである。例えば、血管の壁に作用して、動脈硬化を起こすのも余分なブドウ糖の影響なのである。
 余分なブドウ糖の影響で起こる病気は、糖尿病の合併症と呼ばれる。糖尿病はそれ自体直接死につながる病気ではないが、死につながる恐ろしい合併症の原因となるのである。

糖尿病の代表的な合併症としては、神経症・腎症・網膜症がある。

現在人工透析を受けている人の約二人に一人は糖尿病による腎症であり、また、成人の失明原因の第一位は糖尿病による網膜症である。この他、動脈硬化や高血圧も合併しやすく、心筋梗塞・脳梗塞・感染症になりやすいといわれている。
 糖尿病を発症しても初めは自覚症状はない。したがって、健康診断などで糖尿病といわれても実感はなく、放置されている例が多い。しかし、自覚症状のないまま静かに進行するため、サイレントキラー[静かなる殺し屋] とも呼ばれているのである。適切な治療を行わないと、まず動脈硬化や高血圧がゆっくりと進行する。そして3~5年ぐらい後に、まず神経症が起きる。具体的には手足のしびれ感や無感覚、消化器の異常などである。さらに放置すると、網膜症、腎症を発症し、発症から20年後には、失明や腎不全を起こす可能性が高いのである。

温故知新⑫ 美しい生き方

 

1997.3~1998.3

温故知新⑫
美しい生き方

ばんぶう

1998.2

日本医療企画


「温故知新」を題材に書き始めて、早いもので1年経ってしまった。最初に書いたが、私は年の始めに一年のテーマを決めることにしている。平成9年は「温故知新」であった。
 今年は何かというと「正しい生き方から、美しい生き方へ」というパラダイムシフトである。
どういう意味かと疑問に思われる方も多いであろう。成熟社会を迎えた日本にとって、本来すべての国民は心豊かに生活を送れる筈なのに、実際はどうであろうか。経済はずたずたに引き裂かれ、政治家にしろ医者にしろ教師にしろ大会社の社員にしろ、いちいち枚挙するときりがないくらい、本来信頼されるべき人々が不信を買っている。我々、大人だって心が乱れる、不安になる。子供たちが目標を見失うのも無理はない。「悪いことはいけない」「法律に反してはいけない」「正しければ何をしてもいい」「正しく見えれば何をしてもいい」「つじつまさえ合わせれば」とだんだんと拡大解釈がされていく。それが一気に剥がれ落ちたのが昨今の出来事ではないだろうか。
 私はこれからの価値基準は「美しさ」ではないかと考えている。「正しくても美しくないこと」は結構ある。また逆に「正しくなくても美しいこと」もある。ネズミ小僧もそうだし、大名から高額の治療費を取り、貧乏人をただで見た赤ひげ医者もこの部類であろう。「美しさ」の判断は自分自身にある。つまり、しっかりとした価値基準を持ち、自分自身で判断できる能力をつけることが、これからの成熟社会を豊かに生きるコツだと考えている。新聞紙上を賑わしている様々な事件。司法当局はどう判断するかは別として、「美しくない」ことは事実だ。

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